改造町人シュビビンマン
ジャンル:アクション
媒体:HuCARD(2M)
発売元:メサイヤ(NCS)
発売日:1989年3月18日
価格:5200円
商品番号:NCS89004


外見◆不思議と知名度の高いPCエンジンオリジナルアクション


 PCエンジンの後期、それもSCD花盛りのころにPCエンジンワールド入りした僕からすると、PCエンジンはあくまでマニアックマシンであり、FCやSFCに多い「みんなが知ってるゲーム」にはとんと欠けていた印象がある。ドラクエやマリオとは言わないが、とにかく同じゲームのプレイについて語り合える人が周囲に少ないのは間違いなかった。
 PCエンジンが一番一般向けに普及していたはむしろ前期のHuCARD時代のことで、その時期のゲームの方が知名度が高く、遊んだ人も多い傾向がある。その中でアーケードなどからの移植作を除いた、PCエンジンオリジナルのゲームで抜群の知名度を誇るのが、この「改造町人シュビビンマン」(’89)だ。ネット検索をかけてみても、このゲーム(もしくは「2」)の思い出を語っている人は驚くほど多い。

 正直なところ、とりたてて出来のいいゲームとも思えないし、格別斬新なところがあるわけでもない。プレイ画面の見た目もとくに目を引くものはなくファミコン並みに地味な横スクロールアクションだ。各ステージもかなり短めで、ひたすらパターンを覚えて対処するのみで難度もそう高くはない(ボス戦に関してはステージによりけりだが)。それでいて当たり判定にかなりアバウトなところがあり、有利な面でも不利な面でも理不尽に感じるところが少なくない。

 …と悪口も並べつつも、不思議と遊んでしまうゲームである。一つにはややこしいルールをほとんど言わない「とっつきやすさ」があるだろう。また全クリアまでの時間も短い「お手軽さ」もある。さらには当時においては比較的安価で新品中古ともに流通していたこともあって、とりあえずはずれがなさそうと手に取る人が多かった、ということもあるようだ。
 だがなんといっても「シュビビンマン」という、なんだかよく分からないがインパクトのあるネーミングが大きかった(店で口に出して頼めない恥ずかしいタイトル、との声も見かける)。その名前からしてアニメや特撮のノリを狙っているのは明らかだったし、パッケージ表(説明書)に描かれたなんとなく引かれてしまうイラストも力が大きかったのではなかろうか。よく知られているようにこのゲームのキャラクターデザイン、イラスト類は美少女系の作品で知られた漫画家うらべ・すうさんが担当している(しかし一作目の説明書には「キャラクターデザイン:鈴木宏昭、イラスト:うらべすう」とある。ゲームのエンディングでは「キャラクターデザイン うらべ すう」と明記されてるのだが)。ゲーム内でその可愛らしさが再現されているとは正直言い難いのだが、雑誌記事や宣伝広告などで展開されたうらべさんのイラストが意外に大きな力を持ったのではないかと推測している。うらべ・すうさんが2001年に急逝された時、ネット上で「シュビビンマン」の話題を挙げる人が多かったのは、うらべさんと「シュビビンマン」が不可分の関係であり売り上げにも大きく影響していたことを証明している。

 他に本作がウケた理由を探すと、その独特の「下町的世界観」もあるだろう(恐らく「改造町人」というネーミングが先にあっての世界観と思われる)。宇宙からやってきた侵略者を相手の戦いだというのに、舞台はあくまで普通の町の中の商店街や公園や工場(敵の本部も「隣町の山頂」だ)。侵略者の親玉はなぜか名古屋弁(ニコチャン大王の影響?)、「天才科学者」の豪徳寺博士は関西弁でまくしたてる手前勝手でがめついオッチャンだし、その博士に勝手にサイボーグに改造されてしまう主人公は「魚屋の太助」(当然「一心太助」が元ネタ)「女子高生のキャピ子」(それが本名なんかい!)の二人である。この二人がブツブツ文句を言いつつ戦うところが斬新と言えば斬新だった。
 また当時としてはまだ珍しかった合成音声による「声」の演出も人気を呼んだ一因と見られる。キャラ選択時の「いくぜ!」「いくわよ!」、発砲する時の「シュビビーム!」、面クリア時の「CM前アイキャッチ」を思わせる「やったぜ!」「やったぁ!」といった肉声は、ROMカセット時代のものとしてはなかなかインパクトがあったようだ。


◆はじめ楽勝、だんだんイライラ…

行先選択 「太助」か「キャピ子」を選んでゲームを開始すると(両者とくに性能に違いはない。このとき選択したキャラが「シャキーン」という音と共に「変身」するのも楽しい)、勝手にサイボーグに改造されてしまったことに怒る二人と博士のやりとりがあり、街全体のマップが表示される。一見スゴロクみたいな構成で、左下にスタート地点の研究所、右上に敵のマザーコンピュータがある山があり、そこまでつながるさまざまなルートと建物が表示されている。プレイヤーはまずは研究所のすぐ隣のエリアへ進んで、そこのクリアを目指すことになる。

 どう進もうとプレイヤーの自由だが、最初は剣のみの攻撃しかできず、必殺技であるタメ撃ち「シュビビーム」が使えない。この非常時だというのに、「おまわりさんの発砲許可をもらわないと撃てない」というルールがあるのだ(笑)。交番のあるエリアに行ってクリアするとその発砲許可がもらえるのだが、そのことを博士は有料のヒントでしか教えてくれない。この博士、ヒントでもパワーアップでも修理でもガメつくカネを要求し、それを払わないと「このドケチ」とか、ひどいことを言ってくれる。まぁこのノリがこのゲームの面白さではあるだろうが。ステージで敵を倒すたびに金が手に入るのだが、ステージをクリアできずに「しんでしまった」になるとライフこそ全快するのだが点数はパー、「かねはもろとくで」と博士に半額持っていかれてしまうため、あんまり死んでると金銭的にキビしいプレイ展開になる。

 研究所のすぐ隣の各ステージは誰でも楽勝だろう。敵の出現ポイントを押さえ、あちこちにある溶岩(なんで?)に触れないようにクセのあるジャンプとダッシュをこなしてライフをなるべく高めに維持し、そのままボス戦に突入。初めのころのステージでのボスはビックリするほど弱体なので力押しでビュンビュン剣を振りまわしていればたいていあっけなく勝ってしまう。
 このボス戦でとくに目立つのだが、このゲーム、こちらの攻撃が当たっているのかどうか判断がしにくい。剣攻撃もシュビビームも見た目よりもやや広い範囲で当たっているらしいのだが、敵ボスのライフゲージも表示されないためこちらの攻撃が当たっているのかいないのか全然分からないことが多い。また容量上の理由だと思われるが、ボスキャラは色違いの使い回しが多く、爆発演出もかなり雑だ。

 研究所に隣接する初期ステージはいずれも楽勝なのだが、さすがにその先はだんだんキビしくなってくる。ひたすらプレイしてパタ―ンを覚えればいいのだが、微妙に位置を変えて飛び跳ねてくるロボット猿「ワキャキャ」の神経を逆なでするような攻撃や、ちょっと触れただけでも結構ダメージがある「ウニウニ」などでボス戦にたどりつくまでにライフを削られがち。ステージのギミック類も逆方向に動く床とか突然消えたり上下したりする床などイラつき度の高いものが目に着くようになる。ボス戦の方も当然ながらだんだん攻め口が見つけにくくなり、攻撃パターンを発見するのに手間取ることが多くなる。
 このゲームでは高得点を上げていくとライフゲージが少しずつ増えていくのだが、いったん「しんでしまった」となると点数が没収されるため何度か失敗してるとライフゲージは元に戻ってしまう。回復薬などのアイテムも売られているのだが価格が高い上に死んでしまうと博士に金を半額もっていかれてしまうためなかなか買えるものではない。
 正直なところ僕はプレイしていて爽快感どころかイライラ、ムカツキを覚えることが多いゲームだったのだが、そこに中毒性があったという声も多そうだ。


◆二人同時プレイも可能だ!

 1ステージをプレイするごとに半日が過ぎ(各ステージで昼と夜の変化がある)、18日以内に敵の総本山を攻め落とさねばならない。初期ソフトということもあってセーブ機能は一切なく、無限コンティニューでとにかく最後までやるしかない。だがなんだかんだでパターンを覚えて慎重にプレイすれば誰でもクリアは可能、というのがこのゲームの評価。実はステージ選択も研究所から敵の総本山まで、マップの対角線に沿ってまっすぐ突き進むのが一番楽勝のコースとなっており、それならたった4ステージ、およそ12、3分(ゲーム内時間で2日)でクリアできてしまう。その他の横道にそれたステージは上級者向けという作りになっているのだ。
 各ステージをクリアするとそれぞれボーナスがある。たいていは休ませてもらって体力を全快するだけだが、薬屋なら回復薬(販売もしている)、民家ならおにぎりといった回復アイテムをくれるし、工場では攻撃力・防御力のパワーアップをしてくれる。神社や教会では「お守り」をくれるし(ただし違う宗教に同時入信は不可能(笑))、病院では修理代が安くあがり(タダではないんだよな)、なんと金貸しが2000ポイント用立ててくれるステージもある。だがこれらは必ずクリアしなければならないわけでもなく、あくまで上級者向け「おまけ」ステージと言っていい。

火ダルマの瞬間 このゲームの売りの一つになっていたのが、マルチタップにパッドを二つつなぐことで「2人同時プレイ」が可能という点だった。2人のプレイヤーで「太助」と「キャピ子」を分担して操作、協力プレイが可能になっているのだ。ただしライフゲージは二人共有となっており、悪くすると協力プレイというより足の引っ張り合いになりがち(笑)。
 2人同時プレイだと一人の上にもう一人が乗っての大ジャンプが可能になるほか、特別の必殺技として「協力(強力)シュビビーム」がある。これは一人がシュビビームの「タメ」をしている(点滅状態)時に、もう一人が後方からシュビビームを発射、前方のキャラがタイミングを合わせてシュビビームを放つと、上下に波打って画面全体の敵を撃破、なんとラスボスも一撃粉砕といわれる強力なシュビビームが撃てるのだ。ただしタイミングを誤ると後ろからシュビビームを撃たれた側が火だるまミサイルになって飛ばされるという悲惨なことに(笑)。それでも敵の複数撃破ができるので、笑いをとりつつもそれなりに有効な攻撃である。

 ゲームをクリアするとエンディングビジュアルへ。敵を倒して町の人々から感謝される三人だったが悲しいことにあっさりと忘れ去られ、博士もサイボーグから元の体に戻す約束を守ってくれず(これは予想通りと思った人も多いはず)、シュビビンマンの二人は新たな戦いの時まで眠りに着く…というなんだか釈然としない(?)エンディングになる。これはもしかしてこの時点で続編の製作を予定していた、ということなのだろうか。
 しかし続編「改造町人シュビビンマン2」(’91)が出たのは実に2年も後のこと。しかもキャラが同じだけでほとんど別物と言っていいシリアスさもたたえた高難度のアクション&シューティングゲームとなった。ゲームとしての出来はそちらの方が「通好み」ではあるのだが、親しみやすさからか一作目のほうがファンが多いのではないか、という感触がある。その後このシリーズはPCエンジンCD−ROMで「改造町人シュビビンマン3」(’92)を出し、SFCのサテラビューで「改造町人シュビビンマン零」(’97)が出るなど、なんだかんだで息長く続けられ、2007年にはWiiの「バーチャコンソール」で「1」「2」が、2011年には「ゲームアーカイブス」で「1」「2」「3」が配信され、新たなプレイヤーを獲得しているようである。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.006
3.664
3.277
3.309
3.483
3.419
21.158
第318位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹


 

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