カットビ!宅配くん

ジャンル:アクション
媒体:HuCARD(3M)/バックアップメモリ対応
発売元:トンキンハウス
発売日:1990年11月9日
価格:6500円
商品番号:TON90004


 外見◆文字通りの「おつかいゲーム」。

 ジャンル分類が難しいゲームである。この「カットビ!宅配くん」(’90)、一応アクションゲームに分類されるものだが、飛んだり跳ねたり戦ったりするタイプではなく、プレイヤーは宅配業者のアルバイト。営業所のお姉さんに指示されるままに町中をバイクや自転車で走り回り、「お届けもの」をするという変わったコンセプトのゲームだ。オリジナリティがあるといえばあるんだけど、要はRPGなどで見かける「おつかい」をそのままゲームにしちゃったようなもんである。

 ゲームをスタートさせると「トンキンハウス」のロゴに続いてパッとしないシンプルなオープニング画面が…どうも見るからにダメゲー感が感じられてしまうオープニングだ。どうも「トンキンハウス」のPCエンジンソフトというとどれもそんな感じで地味な印象ばかり受けてしまう。ただこの「カットビ!宅配くん」に関しては遊び方が分かって来ると「結構遊べる」と思えてくるはず。
 スタートすると営業所のお姉さんが登場し、「まずは町のおまわりさんにご挨拶」という最初のミッションが与えられる。要するに練習ステージである。舞台となる町はRPGのフィールドに比べればずっと狭いものだが、町の構造、道路のつながりはなかなか複雑で、プレイヤーはまずどこに何丁目があるのか、そこへいく道順もちゃんと理解しておかねばならない。道に慣れて来るまでかなり苦労させられるので、正直なところマップを同封するなり説明書に簡単なものを載せるなりしてほしかった気もする。ま、道が分かってくればかなり攻略が楽になるので、その苦労を味あわせるためにあえてマップは載せなかった、ということだと思う。

 プレイヤーは出発する際に自転車かスクーターか乗り物を選択できる。当然自転車の方がスピードは遅いのだが、スクーターは「POWER」の消費がやや早く、一長一短。なお「POWER」はガソリンスタンドで補給できるのでガソリンのことだと思われるのだが、このゲームではなぜか自転車でもガソリンスタンドでの補給が必要になる(栄養ドリンクを飲んでるといった解釈らしい)
 マップ内ではIIボタンを押すと加速して前へ進み、方向キーで向きを操作する。しかし当然ながら道路上しか進めず(ごく一部通り抜け可能エリアはある)、加速してるとブレーキも急にはかからないし、他の車や道路わき・建物等にぶつかると方向が変わるため、操作は慣れるまでなかなか難しい。ゲーム難度にも関わる問題なので微妙なところだが、この操作性はもう少し快適にしてほしかった気もする。時々建物や人物の間にハマって動けなくなっちゃったりもするし、うっかり速度を上げているとそのまま海へ転落(この時点でミッション失敗)ということもあり、結構ストレスがたまるのだ。

 「おまわりさんに挨拶」するだけのファーストミッションだが、先述のようにマップは複雑。あちこちに丁目の番号が書いてはあるが、どの道がどこへ通じているのか、はたまた行き止まりになっているのかは最初のうちは走ってみないと分からない。一応道端のあちこちに人がいて、RPGよろしく聞くことはでき、時として重要な情報を教えてくれる場合もある。とくに職業柄、おまわりさんは道を教えてくれることがある。
 適当に走っていると迷子になってしまうので、このゲームではちゃんとレーダー表示が用意されている。いつでもSELECTボタン一発でレーダー画面が表示され、自分の周囲にあるガソリンスタンドやショップの位置、それから現時点の目的地が表示されるのだ。ただし道は表示されずあくまで自分からの距離・方向が示されるだけだし(このため近くにありながらえらい遠回りをさせられることもある)、遠くのものは表示されないため限界も多い。
 そんなこんなでようやくおまわりさんに挨拶をすませると、いよいよ「宅配」の仕事の始まりだ。


◆あらゆる妨害を切りぬけろ!

 営業所で示される宅配の仕事は基本的に「A地点で荷物を受け取り、それをB地点に届ける」というもの。それって宅配の仕事なのかいな、という根本的な疑問はさておいて、この一見簡単そうに見えるミッション、クリアするのは並大抵の苦労じゃないのである。

 道を覚え、人に聞いたりレーダーで探したりしながら「A地点」にようやく着き、荷物を受け取る。さあ、ではB地点へ行こうとすると、いきなり正体不明の敵集団「ブラックドッグ」の攻撃を受けることになる。その名の通り黒い車でプレイヤーに走り寄って来ると、いきなりヒョイと荷物をひったくって走り去るのである!いったいどういう組織なんだよ、とツッコんでしまうが、とにかくひったくられた荷物を奪い返さねばならない。荷物をひったくったブラックドッグの車は青色に変わり、画面左上に追跡レーダーが表示されるので、追いつけば荷物をひったくって奪い返すことができる。奪い返すこと自体はそう難しくはないのだが、「ブラックドッグ」の車は大量にマップ内を走っており(なんと後述の海外マップでも登場)、しょっちゅう襲って来ては荷物をひったくって行くので、それでなくても制限のある時間を大幅にロスさせられてしまうのだ。
 とにかくこの「ブラックドッグ」が最大の敵なので、プレイヤーはその対策をとらねばならない。スピードアップしたり道を急に変えたりして逃げるのも手だが、このゲームではブラックドッグに対しては「爆弾攻撃」により撃退することが認められている。あらかじめショップで爆弾(方向により三種類)を購入しておき、ブラックドッグの車が近づいてきたらすかさず爆弾を設置、相手を吹っ飛ばしてしまえばいいのだ(しかしこれって殺人じゃあ…)。ブラックドッグの車を破壊するとガソリンや修理アイテムが飛び出すことがあるので、爆弾攻撃は積極的に行うことになる。
 ところでこの爆弾攻撃、Iボタンを押せば即座に出来るのだが、町中の人に物を聞く時にもIボタンなので意味もなく爆弾を置いちゃうことになりやすい。まぁ車以外の被害は出ないことになっているが。

 「敵」はブラックドッグだけではない。道路をトラックやタンクローリーが走っているし、他の自転車やバイクもある。ぶつかればそれなりにダメージを受けてしまうのだ。特にわざとぶつかるために走っているとしか思えない「自転車おばちゃん」たちがそこかしこにいて、これにぶつかってしまうとオバチャンの顔グラフィック画面となり「なにしてんのよ!」と怒鳴られて精神的ダメージがデカい(笑)。

 さらには「交通ルール」という試練もある。道路の一部には信号があり、赤信号を無視して突破するとたちまち「ウ〜ウ〜」とサイレンを鳴らしてパトカーが追跡してくる。つかまれば罰金をとられ、交番に引っ張られてしまう。逃げ切ることもできないではないのだが…なお、パトカーへの爆弾攻撃については説明書で「論外です」と戒められている(笑)。信号のほかにも一方通行のところを逆走したりしてもパトカーが飛んでくるので注意が必要だ。こっちも急いでいる上に敵と戦いながらの走行なので交通ルールどころじゃない、というのが本音だが、あくまで交通ルールは守りましょう。町中での爆弾攻撃はなぜか構わないらしいけど(爆)。

 注意事項は他にも。先述のように「POWER」が消費され、ガス欠になるとそこでミッション失敗になってしまうから、常に残量に気をつけて、少なくなったらガソリンスタンドに駆け込む必要がある。ガソリンスタンドはマップ内各所に数多くあり、レーダーで場所を確認できるので気を付けていればだいたい大丈夫だが、時々いくら探しても近くにガソリンスタンドがなくて焦ることにもなるので注意。なお、たまに走っているタンクローリーに接触するとなぜかガソリン補充ができるようになっている。これって泥棒では…(汗)。

 またブラックドッグやオバちゃん自転車にぶつかってダメージを受け続けていると、ダメージゲージがどんどん減って、これもゼロになるとミッション失敗となる。しかも壊れてしまった自転車やバイクは使用不能となってしまう。これを回復するにはバイクショップに入って修理を頼めばいいのだが、ショップの位置はレーダーで表示されるものの、アイテムショップとバイクショップの区別は分からないので注意が必要。バイクショップでは修理のほかさらにパワーのあるバイクの購入もできるので、場所はきちんとおさえておくべき(もっとも最速のバイクは操作がしにくい上に修理代がバカにならない)。とくに修理はここでしかできないのでお世話になる機会は多いはずだ。
 アイテムショップでは先述の三方向の爆弾が3段階レベルまで用意されているほか、バイクの速度を上げる加速装置も3段階まで売られていて、合間を見て購入しておく必要がある。


◆ 世界をまたにかけて宅配!

 こんな調子でさまざまな妨害・難関をくぐりぬけて宅配ミッションをクリアしていくわけだが、中には配達先が夜逃げしていてそれを探しまわる羽目になったり、届けた荷物の中身がなくてまた取りに行かされたり、次から次へと用事を仰せつかってあっちこっち走りまわされるなど、バリエーションは結構豊富。
 そして途中からいきなり、なんとアメリカはニューヨークまで宅配にでかけるというワールドワイドなアルバイトになってしまう。海外へ行くためには町の東にある「ベイエリア」まで海底トンネルを抜けて渡り(このトンネル内では「ブラックドッグ」の手下どもが発砲攻撃をかけてくる。それを「轢き殺す」ことでアイテムが手に入ったりして…)、その北にある空港に行き、そこから飛行機でNYに飛ぶことになる(飛行機にはバイク・自転車ごと乗ってるらしい…)

 NYでもかなり広いマップが用意されていて、大都会からダウンタウン、スラムまで存在し、「福祉施設でプレゼントを受け取り、ダウンタウンの子供たちに渡す」とか、「スピルバーグのところへE.T.を運ぶ」とか(「ナンノヨーコ」とか当時の芸能ネタも含まれる)、「カイフさん」に頼まれて「カネマルさん」「タケシタさん」のところをまわったりとか(当時の政治ネタですな)「ジュウのタマを運ぶ」「スラムで白い粉を受け取り、それを東京のカワグチグミのところへ運ぶ」などというヤクザの絡んだヤバい仕事まで引き受けるハメになる(いずれもオチがちゃんとあるが(笑))。「カワグチグミ」とか「カズワカイ」といった名前が登場するが、このゲーム発売のちょっと前にあった「山一戦争」を知ってる世代にしか分からないネタだな。このほか役所やオフィスの中までバイクで走り回ったり、パトカーの運転までしちゃうところもあるし、もはや宅配アルバイトの領域じゃないよな、これ。
 NYでもブラックドッグの車が走り回っているし、交通違反をすればパトカーが飛んできて捕まれば罰金と全く同じ。というか、NYなのにおまわりさんは日本と全く同じ人である(笑)。ワールドワイドになったと言っても、実質マップが拡大されただけなのだ。それにしても「ジーザス」さんからペテロやユダなど十二人(元ネタは一目瞭然)をたらい回しにされるシナリオには参った…。そのあとはしばらく単純なシナリオになるけど、たらい回しは定番となる。

 この辺りまで攻略できればこのゲームの遊び方が分かって来て結構燃えてくるんじゃないかと。ミッションに失敗しても三回まではやり直し可能だし、ミッションクリアごとにバックアップRAMにデータが保存されるのでじっくりやっていけばクリアはじゅうぶん可能。最後には敵組織「ブラックドッグ」の基地へと突入、これがまた大変なマップで、時間制限もかなり厳しいのだが、道を覚えれば何度かアタックするうちにクリアできるはず。
 グラフィックと操作性に関してはもうちょっとどうにかなんなかったかな、と思うのだが、アイデアは悪くないしハマれば結構遊べるお手軽ゲームといったところだ。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.379
3.063
2.936
3.025
3.113
3.683
19.199
第523位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACOX



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