ヴァリスII
ジャンル:アクション
媒体:CD-ROM
発売元:日本テレネット/レーザーソフト
発売日:1989年6月23日
価格:6780円
商品番号:TJCD9001
◆パソコンから移植の美少女アクション!
本作「ヴァリスII」はもともと日本テレネットがパソコン用ゲームとして発売していた横スクロールアクションシリーズ。「II」とあるとおり、そのシリーズ第2作を移植したものだ。ややこしいことにPCエンジンではこの「II」が一番最初に発売されており、その後「ヴァリスIII」(’90)、「ヴァリスIV」(’91)と連年続いて、シリーズ第一作の「夢幻戦士ヴァリス」(’92)は一番最後に発売されるという妙な事態になってしまっている。
この「ヴァリス」はパソコンから始まってファミコン、メガドライブでも展開され、意外と幅広く遊ばれたアクションシリーズである。基本は飛んだり跳ねたり倒したり(笑)というごく普通のアクションなのだが、その世界設定が実にアニメチックであった点が人気の大きな要素だったと思われる。なんと言っても主人公は日常はセーラー服、ファンタジー世界では露出度過多のコスチュームを身にまとう美少女女子高生(笑)。パソコン版原作でも第一作からビジュアルシーンによるアニメチックな演出を取り入れており、主人公・麻生優子は美少女ゲームキャラの元祖的存在ともなり、実にオタク心をそそるゲームであったと言える。
この「II」はあくまで続編の移植なので(なんで一作目を最初に移植しなかったかは定かではない)、前作未プレイのプレイヤーはオープニングビジュアルで描かれる前作クライマックスシーンとマニュアルの説明からここまでの経緯を想像するほかは無い。まぁアクションゲームなのでそう難しい話ではなく、女子高生・優子が突然異次元のファンタジー世界「夢幻界」の戦いに巻き込まれ、与えられた「ヴァリスの剣」を片手に露出度の高い格好で(しつこい)で戦うというお話。どっかで聞いたような話、とOVA史に詳しい人は思うところだろう。まぁそもそもそういう線を狙った企画なのである。
PCエンジン版はCD-ROM用ソフトということで原作にもあったビジュアルシーンにアニメと声の演出を加えてよりパワーアップ。主人公・優子に島本須美さんを配し(この辺も明らかに狙っているところだよな)、各面のボスも肉声で語りかけ、BGMは全てCD音楽を奏でっぱなしという、当時の家庭用アクションゲームとしては贅沢きわまる作品に仕上がっていた。そして本作は実際、CD-ROM草創期のユーザーに大いに受け、次作「ヴァリスIII」がPCエンジンオリジナルとして製作されるなど以後PCエンジンCD-ROMの「顔」の一つとしてシリーズ化されていくことになった。
◆迷い込んだら苦難の道を
「ヴァリス」シリーズはその主人公が美少女こともあって「ギャルゲー」のルーツ的存在とも言われるのだが、ゲーム自体はなかなかどうしてかなりの硬派である。ストーリーの方も一作目から独特のダークさを漂わせるものとなっていた。
この世界は現実界・夢幻界・暗黒界の三つから成り立っている。パソコン版一作目「夢幻戦士ヴァリス」では現実界の女子高生・優子が夢幻界に飛ばされてヴァリスの剣を片手にログレスという敵と戦ったのだが、ラストにログレスに操られた優子の親友・麗子が敵として登場、これを倒さなければならなくなるという勝利とはいえ悲劇的結末となった。
PCエンジン版CD-ROMはこの「2」からの発売となったため前作のいきさつは起動後のビジュアルデモで語られている。このビジュアルデモだがさすがにCD-ROM初期のことなので絵の部分は小さく絵も荒くアニメもさりげない。それでも声は入るし当時は結構衝撃的だったのではないかと思える。
この「2」ではとりあえず現実世界に戻って女子高生をやっていた優子が、ログレス亡き後の夢幻界で勢力を広げる悪の皇帝メガスからの刺客に襲われるところから始まる。そしてヴァリスの剣を手に再び夢幻界に入った優子は前作に登場した女王ヴァリアの死に立会い、その娘ヴァルナが自分の双子の妹(にしては似てないが)であることを知る。自らの宿命を知った優子はメガスに戦いを挑んでいく…とまぁそういう展開である。実のところゲームやってるうちはそうした設定のことなぞ忘れちまっていることが多いが。この「2」は特にストーリーだけでなく背景などでもダークさが際立つように思える。
このシリーズはのちにスライディングやら魔法攻撃なんかも加わるのだが、この「2」ではひたすら刀を振るってその衝撃波(?)で敵を倒すだけの単純アクションだ。攻撃・防御でいくつかの魔法アイテムもあるにはあるが回数が限られているし入手じたいあまりできないのでアテにはならない。ホーミング弾は入手できるとなかなか使い勝手がいいのだが。
どのステージでもそうだがザコ戦がかなりきつい。どのザコも優子めがけて殺到するように攻撃してくるからだ。しかも一回のダメージがかなり大きく、数回攻撃をくらっただけで死んでしまう。回復アイテムも時々入手できるが決して多くはなく、どのステージでも慣れないうちは最初のほうで何度も殺される羽目になる。
僕もプレイしていて「こんなの無理だよー!」と投げ出したくなったことも何度かあるが、何度かやってパターンを覚えてくると次第に先へ進めるようになってくる。このゲームを一回クリアした後しばらくたって最初からやってみたら、あんなに苦労した各ステージをスイスイとクリアしてかなり先までノーミスで進んでしまったときには驚いたものだ。結局のところそれなりに妥当な難易度になっているのかもしれない。
◆ひたすら点を稼いでボス戦へ
後のシリーズでは変更になるのだが、この「2」では点数制が採用されていて、敵を倒して点数を稼ぎ、それに応じて残り人数(シューティングでいうところの残機数)が増加していく仕組みになっている。だから苦難の連続のザコ戦をある程度くぐり抜ければ、自然と点数とともに残り人数が増えていってゲームオーバーになる確率がかなり低くなってくる。
この状態でボスまでたどりつけばあとは楽勝と言ってもいい。ボス戦では相手に与えたダメージが、こちらが死んで次の「優子」に交代しても持続する形になっているので、残り人数が多ければめったなことでは負けなくなるからだ。やたらに苦労を強いられるザコ戦のあとの楽勝ボス戦という構造はバランスとしてはよかったのだと思える。
たださすがに最終面はムチャクチャきつい。ステージがかなり特殊で優子が斜め上方に進むエレベーター(?)に乗ってザコ敵の攻撃を避けたり倒したりしていくのだが、エレベーター部分以外は全て奈落の底に落ちていくだけだ。パターンさえ覚えれば短いステージなのでなんとかボスまでたどりつけるようにはなるが、そのぶん残り人数を稼げないし、ラスボスだけに強い上にお約束とも思える「一度では死なない」仕掛けになっているため最終面はずいぶんやり直しを強いられた。まぁそれでもやはり残り人数さえ多く確保して臨めば途中面のザコ戦よりは楽だろう。
無事にラスボス・メガスを倒すと感動のエンディング。ここまでの面間ビジュアルは、のちのPCエンジンSCD世界を見慣れた者にはかなり荒い仕上がりであったが、このエンディングだけはさすがに力が入っており、一気にフル画面一枚絵まで登場して優子ちゃんのお顔を画面いっぱいに鑑賞できる。
マニュアル末尾にも書いてあるのだが、エンディング・スタッフロール後しばらく放っておくと、島本須美さんの声で「ゲームは面白かった?」などと声がかかり、ゲーム中のビジュアルデモを全部見られるデバッグモードのコマンドを教えてくれる。このサービスはこのシリーズのお約束となっていくことになる。ビジュアルシーンだけ見たいって人には「ヴァリスビジュアル集」(’93)というソフトも出ておりますけど…(笑)。
ともあれこの「ヴァリス」はCD-ROM初期作品の中では珍しい本格アクションであり、なおかつアニメファン向けビジュアル志向も受けてヒットし、PCエンジンCD-ROMの看板の一つとなった。以後日本テレネットはPCエンジンCD-ROMをベースにしてこのシリーズを発信していくことになる。
(追記)2011年3月からPS向け「ゲームアーカイブス」の一本として本作が配信されている。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
4.518
| 4.400
| 3.772
| 3.736
| 3.990
| 3.827
| 24.243
第48位 |
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★(勝)PCエンジン(10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 9
|
ウォルフ中村
| 7
|
小野泉
| 7
|
ドーピン和樹
| 8
|
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