ヴァリスIII
ジャンル:アクション
媒体:CD-ROM
発売元:日本テレネット/レーザーソフト
発売日:1990年9月7日
価格:6780円
商品番号:TJCD0009


商品外見◆人気美少女アクション、PCエンジンCDから新作!

 本作「ヴァリスIII」はパソコンでヒットし、PCエンジンでも「ヴァリスII」(’89)が移植された人気シリーズの第三作であるが、前作「II」があくまでパソコンゲームの移植(ビジュアル強化、声つき)であったのに対し、この「III」は前作のPCエンジンCD-ROM版のヒットを受けてプラットホームをこちらに移してPCエンジンオリジナルとして開発されている。メガドライブなど他機種版との違いについては僕もよく知らないがCD−ROMなのはPCE版だけなのでほとんどPCEのみの作品と思ってもいいかもしれない。

 前作「II」でもそうだったがこの「III」でもこれまでのいきさつ、そして今回の新状況がビジュアルデモで語られている。このビジュアルデモは前作より格段に向上していて、TVアニメのそれの領域にかなり近づいてきていると思えるほど。もちろん初代CD-ROMシステムなので限界はあるが、それを感じさせない仕上がりだ。
 このビジュアルデモによれば前作ののち、魔界が暗黒面に吸い込まれて滅亡の危機に瀕し、魔界の独裁者グラメスは異次元世界である夢幻界、そして主人公・優子が生活している現実界への移住・侵攻を図る。グラメスは自分自身が持つ「リーザスの剣」と対になる「ヴァリスの剣」を手に入れようとし、その持ち主である優子にも危険が迫る…とまぁ、こういうオープニングでゲームは開始される。

 なお、ゲームを起動するとベッドで寝ている優子(物語の発端が優子の寝室から始まるため)が映り、STARTかCONTINUEを選ぶと優子がムクリと起き上がり、CONTINUEだとパジャマを脱いでコスチュームにサッと着替えるというちょっとした芝居がある。ここでパジャマのボタンに手を掛けた優子がハッとプレイヤーの視線に気づいて後ろを向くという細かい芸を見せてくれたりする(笑)。マニュアルにも前作以上に「オタク文化」くささを出しているように感じられる。

◆3キャラ使い分けと多彩なアクション

 この「III」は「ヴァリス」シリーズ2作の続編であるが、アクションゲームとしては大きく変貌を遂げた。変化の一つが優子のほかにヴァルナ(前作にも出てきた優子の双子の妹)、チャムという、それぞれ特性のある二人がプレイヤーキャラとして使用可能になったこと。もう一つはアクションに「スライディング」「大ジャンプ」が加わり多彩さをましたこととがある。また前作にも要素としては入っていた魔法攻撃も多様さが増し、わりあい単純なアクションだった前二作と一線を画した、戦略性の高いアクションゲームに変貌したのだ。

ゲーム画面 優子はごくノーマルな戦闘タイプ、ヴァルナは魔法攻撃に優れ、チャムは鞭を使い身の軽さが身上、とそれぞれタイプが大きく異なっている。この三人を場面場面で使いやすさを考慮して選択し(一部にキャラが固定される箇所もある)先へと進んでいくことになる。
 前作ではザコキャラの異様な強さ、執拗な攻撃が目に付いたが、「III」ではザコがホントにザコになっている代わりに、ステージそのものがかなりの難度に仕立てられている。「落ちたら即死」の場面がやたらに多く、ジャンプで超えられる範囲がかなり微妙な箇所が多い。おまけに一部ステージでは滑りやすいなどさまざまな仕掛けがほどこされている。
 僕が初プレイ時に頭を抱えたのが、実はオープニング後の実質的第一ステージ。山地をゆくステージだったのだが、どうしてもジャンプで越えられない箇所が出てきて、行き詰まってしまったのだ。どうしたものか、とずいぶん悩んだが、なんのことはない、本作から新規導入された「スライディング」をするとジャンプより先へ飛ぶことが出来るのだ!しかしなぁ、ふつうスライディングがジャンプより遠くへ届くとは思わないものだが…。

 新たに導入された魔法攻撃は「炎」「氷」「雷」の三種類があり、ステージ中でそれぞれのアイテムをとると変化する仕掛けとなっている。そのため出てきたものを片っ端からとるのではなく先行きのことも考えて戦略的にとることが必要だ。特に神殿ステージではスライディングですら越えられない箇所があり、これはなんと「氷」の魔法攻撃でザコ敵を凍らせ、それを踏み台にして先へ進むというとんでもないことをやらされるのだ。まぁ一応その時その時にマッチした魔法が入手できるようにはしてあるのだが、うっかりするとそれっきり、ということもあるので要注意。
 前作「2」では点数制で残り人数が増える仕掛けだったが、今回はステージ内でライフアイテムを入手して残り人数を増やす仕掛けで前作ほどこの点については甘くない。しかも本作から「時間制限」がつくようになり、攻略に手間取ってウカウカしていると「時間切れ」でゲームオーバーという情けない事態に陥る恐れがある。その一方でパワーアイテム入手で攻撃力をアップすることが出来るようになっていて、キチンと強度を上げていればボス戦でもそう苦労はしない。ボス戦についてはあまり印象に残っていないところをみると、全体的にボス戦の難易度は低くなっていたかも。


◆アニメとゲームの融合…

 オープニングビジュアルについても触れたが、とにかく「ヴァリスIII」の面間ビジュアルシーンは素晴らしいものだ。前作「II」でも話題を呼んだアニメチック演出であるが、「III」ではその画像がより大きく、美しく、しかもなかなかよく動く、という三拍子で、今になって見てみても「初代CD−ROM2でよくここまで…」と驚かされるほどの出来だ。実際のところ、この時期にして後年のSUPER CD−ROM2の最高レベルに近いとすら思わされるTVアニメ級の出来。

 もともと美少女がウリのアニメチックな原作ではあったのだが、「III」ではメインキャラが三人に増えたこともあって「ギャルゲー度」はかなり増している。説明書の中のイラストもかなりその方面を意識したキャピキャピ状態(死語)なのが少々気に触るところでもあるが(笑)、ゲームの中身自体は相変わらず硬派なものであり、ドラマ展開も「ありがち」とは思いつつ(優子の決め台詞は実際のところかなりクサイ…(笑))、かなり正攻法の「次元を超えた正義と悪の戦い」には結構のめりこまされる。こうした美麗なビジュアルシーン見たさにゲームを必死になって進めるわけで、CD−ROM2出現当初から方向性としては出てきていた「アニメとゲームの融合」にかなり成功した例であると思える。

優子さまの雄姿 ネタバレというほどのものでもなかろうから書いてしまうが、ゲーム後半で「神」となってしまった優子ちゃんは最終ボスを倒してとりあえず世界を救った後、チャムとヴァルナに別れを告げて天空へと舞い上がり、そのまま地上を見つめる存在として眠り?についてしまう。まさに大団円、シリーズ完結編、感動のエンディングではあったのだが、商業主義のお約束というものでヒットシリーズはそう簡単には終われない。結局この直後、無理やりの続編「ヴァリスIV」(’91)が製作されてしまい、優子、ヴァルナ、チャムの全員が再登場することになってしまった。もちろんさすがに神様になってしまった優子は主人公再登板はなく、新キャラに変更されてしまったが。

 素晴らしいビジュアルシーンに関しては裏技によるデバックモード、あるいは「ヴァリスビジュアル集」(’93)でも拝めるが、やはり苦労して見てナンボのものである。ほどよい難易度、戦略性、ステージの面白さなど、シリーズ中の最高傑作と言っていいアクション部分をやはりちゃんとクリアしてビジュアルを見てもらいたいもんである。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.565
4.214
3.840
3.659
4.060
3.681
24.019
第58位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小池泉

ミロはじめ


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACO・X



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