ヴェイグス
ジャンル:アクション
媒体:HUCARD(3M)
発売元:ビクター音楽産業
発売日:1990年6月15日
価格:6700円
商品番号:JC63005
◆パソコンから移植のSFロボットアクション!
この項目を書くためにネット検索で調べて筆者は初めて知ったのだが、本作「ヴェイグス」はPCエンジンオリジナルのゲームではなく、もともとはPC−88で発売されていたアクションゲームを移植したものだったのだ。所有している各種カタログにもこの「移植」の件について触れているものが全くなかったのでつい最近までその事実を知らなかった。オリジナルゲームにしては説明書の表紙イラストや各種メカ設定が妙に凝っているようには感じていたのだが…ネットで調べてみるとパソコン版を開発したのはあのゲームアーツであったりするからまた面白い。
調べていくうちこの「ヴェイグス」の原案・ゲームデザインをしたまさに「生みの親」の個人サイトにも到達してしまい、パソコン版「ヴェイグス」開発の詳しい話が書かれていて非常に興味深かった。PCエンジン版のことについてもそこでちょこっとだけ触れていて、ご本人もPCエンジン版開発元のビッツ・ラボラトリーへ出向して開発に関わっておられたとのこと。
24世紀の未来、人類は謎の勢力の攻撃を受け壊滅状態になる。謎の敵に対抗するため「戦闘格闘機・ヴェイグス」が開発され、プレイヤーはそれを操って敵の本拠地へ殴りこみをかける、とまぁまとめてしまうとそんなバックストーリー。
基本的には単純な強制横スクロールのアクション&シューティングのゲームなのだが、「SFロボットもの」というコンセプトが売りとなっている。自機となるロボット「ヴェイグス」(作者自身の説明によれば「マクロス」「ボトムズ」や「アップルシード」といった作品のロボットデザインが融合されているようだ)やザコ・ボスなどの敵キャラまで全て「メカ」で統一されており、お互いの攻撃の仕方もメカならではの個性を持たされている。
とくに「主人公」であるヴェイグスについては説明書に詳細なメカ設定が書き込まれており(恐らくパソコン版にあったものをそのまま写したものだろうけど)、リアルロボットアニメの熱烈ファンだったらしい作り手のこだわりが感じられるところだ。
パソコン版の各種画面を見る限り、PCエンジン版は戦闘画面、整備画面などかなり原作に忠実な画面づくりをしていることがわかる。ただ面数や順番、各面ボスの構成に若干の変更があるようだ。またさすがにPC-88MarkIIとPCエンジンの描画能力の差が歴然とあり、背景の新たな描きこみや一部に多重スクロール処理もほどこされて見栄えはかなり良くなっている。
◆敵をバリバリ倒して自機をドンドン強化!
この「ヴェイグス」、攻撃方法は三種類あって、左腕の「フィールドパンチ」(IIボタン)と右腕の「ビームガン」(Iボタン)、そしてもう一つ胸部からも360度方向可変の「オプティカルバルカン」攻撃(IとIIを同時押し)ができるようになっている。また頭部には敵の接近を察知するセンサーがついており、前後どちらから攻撃があるかを事前に表示する仕掛けにもなっている。
敵の攻撃でダメージを受け、シールドの耐久力が下がってくると頭部、左腕、右腕、胸部の順で破壊されてセンサーや武器がだんだんと使用不能になっていくのもこのゲームの特徴で、耐久力がゼロになるとヴェイグスが爆発してゲームオーバー。コンティニューなんか一切ない厳しい作りとなっている。まぁ1面あたりがそう長くはないし、全部で10面しかないのでこの作りでいいってことなんだろう。
面クリアをすると整備画面となり、ヴェイグスの破壊部分の修復、新武器の取り付けが行われるとともに、その面で倒した敵の数に応じて強化ユニットが与えられプレイヤーはそれを任意の部位に割り振ってヴェイグスを次第に強化していく。だから可能な限り画面内の敵を多く倒すことが必要になってくるわけで、それで得たユニットを戦略的に割り振っていくところも面白さの一つだ。
ここでは一応アクションゲームに分類してみたが、このゲームはシューティングゲームの性格もかなり強い。強制スクロールしていく画面の前後から敵がワラワラと出てきて、これを三種類の武器で倒していくのだが、やはり一番使い勝手がいいのは右腕のビームガン攻撃だからだ。ただ作者自身の狙いによるとビームガンはあくまで「補助」で、本来は「フィールドパンチ」で近接した敵を蹴散らしていくのが基本ということらしい。
だが地面を走ってくる敵に対してはパンチもビームガンも届く範囲ではなく、これに対しては胸部のバルカンで対応せざるを得ない。上空の敵は「バーニア」で飛び上がり、攻撃を行うことになるが、序盤ではこの「バーニア」は滞空時間がほとんどなく、ヒーローロボットらしくもなくピョンピョン跳ね回るハメになる(笑)。整備時にユニットをバーニアに割り振って強化していけば滞空時間はそこそこ延びるようになるが…。
◆大忙しのロボット操作
このゲームの大きな特徴は「ヴェイグスが方向転換する間は無敵状態になる」という点だ。ヴェイグスはバーニアで飛ぶ以外は左へ右へと地面を足の裏の「ローラーダッシュ」で走り回る(この辺が「ボトムズ」だな)しかないのだが、左、右への向きの転換は方向キーの「下」を押すと出来るようになっている。初めのうちはこれに慣れるのが一苦労。方向転換している間敵の攻撃が無効になるという一見妙なシステムは、ロボットが巧みに敵の攻撃を「かわす」動作を再現してみたかったものらしい。確かに慣れてくるとその狙いは分からなくはないのだが…やはり左右に向きを変えるのに「下」を押すというのは感覚的にしっくりこないので、思い通りに方向転換するのは慣れてきてもかなり難しい。
それとこのゲームは強制スクロールの中で左右から敵が次々と出現するが、どこから出現するかはセンサーで事前に感知して画面左下に矢印点滅によってプレイヤーに知らせる作りになっている。ところが実際にやってみるととにかく敵が次から次へと出てくるからその対応に追われ(おまけに三種類も武器があるもんだから選択の判断もしなきゃならない)、センサー表示なんか見ているヒマがほとんどないのだ。
センサーのチェック、敵をかわす方向転換、上空の敵に対処するジャンプ、敵の位置による三種類の武器の使い分け、ととにかく目が回るほど忙しいゲーム展開。自機であるヴェイグスじたいがかなり大きめだし、敵キャラも大きめのものが多いから、画面内はいつもギッシリ状態。こんな慌しいゲーム、やってられるかー!と正直思ってしまったのだが(慣れてくればそれなりにプレイできるようにはなったが)、わざわざ移植されたところを見るとパソコンでは結構人気のソフトだったのだろうか。
作者のページにあったパソコン版の画面写真も見てみたが、どうもプレイ画面の大きさの違いがPCエンジン版の「忙しさ」の原因になっているようにも思える。パソコン版ではもっと画面が広く、敵の出現にもうちょっと余裕があったんじゃなかろうかと感じたのだが、こればっかりはパソコン版をやってみないと何とも言えない。
正直なところ僕自身もこのゲームのPCエンジン版はダメゲーの部類に入れざるを得ない。PCエンジン専門誌の評価も決してかんばしいものではなく、当時もさして話題を呼ばなかったみたい。パソコンから移植のアクションもの、という時点でかなり「異色」ではある作品なんだけど、アーケードからの移植作と比較すると見た目と知名度で負けちゃうだろうし。
リアルロボットアニメファンの作者によるリアルロボットアニメチックな世界観を楽しめる、ありそうでなかなかない2Dゲームという位置づけが今なら妥当かも。PCエンジン界における結構似たゲームとしてSCDの「ブロウニング」(’92)の名も挙げておきたい。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.4
| 3.3
| 2.9
| 3.1
| 3.3
| 3.3
| 19.23
第518位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 6
|
ウォルフ中村
| 6
|
小野泉
| 7
|
ミロはじめ
| 6
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★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
東府屋ファミ坊
| 5
|
水野店長
| 6
|
森下万里子
| 6
|
TACO・X
| 3
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