CALII  
ジャンル:デジタルコミック
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:NECアベニュー
発売:1993年3月31日
価格:7800円
商品番号:NAPR-1034


◆パソコンアダルトゲームからの移植

商品外見 本作「CAL II」(’93)は、1991年に「バーディーソフト」がPC98シリーズ向けに発売したアダルトゲームの移植だ。「II」とあるように、原作ではこれの前作があったのだが、そちらはPCエンジンには移植されず、いきなり2作目からの発売となった。こうした例はパソコンからPCエンジンへの移植作では結構多く(「ヴァリスII」「スーパーシュバルツシルト」「エグザイル」など)、同じくアダルト作品からの移植の先駆けとなった「ドラゴンナイトII」(’92)も同様で、こちらはあとから1作目が移植される事態になっている。
 「CAL」の一作目についてはプレイしたことがないのだが、ネット上で見つかる情報からすると「II」とそれほど違わない内容みたい。だから「II」からの移植ということになったんだろう。

 さて、SCD後期時代のPCエンジンは、パソコン向けの18禁美少女ゲームの移植作が遊べるという点が他のコンシューマゲーム機に対する優位性の一つになっていた。そもそも当時NECが売っていた「国民機」PC9800シリーズのゲーム面における優位性の一つがその手のゲームのリリースが圧倒的に多かったことにあったのは否定できない事実で、PCエンジンももともと性的な描写に規制が甘く、SCD時代以降はビジュアル重視になったこともあって美少女を売りにした「ギャルゲー」が増加していたから、パソコンアダルトゲームがPCエンジンに投入されるのは必然の流れであったようにも思う。
 もちろんそこはあくまで家庭用ゲーム機なので露骨なものは移植できない。ゲームとして優れた作品を、性的な描写はソフトタッチに改めるといった改造をほどこすことで移植することになった。1992年にNECアベニューから発売されたRPG「ドラゴンナイトII」がその第一弾となったわけだが、これはもともと良く出来たRPGなのでそう問題はなかったと思う。だがこの「CAL」シリーズは純然たるアドベンチャー。よく移植を決めたな〜と思っちゃうのだが、当時かなり人気もあったようだし、エロ要素抜きでもお目がねにかかるところがあったのだろう。

 このシリーズのテーマは「恋愛」ということになるのだろう。1作目では主人公ワタルが同じ高校に通う美少女・美加に惚れてしまうがなかなか告白できないでいると、ひょんなことから「CAL」と呼ばれる異世界へ飛ばされてしまい、そこで「赤ずきん」や「シンデレラ」「人魚姫」などお話でおなじみの美少女たちと出会い、交流する(そこにHも含まれる)ことで女性との恋愛について学んでいく、といった内容だったという。そして現実世界に戻ったワタルが美加に告白してめでたし、めでたし、だったわけである。
 そしてこの「CALII」。前作から3年後、卒業式を終えた直後にワタルが何気なく発した言葉に反応して女神アイオーンが出現、美加を異世界に連れ去ってしまう。ワタルは女神ヴィーナスのサポートを受けて美加を追いかけてまたまた異世界「CAL」をさまよい、またまたさまざまな美少女達と「交流」していくことになる。

 PCエンジン版はもちろん直接的な「H」は削除されている。それでも以上のような設定なので恋愛疑似体験というか、ストーリーで見せる作品であったため移植が実現したのだろう。また当時のパソコン能力からすればかなり質の高い美少女ビジュアル(原画は美龍(のちの「七緒杏」))もかなりの評判だったようで、それがPCエンジンSCDなら声という付加価値もつく。実際、PCエンジン版は「豪華声優陣」という宣伝文句が決して誇張ではなく、当時の人気女性声優陣が勢ぞろいといっていいほどのキャスティングになっている。女性陣だけでなく脇役男性キャラに池田秀一が二役までして出演しているというのも貴重だ(やった人にはわかるだろうが、なぜ似合ってそうな「ポセイドン」の役をやらなかったんだろ?)


◆多彩な異世界で展開する美少女ストーリー

 「CALII」は異世界のマップ上をあちこち移動し、時空を越えたそれぞれのエリアにつき1〜2人の美少女とめぐりあい、コマンドを選択して物語を進めてゆく。ゲームの目標はもちろん美加を奪回することだが、そのためにこの世界のどこかに三人いる女神「カリス」を探しだし、「三種の神器」を手に入れねばならない。「カリス」は普通の人間の美少女に姿をやつしていて、思いが高まると緑色の涙を流してその正体を明かすことになっている。なお、この説明をしているヴィーナスが「パソコン版に比べるとかなり押さえた設定になってるでしょ?」と楽屋オチ台詞を言ってるように、原作のパソコン版ではその部分でまさに「H」に絡んでいたわけである。このパソコン版からのソフトな変更を揶揄するような台詞はあちこちで聞ける。

自主規制 各エリアは、現代の香港を思わせる中華クラブだったり、アラビアンナイトの世界だったり、平安時代の日本だったり。はたまた核戦争後の荒廃した都市だったりファンタジー世界やら「ブレードランナー」もどきやらと、時間も空間も越えてバラエティ豊か。そしてそれぞれに「主役」となる美少女がいて、それぞれのミニストーリーを展開する。パソコンADVの常で主人公のセリフや行動のテキストにはギャグ調のものも多いが、全体的に悲劇性の強いストーリーが用意されていて、その語り口のうまさが原作のヒットの理由でもあったようだ。
 原作についてネットで調べたのだが、やはりPCエンジンへの移植にあたってストーリーでもいくつか変更があったようだ。PCエンジン版では「男性に恋すると獣に変身する獣人」なんてかなり無理のある設定が出て来るのだが、これも原作では麻薬中毒の設定だったと知って納得。他にもナチスが絡む話があってそれはまるまる削除されてるとのこと。こうしたストーリー変更のために「カリス」の正体をもつ美少女も原作から変更されており、移植のようでいてかなりアレンジされたバージョンということになる。

 各エリアへはマップ上を移動、選択して入るのだが、その節目節目で、ヴィーナスの飼い猫「チェス」(あくまで「猫娘」だが)が案内役として顔を出し、いいアクセントになっている。泣かせ系の話が多い本作の中でチェスはもっぱらギャグ担当で、天然ボケなチェスとのやりとりは結構笑える。その声を平野文さんがあてていて、これがまたハマっているのだ。

 ゲーム自体はオーソドックスと言うか、当時でもちょっと古風かなと思えるコマンド選択で話を進めてゆくもの。なまじ肉声が収録されているので、話が進まず何度も同じ声を聞かされるハメにもなりやすい。またパソコン版の再現でもあるのか、テキスト表示がかなり遅く、ボタンを押していると多少は早く表示されるようにはなるが、声は飛ばせないし少々ストレスもたまる。
 このゲーム、基本的にストーリーを見せることに重点が置かれていて、謎解きや戦闘といった要素はほとんどなく(一応戦闘っぽいのはあるけど半ばギャグ)、ほぼコマンド総当たりで話を進めていくことになる。ただし即死亡、ゲームオーバーとなるトラップコマンドも各所にあり、その場合は自動セーブによりそのエリアに入る手前からやり直しとなる。まぁゲームの目的を忘れることなく、常識的にふるまえば(つまり女の子には優しく)そうそうゲームオーバーにはならないはず。


★多くの謎を残して

 一つ一つのエリアで展開される物語はそう長いものではない。主人公もどのエリアへ行ってもすぐ女の子に好かれちゃうモテモテさんだし(笑)、話はどれもとんとん拍子で進み、そう苦労もなく終わってしまう。ただ一度行っただけで「カリス」の正体が確かめられるとは限らず、一度行ったエリアを再訪することでそれが判明する、という仕掛けもある。またクリア目的とは別にそのエリアにもう一度行くと、そのエリアのキャラと再会してちょっとした後日談を見られる楽しみもある。
 「カリス」から「三種の神器」を集めても、まだ剣が必要だ、なんてRPGみたいなことを終盤に言われちゃうのだが、これも拍子抜けするほどあっさり入手できる(あれを見落とす人は普通いないだろ)。必要なものを集めてアイオーンとの対決に臨んでも、与えられる「試練」は常識的にふるまえばクリアできるはず。ゲーム性と言うほどのものは何もないと言っていいくらい。

チェス 今回プレイしてみたところ、ゲーム開始からエンディングまで、実に3時間ちょっとしかかからなかった。数千円も払わせてこれはないだろう、とどうしても思ってしまうボリューム(実際下記の「通信簿」でも「お買い得度」がかなり低い)。美少女ざくざくの絵は確かにうまいけどパソコン版に比べれば荒さはどうしても目立つし、そもそもパソコン版はもともとHありだったわけで、それを全面カットしてしまうと価値がグッと下がってしまうのは当然だ(そのまんまではないにしても、ある程度Hでは、と期待して買った人が多いはず)。ストーリー自体は出来がいいのでH抜きでもいける、という判断だったんだろうけど、同時期の「ドラゴンナイトII」と比べると、どうしても家庭用への移植に無理があったとしか思えない。

 ゲームをクリアし、スタッフロールが終わると、「CAL3でまた会いましょう」といったテロップが表示される。パソコン版「CALIII」はこの年の夏に発売されるのだが、こんなテロップを入れてるところを見ると、この時点ですでに「CALIII」をPCエンジンに移植することが決まっていたのだと思われる。PCエンジン版も開発自体はバーディーソフトがやってるっぽい(?)し、PCエンジン版「III」はパソコン版の発売から半年後という早さで出ていることから、「III」は企画段階からPCエンジン版発売を想定していたと思われる。そこまでに紆余曲折があったらしい、という話はそちらの項目で。

 これは原作のパソコン版もそうなのだろうが、「CALII」はかなり多くの謎を残したまま終わっていて、最初から続編の存在を想定しているような節がある。異世界では主人公をすでに知ってるようなセリフを口にするキャラも何人かいるし、女神ヴィーナスがなぜか彼の守護神になっている、彼の過去と未来に何か重大な秘密があるらしい、といった思わせぶりで伏線めいた話はいろいろあるのだが、それらは「II」の中ではいっさい解決しない。それは「III」への「ヒキ」ということなのだろうが、家庭用へ移植するのだったら「II」「III」セットで出すぐらいのことをしなきゃいけなかったんじゃないかなぁ…。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.38
3.50
2.96
3.35
3.36
3.29
20.83
第263位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真
40
ウォルフ中村
45
パトリオット佐藤
45
メタラー佐々木
45

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
TACO・X
イザベラ永野

ローリング内沢
野田稔



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