ロムロムアンプ

ジャンル:ハードウェア
媒体:音響機器
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1989年10月27日
価格:24800円
商品番号:AMP-30


商品外見◆PCエンジンカラオケマシン化計画

 かなりの希少品。僕も長年秋葉原などの中古屋に出入りしたものだが、これにお目にかかったのは2度しかなかった。1度は見かけただけであっという間に消え、2度目にみかけたのはそれから確か10年ぐらい後のこと。某中古店をぶらついていたら、ひょっこり置いてあり、しかもプレイステーション2につながれて店内のBGM演奏に使われていた(笑)。
 
 その名のとおり、要するにアンプである。「ロムロム」とあるから一応PCエンジンのCD-ROM2システムでの利用を想定していて、この平らな上面にCD-ROM2システムがすっぽり乗る形になっている。当時のPCエンジンの広告ではしばしばその「合体状態」の写真が載せられていた。だが別に専用の接続コネクタがあるわけではなく、単に音声用の赤と白のAVコードをつなぐだけなので、他のゲーム機やAV機器にも応用可能。実際、その店内じゃプレステ2で利用されていたわけで。

 左右にコンパクトな大きさのスピーカーがつき、アンプ本体には音量調節、左右スピーカーの出力調整はもちろん、重低音調節やエコー効果機能がついている。マイク入力端子もついていて、マイクを使って歌を歌い、それを室内に響かせることもできる。もちろん当時としては新鮮だったCD-ROMゲームの音声を盛大に響かせるといった使用法もあるわけだが、どうみても作り手の重点はマイクを使ったカラオケマシンとしての利用に置かれていたように思える。

 PCエンジンのCD−ROM2システムは1988年末に発売され、家庭用ゲーム機に世界で初めてCD-ROMを持ち込んだ。価格も高かったしソフトもなかなか出なかったので普及には多少時間がかかったが、1989年の段階で「天外魔境ZIRIA」「イースI・II」といったビッグタイトルが出て軌道に乗る。そして大容量を誇るCD-ROM2をゲームのみならずデータベースやデジタル雑誌、教育用ソフトなど多様な用途に使おうという計画も実行に移されていく。その計画にソフト面で積極的に参加したのがビクター音楽産業だ。そして「音楽産業」であるだけにCD-ROM2を家庭用カラオケマシンとして普及させようという計画も実際に試みられた。

箱 NEC-HEがこの「ロムロムアンプ」を発売したのと同じ日に、ビクターから「ロムロムカラオケVol.1」が発売された。これは音楽CDではなくゲームソフト同様のCD-ROM2ソフトなのだが、音楽と絵が同期して表示され、歌詞字幕が表示されてタイミングにあわせて色が変わっていくという、この時期のカラオケ店にあるものとほぼ同様の能力をもつものだった。ただし難点は収録曲が8曲しかないことで…このあとビクター音楽産業だけでなくNECアベニュー(こちらはもともと音楽ソフト会社であった)からもカラオケソフトが発売され、それぞれ5本づつ、計10本のカラオケソフトが発売されることになる。全部揃えればそこそこの曲数になるのだが、結局あまり売れなかったようでこの10本で打ち止めとなる。「ロムロムアンプ」自体も当時の広告にはよく写真が載せられている割に現物にほとんどお目にかかれないことからすると、販売台数は相当に少ないのでは…
 なお、PCエンジン専用のカラオケソフト以外でも、カラオケ用にグラフィックデータを入れた「CD−G」にもCD-ROM2は対応しており、この機能が組み込まれた市販の音楽CDでカラオケを楽しむことも可能だった。またCD−ROM2の音楽CD再生モードは今見てもかなり斬新なデザインかつ高機能なので、これを「ロムロムアンプ」で大音響で楽しむ、という贅沢な使い方をする人もいたかもしれない。

 当時も今もカラオケはすっかり定着した庶民の娯楽だが、基本的にはカラオケ店で楽しむもの。それを家庭内に持ち込もうとする商品はこのころから現在まで散発的に売り出されるが、あまり普及したという話も聞かない。日本の家屋事情じゃカラオケルームを作る余裕もなく家族や近所迷惑になる可能性も高いし、やっぱりカラオケは家から出て仲間とお店で楽しむもの、という志向が強いのだろう。


迷い込んだ方はこちらから