COMケーブル    
ジャンル:ハードウェア
媒体:周辺機器
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1990年12月7日
価格:1800円
商品番号:PI-AN4


外見◆GTで通信対戦が可能に!

 PCエンジンGT。この知る人ぞ知る、超マイナー携帯ゲームマシンについてはそれ専用のページで読んでいただくとして、この「COMケーブル」というのはその「GT」のみに特化した周辺機器だ。そのため、めったなことでは手に入らない。そのめったなことが起こって入手している僕ではあるが、いまだにこれを使用してみたことはない。なぜなら、その超マイナーゲームマシンが2台ないと使用できない代物だからだ!

 この商品は「GT」発売と同時に出たGT専用各種オプション商品の一つで、2台のGTをこのケーブルで接続することによって通信対戦ゲームが遊べるようになるというシロモノなのである。PCエンジンのマシン同士を接続して対戦することを可能にしたのは後にも先にもこの時しかない。

 PCエンジンで「GT」が発売された大きな原因に、前年(1989年)に発売された任天堂「ゲームボーイ」のヒットがある(セガの「ゲームギア」も「GT」の直前に発売)。「ゲームボーイ」は白黒画面で安っぽいけど、かつての「ゲーム&ウォッチ」に通じる手軽さにファミコン同様のROMカセット交換によって多くのゲームが遊べるというメリットが加わり、その初期においてかなりのヒットになった。この「ゲームボーイ」には通信機能があり(設計時点ではそれほど強く意識したわけではなかったらしいが)、ケーブルで他のゲームボーイと接続して対戦ゲームを遊べるようになっていた。その最初のヒットがゲームボーイ版「テトリス」であったと言われる。

 PCエンジンのソフトはカード媒体なんだからそもそも携帯機向きなのだ!とばかりに出してしまった「GT」にもやはり通信機能が装備されていた。もしかすると「テトリス」みたいなキラーソフトが出るかもしれない、とつけてみたのだろう。しかし結果から言ってしまうと、GTそのものがデカくてバカ高いうえに画面も小さく電池食いだったためにまるっきり普及せず、通信対応のゲームソフトも不発に終わってしまう。

 確認される限り、GTの通信対戦が可能なソフトは6本だけ。
 一本は「GT」の発売直後に発売された「ボンバーマン」(’90)だ。PCエンジン以前にファミコンで発売されたソフトだが、PCエンジンで出すにあたってマルチタップを使った多人数対戦を可能にして大ヒット、ハドソンの看板シリーズになってしまったのはご存知の通り。で、PCエンジン主催者でもあるハドソンは「ボンバーマン」を実質的なGT対応第一弾ソフトにもしていたわけ。しかしGT対戦のほうは体験者もほとんどいないようで(友だちがGT持ってないといけない!)、ブレイクするには至らなかった。続く「ボンバーマン’93」(’92)でもGT対戦機能は継承されたが、さらなる続編の「ボンバーマン’94」(’93)ではついにGT対戦は消滅してしまった。
 「テトリス」亜流の落ち物パズルゲームである「スピンペア」(’90)「コラムス」(’91)も、GT対戦に対応している。とくに「コラムス」はアーケードでもともと対戦プレイが楽しめたものなので、PCエンジン版でもそれを、と思ったのだろうが、どういうわけか対戦はGTでしか出来ない仕様になっている。これも実際に遊んでみないと何ともいえないところだが…
 やはりパズルものである「パズルボーイ」(’91)も対応していた。これは「倉庫番」タイプの迷路パズルながら対戦が出来るという変わり物で、普通のPCエンジンのマルチタップでも対戦可能だったがGT対戦に対応もしていた。
 さらに変わったところで「森田将棋PC」(’91)がある。これは普通の将棋ソフトとして遊ぶ分にはGTは必要ないのだが、収録されている「軍人将棋モード」はGTでないと遊べない。「軍人将棋」を知ってる人には説明の必要はないと思うが、確かにこのゲームは通信対戦でないと遊べないはずで、ほとんど唯一「GTならでは」のゲームだったともいえる。

 通信対戦以前に「GT」そのものが不発に終わったわけだが、その後「ゲームボーイ」だって一時ヒット不足で苦境に陥って携帯ゲーム機冬の時代を迎えている。それを救うどころか全世界的な大ブレイクに持ち込んでしまったのが1996年に世に出た「ポケットモンスター」だった。そのヒットの秘訣が、当初そんなことになるとは思ってもみなかったゲームボーイの通信機能にあったわけで、GT「COMケーブル」も狙いは間違ってなかったと思うんだよね。
 

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