PCエンジンコアグラフィックス
ジャンル:ハードウェア
媒体:本体
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1989年12月8日
価格:24800円
商品番号:PI-TG3
◆AV出力標準装備のPCエンジン
PCエンジンは周辺機器のみならず本体ハードの種類がやたらに多い。同時期にライバルだった任天堂のファミコン、スーパーファミコンと比較するとよくわかるが、任天堂ハードが終始一貫してハードのデザイン・設計を変更しないのに対して、PCエンジンは中核となる本体ハード自体で毎年のようにマイナーチェンジ(基本性能は全く変化がない)を繰り返していた。同時期のもう一つのライバルであるセガのメガドライブは途中で大きなデザイン変更(メガドライブ2)を行っているが、それでもその1度だけだ。
PCエンジンのこうした姿勢はやはりNECというパソコン・家電メーカーの発想が大きく影響していたと思われる。常に「新商品」としてハードを売らなくちゃいけないという発想だ。パソコンもそうだが特に性能に大きな変化があるわけでもないのにちょこっと新機能などをつけて、名前もちょこっと変えて「バージョンアップ」した新商品のようにして売り、新たなユーザーを得ようという商法である。家庭用ゲーム機でこれをやるとマニアはともかく一般人にはどこかどう違うのか理解不能で、これが結果的にライトゲーマー層のPCエンジン入りの敷居を高くしたのは間違いない。
この「PCエンジンコアグラフィックス」は、基本性能は初代「白PC」とほとんど変わりがない。大きな変更点は「白PC」がRF出力しか持たなかったのに対して専用端子によるAV出力を標準装備している点だ。あとは外見のデザインぐらい。無垢に真っ白だった「白PC」では汚れが目立つという判断もあったか、あるいは「重厚さ」を押し出そうとしたか、カラーリングは濃いグレーに青のロゴとなった。「エンジン」を意識したかと思われる横線のギザギザは引き継がれているが、白PCでは半円だった中央のふくらみは完全な円形となった。
本体のカラーチェンジに伴い、同梱されるパッドもこれに合わせた色に変更された(左図)。 また「白PC」では同梱されるのが連射機能なしのパッドだったのに対して、コアグラ以降は連射機能つきのターボパッドが同梱とされていく。
「コアグラフィックス」が発売されたのは1989年12月。PCエンジン発売開始から2年を経たこの時期、一定の成功をおさめていたNEC-HEはより高みを目指して強気のハード展開を行っている。11月に低年齢層向けの廉価PCエンジン「PCエンジンシャトル」を発売、12月には逆に高年齢のマニアゲーマー向けの上位互換機である「PCエンジンSUPERGRAFX」を発売している。「スパグラ」と同時に発売開始されたこの「コアグラ」は両者の中間層を狙う主力商品、という位置づけだったのだろう。価格も据え置き、名前もPCエンジンが抱える「コア構想」を強く意識したものとなっている。
「PCエンジン」ワールドを一つのハードではなく、それぞれのニーズに合わせた複線展開をすることで拡大していこう、という発想はまさにパソコン屋、家電屋のものだ。その発想自体は面白いのだけど、やはり外部からみると買い手の混乱を招いただけだったのではなかろうか。
初代「白PC」の後継である「コアグラフィックス」は、「シャトル」「スパグラ」がコケていくのを横目に結局PCエンジン界の中心であり続け、1991年6月に「SUPER CD−ROM2」構想の発表とともに発売開始された「コアグラフィックスII」に引き継ぐまで売られ続けた。販売台数は不明だが、白PCほどは売れなかったというのが実態ではないだろうか。先述の複数ハード戦略の混乱に加え、1990年年末には任天堂がスーパーファミコンを発売したため売れ行きでかなり押されてしまったのではないかと推測されるからだ。
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