ファイティングスティックPC

ジャンル:ハードウェア
媒体:コントローラー
発売元:ホリ電機
発売:1993年6月16日
価格:7800円
商品番号:HPJ-08


商品外見◆「ストII’」の勢いに乗って出た専用スティック

 PCエンジンは当初アーケードのゲームを忠実に移植できることを売りにしていたマシンで、初期には専用ジョイスティックがNEC-HEとアスキー、電波新聞社などから発売されていた。しかし需要はあまり高くなかったようで、間もなくPCエンジン専用のジョイスティックは市場から姿を消してしまう。ビジュアル重視のCD-ROMソフトがPCエンジンの中心になってきてからはなおさらだ。

 しかし1993年春、当時大人気の格闘ゲーム「ストリートファイターII’」が他機種に先駆けてPCエンジンに移植されると発表され、にわかに市場は活気づく。格闘ゲームはキックとパンチの大中小、そして多様な技を繰り出すために6ボタンが標準となっていたため、NECアベニューから「アベニューパッド6」が発売される。そして非公認ながらPCエンジン用のコントローラーも発売していたホリ電子も6ボタンパッド「ファイティングコマンダーPC」を発売した。
 だが当時の格闘ゲームをやりこむゲーセン小僧たちはパッドなどでは満足できなかった。ゲーセンと同じ大型ボタンにスティックでなきゃプレイはできん!というニーズに応えたのは、NEC系メーカーではなく、非公認メーカーであるホリ電機だった。非公認とはいえ、実に5年ぶりのPCエンジン専用ジョイスティックとして発売されたのが、この「ファイティングスティックPC」だ。これまでにもアーケード感覚の大型ジョイスティックで接続コードを変えることでPCエンジンでも使用可能、というものは存在したのだが、これは完全にPCエンジン専用だったという点で貴重な存在。それだけ当時の「ストII」人気が凄かったということでもある。

 さすがに格闘ゲームマニアを対象にした商品だけあって、構造はかなり頑丈で素材もアーケードのものに近い。過去に出たPCエンジン用スティックの多くはスティック部分も樹脂製で安っぽかったのだが、これはかなり本格的な作り。大きさもアーケードのものに近くデカいので、家庭内で遊ぶ場合は床に置くのではなく机などやや高い場所に設置してプレイするのがセオリーだろう。
 同社の「ファイティングコマンダーPC」同様、6ボタンすべてに独立した連射機能が搭載されており、スロー機能もある。当然2ボタンモードにもでき、PCエンジンの過去のアーケード移植作をこれで遊ぶことも可能だった。
 ただ、ふだんパッドでプレイしていた自分としては、このスティック&ボタンの操作は少々レスポンスが悪く、格闘ゲームの命である技コマンドが出しにくい印象があった。当時のゲーセン小僧さんたちはどう感じたかは分からないのだけど、このファイティングスティックPC自体は中古屋でしばしば見かけたので、「ストII’」発売と同時に購入した人はかなり多かったんじゃないかという印象がある。対戦プレイなら絶対2台いるしね(笑)。

 ただPCエンジン版「ストII’」の発売直後に、よりキャラが増えた「スーパーストリートファイターII」がスーパーファミコンで発売されたこともあり(しかもこのタイトルはPCエンジンでは出なかった)、PCエンジンにおけるストII需要は短期間で去った。このあと「アーケードカード」が投入されネオ・ジオの格闘ゲームの移植も行われるのだが、PCエンジン専用スティックを出すほどの勢いはなかった。ホリ電子もこのあとはスーパーファミコン、メガドライブ、PCエンジンと3機種で利用可能な「ファイティングスティックマルチ」を出すにとどめている。


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