GT用パワーパック

ジャンル:ハードウェア
媒体:周辺機器
発売元:樫木総業
発売:1991年9月28日
価格:6900円
商品番号:PK-001


商品外見◆「GT」専用の充電式バッテリー

 他の「GT」関連の項目でさんざん書いているが、携帯型PCエンジンである「GT」は、思いつきはともかくとして、その異常な高価さ(それなりの理由はあったのだが)ゆえにまるきり普及しなかった。高価さ以外でも単3電池6本で3時間程度しかもたないなど携帯して遊ぶには大問題のネックがあり、室内のコンセントに直接つなぐACアダプタとか車のシガレットライターを利用するとかいったオプションも発売されたが、いずれも充電方式ではなく、電源に接続したまま遊ぶ携帯ゲーム機という珍妙な事態を招くだけだった。

 そんなわけでどの程度売れたのかもよくわからない「GT」であるが、電源問題を多少改善できますよ、とひょっこり発売されたのがこのGT専用充電式バッテリー。発売元は電源やコネクタ類など、さまざまな電子機器を製造・販売していた「樫木総業」という会社だ。どうしてここがそんなものを発売する気になったのか不明なのだが、91年秋ごろというとGTの市場は早くも事実上の消滅の憂き目を見ていたと思われ(NEC-HEはこの年末にさらなる携帯マシン「LT」を発売している)、NEC-HE自身がいまさらGT用の周辺機器発売する気はなかったんじゃないかと。それでもPCエンジン自体の勢いはあったし(SCD方面だけど)、少ないながらもGTユーザーから充電装置を求める声があり、そこに需要ありとみた隙間埋め的機器メーカーが目をつけた…というところなのかな?

 この商品、僕は長らく拝んだことがなかった。そもそも情報自体が少なく、93年年末のPCエンジンソフト&ハードカタログ「SUPER PCengineFAN」(徳間インターメディア刊)の電源部門に小さく載っていること、91年当時の「(勝)PCエンジン」誌にこれまた小さく記事が載っていること、ぐらいしか確認してない。広告だって全く打たれてないんじゃないかと。おそらくゲーム屋の店頭に並ぶようなこともなく(秋葉原の濃い店とかは別かも)、通販で売られていたのではなかろうか。

 …と思っていたら、2007年秋になってひょっこりと秋葉原の中古屋で現物に遭遇、入手することができたのだ!
 パッケージはNEC−HEのGT関連商品と同様に赤と黒。一見しただけではNEC−HE純正品に見え、サードパーティー商品とは思えない。中身のパワーパック本体は一見ゲーム機のACアダプタを思わせる黒いカタマリで、GTの電源端子に接続するDCプラグが伸びている。面白いのが背面に「ベルト固定用つめ」がついていること。GTはお外で遊ぶものであるから、その電源も「携帯可能」なものにしようとしてのアイデアらしく、これを腰のベルトにぶらさげられるようになっているのだ。

 さて、肝心の充電はどうやってやるのか。これがまたユニーク…というか価格面の問題をクリアするためだったのだろう、この商品自体には充電用の機器はなんと同梱されていない。説明書によると「PCエンジン」「PCエンジンシャトル」「PCエンジンコアグラフィックス」のACアダプタを使用し、それで家庭用コンセントとパワーパックのDCソケットを接続して充電してください、とのことである。これ以外のPCエンジンシリーズ、「スパグラ」「GT」「CD−ROM2システム」「GT」のACアダプタは使用不可となっている。つまりGTだけ所有している人が買っても充電できないわけで、最初から初期PCエンジン本体を所有していることが前提となっていたのだ。

 充電にかかる時間は約8時間と説明書にある。それでどのくらい遊べるのかについては明記がないが、おおむね4時間程度だったとの話が当時の雑誌記事に載っている。「単3電池6本で3時間」に比べればかなりマシとはいえる。説明書によると「500回」程度の繰り返し使用が可能とのことで、次第に充電池の利用時間が減ってゆくとの注意書きがある。
 これを腰のベルトにぶらさげて、歩きながら、あるいは電車の中でGTを遊んでいる…なんて光景が当時どれほど見ることができたのかなぁ…などと、現在あっちこっちでDSやPSPを遊んでる人々の様子に見慣れた今日では感慨にふける商品といえよう。


迷い込んだ方はこちらから