PCーKD863G

ジャンル:ハードウェア
媒体:本体
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1988年9月27日
価格:138000円


当時の広告写真より◆PCエンジンを組み込んだパソコン用モニター

 PCエンジンは基本的にはゲーム機でありながら、これを中核としてさまざまな周辺機器を接続、家庭用コンピュータとして多様な用途に使ってもらおうという「コア構想」を掲げていた。またこれと並行する形でPCエンジンの機能(HuCARDのみ)そのものを組み込んだ機器の発売も構想され、こちらは「HEシステム機」と総称された。HEシステム機はNEC-HEのライセンスを受ければ他のメーカーでも発売できることになっており、実際にPCエンジン立ち上げとほぼ同時にシャープからPCエンジン機能を内蔵したパソコン「X1Twin」が発売されている。

 この「PC−KD863G」は、他メーカーではなくNEC-HE自身が発売した唯一の「HEシステム機」で、PCエンジンハード群の中できわだった珍品。PCエンジンの本体機能を、パソコンのモニター内に同居させちゃったという商品だ。構造は写真を見れば分かるように、モニターの下部にHuCARDスロットとパッド端子がついている。モニター両脇にはスピーカーもついているから、TVもいらず、これ単体でPCエンジンを遊ぶことができるわけだ。デッカい「LT」「GT」みたいなもんだと思えばいいかもしれない(笑)。

 重要なのはこれがPCエンジン唯一のRGB出力可能なハードであったという事実。先行していた「X1Twin」が単にパソコンに同居しているというだけでビデオ出力しか持っていなかったのに対し、「PC−KD863G」はRGBモニターに直接信号を出力することができ、非常に鮮明なゲーム映像を提供することが可能になっていた。そもそもPCエンジン本体の拡張端子にはひそかにRGB信号を出すものもあってこれに対応したRGBモニターが電波新聞社から発売される計画もあったという。しかしそちらはポシャって、この「PC−KD863G」のみが利用の実例となってしまったということのようである。

 138000円というお値段はPCエンジン全ハード中の最高額。当時はパソコンモニター自体も結構なお値段がした時代でもあり、先述のようにコンセプトは似ていなくもない「LT」が10万円弱したことも考えれば、そう不当な価格ではないと思える。パソコン持ってる人は「ついでに使える」ってお得感もあったろうし。映像が鮮明であるため、当時のゲーム雑誌編集部ではゲーム画面撮影用として重宝されていたとの話もある。
 しかしコア構想を実現する拡張バスは削除されているため、CD-ROM2システムとの接続は不可能。このためCD-ROM主流となった後期以降はほぼ無用の長物と化したと思われる。

 さすがに入手はおろか実物を見たことすらもない商品で…所有してる人も完全に使用しないで保存してるのであればともかく、発売から20年も経った今となってはモニターの寿命がとっくに尽きてるものが大半だと思われる。


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