メモリーベース128
ジャンル:ハードウェア
媒体:記録装置
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1993年3月
価格:5980円
商品番号:PI-AD19
◆シミュレーションゲームを意識した大容量記録装置
PCエンジンはファミコンやスーパーファミコンのようにゲームソフトのカセット内にデータ記録用のバックアップRAMを搭載するという方法ではなく、本体に接続する外部機器にバックアップ機能を持たせるという方法をとった。最初からCD-ROMソフトの供給を念頭に置いていたためと思われるが、ファミコンに慣れたユーザーにはいまひとつとっつきにくかったのは事実(その後はこっちのほうが当たり前になるんだけどね)。また2kバイトという決して大きくはないバックアップメモリの中に多くのゲームのセーブデータファイルを一括管理するというパソコンライクな仕組みになっていたため(しかもファイル名は半角カナかアルファベット)、多くのゲームを同時並行でやってるとセーブ領域が足りないから不要なデータを消さなきゃいけないとか面倒なことも多かった。
とくに大量のセーブ領域を必要とするのがシミュレーションゲームだ。これは本数自体が少ないのだが、CD-ROMで発売されていた「三国志」(ナグザットのやつ)だの「太平記」「戦国関東三国志」(いずれもインテック)だのといった歴史シミュレーションゲームは大きくデータを食い、セーブファイルが一つしか作れなかったり、これらのゲームを遊んでいるうちはほかのセーブ必須ゲームのプレイはあきらめねばならないといった問題があった。これを多少解消するのが「天の声バンク」だったのだが、歴史シミュレーションゲームの大御所である光栄(現コーエー)のゲームなどはセーブ領域の少なさからPCエンジンへの移植そのものが不可能な情勢だった。
1993年は「DUO」でPCエンジンの「SUPER CD-ROM2」特化路線をそこそこ成功させていたNEC-HEがいろいろと勝負に出た年だ。3月に「DUO」の廉価版である「DUO-R」を発売、ほぼ同時に当時の大人気作「ストリートファイターII’」(’93)の移植を発表、それと並行して進行したのが光栄とアートディンクというパソコンSLGの2大メーカーのPCエンジン参入で、それぞれ「信長の野望・武将風雲録」(’93)、「A列車で行こうIII」(’93)という看板タイトルをPCエンジンSCDで投入する。これらのタイトルの移植を可能にするため、一挙128Kバイトものデータセーブが可能な外部記録装置が開発された。それがこの「メモリーベース128(いちにっぱ)」および光栄自前の「セーブくん」である。
名前も形状も異なるが、両者は性能も使い方も全く同等である。ソフト側もこの両者を全く区別せず認識するようになっていて、光栄のソフトなどは「メモリーベース128」であろうと絶対に「セーブくん」としか呼ばない(笑)。
「DUO」発売以降のPCエンジン本体は「コア構想」を可能にする本体後部の接続バスを削除しており、「バックアップブースター」「天の声2」のような本体にガッチリ合体する周辺機器が使えない。そこで「メモリベース128」および「セーブくん」は、本体とパッドの間に割り込ませて接続するという奇妙な使用法をとることになった。このためそもそもパッド端子がない「PCエンジンGT」と、パッド端子はあるものの本体そのものにもコントローラーがついている「PCエンジンLT」ではこれら大容量装置は利用できない。
大容量メモリ必須のゲームを起動するとき「メモリーベース128」もしくは「セーブくん」を接続しないで起動すると、「セーブができません」という警告画面が出るようになっている(プレイそのものはできる)。接続していればスンナリと起動してくれるのだが、PCエンジンのパッド端子は接触不良を起こしやすく、接続してるのにそれを認識してくれない、というケースも我が家の場合は多かった。
大容量とはいってももちろん限界はあり、それも割と低め。光栄やアートディンクのゲーム1つにつき3〜4個ぐらいのデータが保存でき、やりくりすればそうしたゲームを2〜3本同時並行でプレイすることができるぐらい。
データの保存用の電源は単4電池を4本内蔵して確保する。電池の残りが少なくなってくると「LOW BATT」のランプがつくようになっていて、早く電池を取り換えればデータを継続して保存できる。どのくらいもつのかはハッキリとしたことは言えないが、数か月は余裕であったと思う。
しかしこの大容量外部記憶装置は作られた経緯から、ソフト側がはじめからこれに対応して作られていないと利用することができない。このため実質光栄とアートディンクのソフト専用の記憶装置となっていた。だがこの大容量メモリをシミュレーションゲーム専用で使うのももったいないと思ったようで、NEC-HEから出た「エメラルドドラゴン」(’94)「リンダキューブ」(’95)といったソフトには「DUO」などのバックアップメモリの内容を「メモリーベース128」とコピー・交換できるユーティリティー機能がついているものがある。
ところで我が家では光栄・アートディンクのゲームは大人気で複数並行で遊ばれていたもので、メモリーベース128も2個所有していた。全く同じ商品のはずだったが、よく見ると片方には「LOW BATT」ランプの上方に「A・3」という文字が書かれている。事情は分からないのだが、メモリーベース128にも発売時期によりこの「A・3」の有るもの無いものの二種類があるらしいのだ。
で、「A・3」の意味は全く謎。まさか「A列車で行こうIII」のことではないと思うのだが…
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