マルチタップ

ジャンル:ハードウェア
媒体:マルチタップ
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1987年10月30日
価格:2480円
商品番号:PI-PD003


商品外見◆最大5人同時プレイが可能に!

 PCエンジンが設計段階から「新しい遊び方」として考慮していたのが「多人数プレイ」だ。ファミコンなど先行するゲーム機でも人間同士が対戦することは可能になっていたが、それらはあくまで一対一。それより多くの人間でワイワイと騒ぎながら遊べるパーティーゲームがあってもいいのではないか?との発想が、PCエンジン根幹の設計にあたったハドソンには早くからあったらしい。
 思いつきはいいのだが、それを実現するにはハード側であらかじめそのように設計しておかねばならないらしい。だからPCエンジンでは実際に多人数で遊べるソフトがまだ構想・開発中の段階からそれを可能とする設計にして発売された。ファミコンのように最初から本体にコントローラーが2つついているという形ではなく、本体にはパッド用端子を一つだけ用意してパッドの着脱を可能にし、多人数で遊ぶため複数のパッドをつなげる「マルチタップ」を同時別売する、という方法がとられた。

 大は小を兼ねるというやつで、できるだけ多くのパッドをつなげるようにしておくのがよかろうと、PCエンジンのマルチタップは最初から5つ接続可能なタイプが発売された。1987年の本体との同時発売以来、このマルチタップは末期までまったくデザインが変更されない息の長い周辺機器となる。
 だが実際に5人が同時に遊ぶようなゲームはなかなか発売されなかった。数多くあった人間同士の対戦、あるいは2人協力型のゲームであればパッド端子2つのマルチタップで十分で、端子5つの純正マルチタップはもてあまし感があった。実際そうしたニーズに応えてハドソンから端子3つの「JOYTAP3」、電波新聞社から端子2つの「X−HE2」、ビッグ・クラブ(日本ソフト販売)から端子4つの「バトルタップ」、かなり後になるがシュールド・ウェーブから端子2つの「ツインタップ」といった商品が発売されている。

 5人同時プレイのマルチタップが威力を発揮するゲームソフトは実際なかなか発売されていない。最初のものがハドソンから出た「遊々人生」(’88)だが、これはもともと多人数ボードゲームの定番である「人生ゲーム」をそのままTVゲーム化したもので、1つのパッドで交代交代でやれば遊べたためマルチタップの必然性はほとんどなかった。同じ年のナムコの「プロテニスワールドコート」(’88)は4人のダブルス対戦を実現してようやくマルチタップの有用性が示される。そして翌年発売の「ダンジョンエクスプローラー」(’89)は最大5人同時プレイ可能のアクションRPGという、ようやく5人用マルチタップならではの魅力をもつソフトとなった。
 その後、ハドソンからファミコンからの移植である「スーパー桃太郎電鉄」(’89)および「ボンバーマン」(’90)が出るに至って、ようやく多人数プレイゲームの華が咲く。この2つは多人数パーティーゲームの定番となって以後ハドソンの看板として他機種展開されて21世紀の今日にまで至ることになるのだが、それを最初に可能にしたのがハドソン自身が生みの親となったPCエンジンだったのだ。「マルチタップ」は1987年の発売からブレイクまで、実に3年以上もかかったという「鳴くまで待とう」型の周辺機器だったのである。


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