PCエンジンマウス

ジャンル:ハードウェア
媒体:コントローラー
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1992年11月27日
価格:4980円
商品番号:PI-PD10


商品外見◆後期ソフトで威力を発揮した専用マウス

 「マウス」という今日ではすっかりおなじみになった入力装置、調べてみたら発祥は意外に古く1961年のことだったそうで。もちろん当時はまだ「パーソナル」なコンピュータではなかったし、ボール方式でもなかったのだそうだが、1967年には早くも「マウス」の名前とともに特許申請されている。その後マウスという存在が一般にも広く知られるようになったのは1980年代末以降のアップルのパソコン「マッキントッシュ」、そのあとを追ったマイクロソフトのOS「Windows」等の普及まで待たなくてはならない。
 家庭用ゲーム機で最初にマウスを導入したのは任天堂のスーパーファミコンで、1992年4月に「マリオペイント」などに同梱で発売されている。PCエンジンも同じ年の年末に専用マウスを発売、メガドライブも翌1993年4月に専用マウスを発売した。

 「PCエンジンマウス」は、発売元のNEC-HEがパソコン関連メーカーだけに、実にパソコンマウス風味なデザインとなっている。スーパーファミコンやメガドライブのマウスがいかにも玩具風味のデザインになっていたのに対し、PCエンジンマウスは白とグレーのいかにも事務用機器なカラーにシンプルな設計だ。PCエンジンのパッド接続部分がもともとパソコンっぽいだけに、パソコンのジャンク品売り場に間違えて置いてありそうな外見である。

 左右二つの大きなボタンがついているのはパソコンのものと同じ。対応ソフトによって使用法は多少異なるが、おおむね左ボタンはパッドの「I」、右ボタンは「II」に対応するようになっている。左側面に「RUN」「SELECT」ボタンがついており、これも使用法はパッドと同じで、同時に押せば(さすがに転がしながらの操作は難しいが)リセットがかかる。

マウス対応ロゴ 当たり前だがPCエンジンのすべてのソフトでマウスが使えるわけではない。最初からマウスに対応したソフトのみで使用可能で、対応ソフトには説明書(つまりパッケージ表に同じ)に左図のようななかなか可愛いマークが表示されていた。調べた限りではHuCARDでマウスに対応したソフトは無いらしく、すべてSCDソフト。マウス対応第1弾ソフトはマウス発売日の翌日に発売されたパズルアクション「レミングス」(’92)だった。これはそれほど注目ソフトだったわけでもなく、本命は翌年から出始めるパソコンから移植のシミュレーションゲームへの対応だったかと思われる。
 ただしマウス操作で威力を発揮してくれそうな光栄の歴史SLG群が1993年にドドッと発売されたものの、いずれもマウス非対応なのが残念。同じジャンルでは「1552天下大乱」(’93)が、PCエンジンオリジナルで開発されながら練りに練った操作系はマウスにもバッチリ対応、むしろマウス操作を前提にしているフシすらあるソフトだった。
 シミュレーションゲームでマウス操作による絶大な効果を発揮したのは、なんといってもアートディンクの「A列車で行こうIII」(’93)「THE ATLAS」(’94)「栄冠は君に 高校野球全国大会」(’94)の3本だろう。もともとマウス操作を前提にしたパソコンゲームだけに、PCエンジンでもマウス操作を行えばすこぶる快適にプレイできる。やはりパソコンでマウス操作が標準とされていたアクションRPG「ブランディッシュ」(’94)もマウスで遊ぶのが基本だろう。
 またPCエンジンDUO−R・RXおよびマウスの売り上げを一時大きく伸ばしたと噂されているのが、「ときめきメモリアル」(’94)。94年5月に発売されたこの恋愛シミュレーションゲームの古典的名作は直後からじわじわと口コミで評判が高まり、SLGということでマウスも購入しておく人が多かったらしい。

 なお、PCエンジンの後継機であるPC−FXでも専用マウスが発売されている。形状はPCエンジンマウスよりもパソコンライクな白一色のデザインで、RUN・SELECTボタンも削除されている。RUNは左右ボタンを同時に押すという妙な仕組みになっていて、入力がけっこう難しかった。
 またFX発売開始から1年半後の95年3月というえらく遅い時期で、「ルナティックドーンFX」や「デアラングリッサーFX」といった傑作SLGが対応してなかったのが痛い。それでも「アニメフリークFX」後期シリーズではマウスを使ったWindowsライクな操作性を実現しており、これは一度は体験してもらいたいものである。


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