PCエンジンパッド

ジャンル:ハードウェア
媒体:コントローラー
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1987年10月30日
価格:2480円
商品番号:PI-PD001


商品外見◆当初の標準コントローラー

 これは1987年10月に発売された初代PCエンジン、いわゆる「白PC」にセットでついていたジョイパッド。つまりPCエンジンにおけるスタンダードのコントローラーとして位置づけられていたものだ。PCエンジンの当初からの売りであったマルチタップを使った多人数プレイに対応するため、単体での別売もなされている。

 任天堂のファミコンが大成功した要因の一つが、同社が「ゲーム&ウォッチ」でつちかった十字キーと2ボタンによる簡易な操作系をそのまま持ち込んだコントローラーにあった。ファミコンに学び、それを凌駕するべく発展させて作ったハードとも言えるPCエンジンもこのコントローラーをほぼそのまま踏襲しており、十字キーと2ボタン(ファミコンが「A・B」だったのに対し「I・II」となっている)の基本構成。ファミコンにあった「START」「SELECT」ボタンもその配置はそのままに「RUN」「SELECT」ボタンとして取り込んでいる。パッド自体のデザインもファミコンのものと同様に平板なつくりで、その後のゲーム機の多くが採用する手にフィットする立体的な構造などは一切ない。

 ファミコンと異なるのは十字キーが円形の構造の上に十字が載る形になっていること。ファミコンの十字キーは枠自体が十字型になっており、指を痛めやすい、斜め入力がやりにくいといった欠点があり、それを改良した形であると思われる。もっとも基本構造はまったく変わっておらず、NEC-HE純正以外のPCエンジンコントローラーの中にはファミコン同様の十字キー仕様になっているものもある。

 PCエンジン特有の仕様として、RUNボタンとSELECTボタンを同時に押すとリセットがかかるようになっている。ファミコンやスーパーファミコン、メガドライブなど他機種では本体にリセットボタンが配置されていたが、PCエンジンはあくまで本体にはリセットボタンをつけず、コントローラーからリセット操作がかかる仕組みをとった。これがなぜなのかはハードの専門的なことがわからないと書けないのだが、PCエンジンを中核に周辺機器を展開するという「コア構想」に対応するため、と書かれているのを何かで見たことがある。このRUN・SELECT同時押しリセットの仕様は後継機PC−FXにも引き継がれた。
 なおRUNとSELECTは本来ゲーム開始時やメニュー選択・呼び出しなどに使われることを想定しているが、後期の3ボタン以上必須の格闘アクションゲームなどではRUNやSELECTを打撃用ボタンに割り当てられるようになっているものもあった。

 ファミコンは最初から本体に直接コントローラーが2つついていて、その着脱には改造(そう難しくはなかったが)が必要だったが、PCエンジンは本体にはパッド用端子を一つだけ用意し、最初に買った状態では一人プレイしかできない構造になっている。その代わり着脱は容易で、マルチタップを使った最大5人の多人数プレイを可能としている。この多人数プレイが威力を発揮するのはかなり後まで待たなくてはならないのだが、PCエンジンが切り開き、その後のゲーム機に踏襲されていった重要なものの一つだ。

 そしてコントローラーじたいも複数のバリエーションが用意されていた。本体の発売開始と同時に連射機能つきの「ターボパッド」も別売りで販売されている。形状もカラーもこの「PCエンジンパッド」とまったく同じだが、I・IIボタンの上方に3段階切り替え可能の連射スイッチが配置されていた。連射機能付きコントローラーはすでにファミコンでハドソンやホリ電子から発売されていたが、「16連射」の高橋名人を擁するハドソンが生みの親であるPCエンジンは当然の如く純正品で連射機能つきコントローラーを出したわけだ。
 本来はワンランク上の別売コントローラーという位置づけだった「ターボパッド」だが、価格は2680円で「PCエンジンパッド」とはたった200円しか違わない。これがPCエンジンパッドの割高感を招き、追加コントローラーを買う人は大半が「ターボパッド」を買ってしまう事態になった。このため早い段階でPCエンジンの標準パッドはターボパッドに移行し、89年末発売の「PCエンジンシャトル」「PCエンジンコアグラフィックス」以降はターボパッドが標準装備となっていく。おかげで中古屋でも連射機能なしの初代パッドはかえって貴重な存在となってしまっている。


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