バーチャルクッション

ジャンル:ハードウェア
媒体:周辺機器
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1992年12月18日
価格:14800円
商品番号:PI-AD20


商品外見◆家庭用ゲーム機で体感!?
 
 「体感ゲーム」というとゲームセンターの大型筐体の専売特許といっていいジャンルで、さすがに家庭用にそれを持ち込んだ例はほとんどない。だいいち揺れる実物大の車やバイク、あるいは飛行機を一般家庭の室内に置くわけにもいくまい。そんななか唯一簡単に持ち込める要素が「振動」で、それをなんとか家庭用ゲーム機で再現させようと発売された最初のものがこの「バーチャルクッション」である。

 「振動」を取り入れたゲームの歴史を調べてみると、ゲームセンター筐体では1987年の「ダライアス」(タイトー)で重低音によりシートが振動する仕掛けになっていたのが最初らしい。家庭用ゲーム機で本格的に「振動機能」を導入したのはそれから10年を経た1997年に「Nintendo64」ソフト「スターフォックス64」(任天堂)用の「振動パック」が最初とされる。同年には「プレイステーション」の振動コントローラー「デュアルショック」も発売され、コントローラーに振動機能がつくのは当たり前となっていく。

 しかし、実は家庭用ゲーム機に「振動」を取り込む試みは、1992年末に発売された、このPCエンジン周辺機器「バーチャルクッション」が最初なのだ。もっとも発売元こそPCエンジン主催者のNEC-HEだがPCエンジンに特化した機器というわけでもなく、単にゲーム中に発生する重低音を増幅して振動を与えるというだけの装置なので厳密な意味で「家庭用ゲーム機の振動機能」とは呼びにくいところではあるが…。

 この「バーチャルクッション」、内部に重低音により振動するサブウーファーを内蔵したエアクッションと、それを覆うカバー、そして外部にあるアンプの3部分からなっている。PCエンジンのAVコードのうち音声(白・赤)の二本をアンプに接続し、アンプから伸びている電源コードをコンセントに挿し、バーチャルクッション本体は椅子の背もたれなどに置いて使用する。
 PCエンジン本体はTVの手前に置き、当時はTVの背面におかれることが多かったAV入力端子にAVケーブルを接続する普通だろうから、自分の背中に位置することになるバーチャルクッションのアンプにAVケーブルの音声だけをつなぐというのは実際にやってみるとかなり面倒で、配線もややこしい。またわざわざ椅子に座ってゲームをやる、という人もあまりいなかったんじゃなかろうか。
 
 で、実際の使用感はとなると…僕自身はこの一品はかなり後になって中古屋で裸状態で売られているのを見つけて入手したのだが、エアクッションの空気がかなり減っている(空気を追加できるのかはわからない)ので劇的な効果は望みにくかった。それでも実際に使ってみると重低音が響いてくるのは事実で(そもそもサブウーファーってのはそういう機器だし)、爆発など重低音がある効果音ではズズズ…という響きはそこそこ体感できる。ただBGMのリズムもズンズンと響いてくるので、「バーチャル」と言うにはかなり「雑音」が入る感覚でもあった。
 単にアンプにAVケーブルをつなげばいいだけなので、PCエンジン以外のゲーム機、ビデオデッキやオーディオ機器などAV出力ができるものであればなんだって使用可能だ。意外なところで映画鑑賞にも効き目があったかもしれない。

 NEC-HEはこの「バーチャルクッション」を売り込むべく、自社ブランドから「バーチャルクッション対応ソフト」も発売している。それが翌年正月に出たシューティング「メタモジュピター」(’93)だ。対応と冠したからには重低音が多少響く作りになっていたのだとは思われるが、僕が実際にバーチャルクッションつきでプレイしてみた限りではそう劇的でもなかった。このソフト自体とくにどうという特徴のないフツーの横シューティングだったし…空気がパンパンに入っていればもう少し効果があったのかもしれないけど。

 そんなわけでほとんど売れなかったんじゃないかと思えるこの周辺機器。実は同時期に松下電子部品から「サウンドクッション」なるソックリな商品が発売されている。価格も200円高いだけでロゴ以外はほぼ同じ。これは決してパクリ商品などではなく、もともと「バーチャルクッション」自体が松下電子部品で基本部品を作成していたようなのだ(「ファミコン通信」1992年12月18日号記事より)
 

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