ヴォルフィード
ジャンル:パズル
媒体:HUCARD(3M)
発売元:タイトー
発売日:1989年12月27日
価格:6600円
商品番号:TP01005


◆アーケードから移植の陣取りパズルゲーム

外見 本作「ヴォルフィード」は1989年にタイトーがアーケードでリリースした同名タイトルを即座にPCエンジンに移植したもの。一言で言ってしまえば「陣取りゲーム」で、先行するゲームとして「QIX(クイックス)」というのがあり、このヴォルフィードはそのリメイクと言われている。のちにプレイステーションの「THEシンプル」シリーズの一本として「THE陣取り〜ヴォルフィード」というちょっと情けないタイトルで発売されてもいる。

 タイトルとそのロゴ、宇宙からの侵略者とそれに立ち向かう戦闘機が映る短いオープニングビジュアルを見ると、ほとんどSFシューティングにしか見えないのだが、実態は純然たる「陣取りゲーム」である。画面内をウヨウヨ動き邪魔してくる敵を避けつつ、自機を操って直角、直角に面を切り取って行き(切り取られた部分は次の面の絵に変わっていく) 、最終的に画面全体の80%以上を切り取れば敵が撃破されて面クリア、というシンプルといえばシンプルなゲームである。なお、PCエンジン版はアーケード版よりもやや難度を下げており、クリア条件は画面全体の75%、原作では縦長だった画面も家庭用TV向けに横長に変更され、自機も大きさをかなり小さくされ(このためやや見づらく、向きが判然としない)、敵キャラや面の絵も原作とはかなり変えられている。それにともない面数が大幅に増やされるなど、家庭用らしいパワーアップの部分もある。「移植」とはいってもこれならPCエンジン版オリジナルの「ヴォルフィード」だととらえたほうがいいだろう。


◆シンプルゆえに熱中、パズルゲーの基本

 ルールの説明をほとんど読むまでもない、起動してすぐにルールが飲み込め、ただちに熱中度を高めてしまうという、TVゲームの見本のようなゲームだ。とにかく敵を避けつつ面を切り取っていけばいいだけ。最初の1面なんか初心者でもほとんど悩むこともなく突破できてしまうだろう。だが2、3面あたりから早速凶悪な難度になってきてなかなかクリアできず、デフォルトで3機までの自機をあっという間に失ってゲームオーバーになり、繰り返しアタックするハメになるはず。簡単に勝てそうでなかなか勝てないもどかしさが中毒的熱中を呼んでしまう。

ゲーム画面(4面) 勝てそうで勝てない最大の原因はやはり敵キャラのいやらしい動きにある。各面にはやや大きいボスキャラ一機とちっちゃい数機のザコキャラが常にフラフラと微妙な動きをしていて(しかもボスは大きくなったり小さくなったりする)、面を切り取る最中に自機そのものや自機の軌跡に彼らが触れるとそれだけで自機が爆発してしまう(ボスが発射する各種武器に自機が触れてもアウト)。彼らの動きをよーく見て、スキをついて画面切り取り作業にかかるわけだが、これがなかなか大変。やはりボスとザコの計三機の動きを同時に読むというのは難しい。それと敵はまだ切り取られていない面の中を壁に反射する形で動いているので、終盤になってくると敵キャラが狭い領域内をせわしなく動くことになり、スキも小さくなってきてしまうのだ。

 切り取り作業をしていない状態なら敵の攻撃を受けないので安全策として小さい面積を少しずつ切り取っていくという作戦をとることになるが…
 もちろんそこは甘くない。時間制限が設けられていて、のんびりやっていると、自機の通路である切り取り線に沿って導火線よろしく追いかけてくるオジャマ敵(スパーク)までが登場するのだ。結局急がなけりゃならないわけで、この辺のバランスは実によくできてると思う。

 単に時間に追われて切り取り作業してるだけじゃ面白くなかろうと、いろいろとサービスアイテムも用意されている。画面内にある白い物体(アイテムブロック)の周囲を切り取ると、さまざまなアイテムが手に入るようになっている。点数が加算されたり、自機のスピードがアップしたり、ザコ敵を攻撃できる「レーザー」が手に入ったりする。たまにしか無いようだが「C」と書かれたアイテムを取るとザコ敵が一挙消滅するとか、☆印のついたボス敵をも倒せる「スペシャルレーザー」という嬉しいものもある。ボスを撃破してしまえば当然面クリアだ。
 中でも最大のサービスアイテムは「T」と書かれたタイムストップアイテムだろう。その名のとおり、このアイテムを取ると時間が停止し、敵が一定時間ぴたりと動きを止めてくれる。その間にがっぽり切り取ってしまえるし、敵を囲む形で面を切り取って敵を撃破してしまうことも可能だ。
 こうしたお得なアイテムが隠されている白い物体はたいてい赤いランプが灯されていて現れたり消えたりを繰り返している。容易にとれないものにいいものが隠されている、というわけで、陣取りの仕方にも戦略性が要求されるようになるわけだ。


◆めざせ、占領率99%!

 面クリア条件は画面内の75%を切り取ることだが、高得点を狙うには可能な限り高いパーセンテージを占領する必要がある。一定の点数を取れば自機がふえていく仕掛けになっているので比較的楽な序盤でもできるかぎり広い面積を占めるべく努力する必要がある。当然面の切り取り方にも工夫が必要で、チビチビと切り取っていては75%をちょっと越えただけで終わってしまう。高得点を狙うなら終わり間際に一気に広い面積を切り取ってしまえばいい…というわけなんだけど、これが終盤だけにそう簡単にはいかないのもまた事実。それだけに占領率90%以上を達成した時の爽快感は最高だ。
 基本戦略としてはザコ敵をなるべく早めに片づけ、自由度を高くしてジリジリと切り取ってゆき、最後にスキをついて(タイムストップがあると最強)一挙に広い面積を囲んでしまう、という作戦をとることになるだろう。敵はだいたい切り取り線を反射するように動いていくから、うまくこれを誘導してスキが大きくなるように切り取っていくというのも手。画面の四隅から攻めてみるとか、真ん中に壁を作って面全体を二つの部分に仕切って片方に敵を誘導してしまうとか、いろいろと作戦が考えられるはず。

 PCエンジン版はアーケードに比べて難度を下げたぶん面数大幅増な構成になっているので、とうぶんクリアすることなく長く遊べるようになっている。だがパスワードによる途中セーブ機能が欲しかったところではある。
 自社のアーケードゲームを家庭用にうまくアレンジして移植するのはタイトーの得意技であったようで、PCエンジンのHuCARD時代の黄金期にはこうしたタイトーのアーケード移植の名作が多い。しかしタイトーはCD-ROMソフトについてはほんの一部しか手をつけず、SCD時代には完全にPCエンジン世界から撤退してしまった。このあたり、やはりHuCARD時代を支えたナムコと似たところがあるのだが、SCD時代にPCエンジンに触れた僕なんかには、この時期のお手軽なアーケード移植ゲームの数々が実に新鮮だったりする。本作「ヴォルフィード」はとくにPCエンジンならではの売りといったものはないのだが、気軽に始められ、かつ熱中度の高いお手本的パズルゲームとして長く楽しめる「ひまつぶしゲーム」には最適な一本だ。

(追記)本作は2008年11月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.1
2.9
3.2
3.5
3.9
3.8
20.43
第405位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

山崎拓



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