F1サーカス’92The Speed of Sound   
ジャンル:レーシング
媒体:HuCARD(4M)/バックアップメモリ対応
発売元:日本物産
発売:1992年12月18日
価格:6800円
商品番号:NB92007


外見大ヒット超高速F1ゲームの最終作!

 シリーズ累計ではPCエンジン中もっとも売れたと言われる「F1サーカス」シリーズ。そのPCエンジンにおける最終作となったのがこの「92」だ。
 発売された1992年年末というと、すでにPCエンジンはSCD主流になっており、ニチブツもHuCARDの「F1サーカス」はもともと本作で打ち止めにするつもりだったのではないかと思われる。実際ニチブツはこの半年前にSCD版「F1サーカススペシャル」を出しており、以後SCDでソフトを出していくようになる。しかしPCエンジンSCDでニチブツは珍作「伊賀忍伝凱王」(’93)を出した後はアダルト路線を突っ走るようになってしまい、「F1サーカス」はSFCでの展開に絞られることになってしまった。SFC版「スーパーF1サーカス」シリーズはコンセプトこそPCエンジン版を引き継いでいるものの、SFCの回転機能を生かして実際のコースの急カーブを再現したりしたのがかえって仇となり、PCエンジン版の「超高速」の魅力を大いに損なってしまっている。

 さてPCエンジン版に話を戻す。シリーズも4作目ということで、特にSFC版などとの比較を意識したのか、画面の描き込みはシリーズでも最高レベルになっている。特に立体感の表現は秀逸で、それまでのシリーズ作品が見下ろし画面ということもあって平板な印象をどうしてもぬぐえなかった見た目の欠点を克服している。あとあくまで印象かもしれないが、車のサイズがやや大きくなり、迫力が増したように見える。
 また画面内に表示される情報も多くなり、トップ6位の順位が常に画面内に表示されるなど、この面でも見た目がかなりパワーアップしている。さらに音響効果もグッとリアルになり、うなるエンジンの効果音だけでなく観客の歓声までが再現されるようになった。レース画面以外でも合間の各種イベントで表示される画像はHuCARDとは思えないほど綺麗な実写取り込み画像でいっそうリアルな雰囲気に浸れる。

 こうした各種のデコレーションは、この「’92」に先立って発売された「F1サーカススペシャル」で取り入れられていたもので、それをそのままHuCARDに落としこんでみせたようにも見える。「スペシャル」から導入された「予選は5周で二日間開催」「チームのパートナーを選べる」「前後ウィング・キャスパーのセッティング可能」「面倒な人のための簡易セッティング」といった新要素もすべて「’92」に引き継がれている。依然としてCD-ROMシステムには乗り換えられない「F1サーカス」ファンのためにSCD版の雰囲気をそのままHuCARDで味わってもらおう…という企画だったのかもしれない。
 

最終作というか末期作というか

 しかし…どうもプレイしてみた印象では、やはりHuCARDの性能では処理速度においてあちこちで無理が生じているのではないかと思える。一台で走ってるときは確かにシリーズならではの超高速の疾走感があるのだが、複数台がゴチャゴチャと走り始めると、何やら「重い」と感じてしまうのだ。背景の物体がやや大きくなっているせいもあるのかもしれないが、走っていて前作よりも「遅い」と感じられてしまう。まぁ前作までが「早すぎた」との見方も出来るが…。

レース画面 そうした処理速度の問題と絡んでいるのかもしれないが、これまでのシリーズを遊んだ人にはかえってストレスを感じさせる変更点も目に付く。まずカーブサインの出るタイミングと、急さの度合い(危険度)の表示が微妙に異なるのだ。高速レースゲームだけにこの「微妙」はかなり違いが出る。これまでより若干早くカーブサインが出るので安全ともいえるのだが、慣れるまでは「サインが早すぎる」印象がどうしても否めず、CPUが操作するマシンよりカーブに高スピードで突っ込んで抜く、というテクニックが使いづらくなっている。
 コース設計については「’91」で感じたほどの意地悪度はないのだが、縁石や砂地に上がったりしたときのスピードダウンがきつめのように感じるし、市街地コースの狭苦しさはかなり増加。それでいてライバルマシンの成績がやけに高く、なかなか予選突破ができない。予選を突破しても下位からの上昇はなかなか望めない。その一方でサスペンションやタイヤの耐久度がかなり上がっているような…前作と比較するとピットインを要求される回数がグッと減っているはず。

 他の変更点として、練習時や予選の際にもライバルマシンがコースを走っている。これはオプションでいないように変更もできるのだが、知らないで走っているといきなり邪魔が入って面食らう事にもなる。

 総合すれば傑作シリーズだけに相変わらず良く出来ていると思う部分が多いのだが、ことゲームバランスに関しては悪い面でのマイナーチェンジばかりが目に付く。大ヒット作「F1サーカス」シリーズを買ってくれた白PCあるいはコアグラユーザーのためにと、92年末ではすでに終わった感の強かったHuCARDでSCD版並みの最新版を出した意欲は買うが、それが必ずしもいい方向には働かなかった。といってSCDでシリーズ展開するわけでもなく、PCエンジンにおける「F1サーカス」シリーズは本作で幕を閉じてしまうのである。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.933
4.000
3.766
4.033
4.333
3.833
23.898
第63位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
井東進之介

エドモンド糸井

マリリン沢田

おのせ八郎


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
野田稔

アルツ鈴木

イザベラ永野

ローリング内沢



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