F1サーカス・スペシャルPOLE TO WIN
ジャンル:レーシング
媒体:SuperCD-ROM
発売元:日本物産
発売:1992年6月26日
価格:7900円
商品番号:NBCD2002
◆大ヒット超高速F1ゲームがSCDで!
HuCARDで発売され、その超高速スクロールによる迫力のレースシーンと、セッティングの緻密さ、要求されるテクニックの面白さなどで大ヒットとなった「F1サーカス」シリーズ。90年の第1弾、続いて91年版と続いたシリーズの第3作は、ついにCD-ROMで発売された。ちょうどこの年は超大作RPG「天外魔境II」も発売され、SuperCD-ROMの普及が一気に拡大しており、それにあわせて「F1サーカス」も満を持してSCD版として登場した形だ。
PCエンジンの初代CD-ROM2システムはロード時間やシークタイムの問題やバッファRAMの少なさから、そもそもアクション系ゲーム向きではないとされていた。その点、手軽でロードも一瞬で済むHuCARDのほうが有利で、シューティングやアクションなどアーケードからの移植が多かった。超高速スクロールを売りにする「F1サーカス」もやはりHuCARDならではのソフトだったと思う。
しかしバッファRAMが増量したSCDの登場で、CD-ROMでもある程度のアクション系ゲームが実現できるようになった(それでもロード時間だけは問題として残ったが)。そこで、と「F1サーカス」も「スペシャル」と題してSCD版が開発されることになったわけだが、すでにゲームシステム自体は完成して大ヒットを続けていたシリーズだけに、SCD版はSCDならではの要素をいろいろ入れちゃおうとニチブツ開発スタッフもかなり意欲的に取り組んだ空気がうかがえる。
起動するといきなり肉声のナレーション。やはりSCDなら音と映像だ!というわけなのか。この起動直後のオープニングデモで流れるのはF1チームの名門、「チームロータス」の歴史と現状の紹介である。動く映像とまではさすがにいかないが、美しい写真取り込み画像を多くぶちこんだこのデモはなかなか見もの。詳しいことは分からないが、本作の開発にあたってはチームロータスの協力を得たとの表示が出る。このデモ以外でも多くの実写画像が収録されてゲームのあちこちで拝むことが出来るし、CDということでエンジン音やBGMもいっそうパワーアップしている。
◆パワーアップとマイナーチェンジ
SCDになったといってもそこは「F1サーカス」、基本的にはあまり変化していない。ただHuCARDに比べてマップ素材のための容量に余裕が出来たのは確かで、マシンのサイズも若干大きくなったし、コースとその周辺の描きこみもちょっと大きく、かつ細かくなった。前述のように音関係も大幅にパワーアップしているので、走行していて大変気持ちがいい。超高速スクロールは相変わらず…というか、どうもこのSCD版が最速との声もある。なお、本作では「レギュレーション」でゲームの各種設定ができ、その中でゲームスクロールスピードを変更することも可能になっている。
売りの一つである細かいセッティングもさらに強化。これまで前方も後方もいっしょくたにされていた「ウィング」がリア・フロントの二種類別々にセッティングできるようになり、新たに「キャンバー」の設定も加わっている。さらに―これは僕のような車には詳しくなくいちいち細かいセッティングが面倒というプレイヤーへの配慮だろう―、「スピード重視」「バランス重視」「コーナーリング重視」の3種類のパターンでお任せセッティングが出来る「EASYSETTING」のシステムも加わった。
コースは「’91」に比べるとそれほど意地悪ではないかも。その代わりシケインがかなり急角度(はっきりと90度・90度)になってるケースが多い気がする。
前作から続けてプレイしている人が最初違和感を覚えるのが、カーブサインの変更だ。カーブが近付くとカーブの形と急さの度合いを示す矢印サインが出るのは以前と同じなのだが、その表示タイミングと急さぐあいの表現がかなり変更されている。
まず表示タイミングはカーブにさしかかるよりかなり早く、カーブが2〜3個連続するケースでは次々とめまぐるしく切り替わっていく。これは前作までがカーブの直前にサインが出たこと、そのため連続カーブの場合2つ目移行は表示がされない場合があったことの反省だったと思われる。しかし前作を極めた者にはサインが早すぎてタイミングに慣れるのが難しい。
またカーブの度合いについては、緩いカーブなら黄色、急カーブなら赤、というのは同じなのだが、前作に比べると赤と黄色のカーブの差があまりないケースもある。まぁ前作でも黄色カーブでもうっかりすると大幅に吹っ飛んだりしたので、何度も走って道を覚えなければ勝てないということではおんなじなのだが。
予選の前にフリーランを繰り返してセッティング、テクニックを磨いていくのは前作と同じだが、フリーランを終えるとその時の最高タイムについてスタッフ(写真で表示される)から「いまひとつだな。予選さえ抜ければなんとかなるが」とかコメントが出るようになった。なお、ワールドチャンピオンシップモードでは所属チームのドライバーがケガでいなくなり、ピンチヒッターとしてプレイヤーが臨時に雇われた、というストーリー設定になっている。また、最初に走らされるのは実在のコースではなく「ニチブツ」なる架空のオリジナルコースだ。
予選のしくみも大きく変更された。前作までは予選は3周(そのうち2周でタイム測定)を1回行うのみだったが、「スペシャル」では実際のGPと同じく予選は二日間行われ、一回につき5周(うち4周でタイム測定)タイムアタックして、これを二回行い一番いいタイムでスターティンググリッドが決まることになった。これだとライバルたちのタイムが事前に分かるので、予選の気分がいっそう盛り上がる。一回目でダメでも二回目で再チャレンジできるので心理的に楽になったところもある。なお予選落ちした場合、そのまま次のGPに進むか予選通過までやり直せるかは「レギュレーション」で設定変更可能になっている。
予選タイムで20位以内にすべりこめば決勝レースに進出だ。決勝では20台がゴチャゴチャと走るため、単なるタイムアタックとは別のテクニックと運が必要なのは相変わらず。前作よりもマシンが大きいこともあり、バトルはいっそう熾烈。こころなしか以前に比べてクラッシュした際のウィングの破損が減ったような気もするが…
決勝では画面左に上位6車の名前とマシンが常に表示されるようになった。ここに自分がいればいっそう楽しいが、自分が遥か後方を走っていても、激しい上位争いが横目に見られるのはちょっと楽しい(笑)。
◆予の辞書に不可能という文字は無い
個人的には「F1サーカス」シリーズでは、とっつきやすかった第1作目を推しているのだが、この「スペシャル」は見栄えやリアルでかゆいところに手が届く作り込みなど、「F1サーカス」の完成形態という印象も持っている。これをHuCARDに無理やり押し込んだのが「’92」なのだが、やはりあれは無理があったと思う。
「スペシャル」ではワールドチャンピオンシップのほかに、全20コースから好きなのを選んで練習で走れる「TEST DRIVE」、最高5人でタイムを競える(最高記録はちゃんと記録される)「TIME ATTACK」なと、遊びの幅も広がっている。さすがにシステム上、大勢で同時走行対戦というのは出来ないんだけどね。そういえば「’91」「’92」にはあるカーブ走行などのテクニック練習モードは本作にはない。
CD-ROMということで、実写画像や音声を入れてもまだまだ余裕があるなぁ…と思ったのかどうか、「スペシャル」にはF1用語を満載(ってほどでもないが)した「DICTIONARY」というモードがある。ディクショナリー、すなわち辞書・事典。選択してみるとその名の通り、あいうえお順に並んだ項目がたくさん並んでおり、それぞれの説明を読むことが出来る。ところでこの事典のインデック画面に出ている実写のお姉ちゃんは誰なのだろう(笑)。
メジャーからマイナー、マニアックな用語まで結構いろいろなF1用語が解説されていて、ちょうど本稿のためにF1ゲームをプレイしまくっていた僕は大変勉強になった。難を言えばCD-ROMにも関わらず文字がひらがなだらけのHuCARDと同じもので読みにくいし(CD-ROMシステムには漢字ROMが入っていて大きくて綺麗な文字列が使えるはずなのだが)、せっかくのCD-ROMなんだからもっと詳しい解説や画像を入れて欲しかった気もするが…なお、各用語の解説では実際のレースだけではなく、ゲーム内での扱いも説明してくれているのは嬉しい。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.750
| 4.194
| 3.527
| 3.805
| 4.291
| 3.736
| 23.305
第195位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 9
|
ウォルフ中村
| 9
|
東千里
| 9
|
びいず羽岡
| 6
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
浜村通信
| 7
|
ジョルジョ中治
| 7
|
渡辺美紀
| 6
|
TACOX
| 6
|
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