F-1DREAM
ジャンル:レーシング
媒体:HuCARD(2M)
発売元:NECアベニュー
発売:1989年8月25日
価格:5400円
商品番号:H54G-1005
◆ゲーセンから移植の異色F1ゲーム
ここんとこ連続している他のF1ゲームの紹介でも散々書いてるように、PCエンジンの時代は日本のF1ブームと重なり合う。F1界の大スター・アイルトン=セナが事故死したのが1994年で、この年がおおむねPCエンジン時代の晩期にあたるという符合もある。
PCエンジン界でも次々とF1ゲームが出ていたわけだが、ゲームセンターでも状況は同じだった。特にゲームセンターならではの大型筐体+ハンドル操作のレースゲームが人気を呼び、通信対戦を可能にしたナムコの3Dレースゲーム「ファイナルラップ」(PCエンジンでは「ファイナルラップツイン」(’89)として移植)なんかがこの当時の代表作だ。
そんな中、大型筐体を使用せずちんまりとゲームセンターに登場した異色のF1ゲームがこの「F-1DREAM」 だ。開発元はカプコンで、一見F1ゲームとは思えないちょっと懐かしい感じもする見下ろしタイプの画面構成、ハンドルではなくあくまでレバーで車を動かす操作系、チビキャラがちょこまか動きスピードもそれほど出ない演出、F3000からF1に昇格するゲーム内容など、F1レースゲームとしては本格派ではなく変則技で来たゲームだった。しかしこうしてNECアベニューによりPCエンジンに素早く移植されてるところを見ると、そこそこ人気はあったのだろう。もっともこの89年ごろはF1ゲームが雨後のタケノコのように出ていて、F1ゲームの素材が強く求められていたという事情も考慮するべきかもしれない。
アーケード版とこのPCエンジン版を比較すると、もともとそれほどマシン性能を要求するタイプのゲームではないせいもあってか、見た目にはPCエンジン版はかなり忠実にアーケード版の雰囲気を再現している。車が並んで走ってタイトルが表示されるオープニング画面からしてしっかり原作どおり。見下ろしスタイルの画面構成、8方向レバーで自車を動かし2つのボタンでギアチェンジする操作系もそのままパッドで再現できており、どうしても何かを削って移植している他のゲーセンゲームと比較すれば移植が楽だったかと思われる。
原作はF3000のレーサーから始まってF1レーサーへの昇格を目指す内容で、これもPCエンジン版はちゃんと移植しているが、それだけでは物足りないと思ったのか、F3000の前に「街道レーサー」のシナリオが追加されている。しかも賭けレースをしてお金を稼ぎ、その金でメカニックマンを雇ってマシンをチューンナップし、それからF3000に参戦するというRPG(?)な要素が加わっているのだ。
◆レーサー出世街道?
ゲームを始めるとまずは街道レーサー物語。10000の持ち金からスタートして、メカニックを雇い、チューンナップをし、次々と現れる挑戦者達と賭け街道バトルを繰り広げて金を稼いでいく。
しかしこの街道レーサー部分、やはり余計な付け足しだったのではあるまいか。メカニックの契約金は馬鹿に高いし(レベルにより異なり、高いレベルのメカニックマンはビックリするほど高い)、メカニックマンはそれぞれタイヤ、ステアリング、エンジン、ボディと専門ごとのチューンナップしかできず、全部門のメカニックマンが雇えないと先に進んで苦労する。チューンナップ自体にも金がかなりかかり、持ち金はいつもピーピー状態。おまけに当然ながら持ち金分しかレースの賭け金は積めないので、レースに勝ったところで手に入る額はたかが知れている。
おまけに次々と現れる挑戦者たちがいずれも強い(涙)。ぼやぼやしてるとあっという間に引き離されて自分一台でノコノコと山の中を走っている、という光景になりがち。だいたいスタート時点で相手の方が加速がかなり早いというのが納得いかない。コーナリングをうまくやればなんとか勝てるようにはなるのだが…。
この街道コースでは落石、スリップするオイル、いきなり飛び出してくる無関係の車など、さまざまな障害もある(見たところライバル車がこれらにひっかかる様子は無い)。またコースによっては夜間走行のために道が良く見えないというケースもある。
それと慣れるまでかなり時間がかかるのが、このゲーム独特の操作系だ。見下ろし視点で車を進めたい方向に十字キーを動かせばいいわけなんだけど、これが意外に難しい。これは操作する側が車を運転する立場にたって、勝手に上下左右の方向を運転席からの見方に脳内変換してしまうかららしく、こちらが思ってもみない方向に車を動かしてしまうことがあるのだ。特に他のレースゲームをやったあとなどはこの現象に悩まされやすい。
原作にしたがって、2つのボタンはそれぞれ低速ギアと高速ギアのアクセルに指定されている。スタート直後は低速で、しばらくしたら高速で、と使い分ければいいんだけど、ギアの切り替えも慣れるまでは手間がかかる。また「ターボ」機能がついている場合があり、2つのボタンを同時に押すと一定の加速が得られる仕掛けにもなっている。
F1ゲームにはかならずある耐久性の要素は、本作ではタイヤとG/B(ガソリンとボディを一体化させた数値)で取り込まれている。路肩走行や衝突を繰り返しているとこれらが早く消耗し、特にG/Bのメーターがゼロになるとマシンが爆発(!)してリタイヤになってしまう。だからドライビングテクニックもさることながら、各部品のメカニックマンをちゃんと雇ってパワーアップしておく必要があるわけ。
この街道レーサー部分はこうした操作性に本番前に慣らすという意味もあったんだろうけど、かなりの難度なので持ち金をあっという間に失ってしまうプレイヤーが大半ではなかろうか。持ち金を使い果たしてもゲームオーバーではなくF3000レーサーとしてゲームが続行でき、持ち金も改めて支給されるのでそう問題はないように見えるのだが、この街道レース部分で全部門のメカニックマンを雇っていないとF3000の初戦にはまず勝てない(勝てないとゲームオーバー!)ようになっているので、やはり街道レースでかなり勝ち抜く必要がある。しかし街道レース全15戦全部勝つってのはF3000やF1より大変なんじゃなかろうか…
いちおうゲーセン仕様ではないので、F3000以降もゲームオーバーになってもコンティニューすれば次のレースに進めるようにはなっているのだが、次のレースではなくて今失敗したレースからやり直すようにすべきではなかっただろうか。
余計なつけたしにしか見えない街道レースが異様に難度が高く、しかも肝心のF3000〜F1に決定的影響を与えてしまうという困った設計のため、このゲームはおっそろしくゲームバランスが悪くなってしまっている。画面構成や操作性は原作をうまく再現していて出来は悪くないと思えるのだが…これもテクニシャンなら面白くなってくるんだろうか。
かく言う僕はF3000の初戦にいまだ勝てず、まさにF1なぞ夢のまた夢。それってもしかして「F1ドリーム」ってタイトルに忠実なのか?(笑)。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.240
| 3.240
| 3.246
| 3.213
| 2.887
| 3.213
| 19.758
第473位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 7
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ウォルフ中村
| 6
|
小野泉
| 7
|
ドーピン和樹
| 8
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