F-1PILOT 
ジャンル:レーシング
媒体:HuCARD(3M)
発売元:パック・イン・ビデオ
発売:1989年3月23日
価格:6300円
商品番号:PV1001


外見空前のF1ブームに乗って…世に出てしまった珍作

 PCエンジンの時代、ちょうど日本は空前のF1ブームにあたっていた。このためPCエンジンでもやたらにF1をテーマにしたゲームが出ているのだが、その中でもこの「F-1PILOT」(’89)は最も早く発売された一本。しかし最もどうしようもないF1ゲームになってしまった1本である。恐らくは全PCエンジンソフト中でも最悪の部類に入るのではなかろうか。下に出ている(勝)PCエンジン誌のレビューの採点が馬鹿に高いのが気になるが、これは当時としてはまだ物珍しかったから…だと思いたい。

 ゲームを起動して、いきなり幻滅しちゃう人も多いはず。やるせないBGMが流れ、飾りッ気も何もない「F1PIROT」のタイトルが表示され、その中央、なぜか砂漠のような画像の中にトコトコとF1マシンが走り出てくる。放置しておいてもデモ画面なぞは一切始まらず、延々とやるせないBGMをエンドレスにリピートしていくだけ。ああ、もうこれを見ただけで「このゲームの製作者はやる気が無いな」と分かってしまうという脱力もののオープニングだ。事情は知らないが、「とにかくF1のゲームを作れ!」ということで急いで作って世に出しちゃったんじゃなかろうか。決算期の3月ごろ出るゲームにはそういうのが多いという噂が…そもそも発売元のパック・イン・ビデオというのがPCエンジン界では結構ソフトを出してる大手の割りに駄作・凡作が多いことで定評があるところだ。

 「F1パイロット」とタイトルをつけただけに、本作はマシンのコクピットからの視点でレースを楽しめるというのがウリらしい。ゲームスタイル自体はPCエンジンでも出たナムコの「ファイナルラップツイン」(’89)のような擬似3D表示のレースゲームだが、他の同種のゲームが自分が操縦するマシンをやや後ろから見る画面構成をとっているのに対して、「F-1PIROT」は完全に自機のコクピットに乗り込んだ視点で構成され、自分のマシンは運転席から前方しか見えていない。コクピット前面には速度計があって時速200〜300kmの運転速度が実感できるようになっている。運転席両脇のバックミラーが異様に大きく、ここに背後に接近するライバルマシンが映る仕掛けになっていて、確かに走ってみると実際のレーサーが見ている視点に近い迫力のあるレースが再現できている…と思わされる。


◆ダルマさんが転んだっ!?!?

 ゲームを開始すると、まず所属チームを選ばされる。この当時のスポーツゲームでは実在のチーム名は使えなかったので、全部実在のものをもじった名前になっている。チームごとに得意不得意の分野が一目瞭然のグラフで表示され、これなら当時のF1事情を知らなくてもチーム選びが出来るというもの。
 チームを決めると、セッティングも何も出来ないまま、いきなり予選をやらされる。コースは固定されており、最初はブラジルGPからスタートだ。コースの見下ろし図・特性については取り扱い説明書に詳しく載っており、これを読んでから走るのが前提。このゲームの唯一いいところ(だと思う)がこの説明書のコース紹介の詳しさで、各コースの名所・歴史が詳細に解説され、読み通せばちょっとしたF1博士になれるほど。このためこのゲームの説明書はレースゲームとしては異例の厚さになっている(紙が厚いという気もするが)

 予選のためにコースに入り、青信号が出たら実際にマシンを走らせる。走行前にエンジン音かBGM2曲のうちいずれかを選べるのだが、エンジン音はひたすら騒々しく、BGMのほうはオープニング同様かなりやるせない曲で、これも理解不能の仕様である。

 操作系はオートマチックになっており、アクセルとブレーキしか存在しない。アクセルを押し続ければあっという間に時速300kmの世界に到達するが、カーブに来れば当然速度を落として曲がらねばならない。しかし困ったことに、このゲームではコース中の現在地点表示や、いつカーブが来るのかの事前のサインなどは一切なく、コースを頭に入れたプレイヤーが体感的につかんでいるしかないのだ。
 そりゃまぁ実際のレースだって視界のどこかにコースの図やカーブサインが出るわけじゃないのは分かっているけど、実際のコースでは他にもいろいろ周辺の目印などがあるわけで、遠くの景色がちょっとずつ変化するだけでコース周辺には何も描かれていないこのゲームではコースを覚えるのは至難の業だ。これじゃ「リアルの追及」じゃなくて単なる「不親切」というものだろう。
 カーブを曲がりきれないと大きくコースアウトはしない代わりに縁石に乗り上げて、ガタガタと騒音と振動がしてスピードがダウンする。だから縁石に乗り上げないように走る必要があるわけだけど、これがコースを時間感覚で覚えてないと出来ないんだから大変だ。

 予選でも本選でもコース上にはライバル車が多数走っている。コクピット視点ということでライバル車もそれなりに大きく描画されリアルのようにも見える。このゲームのライバル車たちはいずれもチンタラ走っているのですぐに追いついてしまう。前方車両に追突することがあるが、エンジン音やBGMなど全ての一瞬消えて「ガコッ」という衝突音が響くだけ。大クラッシュだのスピンだのが発生する心配はどうやら無いらしい。
 前方車両をアッサリ抜くと、あのドデカいバックミラーに抜かれたマシンが映る。「へっへ〜抜いたぜ!ザマーミロ!」と快感に浸れるというわけなのだが、このバックミラー演出がかなりヘンなのだ。

ダルマさんが転んだっ いま抜き去ったばかりのライバル車はしばらくバックミラーに映り続ける。「コノヤロー、抜き返す気か!」と白熱のバトルが展開される…はずなのだが、こちらがカーブを曲がり損ねて縁石に乗り上げようとカーブ前にスピードを落っことそうと、バックミラーの中のライバル車の様子は一向に変わらない。スピードを上げて引き離すと次第に小さくなりミラーから消えてはいくのだが…
 どうもオカシイ、と思った貴方、思い切ってブレーキをかけ速度を落としてみよう。するとどういうわけかバックミラー内のライバル車もブレーキをかけるではないか!こちらがアクセルを入れると向こうもアクセルを入れてそのままミラー内に映り続けている。なんじゃこりゃ、と思って完全に停止してみるとミラー内の車も完全停止。そう、もはやこれはレースゲームではないまさに「ダルマさんが転んだ」ゲームである!(右図参照。こちらが停止状態でもバックミラーにライバル車たちが映り続けている)

 呆れるしかない仕様だが、こんなので堂々とF1ゲームとして売っちゃっていたんだから恐ろしい。猛スピードで走っているうちは問題が無いと思ったんだろうか。こちらが前方車両を抜くばかりで向こうから抜かれる心配はいっさい無いというヘンなレースゲームなのだ。本来バックミラーは何のためにあるのだ!?つくづく何を考えて作っちゃったのか、分からなくなるゲームである。
 プレイヤーがやることはタイムを出すことだけだと言っていい。毎周のようにピットインサインが出るのだが、これがまた入口などはどこにもなく、サインが出た時に停止してSELECTボタンを押せ、というムチャな仕様。それでいて走っていてタイヤや部品が消耗してる気配がほとんど感じられないのも謎だ。

 もはやゲームとしても遊べないこのソフト、ホントに妙に詳しいコース解説がある説明書だけが有用である。このコース解説を片手に他のF1ゲームを遊ぶ、という使い方ができますぜ(爆)。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
2.925
2.766
2.504
2.841
2.887
3.112
17.035
第625位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹



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