S.C.I.  
ジャンル:レーシング
媒体:HuCARD(4M)
発売元:タイトー
発売:1991年1月25日
価格:7200円
商品番号:TP03016


◆犯人追跡暴走ゲームがパワーアップ!?

外見 「S.C.I.」というタイトルは、「SpecialCriminal Investigation」(特別犯罪捜査課)の略称である。まぁ要するに刑事モノなんだと考えればいいんだけど、これがレースゲームであるところが本作のミソ。

 このゲームはもともとゲーセンのハンドルつき筐体ゲームからの移植で、同社のヒット作「チェイスH.Q.」の続編。「チェイスH.Q.」は「標的の車を追跡し、自分の車をガンガンぶつけて停止させる」という、ゲームでもさすがにこれが初めてだった実に荒っぽい要素を取り込んでヒットした一作で、PCエンジンにも「タイトーチェイスH.Q」(’90)のタイトルで移植されている。
 その「チェイスH.Q」の正統続編として作られたのがこの「S.C.I.」であるわけだが、刑事が乗る車を操作して犯人の乗る車を追いかけるという基本コンセプトは変わらないものの、前作からのパワーアップを狙ってさらに荒っぽい要素が加えられた。今度は「標的の車を拳銃で撃ち、バズーカで破壊する」という手段が加わったのである(汗)。もともとがアメリカンな刑事ドラマをモデルにしたゲームなんだけど、アメリカの警察は実際にやりかねん気もするな。

 ゲームを開始すると、前作でもナビゲーション役だったシリーズのアイドル「ナンシー」ちゃんから無線連絡が入り、追跡対象となる車の特徴と犯人についての情報を教えてくれる。この辺はほとんどゲーセン版そのままだが、指示を伝えるナンシーちゃんの声および「了解!」と返事する刑事の声がかなりのダミ声。ゲーム中でも声が出る場面があるが、何を言ってるんだかよく聞こえないのが残念。このゲーム、もともとは刑事たちの明るいノリの掛け合い声が売りであっただけに…。
 前作「タイトーチェイスH.Q」では有名な「ナンシーより緊急連絡!」がもっとクリアな合成音声だったんだけどなぁ…そうそう、前作では声のみだったナンシーちゃんはこの「S.C.I.」で顔を見せ、金髪の美女であることが判明。また原作に従って刑事たちの乗る車も前作のポルシェから変更され、フェアレディZになっている。

 ステージ1では女性が何者かに誘拐され、その車を追跡していくことになる。これをクリアすると、実はこれが「おとり」に過ぎなかったことが判明、続くステージ2でも逃走するワゴン車を追いかけるが、どうもこれも「おとり」の一種だったらしい。ステージが進むにつれ、事件の背景にいる黒幕が明らかとなってゆく…という謎解きドラマが展開されてゆくのだが、こちらは走って撃ってで精一杯で、とてもストーリーなんか覚えてられません(笑)。もちろん全然気にしなくてもいいストーリーではあるんだけど。5面+ラストの特別ステージでおしまいなので、割と手軽なゲームでもある。


◆ゲーセン筐体からの強引(?)な移植

 ゲーセン筐体ではハンドルもアクセル・ブレーキのペダルもついていたんだろうけど、PCエンジン版ではパッド1つでハンドル・アクセル・ブレーキ、さらには銃のトリガーまで操作しなければならないから大変だ。普通のレースゲームでは2つのボタンをアクセルとブレーキに割り当てて、十字キーの左右でハンドルを操ればいいわけだけど、この「S.C.I.」では前作からひきついだ急加速「ターボ」、そしてさらに「撃つ」という要素が加わったためにどう考えてもボタンが足りない。

 そこでこのゲームでは2つの操作方法が用意され、プレイヤーにどちらか自分に向いてると思うほうを選択させる事になった。「Aタイプ」はターボを「I」に、銃撃を「II」に、アクセルを「上」、ブレーキを「下」に割り当てている。「Bタイプ」はターボを「SELECT」に、銃撃を「I」に、アクセルを「II」に、ブレーキを「下」に割り当てた。
 どちらもブレーキは方向キーの下で処理するのは同じで、別に後戻りする必要はないゲームだから無難なところだが、問題はアクセルだ。「Aタイプ」のように「方向キー上」だと「ブレーキの逆」ということで感覚的に分かりやすくはあるが、常に十字キー左右でハンドル操作しているために「常時アクセル押しっぱなし」な状態にもなりやすい。といって「II」ボタンにアクセルを配置した「Bタイプ」では銃撃で「I」を押すことがアクセルと同時にはやりにくい、という欠点がある。それぞれ一長一短だが、僕は「Aタイプ」で通している。
  なお、銃撃で忙しいことを考慮してか、「チェイスH.Q」ではあったHIGH・LOW二段階のギアチェンジが本作ではカットされている。カットといえば「H.Q」にあった道路の分岐(といっても片方だけが正しく、もう一方は行き詰まる分岐)もなくなった。

 ステージ1では赤いスポーツカーを追いかける。最初のほうでは道路に転がるドラム缶や、なぜか手榴弾を投げてくる暴走族などがいて、妨害してくる。これはゲーセンの原作でもあったんだけど、PCエンジン版では大幅に省略された。ゲーセン版では彼らは犯人グループの一味であるようで、あからさまに妨害してくるし、こちらも遠慮なく彼らにターゲットスコープをあてて銃撃することができたのだが、PCエンジン版では事実上他の一般車と変わらない扱いだ。
 ハードのスペック上仕方ないことであるが、原作にあった背景のさまざまな演出も大幅にカットされている。トンネルはなんとかごまかして見せてくれているが、道路の上にかかる構造物や、道路わきを走る列車の再現はさすがに無理。この辺はほぼ同時期の移植作である「アウトラン」(’90)も同様だった。この時期のゲーセンの3D系ゲームの家庭用への移植はまぁこんなものだと諦めて雰囲気の再現度を楽しむしかなかったのだろう。
 調べてみたところ「S.C.I.」の移植はこの時期の家庭用としてはPCエンジンにしか行われていないようだ。その次世代のセガサターンで前作「H.Q」とセットで完全移植されたそうだが、この時期の3Dゲームにはそのパターンが多いような。

銃撃場面 さてターゲットとなる車までの距離は画面上方の「DISTANCE」メーターで表示されている。これもゲーセン版では画面横に自分の車と犯人車の位置が示されるようになっていたが、TV画面では小さくて見にくいと思って変更したものだろう。PCエンジン版「チェイスH.Q」およびメガドライブ版「スーパーH.Q」でも同様の変更がある。
 まぁ序盤では普通に走っていればいずれは追いつくはず。接近するとターゲットの車が矢印で表示され、音楽が変わりパトランプが点灯してサイレンが鳴り、緊迫感を高めてくれる。前作「タイトーチェイスH.Q」同様、標的の車を発見するとそこから残り時間カウントが新たに「60」から始まる仕組みになっている。前作と違って直接車体をぶつける前に遠距離からの銃撃が可能となったので離れていても視界に入っていればダメージはそこそこ与えられる。

 前作以来踏襲されている「ターボ」による急加速は1ステージ中3度まで使える。説明書中のアドバイスにも書いてあるが、ケチらずガンガン使うのが基本。僕の場合は犯人車両が見えてから急速に追いついて体当たりするのにもっぱら使っていた。
 銃撃よりは明らかに大きなダメージを与えられる体当たりだが、ゲーセン版に比べるとPCエンジン版は体当たりをする機会はあまり多くない。ほとんど銃撃でダメージを与えて行くことになり、犯人車両を追いつめている時はアクセルと銃撃ボタンを押しっぱなし状態になる(物騒な話だが、他の車に誤って銃撃しても特に問題はない。考えてみると犯人車両にも誘拐被害者が乗っているんだが…)。そのためレーシングというよりほとんど3Dシューティング化しているような気もする。

 規定時間内に犯人車両のダメージメーターをいっぱいにしてしまえば、車両を停止させて犯人逮捕で面クリアだ。逮捕前に時間切れになった場合は、RUNボタン押しで3度までコンティニューが可能となっている。これがゲーセンだとコイン投入で、しかも犯人車両のダメージが一回リセットされる仕組みになっていたが、PCエンジン版ではすぐにRUNを押すことでそのままゲームを継続できるようになっているのが嬉しい。


◆撃って、走って、落っこちて

 ステージ2では海岸沿いのコースになり、ゲーセン版にあった波しぶきが道路上にかぶってくるのをかなり無理やり再現している。このコースで危険なのはうかうかしていると道路からはみ出して海にドボーンと(音はしないけど)落っこちってしまうこと。このコースアウトはかなり痛く、道路上に復帰して再び走りだせるものの、大幅に時間をロスしてしまう。
 またこのステージ2から味方のヘリが出現してバズーカ砲を投下してくれるようになる。これをキャッチすると、銃撃の際に5回だけバズーカ攻撃が可能になる。当然甚大なダメージを犯人車両に与えることができるわけだが、原作にあった盛大に破片がふっとぶ大爆発はやっぱり再現できていない。刑事がバズーカを抱えている様子も小さいし、音もほとんど変わらないため、プレイヤーでもバズーカと銃撃の違いはほとんどわからない。
 
 ステージ3は山岳地帯。序盤で工事用のバリケードがいくつも置かれていて、これが吹っ飛ぶ描写は意外にゲーセン版をよく再現していて爽快なのだが、時間をロスしてしまうので避けて通るのが基本。このステージでは岩も時々転がっていてぶつかるとやはり時間をロスするのだが、完全によけて走るのは無理なんじゃないかと。この岩に乗り上げて一瞬ジャンプするのが結構楽しくもある(笑)。
 ステージ4は護送車を追跡して街中の高速道路を走る。ステージが始まる前に注意が出るが、序盤で交差する道路にバスが走ってくるイベントが三回連続する。これは急停止ではなくタイミングよくよけて走り抜けるのが基本。そのあと高速道路でのチェイスになり、ここでも海と同じで転落の危険がある。

 ステージ5は突き止められた真犯人を追うラストステージ。巨大なコンボイトラックを追いかけることになり、序盤で追いついてしまうのだが、真ん中が草で仕切られた4車線をコンボイが左へ右へと移動するので、撃つのはかなり大変。しかも事前に警告されるように、中盤からコンボイの中から戦闘ヘリが出現し、こちらに向かって撃ってくる展開になる。
 このヘリ出現がゲーセン版でもプレイヤーを驚かせる演出だったらしいのだが、PCエンジン版ではさすがに再現が無理だったようで、コンボイがいつの間にかヘリに化けて空を飛んでいる(笑)。空飛ぶヘリからの攻撃を避けつつ、減りが低空になった時を狙ってガンガン撃つ、あるいは相打ち覚悟で接近してぶつける、といったことを繰り返せばステージクリアになる。僕が実際やってみた限りでも思ったより簡単にクリアできてしまった。

 ここで終わりかと思いきや、真の最終ステージがこのあとある。誘拐された市長の娘が工場に閉じ込められ、仕掛けられた爆弾があと30秒で爆発するというのだ!このステージでは標的車両もいないし一般車両も走っていないが、足をとられる障害物が多く、30秒以内に到達するのは結構至難。

 このゲームが発売された91年はじめというと、まだまだHuCARDの黄金時代で、本作のようにゲーセンからの移植作がPCエンジンの大きな売りだった時期だ。原作を知るゲーセン小僧には難がある移植なのではあろうが、知らない身としては結構楽しんじゃったのは確か。走って、撃って、の爽快感は結構あるし、ヒョイと楽しめる手軽さも捨てがたい。

(追記)本作は2008年12月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.461
3.417
3.241
3.406
3.549
3.560
20.637
第384位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

TOMOYO

ミロはじめ


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACO・X



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