アルシャーク
ジャンル:RPG
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:ビクターエンタテイメント
発売日:1994年8月26日
価格:8800円
商品番号:JCCD4014
◆ちょいと出遅れた?パソコンから移植のRPG
本作はビクターからの発売となっているが、もともとはPCエンジンでも主力メーカーの一つであった「ライトスタッフ」が製作したパソコンRPG。ライトスタッフが原作のRPGといえばPCエンジンでは「フィーンドハンター」(’93)「アルナムの牙」(’94)といったあたりが挙げられる。有名な「エメラルドドラゴン」(’94)はグローディアというところがパソコン版の発売元だが、この作品のメインスタッフが抜けて作ったソフトハウスがライトスタッフだったりする。この「アルシャーク」、プレイしてみると分かるがキャラデザインが上に挙げた3作と同じ木村明広氏であるうえ、戦闘画面・システムが「エメドラ」「アルナム」とかなり似通っている。
ただしこの「アルシャーク」は上記3本よりも以前の、かなり古い作品であるらしく、システムも未完成かつ不親切だし、木村氏の絵も未発達段階に思える。発売元がビクターになっていることも考え合わせると、移植じたいはかなり早い段階で決定したものの、開発がかなり遅れてしまってこの時期に出ちゃったんじゃなかろうか、と思える(実際当時の専門誌を調べてみたら1年半も情報がストップしており、その間にメガCD版が先に発売されている)。痛いのは本作に半年程度先駆けて上記の「エメラルドドラゴン」が発売され、「天外II」の舛田+岩崎コンビの手により見事なアレンジを施された傑作として高い評価を受けてしまっていたことだ。あのあとにこれを出しちゃってはかなり見劣りするのが避けられないところだったろう。さらに付け加えればライトスタッフ自らのオリジナル新作「アルナムの牙」がこの直後に出ていて、この「アルシャーク」の存在をさらに薄いものにしちゃっているところもある。発売当時の雑誌での取り扱いもほとんどなく、かなり寂しい形で世に出てしまった作品だ。
◆SFの名を借りて…
RPGといえば剣と魔法の飛び交うファンタジー世界を舞台にしたものが大半。というかもともとそういうジャンルから発生したものだったわけなんだけど。しかしたまにそうしたありがちなファンタジーRPGの枠を破ってSF世界でRPGをやってみようという試みも少なくはない。まぁ正確には「SFもどき」のファンタジー、というべきものになっちゃうんだけど…ともあれ、この「アルシャーク」もそうしたSF調RPGの一本だ。
舞台となるのははるか彼方の宇宙「ウィスペラード」。三つの恒星系に12個の惑星が存在するこの世界に、300年前ドゥムナという指導者が移民を率いてやって来て先住の種族とともに偉大な王国を作り上げた。しかし彼の死後王国は分裂し、現在はゾリアス帝国とウュリア王国の戦争が継続中だった。
さらにこの宇宙には隠された前史があった。この宇宙の開闢以来、善と悪の意識体の戦いがあり、彼らはお互いに人間に乗り移って延々と戦いを繰り広げていた…
…とまぁ書いていくと良く分かるように、SFとは言いながら実は巷のRPGでは超ありがち、実にお約束な背景設定が散りばめられているのだ。一応ファンタジー的な部分をSF的に「翻訳」しているわけなんだけど、基本設定があまりにもお約束なもんだからプレイしていても全然SF感が感じられない。もちろん作り手だって本格SFを作る気ではないんだろうけど、もうちょっと工夫ってものがあるだろう、と感じてしまう世界観設定である。RPGのお約束を踏襲しながらしっかりと「SF」していたものとしてはPCエンジンでは「アウトライブ」(’89)が挙げられるだろう。
さらに輪をかけているのが登場キャラとストーリー。これがまた実に超ありがちな展開で…少しプレイしただけでも大部分の展開が読めてしまうのではないかという実にお約束なお話なのだ。もちろんそれはある程度ゲームの宿命というところもあって世の大半のRPGについてもそれは言える事なのだが、そこはやはり見せ方の工夫次第というもの。残念ながらこの「アルシャーク」はその見せ方に関してもかなりヘタ、もとい「ベタ」としか言いようがない。おかげでへそ曲がり気味の筆者などは先へ進むこと自体が苦痛に感じられたほどである。もちろんこういう「お約束」形式が好きだってプレイヤーも相当数いるとは承知しているが…。要所要所に挿入されるビジュアルシーンの出来は決して悪い方ではないのだが、この時期としてはやや古い絵柄である上に、あまりにもクサい芝居(下手なのではなく演出が恥ずかしくなるほどベタなのだ)を延々と見せられることになるので、筆者にとってはこれまたかなり苦痛であった。苦痛と言えば町の中など、動くキャラが数人いるとかなり処理落ちしてしまうのもきつかった。
RPGの評価の分かれ目ともなる戦闘だが、先述のように同じライトスタッフの「エメラルドドラゴン」「アルナムの牙」と良く似た見下ろし画面となっている。ユニークなのはプレイヤーは主人公のシオンを操作できるだけで他のキャラは自動行動となっているところ。自パーティーには前列・後列の区別があり、前列の方が攻撃を受けやすいとか武器により前列に並んでないと使えないものがあるなどで陣形もあれこれ考える必要もあり、まぁまぁ練れている戦闘システムだと思う。特殊攻撃などの演出は結構ハデだし、キャラが強化されていくにつれ戦闘を見るのが楽しくなる。
ただSFの話なのに名剣や必殺剣が出てくるあたりはありがちRPGになっちゃってるなと思うところ。
SFらしいオリジナリティをあえて挙げるなら、装備する武器・防具関係が全てメカニック系であること、そして敵を倒すと「スクラップ」が手に入り、これを換金する、あるいはそれを材料にパーティーメンバーである「スクラップジョー」の手でそれら武器や防具・道具類を自ら作製できるという点がある。この自前製造方式は少々面倒なところもあるけれど、広大な世界の中で店探しをするよりは便利なのは確か。
◆広い宇宙で迷子になって(涙)
広い世界、と書いたが、この「アルシャーク」の舞台となる世界は確かに広い。そこはさすがSF-RPGというところで、舞台は広大な宇宙空間そのものである。もちろんメインとなるのはその中にあるあちこちの惑星や宇宙基地内のフィールド上だが、時折惑星間を宇宙船で移動しなければならなくなる。この惑星間移動だが、マニュアルでも警告しているように適当に回っていると広大無辺な宇宙空間で完全に迷子になってしまう。宇宙空間にはいくつかの惑星系があって、同じ惑星系内なら拡大マップでよく確認しつつ惑星間移動を行えるが、違う惑星系の間はそりゃもう想像を絶するほどムチャクチャに離れておりまずまともには移動できない(この辺は確かにリアルではあるのだが)。宇宙船にワープによる惑星間移動機能がつくまでは公共の惑星間航空(切符を買う)を利用するしかない。
しかもやっかいなことに、この宇宙航行中にも敵の宇宙船が攻撃をかけてくることがある。出現率はかなり高いほうでこれはかなりのストレスになる。宇宙船の方は戦いの経験値で自動的に強化されるわけではないので常に最新・最強の装備を宇宙船に施しておく必要がある。戦闘では小型戦闘機を発進させるなど多少の戦略性はあるが、基本的には自動修復モードにしてコンピュータ任せの戦闘を行うことになる。実はこの宇宙戦闘ではプレイヤー自ら宇宙船を操作してシューティングゲームよろしく戦闘を行うこともできるのだ。まぁ実のところあまりやる人はいないと思うが…。
惑星上フィールドにおけるオーソドックスなRPGに、この惑星間移動と宇宙空間戦を導入したのがこのゲーム最大の特徴、ウリだったのだろう。この二重構造は確かにオリジナリティとして褒めたいとプレイ当初は思ったのだが…結果的にこの点がこのゲーム最大の欠点だということが分かってきてしまった。
ある程度先に進むと、プレイヤーは基本的にどこの惑星でも行くことが出来るようになってしまう。だからストーリー上あとで行くはずだった惑星を先に訪問してしまうというケースが生じるわけだ。たいていのRPGではそうした場所へ先に進まないよう強いザコ敵を配置したり進入禁止にしてしまうわけだが、本作はなぜかそうした配慮を怠ってしまっている。実際、僕は初回プレイ時にうっかり違う惑星に降りてしまって(似た名前の惑星が多いんだ、また)、重大なイベントを一つすっとばしてその先のイベントが発生してしまった(パーティーメンバーがいつの間にか変わっていて気が付いた)。デバッグ時に気づかなかったんだろうか?と思うほどこの手のことはかなりの確率で起こるように思われる。
それとこれはこちらの不注意もあるとも言えるが、パーティーキャラたちは通常フィールドで戦闘し成長していくのに対して、宇宙船の方はあくまで装備を強化していくしかないのでついつい強化を忘れがち。なおかつ宇宙での敵はイベント一つをきっかけに急激に強くなる(何気なく宇宙に出てみたら一撃で粉砕されたりする)ので、行き詰まりやすい。実際僕はこのゲーム2回目のアタックで恐らく終盤に入ったというあたりで強制イベントの宇宙戦でまるで勝負にならなくなり投げ出さざるを得なかった。惑星間移動方式であるために重要な装備など購入を忘れると、二度と取りにいけないという事態も生じやすいのも困ったものだ。
そんなわけで筆者は2回行き詰まったところでこのゲームのクリアを断念した。いや、注意してもう一回やればいいのかもしれないけど、あのベタベタのストーリーをもう一回見せられると考えただけでもイヤだった(^^;)。そんなわけでこのゲームのエンディングはいまだに知らない。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
4.571
| 3.228
| 3.000
| 3.085
| 3.371
| 3.314
| 19.569
第491位
|
★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
岩崎啓真
| 50
|
ウォルフ中村
| 30
|
ウキキ松崎
| 50
|
城イドム
| 30
|
城イドム評価
グラフィック
| サウンド
| 操作快適度
| ゲームバランス
| オリジナリティ
| コストパフォーマンス
|
3
| 1
| 2
| 2
| 2
| 2
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
野田稔
| 6
|
ローリング内沢
| 4
|
イザベラ永野
| 5
|
TACOX
| 4
|
迷い込んだ方はこちらから