オーロラクエストおたくの星座inAnother World

ジャンル:RPG
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:パック・イン・ビデオ
発売日:1993年12月10日
価格:8800円
商品番号:PVCD-3010


 外見◆ファミコンの問題作?のグレードアップリメイク

 古参のゲーマーなら「オーロラクエスト」の名前を知らなくてもサブタイトルにある「おたくの星座」の名前は知っている可能性が高い。
 「おたくの星座」とは1991年7月にM&Mから発売されたファミコンのRPGソフトで、ストーリーを男くさい作風で知られる本宮ひろ志、キャラクターデザインを美女を描かせたら天下一品の江口寿史が担当、という豪華といえば豪華だが聞くからに「クソゲー臭」がただよう企画のゲームだった。この有名漫画家お二人がどのようにこのゲーム開発にかかわったのか実態は不明だが、女上位の世界でいじめられる「おたくちゃん」が男の権威復活に立ち上がるという展開が本宮さんらしくはあり(もっともこれとてもゲーム会社から原案が提示されたと思うんだが)、敵キャラの「オーロラ五人娘」のデザインは確かに江口さんらしく秀逸ではあった。

 有名漫画家を二人も引っ張ってきただけでなく宣伝攻勢は妙に派手で、ファミコン末期ともいえるこの時期としては大作RPGな感じで売り出されている。しかしふたを開けてみれば予想通りで、「ドラクエ」タイプをもっと速度を遅くして移動を面倒にしたマップ、序盤から異様な敵出現率の高さとその強さ、そして難解な謎解きと、当時の段階でも「何を考えてる」と言いたくなるソフトだった。しかしさらに謎なのはその後数年してこの「オーロラ五人娘」を使ったパチンコ台がリリースされ、五人娘を演じるアイドルグループが結成され(その一人がかつて「電脳アイドル」ともてはやされた千葉麗子だった)、さらに94年になってOVAまで製作されるという多メディア展開が行われたことだ。そのため人気があったのかどうかよく分からないが不思議と知名度のあるゲームとなっている。

 この「オーロラクエスト」は「in AnotherWorld」というサブタイトルにもあるように「おたくの星座」の移植ではなく大幅に改造がほどこされたリメイクである。なんでこんなものを出す気になったのか分からないのだが、いちおうパチンコ&アイドル展開やOVA製作が進んでいたことと連動はしているのだろう。それと企画自体がどちらかというとPCエンジン向き(笑)と思うところはあったのではないかと。SCDということもありアニメとのタイアップなのかな?とも思えるが、OVAには出た千葉麗子は声の出演をしていない。
 「オーロラクエスト」の世界観・キャラクターなど、基本的な設定はファミコン版と同じ。だが、ゲームのシナリオは大幅に書き換えられ、SCDの能力を生かして町やフィールドのグラフィックは大きく向上し、SCDならではの美麗なビジュアルシーンもオープニングやイベントで追加され、全体的にかなり遊びやすく改良されている。ほとんど別のゲームと言っていいぐらいだ。


◆「変態」だらけの敵キャラたち

 時代設定がわかりにくいが、SF風味な設定が多いので一応遠い未来のことなのだろう。人類は各地にある浮遊都市で生活している。なぜか男たちは威厳を失い女上位の世界となっている。そして浮遊都市には女神のように崇められる「オーロラ5人娘」という美女がいて人々を支配していた。こんな世界で突然目覚める主人公の「おたく」。彼は記憶を失っており、最初の都市で出会った「寿五郎」という謎の男に導かれて男の権威を取り戻すべく「オーロラ5人娘」を倒す冒険を開始することになる。冒険を共にするのは女より美人のマカオ(オカマ種族のことです)「ジョンジョン」、生真面目なガリ勉タイプの外見ながらジョンジョンに惚れ込んでついてくる「ねっけつ」の二人。基本的にこの3人のパーティーで冒険を続けることになる。

 妙な世界設定を別にすれば、ゲーム自体はまさに「ドラクエ」そのものと言いたくなるほど(タイトルに「クエスト」って入ってるし)、オーソドックスなRPGだ。あちこちの町で情報を集め、武器や薬を買い、フィールドやダンジョンで遭遇する敵パーティーと戦い、クリアせねばならない小クエストをこなして、各浮遊都市に一人ずついるオーロラ5人娘たちとのボス戦に勝利すればステージが1つ終わり、次のステージへ進めるという展開だ。他の浮遊都市への移動は転移装置で行われ、画面全体が波打ってゆがんでいくワープ描写はなかなか凝っている。

先頭画面 このゲームの最大の特色はその妙な世界観にあるのだが、特にザコ敵たちのデザインがそろいもそろって妙チクリン。一言で言ってしまうと「変態」ばかりが登場するのだ。このゲームのザコ敵たちは「モンスター」ではなくもともと人間が遺伝子操作やら合成やらで変化した「パラノイア」という設定になっており、セーラー服を着たオジサンやらチョンマゲ姿のサラリーマンやら、ウルトラマンの格好をした爺さん(ノスタルジジイ)やら、人間タイプは変人というか変態ばかり。動物や植物をパロった敵も多いが、他のRPGのザコ敵が怖いか可愛いものであるのに対して、このゲームではその大半が「気持ち悪い」デザインなのだ。作り手としては笑いをとっているつもりなのかもしれないが、プレイするほうからすると最初は笑っても、長い間こんなのばっかりとつき合わされていると辟易してくる。特にこのゲームは敵出現率がかなり高いので鬱陶しさは倍増する。
 それでも敵の攻撃方法や敗北の時のテキストがけっこう笑えるもので…サラリーマンキャラを倒すと「〜は故郷に帰った」と出るなど、とくに人間系キャラに関しては殺さないような表現を使っており、多少ホッとするところもある。

  ザコ敵だけでなく各浮遊都市の住人もどこかヘン。全員に話しかけてみるとそこそこ面白くもある。都市のデザインはSFっぽくもあるが、バブル期当時の雰囲気を色濃く反映したディスコのお立ち台やらライブハウスのミュージシャンやらもよく登場する。中盤で主人公たちがライブをする場面ではわざわざ大画面のビジュアルシーンが用意されていたりもする。
 またどこか下品(笑)なネタが多いのも本作の特徴。着替えを覗ける覗き穴とか(これが顔が見えないことでギャグになっていたりする)、男らしさを示すためにフンドシを装備するとか、ポルノ写真を装備できたりとか、細かい悪戯が各所に見られる。これが美麗な江口デザインのオーロラ娘たちとあいまって一種独特の世界を作っているのは確か。どっちにしても一般的な好評を得られるとは思えないが…。


◆結局フツーのRPGに

 しかし作り手としてはそういう独特世界にとどまることができなかったようで、5人娘を一通り倒したあと真の敵が見えてくる後半戦では、それまでのオチャラケムードは薄まってシリアスな展開になり、聖剣を集めて世界を救うのだ!ってな超ありがちな王道ファンタジーRPGになってしまう。サービス精神のつもりなのかもしれないが、どうもこういう中途半端なところが結果的に本作を記憶に残らないゲームにしてしまったような。それでもファミコン版よりははるかに遊びやすくなっているし、展開自体はそれなりに面白いので駄目ゲーではなく平均点ぐらいはとれそうなRPGではある。

五人娘 ただ前述のようにザコ敵遭遇率の高さはファミコン版ゆずりで、しかも戦闘システムが練りこまれてないのが困る。特に敵味方ともに空振りがかなり多いこと、攻撃方法を最初に指定すると標的の敵が死んでしまうと空気に向かって攻撃をかけて続けること、毒攻撃がやたらに多く、とてもじゃないが呪文じゃ応じきれないこと、などなど不満点は多い。また意見は分かれそうだが、ザコ敵で苦しまされる割にオーロラ娘たちとのボス戦がかなり楽勝で、バランス面での難はいろいろとある。あの気持ちの悪いザコ敵たちとやたらに遭遇し、面倒な戦闘を続けさせられるのはかなりストレスがたまったとは言っておきたい。

 SCDになった最大の恩恵はやはり「オーロラ五人娘」のグラフィックが、しっかり江口絵で再現できてちゃんと声優がしゃべってくれることかな。なおキャストは原えりこ(ヤン)、中友子(ユン)、根谷美智子(リン)、緒方恵美(ミン、およびマカオのジョンジョンまで担当!)、中山真奈美(ルン)という陣容である。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.666
3.055
2.944
2.888
2.777
2.888
18.218
第591位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真
55
ウォルフ中村
80
パトリオット佐藤
75
メタラー佐々木
60

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

ローリング内沢

渡辺美紀

ジョルジュ中治



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