カダッシュ

ジャンル:アクションRPG
媒体:HuCARD
発売元:タイトー
発売日:1991年1月18日
価格:6600円
商品番号:TPO2015


 外見◆タイトーのゲーセンアクションRPGの移植!

 「カダッシュ」(’91)は発売元のタイトーがアーケード向けに1989年にリリースした同名のアクションRPGをPCエンジンに移植したもの。実はメガドライブ版も存在するのだがそれは海外向け(ジェネシス版)のみで、日本国内の家庭用ゲーム機ではPCエンジンでしか遊べなかった。PCエンジン版の方も海外版(TG16版)が発売されており、アメリカなどではこちらでプレイした人も結構いるようだ。ジェネシス版は動画でみる限りでは原作との乖離が大きいようだったし…
 なお、かなりのちにプレイステーション2向けに「タイトーメモリーズ下巻」に含まれる形で移植されたが、こちらはほぼ原作そのままに移植されている。

 ディルザール王国の王城に悪魔バーログの魔の手が伸びた。バーログが王女サラサ姫を連れ去ってしまったのだ。旅人としてこの地を訪れたプレイヤーは国王の依頼を受け、サラサ姫を救出し、バーログを打倒するため、冒険に旅立つ――という、RPG的には超ありがちな設定だ。それにしてもアクションとはいえ一本のRPGをゲーセンでプレイさせていたことに驚いてしまうが、このゲーム、全体像が分かってくればそれほど大きなスケールを持っているわけでもなく、ほどよいプレイ時間でクリアできる内容にはなっている。

 ゲーム開始時にプレイヤーは自分のキャラを「戦士」「魔法使い」「僧侶」「忍者」の4タイプから選択することができる。原作のアーケード版では最大4人プレイも可能だったが、PCエンジン版ではさすがに2人までにとどめたものの、異なるキャラで協力し合ってゲームを進めることができるようになっている。
 「戦士」は攻撃・防御に強く接近戦のみで魔法は使えない。「魔法使い」は戦闘力は弱いものの成長が早く魔法攻撃を覚えるとかなり強力。「僧侶」は唯一女性キャラになっていて、ロープ状の武器で上方ややや遠方への攻撃が可能な上に回復防御系の魔法を覚えればゲームが進めやすい。最後の「忍者」は手裏剣を飛ばす遠距離攻撃ができ、スピードも速い。一般論として初心者は戦士、攻略を覚えたプレイヤーは魔法使いや僧侶で、上達者は忍者で、ということになってるらしい。


◆序盤が過酷な大冒険

 姫を救い出す使命を受けて城を出て右へと向かうと、さっそく最初のダンジョンがある。原作のアーケード版では同じ「大陸」内は基本的に全てつながった画面になっていたのだが、PCエンジン版ではダンジョンや部屋ごとに画面切り替えが行われている。また背景のスクロールや巨大キャラの動きが単純化されるなど絵の作り方もいくらかアレンジされている。それでもゲーム進行上は特に問題はないし、基本的には原作を忠実に家庭用ゲーム機に移植した内容と言っていい。ダンジョン内の流れ落ちる滝や溶岩描写なんかはHuCARDソフトとしてはかなり頑張ったものだと思う。

 ただし、移植にあたって大きな変更となったのが「コンティニューが一切ない」こと。アーケード版ではコインを入れて続行できたのだが、PCエンジン版ではプレイヤーキャラが死んでしまったらそこで問答無用のゲームオーバー。途中の宿屋でセーブできるとかそんな救済措置も一切なく、プレイを始めたらラストまで一気に突破することが要求されるのだ。一応2人以上プレイでは片方が死んじゃった場合、宿屋に戻されるだけで済むのだけど。
 海外メガドライブ版ではコンティニュー可能だったようなので、どうしてこんなにキビしい作りにしたのか…腕自慢は一気にクリアしちゃうのかもしれないけど。せめて三回までコンティニューありとかにしてほしかった気もする。
 
 コンティニューなしの作りがキビしく感じるのは、意外にも序盤だ。どのキャラでも序盤は非力であり、しかもこのゲーム、なぜか一面がかなり難しい作りになっているためだ。ザコ敵はそう強くもないし、経験値稼ぎをしてある程度成長させてから進むということも可能なのだが、始まってすぐに水を越えていかねばならない個所があり、これがまた操作が難しく(わざとだとは思うが)水に落ちやすい。しかも水に落ちただけでかなりダメージを食らうのだ。おまけにダメージを受けると必ずちょっと後ろに「のけぞる」ため、なかなか前進できずもがくハメになる。
 そこを突破しても巨大な目玉とか毒を吐いてくるクモとか、火山弾が飛んでくる橋など難関が連続し、ボスにたどりつくまでにかなり体力を失う。回復薬として薬草や毒の中和剤もあるにはあるが、体力の回復はあまりできない。
 そんな状態でボス戦に突入すると、この一面ボスがスライムのお化けで、スライムの粒を飛ばしてきたり天井に跳ね上がったりしてなかなか手ごわいのだ(ただしスライム表現はPCエンジンの苦手とするところらしく、原作や海外メガドラ版に比べると動きは遅い)。おかげで一面をクリアするまでずいぶんやり直しをさせられた覚えがある。

 どうにか一面ボスを倒すと、他の大陸へワープする扉を抜けられる。ワープ先には村があり、体力回復ができる宿屋や武器屋・薬屋もそろっていて、かなりホッとする。この村を拠点に体力回復をしながら先を進めればいいわけで、ここから先は攻略がかなり楽になるのだ。
 このあとは普通のRPG同様に、情報を集め、謎を解き、ボスと戦いを繰り返す。アイテムを手に入れることでそれまで侵入不可能だった水の中や小人の村の店に入ることが可能となり、行動範囲も広がって行く。キャラも着実に成長してゆき、中盤以降はどのキャラもかなり強力になって、攻略はしやすい。ボス戦はパターンが分かればたいしたことがないのが多く、そう苦労はしないはず。ただ攻略法が分からないままやられると「最初からやり直し」になってしまうため、精神的ダメージがデカいけど(笑)。


◆何度も遊べるややお手軽RPG

 クリア時間は慣れてくると1時間以下、早くて40分ぐらいだろうか。キャラによっても攻略法は異なるし、タイムアタックを競う遊び方や、一度のプレイではなかなか気が付かない抜け道や隠しアイテムなどの発見の楽しみもあるので、クリアしても何度も遊べる作りになっている。さすがにいわゆる「大作RPG」のような感動のストーリーみたいなものはないんだけど、サクッと腕試し的に遊べるアクションRPGというのも貴重だ。

 原作からの変更点として、アーケード版では動きを止めると表示されたキャラのステータス数値(攻撃力、防御力、所持金など)が一切表示されなくなった、というのもある。隠れ数値としては当然存在していて表示だけされないので、なんか都合があったんだろうと思うし(ジェネシス版では表示していた)表示されなくても成長の実感はあるのだが、具体的に数字で見たいという気はする。所持金については店で買い物をすると表示はされるが、進行上とくに金に困ることはないように思う。

 ドラクエ初期作もそうだったが、冒険の出発地となる城の中に進入不能の部分があってプレイヤーの興味を引いておき、ゲームのラストでここに入れるようになる。バローグをいったん倒して姫を救い出し、城に戻ると城はバローグに襲われたあと。王様が偽物だというのは誰でも予想するオチだろう。ここでバローグとの真の最終決戦になるのだが、どのキャラでも確実に最高レベルに成長しており、いずれも楽勝。ホントに最後に行くほどボス戦が簡単なんだよな。

 クリアするとプレイヤーは平和になった王国から旅立ち、サラサ姫がそれを見送る。ここで初めてサラサ姫のお顔がビジュアルで大きく表示される(一応さらわれるオープニングデモでもお顔をチラッと拝める)。「たいせつなものを ありがとう。」と微笑む姫のお顔でエンディングになるのだが、PCエンジンということを意識してか、原作より幼い顔立ちの美少女である。その笑顔見たさに何度もプレイしたくなるというもの(笑)。

 なお、本作は2008年11月に任天堂「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.727
3.448
3.454
3.655
3.707
3.571
21.564
第263位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

TOMOYO

ミロはじめ


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

水野店長

森下万里子

TACOX



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