川のぬし釣り 自然派

ジャンル:RPG
媒体:CD-ROM
発売元:パック・イン・ビデオ
発売日:1992年3月27日
価格:6900円
商品番号:PVCD-2006


◆ファミコンの異色RPGをCD−ROMで!

商品外見 1990年にファミコンで発売された「川のぬし釣り」は、「釣り」をゲームにする、しかも人気のRPG仕立てでという、かなり異色の作品として注目を集めた。以後この流れをくんだ「ぬし釣り」シリーズは、スーパーファミコン、ゲームボーイ、プレイステーション、DSと機種を次々渡り歩きながらシリーズを重ね、なんと第一作以来20年に及ぶ長期シリーズに成長してしまう。他の長期シリーズゲームと比較すると知名度も含めて地味な印象だが、「釣り」という普遍的なテーマを扱ったこともあり息の長い支持を受けているのだろう。

 この「川のぬし釣り 自然派」(’92)はこのシリーズの一作目をPCエンジンCD-ROMにアレンジ移植したものである。ファミコンからPCエンジンへの移植例はいくつかあるが、CD-ROMというのは珍しい。発売された1992年3月といえば「天外魔境II卍MARU」(’92)が出た時期でSCDが多数派になってくる頃なのだが、本作は開発がやや遅れたのか、旧CD-ROM2のソフトとなっている。

 原作の規模からいうとHuCARDでも十分移植できたはずだが、わざわざCD-ROMで出すにあたって「自然環境音声」というCDならではのオマケをつけた。このゲームのキモである釣りシーンで、川のせせらぎ(釣る場所により清流・渓流・滝の音など違いがある)や小鳥のさえずり、ひぐらしの鳴き声、牧場の牛の鳴き声や海の波音、さらには上空でとどろく雷鳴の音まで、さまざまな自然音が立体音響で再生されるのだ。単なる自然音BGMというだけのことで、だからどうした、という声もあろうが、他にこういったことを実行したPCエンジンCD−ROMソフトもなく、画期的なアイデアではあった。釣りをテーマとする異色ゲームならではの試みで、「自然派」とサブタイトルをつけただけに、ゲームの中で自然と戯れることができる「癒し系ソフト」としてひときわ生彩を放っている。


◆妹の病気を治すため?釣り三昧!

 可愛い妹が謎の病気になった。妹を救うためには「川のぬし」を釣りあげなければならない、と医者に言われた主人公は竹竿を手に川へ向かう――という設定はファミコン版と全く同じ。フィールド面はさすがにファミコン版よりは綺麗になっているが(僕が一時パソコンでやりこんでいた「RPGツクール」に部品がソックリだけど)、主人公はじめ登場キャラクターたちはファミコン版そのまんま。村の建物類もファミコン版をちょっとグレードアップしたかな、という程度で、正直なところ見た目にはPCエンジンCD-ROMソフトとは思えないほど貧弱だ。キャラが小さいので村の中や店の中の移動がかなり面倒くさく、こういうところをアレンジすればもっとよくなったのに、と思えてしまう。ファミコン版では「はなす」コマンドを選ばないと話せなかったが村人にぶつかっただけで話せるようになったほか、ファミコン版では村の中にある地蔵に話しかけるとキーワードが出たが、こちらはぶつかっただけで自動的にセーブしてくれるようになっている。

フィールド画面(釣り中) 基本設定やグラフィック、システムなどはファミコン版をそのまま踏襲している本作だが、シナリオはかなり変更された。例えばファミコン版では「ブラックバスを釣って来る」のが序盤の課題だったが、PCエンジン版ではなぜか「カジカを釣って来る」に変更されている。別エリアにワープするトンネルを見つけるのに磁石が必要、という展開は踏襲されたがこれも登場時期が異なる(磁石なしでも穴を見つけて先へ進めるのは共通)。マップも大幅に変更・拡大され、広大なマップを移動しやすくするため同エリア内の移動ができるワープトンネルも数多く設置されている。ファミコン版をプレイした人でも全く別のシナリオをプレイさせられてる気分になるだろう。マップ・シナリオの変更に関してはおおむね良い方向に変えられたと僕は思っている。

 釣りをするには竹竿だけでは当然ダメ。釣り針とエサが必要だ。川に出かけて魚がいそうなポイント(説明書に書かれているが、波立っていたり泡や渦や杭があったりする場所)に来て川に「ぶつかる」ようにすると竹竿を手にした釣りモードになり、BGMが自然音声に切り替わる。竿に釣り針をつけ、そこにエサをセットする。
 エサには「川虫」「ねりえ」「赤虫」「さし」「みみず」の五種類があり、魚の種類ごとにくいつくエサが決まっている。面白いことにこのゲームではエサは買うものではなく村や洞窟のなかで探して見つけるもの(冒頭で「めがね」をもらうと見つけられる)。ファミコン版では釣りをするポイントにいる魚のエサのヒントが出るようになっていたが、PCエンジン版ではノーヒントなので当たるまで一通り試さなくてはならない。またファミコンでは一つの釣りポイントで二種類の魚が釣れることがあったが、PCエンジン版では一種類のみになり、そのぶんマップが広がり釣りポイントが増えることになった。

 用意が整ったらIIボタンを押して竿を振り、釣り糸を川に垂れる。赤いウキをじーっと見ていて、ピョコッと動けば魚がいる証拠。エサが当たりなら魚が食いついてウキが沈むので、そのタイミングに合わせてIIボタンを押すと水中での魚とのバトル画面に切り替わる。タイミングがあわないとエサだけ持っていかれてしまうことになる。
 エサに食いついた魚との水中バトルが本作最大のキモ。水中画面では糸と魚が表示され、IIボタンを押すことで魚を上へと引っ張れる。しかし魚の方も当然抵抗して下へと引っ張るので、無理に引っ張りあげようとすると糸が切れ釣り針ごと逃げられてしまう。魚が動いている間はIIボタンを放して放置しておき、魚が動きを止めた時にIIボタンを押してジワジワ慎重に引き上げていくのが基本。見事に画面上まで引っ張り上げれば魚を釣り上げたグラフィックが出て「○○○を釣りあげた。大きさは××cm」と表示される(ファミコン版では水面まで何cmか表示され、「逃がす」という選択肢もあったがPCエンジン版ではカットされた)。逆に魚が画面下まで行ってしまうと魚が逃げてしまい、こちらの敗北。ショックで体力を奪われることになる(笑)。

 要は人間と魚の「綱引き合戦」であり、一見簡単そうなのだが、釣り糸を引っ張ってる間にちょっとでも魚が抵抗したらすぐにIIボタンを放して相手の動きに任せねばならず、なかなかの緊張を強いられる。とにかくせっかちに力任せで引っ張ってはいけないのだ。引っ張り上げるタイミングは魚の種類ごとに一定のクセがあり、それを覚えるのが第一。釣りやすい魚、釣りにくい魚の区別もあるし、同じ種類の魚でも個性と言うのか、素直に釣られるやつと必死に抵抗するやつがいたりして、まさに千差万別。相手のクセを覚え、慎重にタイミングをみるテクニックも必要だが、運の要素もかなりあるので百発百中とはいかない。

 また、どんなに魚が釣れるポイントでも当然無制限に魚がいるわけはなく、一定数釣るといなくなってしまう(PCエンジン版では「魚がいなくなった」と明示される)。小物なら5尾ていど、大物だと2尾も釣るといなくなる。この場合、そのポイントでの釣りをあきらめて他のポイントに移動するか、あるいは釣り道具屋で買える「よせえ」をまいてもう一度魚を集めて釣ることになる。村に戻って宿に一晩泊ると同じポイントに魚がまた集まるようにもなっている。
 一つの川を「渓流」「上流」「中流」「下流」「河口」と五つに分けた広大なマップの中に無数の釣りポイントが設定されていて、それぞれに個性ある魚たちが待ち受けている。全部でおよそ70種類はいるとあり、面白さが分かって来るとそれを全て釣り上げてみたくなるのは必至だ。

 このゲームがかなりの異色作ながら固定ファンが付き、長期シリーズにまでなったところをみると、実際の釣りの醍醐味をうまくゲームに落とし込んでいるのだろう。僕は現実の釣りはまったくしたことがないのだが、そんな僕でもこのゲームの釣りモードにはすっかりハマってしまったのだから、素人 でもハマりやすい絶妙なゲームデザインなのだと思える。原始の狩猟本能を刺激されるというか(笑)、ゲーム本来の目的などを忘れて「釣る」ことに没頭してしまう人続出なのもうなずける。

 最終目的は「川のぬし」を釣ることだが、このRPGでは「ザコ敵を倒すと金が手に入る」というお約束がなく、あくまで釣りによって冒険の必要経費を捻出しなければならない。だから単なる遊びで釣るためだけでなく、ゲームを進める必要上釣りをしなければならないわけで、そこはよく考えたものだと思う。
釣り上げ画面 釣った魚は村の魚屋で買い取ってくれるのだが、買い取り価格の基準はあくまでその大きさ。50cmを超える大物だとかなりの値段で買ってくれるが20cm以下では実に微々たる値段で、かなりの数釣って来ないとまとまった金にならない。下手すると針や寄せ餌などの釣り道具代、「いも」「牛乳」などの弁当(回復薬に相当。これもファミコン版と品目が違う)代、宿代などが払えない貧乏状態になってしまう。行き詰まるのを防ぐためなのか、一部である魚を釣って来ると弁当をタダで満タンにしてくれる村人がいるとか、宿代が不足、あるいは無一文でも宿に泊めてくれるサービスがあったりするが…大物があまりいない中流では慢性的金欠状態になりがちだった。金目当ての釣りとなると大物しか用がなく、小さい魚など相手にしなくなってしまうのがちょっと悲しいところだが。

 釣るのが難しい魚、めったにない大物なんかを釣り上げても現金化するだけ。ある種類の魚を何尾釣ったかはセーブデータに記録され、「図鑑」(後述)の釣果に反映されるのだが、大物記録も「魚拓」みたいに残すようにしてほしかったところ。あとせっかくの釣りなんだから、冒険の食料を釣った魚で済ます、といった要素があっても良かったと思う。金欠状態で食糧が買えず敵に襲われて体力を消耗してるときなんか切実にそう思った(笑)。


◆大自然相手に大格闘!

 このゲームは「釣り」と「RPG」を組み合わせたところがユニークなのだが、RPGに不可欠の「経験値」は釣りとはあまり関係がない。一部に「かえる」や「いもり」といった非魚類の釣りで経験値が入るようにはなっているが、なぜか普通の魚を釣る作業では経験値はいっさい得られない。
 原作のファミコン版が開発されたのが「ドラクエ」大ブームの時期のせいか、このゲームは見た目にかなり「ドラクエ」風味。それならやっぱりRPG風戦闘を、と作り手が思ったのかどうか、フィールドをうろついていると敵が襲ってきて戦闘になり、それに勝ったら経験値が入り、それが一定数に達するとレベルが上がる(体力上限が1つ上がり、攻撃力も増す)というRPG的にオーソドックスな仕組みが採用されている。しかしこのゲームの世界観から言って敵をモンスターにするわけにはいかない。そこでどうしたかというと、戦闘の敵はすべて「もぐら」「ねずみ」「ふくろう」「たぬき」「きつね」「てん」「わし」「ひぐま」…etc.といった野生動物たちばかりになってしまったのである(笑)。

 これら野生動物たちとの遭遇のエンカウントは激しく上下の波があるらしく、まったく遭遇せずにすむ時とやたら立てつづけに遭遇する時とがある。遭遇すると一見ドラクエタイプのコマンド戦闘モードに突入するが、魔法世界ではないためひたすら殴り合いの世界である。このため「自然派」と称しつつ、実態は動物虐待ゲームと当時から揶揄されている(笑)。
 単なるコマンド殴り合いでは面白くなかろうと思ったか、このゲームの戦闘ではアクション要素が取り入れられている。「戦う」を選択すると敵キャラグラフィック内に白い点「攻撃ポイント」があちこちランダムに移動しながら点灯し、その点が敵の体と重なったところでボタンを押すと相手を「ぶんなぐった」ことになり、ダメージが与えられる。野生動物たちにはそれぞれ「急所」が設定されていて、そこをうまく攻撃すると大きなダメージが与えられる。おおむねどの動物でも顔周辺は急所になっているが、「やまじか」なら角、「たぬき」ならしっぽ、「からす」ならくちばしといった具合にそれぞれ特徴のあるところが最大の急所になっていることが多い。だが攻撃ポイントはランダム移動のためそううまく急所を攻撃できるとは限らず、しかも急所を攻撃しようと待っていると攻撃ポイントの移動速度が次第に早くなり、急所に当てるどころか全くの空振りに終わることが多くなる。これはこれで面白いとも思ったけど、戦闘の時間がかかり、自分のレベルが低い時に連続で戦闘させられるとかなり苦痛だ。

 一回の攻撃で敵に与えられるダメージ数は自身の体力数に比例する、というのも特徴。つまり体力満点の状態なら敵にかなりのダメージを与えられるが、こちらがダメージを受けまくって体力数を減らしていると攻撃力も落ちてしまう。従って「弁当」を食べて体力を回復して戦う必要があるのだが、釣り道具屋で売ってる弁当の価格は決して安くはなく、むやみには消費できない。
 おまけにこのゲーム、全体的に敵が強い。敵の攻撃力も体力に比例するため戦闘序盤の攻撃力がやたら高く、こちらの体力を大幅に奪ってくれる。相手にダメージを大きく与えていけば被害も1程度になってくれるのだけど、こちらのレベルをかなり上げないとフィールド上で普通に遭遇する「ザコ敵」にもかなり苦戦させられることがある。

 さらに森林や茂みで遭遇する敵は体力・攻撃力が異様に高く設定されていて、結構レベルを上げたつもりでも大苦戦を強いられる。連続で遭遇した日には目も当てられず、勝てば大量の経験値が得られるとはいえ鬱陶しいことこの上ない。また次のエリアへ進むトンネルを抜けると、とたんに敵がやたら強くなるのもファミコン版以来の特徴で、いくらレベルを上げても楽勝ということは決してない。しかもレベルアップは割とホイホイとハイペースでするものの、体力上限が1つ増えちょっと攻撃力が上がるだけなので劇的な変化は望めないし、そもそも体力57が上限と決まっていてそれ以上はいくら経験値を得ても上がりはしない。最終エリアの「河口」の敵は最高レベルでも大苦戦必至の凶悪さで、この頃には手に入る「たらい」で水路を進んで敵と遭遇しないようにするのが基本。ただしこれも漕ぐのに体力を消費するんだよなぁ。


◆終盤の詰めが甘い?

 普通のRPGでは敵と戦うと経験値と金銭が得られる。経験値はともかくなんで金が得られるんだ、というツッコミは昔からあり、このゲームのように「釣りで金銭、戦闘で経験値」とハッキリ区分したのはリアリティという点では評価できる。ただ、実際にゲームになってみるとこの二分化はゲーム後半から終盤にかけてプレイの足を引っ張ってる感じもある。
 上記のように体力の上限は57と決められていてそれ以上はいっさいレベルアップしない(最初僕はバグかと疑ってしまったが、ネットで調べたらファミコン版でも同じだった)。普通にプレイしていても後半エリアの「下流」に着くころにはその上限に達しているはずで、それでいてザコ敵がザコとは思えぬほどに強い。「逃げる」という選択をとったとしても、このゲーム、逃げられる成功率が異様に低く、めったに逃げられない。それも相手の強さ次第らしく、強い敵ほどまず逃げられないという非常に厄介なことになる。苦労して勝利しても体力はボロボロ、弁当も消費してしまい、それでいて経験値も金銭も得られないというまさに不毛な戦いを強いられる。先述のように一応「たらい」で移動することで戦闘回避はできるようになっているとはいえ、完全に回避できるわけでもなく、これはもう少しどうにかならなかったものか。
 そもそも野生動物相手の虐待戦闘など入れずに釣りで経験値を得られるようにして、エリアの先へ進むにも何か大物の魚を釣らねばならないといった課題を課すとかすれば、釣りゲームとしてもっと徹底がはかれたのに…と残念に思う。

 ゲームの終盤、「河口」エリアにいくと「川のぬし」を釣るために必須の「ぬし竿」「ぬし針」を入手できる。もう一つ必要な「ぬしえ」は普通にプレイしていればいつの間にか手に入っているはず。さあ必要なものはそろったから「川のぬし」を探せ!ということになるのだが、僕自身はこっからえらい目にあってしまった。あくまで僕自身のプレイ経験ではあるが、さすがに作りが不親切と思ってしまったもので若干ネタばれこみで愚痴を書く。
 「ぬし」の居所については途中であるキャラから「流れの速い渦の中」とヒントがもらえる。このヒント、調べたところファミコン版とは異なるそうで、なんで変更したのか謎。話の流れからいって「河口」エリアのどっかだろうと思い、このエリアのあちこちにある渦に釣り糸を垂れてみたが「ぬし」以外の魚がひっかかるばかり。もしかして…と思い、前半プレイした上流エリアの急流の渦のどれかではと疑ってそちらも一通り回ってみたがやはり見つからない。最初の渓流までさかのぼってみたがやはり見つからない。やっぱり河口か、と思い返して河口に戻り、ここでうろつくうちにようやく画面左方向に「たらい」で広大な海を越えていくとさらにマップが広がっていることに気づく(ま、これはこのエリアのマップが妙に狭いので最初に気づくべきか)。やれやれ、と思いこちらの渦も一通り当たってみたが、釣るのが難しい魚がいるばかりで肝心の「ぬし」が見つからない。それを探しているうちにも凶悪な動物たちと不毛な戦闘をしなきゃいけないし、まさに胃が痛くなる思いをした。

 はて…?とさすがに困ってしまい、ネット検索までかけて攻略情報を探してしまった(通常禁じ手にしてるんですよ、僕は)。しかしファミコン版や後続のシリーズについては攻略サイトがあるものの、肝心のPCエンジン版はプレイ人口が少ないのか全く見つからない。PCエンジン版はファミコン版をベースにしているのでそう違いはあるまいと思ったのだが、この手のサイトで調べてみるとやはりファミコン版とPCエンジン版は微妙にシナリオ・マップが異なっていて全面的には参考にならなかった。
 ただ河口マップの隅の一カ所、どう見ても怪しい大渦がある。他の大渦は全て釣り糸を垂れて他の魚が釣れることを確かめたが、それを確かめられない大渦が一つあるのだ。じゃあそれだろ、と当然思うのだが、釣り人が立てる一番近い位置から竿を振っても絶対に届かない離れた位置にあるのだ。どういうこと?と思い、渦の中にたらいで入ってみるとか、どっかに見えない足場があるんじゃないかとかいろんなことを試したのだが、何も起きない。
 ずいぶん悩んだあげく、ファミコン版の攻略記事の中でふと気になる記述を見つけた。“「うき」を遠くまで投げる”…?あれ?もしかして竿を振る時に距離の調整ができるのか?これまでそんなことする機会は一切なかったのだが…しかし、これはそうとしか思えない。そこでIIボタンを長めに押して竿を振ってみると……ヒューーーッと「うき」が飛んであっさり問題の大渦に届くではないか!気が付かなかった僕も間抜けとは思うけど、マニュアルに一切そんなこと書いてないんだぜ!ラスボス「川のぬし」はその後たった二度のアタックで釣り上げてしまったが、もしかして作り手はこの「IIボタン長押し」を自分で見つけるのがプレイヤーへの最後の試練とでも思っていたのだろうか。さすがにこれには頭に来たなぁ。
 
 「川のぬし」を釣ってしまえば、あとは妹のところへ戻るだけ。ファミコン版はこれまで通ったエリアを延々と歩いて戻ったそうだが、PCエンジン版はさすがにそれは短縮。最寄りのトンネルに入ると即座に最初の村の近くのトンネルに抜けてしまう。村に入るとエンディングメロディーが流れだし、家に入るとあとは自動的にキャラが動いて妹も健康を取り戻し、みんなの祝福のうちにエンディング。しかしファミコン版そのままなのか、ビジュアルもスタッフロールもなく、ファミコン同様の家の中とキャラが映るなか曲が流れるだけで、苦労させられた割にえらく寂しいエンディングで脱力した。どうもこのゲーム、中盤までは結構面白く感じたのだが、後半は苦労ばっかりの上に愛想のない演出でいちじるしく評価を下げてしまった。なるほど、あえて最終目的を果たさずに、ひたすら「釣り」だけに没頭するプレイヤーが多数いるわけである。そういう遊び方が本来の姿なのかもしれない。

図鑑画面 本作はCD-ROMの大容量を生かして自然環境音声を再生するだけでなく、登場する魚の「図鑑」まで搭載している(タイトル画面から入れる。別に釣った魚でないと表示されないと言ったことはない)。PCエンジンはファミコンよりは発色数も多いのでゲーム中の魚グラフィックもよりリアルになっているが、図鑑ではさらにアップで表示されいかにも図鑑らしい。
 図鑑は渓流・上流・中流・下流・河口に分けて登場する魚がリストアップされていて、どれかを選ぶとその魚のアップ画像が出て、その平均体長やゲーム中での釣果、そして料理など利用法が表示される。ブラックバスの利用が「スポーツ用」というのは分かるとして、「ニジマス」の利用が「まずい」の一言なのには笑ってしまう(右図)。

 最後にこのPCエンジン版「川のぬし釣り」、「ぬし釣り」シリーズ公式サイトでもシリーズ中でやや不遇な扱いを受けてる気もするが(あくまでファミコン1作目のリメイクだからかな?)、2007年11月に「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されていて、最近のマシンでもプレイすることは可能だ。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)

キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.636
3.545
3.227
3.000
3.090
3.500
20.000
第449位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

東千里

びいず羽岡


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

アルツ鈴木

渡辺美紀

TACO・X


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