ウィザードリィV

ジャンル:RPG
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:ナグザット
発売日:1992年9月25日
価格:7400円
商品番号:NXCD2011


◆「WIZ」がPCエンジン世界に初登場!

外見 「ウィザードリィ」そのものについては「ウィザードリィI・II」(’93)のところで触れちゃっているので、ここでは割愛。本作は「V」であるからして当然シリーズ第5作にあたるのだが、PCエンジン世界の中ではこの「V」がシリーズ初お目見えとなっている。この時点ではこの「V」がシリーズ最新作であったはずで(PC版オリジナルは1990年発売)、シリーズ初お目見えとはいえ割と早い移植であったようにも思える。結果的にこれが好評であったらしく、以後シリーズをさかのぼって「I」〜「IV」が順次PCエンジンSCDに移植されていく事になった。そうした事情のためか、「I」〜「IV」が完全に同一システムで、デザインも統一されているのに対し、この「V」はデザイン・操作系とも他の4本と異なりまだ未完成な印象で一本だけ浮いた存在になってしまっている。

 「WIZ」としては初のコンシューマーCD-ROM移植ということで本作には短いながらオープニングビジュアルがついていてプレストーリーを語ってくれる。リルガミンの町の近くには異界との「結び目」があり、これを「宝珠」で封じる「ゲートキーパー」という存在があった。ところがゲートキーパーの従者である魔女ソーンが裏切り、宝珠とゲートキーパーを地下迷宮に閉じ込めてしまい、異界から邪悪な者どもを呼び寄せてこの世を支配しようとしてしまう。冒険者達はソーンを倒して宝珠とゲートキーパーを解放することを目的に地下迷宮へもぐっていく…とまぁ、こんなストーリー。シナリオタイトルは「HEART OF THE MAELSTROM」(災厄の中心)だ。

 シナリオの違いを除けばゲーム開始時は「I」からプレイしてきた人にはすっかりおなじみの世界。毎度のように「リルガミンの城」があり、「ギルガメッシュの酒場」があり、「冒険者の宿」があり、「ボルタック商店」があり、「カント寺院」がある。ただし僕自身のようにPCエンジン版の「I」から順番にプレイしてきた冒険者には、この「V」の城内の様子はかなり異質に見える。まず全ての施設名、コマンド名が日本語で統一されているのが目を引く(「I」〜「IV」は全て英語表記だった)。それから各施設に入ると内部の様子を描いたビジュアルが表示され、例えば酒場では「ワイワイガヤガヤ」といった効果音まで聞こえてくる。オリジナルのほうは未プレイなので断言は出来ないのだが、こうした変更はやはりコンシューマーへの移植であるからより一般向けにと配慮したこと、それとせっかくCD-ROMなんだからとビジュアルと音声を追加してみた、ということかと。しかしあとから発売された「I・II」「III・IV」が原作に近いシンプルなデザインで統一されたところを見ると、あんまり好評ではなかったということかもしれない。モンスターデザインも「I」〜「III」とは違った雰囲気(PC版と同じなのか?)になっているのもPCエンジン内のシリーズとしてみると統一性を欠いて残念なところだ。
 まぁそれでもそこは「ウィザードリィ」。ダンジョンの中に入ってしまえばもうおんなじです(笑)。ひたすら暗くて四角い迷路の中を彷徨い、扉を開け、敵と遭遇して戦闘、金や宝箱を手に入れてアイテムを入手したり罠にひっかかったり(笑)、ナゾナゾを解いたりしながら淡々と探索を繰り広げ、経験値を稼いでキャラクターを育てていく。中毒性の高い王道中の王道だ。


◆導入された新要素

 「ウィザードリィ」は「I」〜「III」までは基本的に全く同じシステムを貫き、「IV」で敵ボスを主役にするというお遊びをしたものの、システムそのものはほとんど変化しなかった。この「V」ももちろん基本線は踏襲しているのだが、さすがに5作目ともなると新要素導入に踏み切らざるを得なかったようだ。

まず大きな変化はこれまで頑固に守ってきた、「各階のマップは20×20」というルールがついに破られ、マップが不定形に変化した。僕などはここまでのシリーズを方眼紙ではなく20×20の小型の400字詰め原稿用紙(笑)に書くという暴挙をやっていたため、この変更は辛かった。原稿用紙を何枚もつないでマップを書かなきゃならないんだもん(笑)。方眼紙の場合も大きめの用意しなきゃならないし、マッピング作業が少々面倒になったのは事実。その後の移植作品などではオートマッピング機能がついちゃったものもあるらしいが…。シリーズおなじみの便利テレポート魔法「MALOR」もこのシナリオではなかなか大変だ。

商店画面 他の重大な新要素としてはNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)の存在がある。これまでもダンジョン内で出会う「友好的なモンスター」がいたりしたが、本作では特定の場所を徘徊しているNPCがおり、戦うことも出来るが、これと友好関係をもって会話して情報を集めたりアイテムの売買、あるいは窃盗(笑)を行ったりといった冒険を進める上で重大な意味を持つようになっている。うっかり戦ってNPCを殺してしまった場合、パーティーキャラと同様にカント寺院で復活させてもらうことも出来るようになっている。もちろん大金がかかるけど。

 また戦闘面でも変化があった。これまではパーティーのうち前列3人だけが直接攻撃が可能で後列のメンバーは魔法・アイテム攻撃などに徹するしかなかったのだが、本作からついに「飛び道具」が登場、後列からの攻撃も可能となった。
 魔法の呪文にも変更や新規に加わったものがかなりあり、戦闘関係ばかりでなくNPCを魅了するとか扉のカギを開けるとかいったものもある。またシリーズを通しての魅力と同時に恐怖の対象(笑)である宝箱の罠にも若干の変更がなされている。
 それと変わったところで「水泳能力」なんてパラメーターが追加された。ダンジョンの一部に水にもぐれるところがあり、そこの探索に関わってくるもの。まぁあんまり気にしなくてもいいという気もするが…。

 といった変更点はいくつかあるが、本作はこれまでのシリーズの要素を踏襲し、総合した「集大成」的シナリオと言われる。結局はシナリオクリアなんてそっちのけで戦闘・レベルアップ・転職・アイテム探しに熱を上げちゃうことになろう。


◆まだまだ洗練されてないシステム

 繰り返すが本作はこの時点での「ウィザードリィ」シリーズ最新作であるがPCエンジンでは最初の一本である。もしかするとパソコン版原作を忠実に移植したのかもしれないが、その後発売された「I」〜「IV」と比較するとシステム面での不便さが目立ちやや遊びにくい。
 表記が全て日本語なのは結構なのだが、そのため画面内に表示できる情報量が少なくなってしまい(字が大きいのだ)、個人のパラメーターを参照する際に次々とクリックして画面を呼び出さねばならずえらく面倒なのだ。特に魔法の参照が非常に面倒で、これについては「I」〜「IV」が全て英語&ひらがな・カタカナのROM文字で統一して一画面でいっぺんに見られるようになっていたのがいかに便利だったのか実感する。

戦闘画面 また本作はSCD専用ソフトではあるが、開発時期がSCD登場前後だったことも影響しているのだろうか(この時期のSCDソフトの常でケースの裏面にSCDシステムのガイドがわざわざついている)、「I」〜「IV」に比べると読み込みタイムが多い。ダンジョン内でのキャンプはRUNボタンを押して「しばらくお待ちください」と待たされるし(「I」〜「IV」は2ボタン一発で切り替わった)、リルガミンの城に戻る際やダンジョンに入る際にも若干待たされる。戦闘でもややもたついてる感がある。こうなるとわざわざグラフィックを表示しなくてもいいのに…という気にもなってくる。ダンジョン内の壁表現などはオリジナルパソコン版同様のフレーム表示にできたりもするのだが。

 システム面で痛いのはなんといってもセーブ容量。技術的なことはさっぱり分からないが、この「WIZ」シリーズはいずれもPCエンジンバックアップRAMの全領域を占領してしまうため、このシリーズを遊んでいるうちは他の要セーブゲームを遊べなくなってしまう。また「I」〜「III」はシステムが完全統一されているためキャラクターデータのシナリオ間の相互転送が可能となっているが、この「V」のデータ管理はやや特殊で、パスワードを使用する事により同じ「V」を遊んでいる友達のバックアップRAMのリストにキャラクターデータを「転送」できる仕掛けとなっているのだ。
 「I」〜「III」が開発されたのは「V」のあとのことなので仕方ないのだが、「I」〜「III」で育てたキャラを「V」に直接転送して遊ぶことはできない。ただし先述のパスワードを利用すれば相互のデータ転送は可能となっている。ただこのパスワードが異様に長くアルファベットとカタカナが入り混じっていて入力が大変なのもまた事実。

 最後になるが、「ウィザードリィ」シリーズはこのシナリオ5で初期シリーズの集大成にして「リルガミン」シリーズはここでひと区切りとなった。続くシナリオ6からは大きく変貌を遂げて行き、オリジナルのファンからは不評を買いつつも比較的一般的なゲームとして定着し、今なお「外伝」やらオリジナルシナリオやらが出て脈々と続いている。PCエンジンでは幸か不幸かこの初期シリーズのみしか遊ぶことが出来ないが、ハマると抜け出せない、中毒的ゲームとして長く遊べるという点ではこの5作で十分だと言えるかも。
 

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.548
3.935
3.483
3.483
4.225
3.677
22.354
第185位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

東千里

びいず羽岡


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

ジョルジュ中治

渡辺美紀

イザベラ永野



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