エグザイルII〜邪念の事象〜

ジャンル:アクションRPG
媒体:SUPER CD−ROM
発売元:日本テレネット(RIOT)
発売日:1992年9月29日
価格:7200円
商品番号:TJCD2028


◆イスラム風味RPG、エンジンオリジナルの続編

外見 本作は「エグザイル〜時の狭間へ〜」(’91)の続編。そちらの項目でも書いていることだが、パソコン版「エグザイル2」はPCエンジン版の「時の狭間へ」の原作であって、PCエンジン版「エグザイルII」はそれとは全くの別物なのだからややこしい。この「エグザイルII・邪念の事象」は「時の狭間へ」の完全な続編であり、なおかつパソコン版が存在しないPCエンジンオリジナルの新作なのだ。

 登場人物、世界観は前作を完全に踏襲していて、主人公はやはりイスラム暗殺教団「アサシン」の指導者・サドラー(声・塩沢兼人)だ。ただし前作「時の狭間へ」は諸事情によりパソコン版ストーリーから若干の改変があったため(詳しくはそっちの項目を参照)、ヒロイン(といっても特に印象には残らないんだが)のルーミー(声・皆口裕子)の生死が不明、いやどうも死んでしまったとしか思えないような消化不良な終わり方をしていて、その終わり方をひきついで解決する設定にはなっている。これについてはPCエンジン版をプレイした人から批判が強かったのではないかと推測。
 前作から半年後から話が始まり、不思議な老人の指示を受けたサドラーは最初に入るバグダッドの町で、そのルーミーと再会することになる。これがまたあまりにもアッサリな再会で…(笑)。町の中の住人の一人に紛れ込んでいたルーミーと会話する文字列だけで処理しちゃうんだよな。せめて顔グラフィックを出すとか声を出すとかできなかったものか。こうした手抜きとも思える単調な会話文字列のやりとりはこのゲーム全体に見受けられる。
 文字列の表示がピピピピ…と音を立てながら速度が遅いのが気になる。ボタンを押すと早送りになるのだけど、それだと重要な会話を読み落としたり、選択肢を選んじゃったりするので注意が必要。

 さて今回のストーリーは前作ほどはブッ飛んでいない(笑)。が、それでもバグダッドから始まってインド、エジプト、エルサレムなどそこそこ広範囲の舞台である。飛行機でも使っているかのようにあちこち瞬時に飛びまわった前作とは異なり、今回はほとんどの町が横スクロールで表現されたダンジョンでつながっている。しかし5分かそこら歩いただけでバグダッドからインドまで行けたりするのでかえって不自然さが増してしまったが(笑)。

 歴史上の実在人物が出てくるのも前作と同様。今回はこれまた世界史マニアなら知ってるスペインの英雄・エル=シッドが登場(声・森功至)。12世紀を舞台とする本作には時期的にあわないのだが、死んだ人間がラスボスである「邪念」の策略で蘇ったという強引な説明でアリにされてしまう(笑)。
 このエル=シッド、同行してるだけだった前作までの実在人物キャラと異なり、アクション場面でも使えるのだ。彼だけではなくヒロインのルーミー、前作では重要キャラ扱いのくせに顔見せだけだったキンディとファキールも、本作ではサドラーと交代して操作することが可能となった。それぞれに個性があり、例えばルーミーはジャンプ力&短剣投げ、キンディは怪力、ファキールは魔法攻撃といったようにキャラごとに一長一短がもうけられ、状況に応じて交代させながら進んでいく、という遊びが出来るようになった。
 これは同社の「ヴァリスIII」(’90)がやはりPCエンジンオリジナルの続編として製作された際に、同様のキャラチェンジシステムが導入されていたことを連想させる。もっともこの点については「エグザイルII」は「ヴァリスIII」ほど成功しているとは言いがたいが。

ゲームオーバー画面 なお、誰に交代していようと経験値は全員一緒に蓄積されレベルアップも全員同時。そして誰で戦っていようと敵の攻撃を受けてHPがゼロになったら、そこで全滅、ゲームオーバー。ゲームのセーブは町など見下ろし画面モードの時しか出来ないので、ダンジョン奥地のボス戦でやられたりするとかなり精神的にダメージが大きい。
 しかし謎なのは誰でやられようと「サドラーの墓の前で冥福を祈るルーミー」のゲームオーバーグラフィックが出ること(右図)。「パーティー全滅ってことなんだからルーミーも死んでるはずじゃないか」とか「ゲーム中一度も笑顔を見せないクールなサドラーの幸せそうな微笑はなんなんだ」とか、いろいろツッコミたくなる絵なんだが、そもそもイスラム教徒の墓で十字架ってアリなのかという大問題が(笑)。


◆高まったアクション性と仕掛けの多いダンジョン

 前作で盛りだくさんすぎたことの反省か、今作のストーリーは割とシンプル。あぶなっかしい宗教ネタもほどほどである。エジプトのピラミッドも出てきたが、バベルの塔とかノアの箱舟とか旧約聖書ネタが目に付いたような気がする。
 その代わりというわけではあるまいが、攻撃力UPのドラッグにずばり「ハシーシュ」が入っていて、こちらの方向でヤバさが(笑)。前作では武器や道具は英語表記だったのが全て日本語表記に変えられたことで、かえって危険度が増しているような…。そうそう、ドラッグを使いすぎた場合の「副作用」もちゃんとある。

 前作では単調気味だったアクション部分は今回は大幅に面白くなっている。敵ザコキャラの出現の仕方も改善され、ある程度倒すとその付近ではモンスターが出てこなくなるとか、敵の種類や攻撃がバリエーション豊富になるとか(その代わり「不意打ち攻撃」系が多いのが頭に来るが)、ボス戦ごとに攻略の仕方があるとか、とにかくいろいろ工夫が加わっている。
 これに加えて先述のようにキャラチェンジが可能となったため、ある程度「戦略性」という要素も入ってきた。サドラーは剣を振り回すだけで前作にあった魔法攻撃はできなくなり、その代わりファキールが魔法オンリーなキャラとして使えるようになった。もっともファキールは動作が遅すぎるので、動きが早く飛び道具が使えるルーミーがかなりのお便利キャラになる。使えねぇなぁと思っていた怪力男・キンディも、あるボス戦ではかなり役にたってくれた。

仕掛けいっぱいのアクション場面 アクション場面で探索する事になるダンジョンも前作以上に工夫が見られる。特に上下に移動する階層構造が多くなり、ジャンプして届くか届かないかという微妙なところを飛び石状に渡っていくところとか、結構面白い。その代わり前作ほど複雑な迷路は出てこなかったような。
 当たるとダメージがあるトゲトゲや電撃、上に乗って移動できる浮遊板、上下する床など見た目に楽しい動きのあるギミックも多くなった。もっともいずれの仕掛けも当たったところでさしたるダメージはなく、全体的に甘めなのは相変わらず。

 ダンジョンのところどころに宝箱が置いてあるのも前作からひきついだものだが、宝箱を開ける動作(宝箱の方を向いてボタンを押す)をなかなか認識してくれず困ってしまう場面も多かった。終盤になると店ではなくこうした宝箱に強力な武器類が隠されていることが多く、けっこう見落としがちなところにあったりするので注意が必要。だた、僕も最強ではない装備でクリアしちゃってるぐらいで、絶対に必要というわけでもないようだ。

 「アクションゲーム」としては前作より楽しめたと思ったが、ストーリーは前作以上に簡単で短い。それこそ集中してやれば2時間ちょっとで終わってしまうのではなかろうか。
 SCDになったことでビジュアルシーンは前作より多めでフル画面のアニメ演出も見られる。しかし各ダンジョンでラスボスを倒すと真っ黒な画面に白の字幕で淡々と展開を説明し次の場面へ行っちゃうという進行には首をかしげるところも。また逆に、クライマックスの場面、ラスボス戦前の「あわや大ピンチ!」の盛り上がる展開を全てビジュアルシーンで語って済ましてしまうというのも、プレイヤー置き去りという観があった。
 物語が盛り上げも少なく唐突に幕切れになっちゃうのも前作同様。ここをもう少し工夫すれば後味のいい作品になったろうに…と惜しまれる。

 その唐突なエンディングだが、なにやら深いお言葉が字幕で延々出てくるので、そのまま転載。

「人間の深層心理にある、信仰と私欲の矛盾。其の矛盾が引き起こす葛藤。人間は己の欲のために働く。これを私欲と言う。人間は自分の意思で働く。これを私欲とするなら真の信仰とは何なのか?」
「信仰とは神の教えに耳を傾け、自らの意思を超越した使命を全うする事である。何処にも見えない神を信じることは私欲の源となる」
「己の心にいる神を信じる事により人間は初めて私欲の鎖から解き放たれる。その時こそ神の教えが真理となる」


 う〜〜〜〜ん…なんか凄い事を語っているような気もするんだが、このゲームのラストで唐突にそんなこと言われても(笑)。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.025
3.897
3.307
3.615
3.641
3.435
21.923
第227位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

ジョルジョ中治

渡辺美紀

TACOX



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