蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史  
ジャンル:歴史シミュレーション
媒体:SUPER CD-ROM(メモリーベース128/セーブくん対応)
発売元:光栄
発売:1993年9月30日
価格:9800円
商品番号:KOCD3004


◆光栄歴史三部作の一本

外見 
光栄(現コーエー)といえば「信長の野望」と「三国志」に代表される歴史SLGの老舗。いまなお歴史SLGの新作はまずパソコンから出すあたりはパソコンゲームメーカー出身の矜持を感じるところだが、ファミコン時代から積極的にコンシューマーゲーム機にソフトを出しており、歴史SLGファンのすそ野を広げることにかなり貢献したメーカーと言っていいだろう。かく言う筆者も最初にプレイした歴史SLGはファミコン版の「信長の野望・戦国群雄伝」だった。

 光栄のPCエンジン参入は1992年末と、振り返ってみればPCエンジンの後期という遅い時期である。当時はスーパーファミコン、PCエンジン、メガドライブの順のシェアで「三国鼎立」の状態を為していたが(笑)、光栄がPCエンジン参入に遅れた理由は簡単。光栄歴史ゲームが必要とする大容量データをセーブ出来る機能がPCエンジンには無かったからなのだ。PCエンジンのSLGを一つでもプレイしてみると分かるが、PCエンジンのバックアップメモリは悲しいほどに容量が少なく、一つのSLGをプレイするには他のゲームのデータを消してその一本に専念しなければならないこともしばしばなほどだ。またファミコンのような大型カセットはその内部にバックアップRAMを搭載することが可能だったが、PCエンジンではCDはもちろんのことHuCARDもそんなものを搭載するようなスペースは無い(たった一本だけ例外があるが)。PCエンジンで光栄がゲームを出すためには新たなセーブ用周辺機器の出現が必須の条件だったのだ。
 その大容量セーブ用周辺機器が「メモリーベース128」であり「セーブくん」だった。前者はNEC-HEから発売されたが後者は光栄自らの発売で「信長の野望・武将風雲録」(’93)に同梱されるという熱の入れようだった。これを皮切りに「三国志III」「蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史」「信長の野望・全国版」(いずれも’93)と光栄の看板ゲームが立て続けにPCエンジンで発売されたのである(確かメガCDでも同時展開をしていたはず)

 さて、本作「蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史」はチンギス=ハーンとモンゴル帝国の時代を描く世界史ものSLGシリーズの第2作のパソコンからの移植である。「信長」「三国志」に比べると新作発売ペースの遅いこのシリーズだが、それなりに根強い人気があるようで光栄の歴史ものの主軸の一つとなっている。この「元朝秘史」ではシナリオが大きく二部構成に分かれており、第一部がモンゴル統一の戦い、第二部がモンゴル統一後のユーラシア全土統一を目指す戦い、という内容になっている。特にこの後半部分においてはモンゴル以外の世界諸地域、中国、ヨーロッパ、イスラムさらには日本の鎌倉幕府までプレイ可能で、それらによる「世界統一」が可能となっており
光栄の数ある歴史SLGの中でもスケールの大きさにおいて他の追随を許さない。


◆広い世界を駆け抜けろ!

 筆者も歴史ファンだから光栄の歴史SLGはいくつかプレイしている。そのほとんどはファミコン時代のものかWindows95期ごろのものばかりでその後ほとんど手を着けなくなってしまったが。その中でもやはり「三国志」と「信長の野望」を良く遊んでいて、個人的には「三国志II」と「信長の野望・武将風雲録」の熱中度がかなり高かったように思う。その間に挟まって「蒼き狼と白き牝鹿」はそれほどプレイしているわけではない。
 「信長」と「三国志」はまるで違う世界のようでいておおむね共通性があり、乱世の群雄となったプレイヤーが多数の家臣団を従えその能力を生かしてじっくりと富国強兵に邁進し、やがて蓄えた力で周辺諸国を征服していく、というのがだいたいの勝利パターン。遊び方は人によるだろうが、クリアを目指す場合だいたいこんな形になるもので、序盤はひたすら地道な国づくり、内政に集中させられる。そして次第に加速度がついてきて、終盤は一気一気と力で押しまくり全国統一へと急テンポで進んでいくようになる。とかくこの2作は序盤の地道な辛抱強い内政がものをいう作りになっていて、そこらへんの地道さぶりがコツコツタイプの人に受けるところでもあり、気の短い人には敬遠されるところなのだろう。

ゲーム画面 それでこの「蒼き狼と白き牝鹿」だが、主舞台がモンゴルの草原、遊牧民族の世界ということもあって、かなり趣きが異なっている。もちろん内政・国づくりは大きな要素となっているが、農耕世界と違い「開発すれば収入が増える」というものではない。税収して集めた物資を商人に売ってもうけることも出来るが、それとて場所によっては商人そのものが来ない地域もある。となると、選ぶ道は…そう、近隣を侵略し物資を略奪すること(汗)。自分の土地にしがみついてないで全勢力を動員して近隣へ攻め込むという、一か八かの戦いをしなければならないこともある。この辺はいかにも遊牧騎馬民族の歴史SLGらしいところで、考えたものだとは思う。
 
 このゲームの戦闘はいささか特殊だ。まず戦争にあたってプレイヤーは騎馬隊・弓隊・歩兵といった各種軍隊を編成して「軍団」をつくり、それを配下の武将達に率いさせる。その軍団がある地域に攻め込むと、まずその地域全体の地形マップが出て、その中で軍団ユニットを移動させていく。そして敵味方の軍団が隣接し戦闘に入ると、今度は拡大された戦場のマップが表示され、その中で各種部隊を将棋よろしく動かして戦闘を行っていくのだ。この二段構造のため、一つの戦争にかかる時間はかなりのもの。処理速度は遅くは無いけど(同社の「三国志III」は地獄のように遅い)、手間がかかるのは確かだし、他国同士のCPU戦争を「見る」モードにしていると、これがまた大変な時間をとられてしまうのだ。

 後半のシナリオだと舞台はモンゴルだけでなく全ユーラシアに広がるので、ヨーロッパ、イスラム、中国、日本などさまざまな文化地域の人物・軍隊が登場し彩りは豊か。このゲームでは他の光栄作品同様CD−ROMの容量を生かしてこれら全登場人物の解説を収録しており、良く知らない地域の歴史人物に触れられる楽しみもある。


◆「蒼き狼と白き牝鹿」といえば…!

 さて「三国志」「信長の野望」と並ぶ人気シリーズの本作、その知る人ぞ知る最大の特徴といえば…そう、「オルド」の存在である!「オルド」とは要するに後宮、君主がその妻達を収容しているハーレムが大きな要素、というかお楽しみ(笑)としてこのゲームには歴代登場しているのだ。
 なんでこんな要素が入ったかといえば、チンギスハーン自身が敵を征服してそのオルドに入っていた女性達を自分のオルドに入れることを何よりも楽しみにしていたという歴史的事実が大きな理由だろう。このゲームにおけるオルドも似たようなもので、各地を征服すると次々と女性がオルドに入り(その中には北条政子などおなじみの人物もいる)、君主つまりプレイヤーはこれら女性達との「子作り」に邁進する(笑)のである。

 とはいってもそこはゲーム。この「オルド」は無条件に子作りができるわけではなく、相手女性との愛の駆け引きをしてその心をつかまねばならない。オルドに入った君主は言葉や目線や手を握ったりで女性に愛をささやき、自分を誇示したり悩みを打ち明けたり相手にごまをすったり、プレゼントを贈ったりと、まぁいろいろやって相手女性の愛を勝ち得なければならないのだ。攻略方法は女性の性格により異なっており、このあたりは歴史SLGじゃなくて完全に恋愛SLGの元祖だったとも思える(笑)。
 この愛の駆け引きの部分、実はしっかりと「声入り」なのである(爆笑)。聞いてるとすっごく恥ずかしいぞー。女性の愛情値が上がると次第に女性が君主の方へ歩み寄ってきて、クリアするとめでたく抱き合い、天使達が唐突に現れて舞い(笑)、女性が肌をはだけている(さすがにヌードではない)ちょっと色っぽいグラフィックが表示され、「子作り」をしたことが暗示される。とどめはオルドが終わって通常画面に戻ると、政治顧問から「お疲れ様でした」と声をかけられること(爆)。よく18才以上推奨にならなかったものだ(笑)。

 もちろんこのオルド、単なるお遊びばかりでもなく、やがてその女性が子供を産むと、それはやがて成長して後継者、あるいは有力な武将となってくれたりするのだ。どういう子が生まれるかは女性ごとに傾向があるらしく、そのあたり禁断の一夫多妻の楽しさが味わえるところでもある(笑)。

 ともあれ、「三国志」や「信長」とは違った、かなり豪快な仮想歴史体験が出来るという点が本作の魅力だ。



◎各誌評価


★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.45
3.74
3.29
3.53
3.68
3.66
21.34
第287位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★★

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真
70
パトリオット佐藤
65
ウォルフ中村
85
メタラー佐々木
65

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
野田稔

鈴木ドイツ

イザベラ永野

TACOX




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