AV誕生   
ジャンル:育成シミュレーション
媒体:SUPER CD-ROM(GAME EXPRESSカード)
発売元:GAME EXPRESS(ハッカー)
発売:1995年
価格:9800円
商品番号:GED-1015


◆ひねりもなくそのまんまのパロディ育成ゲーム

商品外観 「AV誕生」…まぁ何と言いますか、安直というかひねりが無いというか、誰もが一度は思いつくだろうが実行まではふつうはやらない(笑)。「誕生」の由来は言うまでもなく当時パソコンで発売され人気が出たので家庭用ゲーム機にも移植が進められていた(PCエンジンでもやっぱりNECアベニューから発売された)、ヘッドルームの美少女アイドル育成ゲーム「誕生〜Debue〜」から。この「誕生」はプレイヤーが芸能プロダクションのマネージャーとなり三人のアイドルの卵たちを育て上げる、というものだったが、こちら「AV誕生」は「AV=アダルトビデオ」の女優の卵たち三人を育て上げるというまさにそのまんまな内容。タイトル見た瞬間にどういうゲームかすぐ分かるという代物だった。

 恐らく史上初の「AV女優育成ゲーム」の本作(パソコンのアダルトゲームでも意外に存在していない)、こんなものを家庭用ゲーム機で出しちゃったのは、そう、あそこしかない。PCエンジン界「影のメインメーカー」こと「GAME EXPRESS(ハッカー)」である。
 家庭用ゲーム機におけるこうした非公認アダルトソフトというのは、麻雀や花札、トランプやパチンコ、あるいはパズルといった、もともとギャンブルと関わりの深いゲームを扱うことが多かった。「大人向け」ということもあるが、プレイする側にとっても作る側にとっても「手軽」である利点もあったのだろう。しかし「ハッカー」はPCエンジンに深入りしすぎてしまったためか、PCエンジンの進化にあわせて自身のソフト開発も進化させるようになり、当初のROMカードからSCD対応への飛躍を果たしてしまう。そこで驚異のアニメ脱衣麻雀(CD麻雀美少女中心派)を実現したのみならず、流行の対戦格闘ゲーム(ストリップファイターII)まで作ってしまい、はては本作のような本格育成SLGとかCD-ROM大作RPG(ハイレグファンタジー)にまで手を出すという呆れるばかりに多彩なソフト展開を見せて行くのだ。今挙げたタイトル、いずれもパロディタイトルであるところにも「らしさ」が発揮されているが。

 この「語ろーぐ」では本作で初めてハッカーのSCDソフトを扱う事になるのでその独特のシステムを解説しておこう。
 ハッカーのCD-ROMソフトは全て「SuperCD-ROM2システム」のみの対応となっている。基本的にはSCDシステム一体型の「DUO」シリーズ対応とされているが、「白PC」や「コアグラフィックス」等のPCエンジン本体+「SuperCD-ROM2」という組み合わせでもプレイ可能なはず。残念ながら旧CD-ROM2システムではSCDカードがあろうともプレイすることはできない。
 なぜ旧CD-ROMシステムで遊べないかといえば、ハッカーのCD-ROMソフトはSCDシステムを利用はしつつ、その起動にオリジナルのシステムカードを使用するからだ。つまりSCDの2MのRAMは使用するんだけど、起動はハッカー製のカードをスロットに差し込んで行うためSCDカードとの共存が不可能なのだ。この「AV誕生」などハッカー製CD-ROMソフトには必ず「GAME EXPRESSカード」が同梱されており、このカードをスロットに入れて電源を入れると、水着女性が出てくるイラストが表示され、「CDを入れてRUNボタンを押せ」という指示が出る。それをやってようやくゲーム起動となるのだ。

 なんでこんな面倒な形になったかといえば、おそらく著作権問題に理由がある。もともと非公認で作ってるくせに著作権も何も、と思うところだろうが、彼らが作っていたのはあくまでNEC-HEの許可をとってないけど「PCエンジンでたまたま動く」ゲームソフト(笑)なのであり、別に法律に触れているわけではない。ソフトの媒体となるカードだってHuCARDではなく独自に作ったROMカードだからきわどいとはいえ法的にはなんとかクリアされる(むろんNECやハドソンが訴えを起こしたらどうなったかわからない)。だがCD-ROMはそうもいかなかった。CD-ROMソフト自体を作るのは簡単だが、PCエンジンのCD-ROMソフトはハード側に内蔵されているCD-ROM2システムのプログラムとの組み合わせで動く仕掛けになっているから、そのまま動くCD-ROMを作っちゃうとNEC-HEとハドソンが持つこのシステムプログラムの著作権を犯すことになってしまうのだ。それを回避するためにオリジナルのシステムカードを作って起動させることになったわけ。考えてみるとかなり高度な技術なのではないかと思うのだけど…。
 なお、PCエンジン末期に一部で流通したアングラソフトはこうしたカードは使用せず直接起動できてしまう。もちろんこれは完全に「違法」である。


◆たった一年のお手軽育成ゲーム

 「AV誕生」ではプレイヤーはAVプロダクションのマネージャーとなり、AV業界に飛び込んできた三人の女の子をAV女優に育て上げて行くことになる。登場する女の子たちは、とにかく可愛さが売りでオーソドックスタイプの「琴美」、お色気たっぷりだが遊び人で演技力がまるでないタイプの「響子」、真面目で演技力はやたらにあるが色気に欠けるタイプの「鈴音」、といった具合でそれぞれに一長一短あり、バランスはいいがありがちな3人組となっている。さすがはCD-ROMソフト、三人の女の子たちは節々でしゃべってくれるが、やっぱり演技はあんまりうまくない…(苦笑)。

 育成ゲームに慣れている人はマニュアルを特に読まなくてもすぐにゲームを進行していけるはず。既製ゲームのパロディであるせいもあってか、このゲームの画面デザインや操作性はかなり洗練されており、お気軽に遊ぶことができる。育成期間がたったの1年間、しかもコマンドは月のはじめに一度だけなのであっという間に終わってしまうのもお手軽で嬉しい。まぁ物足りないと思うところがなくもないが、買うほうも本格的な育成SLGをやろうとは思ってないでしょ(笑)。

育成画面  AV女優の卵たちに出せるコマンドは「読書」「エアロビ」「エステ」「舞台」「デート」「裏方」「ホステス」「休み」の8種類で、特にアダルトなものが含まれているわけではない。「エアロビ」や「エステ」が女の子たちのスタイルや色気を磨くというのは分かるんだが、「舞台」はAV女優になるにはどうかという気もするし、「読書」が演技力向上になるというのには「?」と思ってしまうところ。気になるのが「デート」だが、これはプレイヤーではなく「適当な相手」とデートさせることで彼女たちの「女」を磨く、というものだ(笑)。なお、「裏方」というのは撮影現場のサポートをして業界人にアピールするというもの、「ホステス」はプロの女性に学ぶ…といっても単に「水商売」の見習いをするものだ。

 AV女優を育成するというから何かHなコマンドでもあるんだろうかと期待する向きも多かろうが(笑)、そんなことは一切なく、普通に芸能人育てゲーになってしまっているのが実態。まぁハッカーの非公認ゲームはあくまで「ちょっとH」ってレベルのものが大半なのでこんなものだろう。実際本作も「18禁」ではなく「15才未満の方が、本商品をお求めの場合は、保護者の方の承諾が必要となります」と注意書きされた「R指定」表示がされている程度なのだ。これならシャワーシーンの露出度が上がって行く「ヴァージンドリーム」(’96)やプレイヤーとの「重婚」が成立してしまう「卒業」シリーズのほうがよっぽどアダルトだった気がする。

 それらのコマンドを週の前半・後半を四週分、つまり一ヶ月ごとに8つ割り振ってスケジュールを作っていくことになる。育成ゲームの中にはこのスケジュール設定が面倒なものも目立つが、本作は実にシンプルで、パッパッと手軽に決定できる。もちろんそれぞれのコマンドにより各パラメーターが増減するのでどんなエンディングを狙うかよく考えて設定しなくてはいけないが。また定番ながらガンガンにスケジュールを組みすぎると女の子たちが疲れてやる気をなくし(状態はチビキャラで表示される)、悪くすると病気で寝込んでスケジュールが組めなくなってしまうので要注意。もっと悪くすると女の子たちは行方不明(!)になってしまい、二度と戻ってこなくなってしまう。

 三人分のスケジュールを組んでしまえば、あとは一ヶ月が経つのを待つだけ。三人がそれぞれのスケジュールにいそしんでいる様子が映り、パラメーターの増減が表示されていくのを見てるだけだが、かなりの処理速度で表示されてあっという間に一ヶ月が経つので退屈はしないはず(その代わりパラメーターの変化には目が追いつけなさそう)
 一ヶ月の終わりにはランダムで三人のうち一人が選ばれ、特別にコマンドを出すことが可能。特別コマンドは「プレゼント」(機嫌を直させる「自主トレ」(体力をつけさせる)「接待」(AV流通関係者を接待し評価を高める)「見学」(撮影現場を見てやる気をおこさせる)「HOW TO」(女の子それぞれの長所を伸ばす)「休養」の6種類。ここでは出されたコマンドに応じて女の子たちが短くしゃべってくれたりもする。


◆50個のエンディングを全て見届けられるか!?

 このように手軽といえば手軽、単調といえば単調なコマンド入力→育成のサイクルを12回繰り返せばあっという間にエンディングに到達する。さすがにそれだけではヒマだろうと思ったか、ところどころで「写真集を出す」とか「イメージビデオを出す」とか「ラジオ・TVに出演」とかイベントが入る。これらのイベントは各キャラごとに用意されていてイベントCGと声が出るのだが、どうも各キャラのパラメーターがある基準に達すると各種イベントが起こる仕掛けになっているらしい。それにしてもいずれもおよそ「AV女優の卵」とは思えない普通の芸能人活動みたいなのばかりなのが気になるが…AV女優がタレント的にTV番組に出ることもある昨今だが、なにか違うような(笑)。

エンディングの一つ 一年の育成が終わってのエンディングは最終のパラメーターに応じて内容が決定された「AV作品の上映」だ。「AV作品」といっても一枚絵に声が入る程度のしろものだが…マニュアルによると三人合わせて約50種類も用意されているそうで、その全てを見るのは至難の技だろう。僕なんかは最初のプレイ時、三人の女の子の全てのパラメーターをバランスよく上げていこうとしたため、三人とも同じエンディング、「バニーガールの大接待」なるソフトな内容の「AV作品(?)」になってしまった(右図)。多くの作品を見たければいずれか一つのパラメーターを極端にあげていく必要があるようだ。例えば演技力を高くしておけばドラマ性の高いAVになり、色気を高くしておけば過激度の高いAVになる…といった作りになってるわけだ。それでもあくまで「R指定」だからそれほど過激なものは出てこないだろうが。

 それにしても50個全てを見届けるのは大変で、何度も何度も繰り返しプレイしなければならないだろう。また、だからこそこのゲームは育成部分がかなりお手軽に作られ短時間で終わるように設計されているのだとも思える。そう考えるとかなり配慮の行き届いたゲームだと評価も出来るのでは?


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