栄冠は君に-高校野球全国大会-  
ジャンル:育成シミュレーション
媒体:SUPER CD-ROM(アーケードカード・メモリーベース128・マウス対応)
発売元:アートディンク
発売:1994年7月14日
価格:9800円
商品番号:ADCD4003


外見◆あなたも母校野球部の監督になれる!

 本作は「A列車で行こう」シリーズで有名なソフトハウス「アートディンク」のPCエンジン移植ソフトの第三弾。そして発売時期を見ても分かるとおりPCエンジン市場のほとんど晩期の発売であるためこれが最終作となった。この「栄冠は君に」を発売した段階では次回作にやはりパソコンからの移植である「ルナティックドーン」がラインナップされていた(同梱の同社ゲーム紹介カードにちゃんと告知されている)のだが、これはPCエンジンの後継機PC−FXでの発売に変更されてしまったのだ。PCエンジン末期からPC-FXまで秀作を連打したアートディンクについては「A列車で行こうIII」(’93)の解説を参照されたい。

 さてこの「栄冠は君に」はアートディンクがパソコンで1990年から発売していた看板シリーズの一つで、「高校野球シミュレーション」というありそうでなかなかないゲームだ(この「ありそうでなかなかない」というオリジナリティが同社最大の売りだ)。野球を素材としたTVゲームはそれこそ山のように存在するが、多くはプレイヤーがピッチャーとして投げ、バッターとして撃つアクション系のもの。それもたいていプロ野球を素材にしている。高校野球ものも存在しないわけではないが、アニメ・マンガとタイアップしたキャラゲーのものが多かった気がする。まぁゲームをプレイするのはたいてい子供、という時代だから無理はないだろう。この「栄冠は君に」はもともとパソコンで発売されたゲームだから、ある程度高い年齢向け(別に老人ではない)であるためにこんなテーマを選べたとも思える。

 このゲームでのプレイヤーの役割は選手ではなく「監督」だ。1年生から3年生まで大勢いる野球部員たちを率いて練習させ、あるいは相談に乗り、そして実際の試合では采配をとり、甲子園出場、全国優勝を目指すことになる。野球ゲームではあるのだが、試合の中でプレイするのは選手達であって、監督であるプレイヤーはそれに指示は出すけどあくまで見守るしかない。実に忍耐力が要求される地道なシミュレーションゲームなのである。

 だが高校野球ファンにはむしろ「こういうのを待っていた!」というゲームだったのではないだろうか。この「栄冠は君に」は高校野球の世界を実に巧みに、かつリアルにシミュレートしており、地方予選、夏の甲子園、秋の地方予選、春のセンバツ、さらには練習試合のたぐいまでしっかりと再現されているのだ。登場する高校数も全国都道府県の4017校におよび、全て実在する高校名をもじっている上に1993年夏の大会のデータをもとに実力を設定してある。その全てを自チームとして選択可能だから、高校生以上の人ならばほとんど「自分の母校」の野球部を率いることが可能になっているのだ!
 選手ならば一回負けたらそこで終わりだが、監督なら何年でも続けられる。その何年かのうちに実力を伸ばしてゆき、いつか夢の甲子園出場だって可能だ。在学中は夢破れた我が母校を甲子園へ!という高校野球ファンの夢を実現するゲーム。ご丁寧に全国の学校名・過去の大会データまでおさめたデータブックが同梱されており、まさに高校野球ファンにとっては夢のようなゲームなのだ。
 僕のサイト全体を見た方はお気づきだろうが、当サイトには実は高校野球情報(千葉・茨城限定)を扱う「スポーツの貯蔵倉」というコーナーがある。あそこの管理人は弟の「K・E・N」が務めているのだが、これが熱烈な高校野球ファンで(しかも地方大会マニア)当然の如くこの「栄冠は君に」を熱中して何度も遊んでいたものだ。

 なお、このゲームは一連のアートディンク作品同様、大容量のデータセーブのために「メモリーベース128」「セーブくん」の接続が必須となっている。なくてもプレイは出来るがセーブが出来ないので注意のこと。


◆練りに練りこまれたゲームデザイン

 このPCエンジン版「栄冠は君に」はパソコン版「3」をベースに移植したもの。このパソコン版「3」をプレイした経験はないのだが、画面写真を見た限りではPCエンジン版は実に忠実に移植されているように思える。もちろんTVゲームはパソコンより画面サイズが小さく文字表示も大きくなってしまうため全体にアレンジは施されているが、このアレンジ具合が実によく、パソコンゲームらしさを残しつつ見事にTVゲーム化されている。コマンド系はウィンドウがドカドカ出てくるかなり複雑な構造なのだが、処理速度は速いしパソコン同様に画面内にカーソルを走らせて指示を出すつくりなので体感的に分かりやすい。PCエンジン版はパッド操作も可能となっているが、ぜひマウスで操作をしてもらいたい。その操作性の良さには驚かされるはず。
 単に操作性だけではなく情報やコマンドを表示するウィンドウがスコアブックやクリップボードの形になっているなど、デザイン面も洗練されている。メイン画面も日程を書いた黒板のデザインで、「根性」などと書かれた貼り紙が雰囲気を盛り上げる。この貼り紙、クリックすると「努力」「忍耐」などと変化するなど実に芸が細かい。実はある操作をするとこれが水着ギャルになるというお遊びもあるんだけど(笑)。

 さてゲームを新しくスタートすると、まず監督のキャラクターメイキングをやらされる。名前を決め、生年月日を決め(星座を決定する)、血液型を決め、各種質問に答えて性格診断をしてから、ようやく就任する学校を選ぶことに。前述のように全国4017校もが登録されているので野球部のあるたいていの学校は載っている。さすがに実名は使用していないが一文字追加する程度の改造なのでモデル校がどこかは一目瞭然。各チームの実力データもバランスシートで表示されるので実力で選んでもいいが、最初のプレイ時にはやはり母校を選んでみるべきかと。愛着が絶対違うはずだ。
 就任校を選びユニホームを決めると、自分が受け持つ野球部員たちのリストが表示される。驚くなかれ、このゲームは膨大な種類の選手の姓・名と顔グラフィック(顔の部品。つまりモンタージュをしている)をあらかじめ用意していて、それをランダムに組み合わせることで自校・他校問わず無数の選手キャラクターを自動生成してしまうのだ。自チームの選手については名前や顔グラフィックを変更することも可能だ。

 選手一人一人のデータも詳細を極める。基本ポジション、身長、体重、誕生日、血液型、性格までが決められており、野球選手としての評価内容も「体力」「打力」「打技」「選球」「球速」「投技」「制球」「遠投」「走力」「走技」「内守」「外守」と12項目も設定されA〜Eまでの五段階評価がつけられている。もちろんこれらの評価は練習や試合により変化するわけで、しかもそんな選手が一年生から三年生まで平均で30人以上はいるとなると、シミュレーションゲームが苦手な人はその膨大なデータを見ただけで目が回るかも(笑)。そこらへん作り手もよく考慮していて、選手データを見る際にポジションごとにまとめたり各項目の優秀な順に並べ替えて表示したりできるなど、細かいところに親切の行き届いたシステムを作っているので遊ぶ方もそれを駆使してデータをよく分析しよう。
 30人以上の生徒たちのデータをじっくり見てから正選手15人とポジション・打順、そして主将を決定する。たいていのチームでは当然だが3年生が一番優秀になっているのでこれをメインに正選手を決め、有望そうな2年生をちょこっと控えに混ぜておくというのが基本だろう。一般的なチームでは使える投手が各学年に一人しかいないので2年生投手を一人は入れておきたい。チームをまとめる主将は性格をよく見て適任者を選ぼう。まぁとにかくリアルで作りこみの激しいゲームだということがこのチーム作成作業だけでもよく分かる。

個人面談画面 チーム作成が終了すると、いよいよゲーム開始。このゲームの大半は練習メニューを決定することと言っていい。この練習メニューがまた詳細に設定されていて、走り込みや筋力トレーニングによる基礎体力づくり、素振りやトスバッティングなどの打撃基礎、キャッチボールなどの守備基礎といった基礎訓練から、犠打、走塁、連係プレー、当然ながらバッテリーには直球・変化球・牽制球の投球訓練まで、よくまぁこれだけ細かく設定できるもんだというぐらい様々なメニューがあらかじめ用意されている。あまりの多さにどうしたらいいか困ってしまうが、基本的には1年生には基礎体力づくり、2年生には打撃・守備などの基礎訓練、3年生には各種テクニックや総合練習、といった形でメニューを組む。実際の高校野球でも1年生から使える超高校球児なんてのはまれな存在で、コツコツ基礎から育てて3年生でやっと使い物になる、というのが現実なのだ。このゲームでもそのあたりがよく再現されている。

 ただこの練習メニュー決定がかなり面倒なことも否めない。世間一般の育成ゲームに比べると圧倒的にリアルなんだけどやたらに複雑なのも事実で、ここを乗り越えられるかどうかでこのゲームを楽しめるかどうかが決まる。この練習メニューを各学年、および正選手、さらに投手・捕手・内野・外野ごとに設定するのだが一日ごとの設定なのでこれを一年分全て決定するのはもう大変な作業。別に一年分全部を一気に設定しなくてもいいのだが、ゲーム進行は最低でも一週間刻み、少し飛ばしても次のイベントが起こるまで手が出せなくなるので、やはり一ヶ月ぶんぐらいは一気に予定をたてるようにしたい。面倒な人は初期状態の練習メニューのまま進行しちゃってもいいのだろうが、それだとずーっとおんなじ練習メニューだからやっぱり自分で組まねばいけなくなってくる。これはまさに黒板にある貼り紙のように「根性」あるのみですな(笑)。

 それでもしっかり練習設定軽減のためのシステムが組み込まれているのはさすが。練習メニューは4パターンまでセーブ・ロードができるようになっていて、よく使う練習メニューを登録しておけば後はそれを組み合わせていけばいい。たった4つしか登録できないのは残念な点ではあるが…。またある日の練習メニューを組むとその次の日も同じメニューが自動的に組まれる仕組みを利用して一週間同じメニューにしてみるという方法もある。さらに最初の年に設定したスケジュールは次の年以降も使いまわされるようになっているので(練習試合などはその都度組まなければいけないが)、苦労するのは最初の年だけという面もある。
 チームの実力高上のためには単純に訓練・練習ばかりしていてはいけない。自チーム内での紅白戦を行うことも出来るし(ただし試合そのものはゲーム上では表現されない)、他校チームと練習試合を行って実戦経験も積まなくてはならない。それと当然ながらあまりに過酷な練習メニューを組み続けると選手達が疲れ果てて練習効率が上がらなくなるので、ほどよく休養をさせることも必要だ。

 監督の仕事は選手に練習させることだけではない。このゲームは選手との個人面接までできるようになっていて、褒めたり叱ったり、あるいは悩み相談に乗ったりとメンタル面でも選手と付き合うことができる。進路についてはともかく「好きな食べ物」を聞くコマンドがあるのはかなり謎だが(笑)。
 面倒なら別にやらなくてもいいといえばいい面接コマンドなんだけど、ひそかに効果があるものだし(説明書にも書いてあるが、「能力があるのに自信が無い選手」というのがいて、その自信を持たせてやる必要がある)、練習の合間にちょくちょく顔をあわせ会話をしてみると、それぞれのキャラに愛着がわいてきて練習による育成や試合での起用にも思い入れが出てくるはず。この面でもしっかり「野球部監督シミュレーションゲーム」になっていると言えるのだ。
 

◆リアルな試合画面にビックリ!

 練習を続けてチーム作りを進め、やがて夏の甲子園を目指す地方大会に突入することになる。ただしマニュアルにもあるように大会前に他校チームとの練習試合をしておくのが望ましい。
 この練習試合で初めてこのゲームの試合画面を拝むことになるが、これがホントに良く出来ている!自ら操作して投げ、打ち、守るようなアクション系の野球ゲームではないのでキャラは小さいが、かえって本物の野球場で観戦しているようなリアリティある演出が各所に散りばめられていて、高校野球ファンにとってはむしろ嬉しい。

 試合開始直後にはちゃんと整列の挨拶、それからそれぞれの選手が守備位置やベンチに散り、バッテリーが数球ピッチング練習をし、最後のボールを内野で回す。投球前に審判がピッチャーマウンドのプレートを掃除して、ピッチャーがきちんと脱帽のお辞儀をしてから主審が「プレイボール!」と掛け声をかけて試合が始まる。試合中の打撃、守備の動作もキチンも再現されているし、審判たちの判定も大半が肉声で表現され、ネクストバッターズサークルにちゃんと次の打者が入っていったり、コーチがしっかり「セーフ」のポーズをしていたり、デッドボールを与えたピッチャーはちゃんと1塁に脱帽して謝ったりと、とにかく「そこまでやるか!」と言いたくなるほどチビキャラ演技の芸が細かい。攻守交代時に両チームの選手たちがグラウンド内を入り乱れて走り回り、ちゃんと各自のポジションについていく様子はまさに壮観。試合が終了すると両チームキチンと整列して主審の「ゲームセット」の掛け声と共に脱帽・礼してから散っていくし…(本番の試合モードでは応援席に挨拶にまで行く)。さりげないことのように思えるが、PCエンジンの描画能力でここまで出来るのか!と思うばかりのこだわりある演出が心憎い。このあたり、さすがはアートディンクと言わざるを得ない。
試合画面
  試合進行の速度は調節も出来る。ここまでリアルに作っているだけに一試合に結構時間がかかるものなので基本的には最速モードでプレイするものだと思う。この最速モードでの選手達の動きが「早送り」状態でリアルなのにチョコマカとしてるのがまた楽しかったりするのだ。

 このゲームはあくまで「監督シミュレーション」であるから試合は基本的に選手任せで「眺めて」いるもの。それだけに胃が痛くなる場面もしばしばで…(笑)。自分で操作できないぶんストレスがたまるから、選手の1プレイ1プレイに「よっしゃー!でかした!!」「こらー!なにやっとんじゃー!!」と一喜一憂することになる。この辺もまさに忠実に「監督業」を再現していると言える(笑)。
 もちろん監督さんだって試合中にやることは多い。選手交代、打撃や守備、走塁の作戦指示のサイン、伝令を出して投手に言葉を伝えるなど、試合中の監督コマンドは全てちゃんと用意されている。もちろん何もしなくても構わないのでただ眺めているというのもアリなのだが、やはり勝利を自分の手で勝ち取るほうが面白いというもの。積極的に試合に介入するのがお奨めだ。
 ただ難を言えば試合に割り込んでコマンドを出すと、BGMなど試合演出が中断してデータ読み込みのために若干待たされ(ほんのちょっとなのだが)、ストレスもたまるし試合時間が長くなるという欠点がある。そこらへんはさすがに作り手も考えていて、このゲームはアーケードカード対応設計になっておりアーケードカードを差し込んでプレイすれば読み込み時間が大幅に軽減される。でも感覚的にはほとんど差はなく、アーケードカード無しでもかなりの速度で動くゲームだと思うが。
 あと細かいところで「難」を言うと…「インフィールドフライ」のルールが微妙に間違っているとか、現実の試合に比べ牽制球で刺されるケースが多すぎる、という点もある。細かいことではあるが、全体のリアルな作りこみが激しいだけに気になるところ。

 なお、いちいち試合を9回までやるのは面倒だという向きには試合内容そのものを「短縮モード」にしてすっ飛ばしてしまうことも出来る。何度も繰り返す練習試合とか特に監督が介入しなくても楽勝そうな試合では、この「短縮モード」で時間を節約するのもオススメだ。このモードではスコアボードのみが表示され、ストライク・ボールの判定、ヒット・エラーの判定のランプが点灯し、打撃音が聞こえてくるだけで試合が進行してゆき、各イニングの点数がポンポンと表示されていく。一試合がものの1分以内に終わってしまうのでかなり楽だ。それでも各選手の成績データはキチンと作成されているので後から試合内容を確認することだって出来る。本番の大会でもこのモードは可能だが、ボーッと放置して眺めているうちにそのまままさかの敗戦となってしまったら目も当てられない(笑)。「短縮モード」はあくまで練習試合用のものと考えておいたほうがいいだろう。


◆全国制覇も夢じゃない!

  このゲームでは実際の高校野球に合わせ、夏の甲子園を目指す7月の地方予選と春のセンバツを目指す秋の地方予選が行われる(さすがに夏のシードを決める春の地方大会はない)。いずれもプレイヤーのチーム校がある都道府県の全校が参加し、きちんと組み合わせ抽選が行われ、それに基づいて試合が展開されてゆく。プレイヤー校以外の学校同士の試合は直接観戦することは出来ないが、ちゃんとスコアボードに試合展開が超短縮モード(各イニングの点数のみ表示)で展開されるので、自分も知っている近所の学校なんかが出てくるとなかなか面白い。一応チームの実力データをもとに試合展開を決めているようだが、ランダムの比重が高くなっているのも確かなようで、意外なチームが勝ち進んでくるケースも目に付く。
 ついでに言えばプレイヤー自身のチームについても表示される実力データよりは若干甘めの試合展開になっている気もする。各校の実力評価はレーダーチャート方式で表示され、相手との差がかなりあるように見えながら、実際に試合をやってみるといい勝負、もしくはこちらが優勢になるケースが多かった。

 また、野球というスポーツは「運」の要素もかなり大きい。実際の高校野球でも「番狂わせ」ということがあるが、そこには実力だけではどうにもならない「試合の流れ」というものがある。ピンチのあとにチャンスあり、ピッチャーが突然変調して打ち込まれたり、あるいはみんなが打ち始めるとふだんは大して打たない下位打線までがバカスカ打ち始める、はたまたちょっとしたファインプレーからムードががらっと変わったり…あとから思い返して「ああ、あれが試合の流れを決めたな、変えたな」といったことは野球ではしばしば言われる。「運」というよりも「メンタル(精神的)」と言うべきかもしれない、こうした「流れ」の要素も実はしっかりこのゲームは取り込んでいる(解説書にちゃんと言及がある)。こういうところもアクション系スポーツゲームではないシミュレーションゲームならではだ。

 大会でも基本的には練習試合と同じようなプレイが行われることになるが、さすがに大会本番となると応援ブラスバンドや観客の歓声といった演出がついてきて、ますますリアルに試合気分を盛り上げてくれる。試合中、「応援を見る」コマンドで選手の士気を高めるなんてことも可能だ。
 地方大会を無事勝ち抜けば(だいたい5回連続で勝てば優勝である)、あこがれの甲子園出場だ。甲子園はさすがに地方大会ののっぺりとした田舎球場ではなく、芝生も青々と広がり、大観衆が押し寄せる豪華大球場。別にプレイの上で変化があるわけではないが、外野が大写しになるときなど、しっかりと再現されたバックスクリーンや大群衆のいるスタンドが見えて、はげしく優越感をくすぐられるのは事実(下図参照)。なお、甲子園で敗北すると選手達が甲子園の土を集め始めるという演出があるのは、お約束とはいえこのゲームの作りこみの激しさに感動してしまうところ(笑)。
 
あこがれの甲子園は芝生も青々 しかし実のところ、よくよく強力なチームで無い限り、最初の年からいきなり甲子園というのは難しい。途中で敗退してしまうのが普通というもので、選手はともかく監督は何年でもやれるのだから、根気よくチーム育成を続けてチャンスを待ち続けるしかない。
 このゲームでは夏の大会が終わると3年生が引退し(甲子園に出ていようがいまいが8月中旬までチーム解散はできない)、その後1、2年生で新チームを結成して秋の大会を戦い、春に3年生が卒業、センバツ終了後に新一年生がチームに加わってくる、というスケジュールになっている。大会の合間合間に練習を続けていくわけだから、ゲーム開始時の1年生が主力となる3年生になるころにはかなり成長が期待できる仕掛けだ。

 また大会である程度勝ち進めるようになってくると、学校の知名度が上がって来るので才能ある新人選手が入学してくるようになり、ますます実力が高まっていくことになる。普通にプレイしていれば5〜6年目にはたいてい甲子園まで勝ち進める常連校になってしまうのだ。
 実例として…とくにSLGが得意でもなく高校野球に詳しいわけでもない僕が、自分の母校(たまに甲子園に出る学校ではあった)をモデルとする学校でプレイしてみたところ、監督歴三年目で天才的なピッチャーが成長したこともあり甲子園初出場を果たした。しかもそのまま、あれよあれよと甲子園で連戦連勝、一気に全国優勝までのぼりつめてしまった(驚)。すると知名度が格段に上がるため、翌年度からはかなり優秀な選手を迎え入れることも出来た。この辺りは少々甘いバランスのようにも思えるが…

 このゲームは全国制覇をしたらゲームクリア、というわけではない。プレイヤーは一つの高校の野球部監督人生を20年間まで過ごすことができ、その野球部の「歴史」そのものを作っていくことになる。メイン画面には「卒業名簿」が用意されており、これを開くとその年その年の選手名と成績がつづられ、それらが何年分も積み重なって野球部の歴史が織り成されていることが実感できる。何年ぶんかプレイしてから読み返すと、出来のよかったやつ、悪かったやつ、一人一人の選手の顔、さらにはそのときそのときの試合の模様まで浮かんできて現実の歴史を読むように感動できるはず。このゲームの最大の醍醐味はここにあるのではなかろうか。

 最後になるが、実はこのゲームは「対戦プレイ」も可能。複数のプレイヤーが育てたチーム同士を対決させるモードがあるのだ。当然ながらプレイヤーはあくまで「監督」としてしか試合に参加できないわけで、やることはもっぱらサインを出すだけ。「対戦では、敵プレイヤーにサインの内容がまるわかりでは?」と思うところだが、このモードではサインは体のどこかの部分を触るコマンドで表現されるようになっていて、事前に自チームのサインをひそかに決めておくことができるのだ。ほんとによく作ってある…

(追記)本作は2008年8月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.350
3.125
3.125
3.000
3.650
3.825
20.075
第441位

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
80
ウォルフ中村
65
ウキキ松崎
65
城イドム
55

岩崎啓真評価(各項目5段階評価)
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス







★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
浜村通信

鈴木ドイツ

渡辺美紀

ジョルジュ中治



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