ガイフレーム  
ジャンル:戦術シミュレーション
媒体:HuCARD(3M)/バックアップメモリ対応
発売元:メサイヤ(日本コンピュータシステム)
発売:1990年1月26日
価格:5800円
商品番号:NSC 90001


外見◆RPG要素を交えた「ガイアの紋章」続編!

 この「ガイフレーム」(’90)は、もともとメサイヤ(日本コンピュータシステム)が1987年にPC−88で発売した「エルスリード三部作」の最終作が原作。PCエンジンにはシリーズ前作の「ガイアの紋章」(’88)がすでに移植済みで、やや遅れての続編移植となった。

 「ガイフレーム」は「ガイアの紋章」の続編で、一応同じガイア大陸を舞台にしている。しかし時代は前作の「エルスリードの戦い」のころから実に4000年ものち。「魔法」は相変わらず登場していて一応ファンタジー世界っぽいのだが、ロボット兵や戦車、空中戦艦が飛び交う科学技術の進んだSF的世界となっていて(ロボットデザインはアニメーターとして知られる大張正巳氏が担当)、前作とは全くの別世界。終盤になると前作との歴史的つながりが浮上してくるのだが…。
 このゲームの説明書はHuCARD時代のものとしては異例の長ページになっていて、「エルスリードの戦い」以後四千年以上の歴史が簡単な年表や王家系図などで紹介されているのだが、そこに書かれている他の戦乱の歴史がゲーム化されたとは聞いていない。「ラングリッサー」も同じ世界の話であるはずだが、どうも「ガイフレーム」で設定された歴史とは異なる展開にされてしまっているらしい。

 ガイア暦4222年。ガイア大陸はディアースレ連邦とヴェルダース連邦の二大国家に分かれていた。そのうちのヴェルダース連邦が闇の魔力を応用した科学技術により軍備を強化、大陸の制覇を目指してディアースレ連邦へと侵攻を開始する。その防戦にあたるなか、ディアースレ装甲騎士軍団長エルビン=ランバートは特殊任務を与えられ、大陸各地に散らばっている「ガイアクリスタル」に関する情報収集にあたることになった…というのが、ゲーム開始時点でのプレストーリーだ。

 プレイヤーはディアースレ連邦軍を率いてヴェルダース連邦軍と戦い、敵の拠点を攻め落として大陸に平和をもたらすことが目的となる。基本的には前作「ガイアの紋章」を引き継いだ将棋的ヘックス戦を行う戦術シミュレーションなのだが、兵器を生産・補給し、大陸の各都市・地域を占領してゆくという戦略要素が加わったのが本作の特徴だ。また主人公ランバートをはじめキャラクターを複数登場させ、情報を集めてゆくことでゲームの展開につれストーリーが進行してゆくという、RPG的要素も加えられている。思えば結構欲張りなゲームだ。

 
◆補給・戦闘・占領

 ゲーム開始時点では、プレイヤーは拠点となるディアスシティとそれに隣接する2都市しか持っていない。まず自軍の部隊の初期配置をそれら3都市に行うことになる。配置できる部隊は航空機・歩兵・戦車・砲兵といった種類があり、いずれもSFチックなデザイン。1エリアには3部隊までしか配置できないので注意が必要だ。
 各エリアにはユニットが置けるマスが6個用意されてるように見えるので初め戸惑うが、これは上段3つがディアースレ、つまり自軍用で、下段3つが敵のヴェルダース軍用となっている。そのエリアに片方の軍しかいなければそのエリアはその軍が占領したことになり、同じエリアに両軍が同居していれば、たちまち戦闘に突入するというわけだ。

戦略画面 ゲーム開始時点ではまだどこにも占領されていないエリアがあるので、さっさと軍勢を動かして占領しなければならない。実はこのゲーム、自軍がどれだけのエリアを占領しているかで「補給ポイント」が決定され、それを消費して新たな部隊(兵器)を首都ディアスシティで生産、部隊の補給を行えるというシステムがとられているのだ。もちろん物語の設定上、序盤では敵軍のほうが優勢で、こちらはせいぜい近隣の5〜6エリアを押さえるのが精いっぱい。

 各ターンは常に敵が先に行動を起こす作りになっていて、敵の移動・補給行動が済んでからこちらが行動することになる。敵軍が入ってきたエリアはただちに戦闘に入ってしまうので、そこにいる部隊は動かすことができないルールになっている。このゲームの敵はとにかく積極的に攻勢をかけてくるため、ゲーム全体を通して「受け身」な展開になりがち。敵が攻めてきたらこれを撃破、できれば全滅、少なくとも数を減らして撃退し、敵の占領エリアが手薄になったところをこちらから攻撃、占領する、というのが基本パターンとなるはずだ。
 しかしこちらがそうであるように敵も首都で部隊を新たに生産し、前線へ続々と送り出してくる。だからなかなか進撃できずしびれを切らす展開にもなりやすい。後述するがこのゲームは決められたストーリーに沿って主人公ランバートが人に会い、情報やアイテムを得てゆく展開があるので、なんとかランバートを目的のエリアに移動させねばならないのだが、これがなかなか難しいのだ。、1エリアに3部隊しか置けないという縛りもあるし、ランバート自身が強いユニットなので前線に出してしまいがちで戦闘エリア部隊になって動かせなくなってしまうケースも多い。

 敵味方双方の行動コマンドが終わると、敵味方同居エリアで戦闘が始まる。都市や雪原、砂漠、山岳地帯など戦場のバリエーションは豊富だが、多くは市街戦だ。戦闘システムは「ガイアの紋章」をほぼ引き継いでいて、戦闘開始時に使用魔法を一つだけ選び各ターンごとに成功・失敗をランダムに決定、先攻・後攻も各ターンごとにランダム決定、攻撃は当たり外れがある、攻撃は一方通行で攻撃側にダメージはない、といった特徴が引き継がれている。ロボット兵士や戦車や空中戦艦といったSF調ユニットになってるだけで、基本的にやってることは前作と変わらない。

 変化があったのはユニットが敵ユニットに攻撃をかける際、結果を表示する「戦闘アニメ」が挿入される点だ。これはパソコン版にはなくPCエンジン版で導入されたものらしく、ロボット兵なら敵との交錯(チャンバラ)、遠距離砲撃部隊なら砲撃の簡単なアニメが素早く表示されるのだ。攻撃が命中すればバリバリバリと爆破演出が入り、敵のHPがゼロになればユニットが爆発・消滅する。こうした戦闘アニメ演出は後の「ラングリッサー」にも引き継がれることになる。
 しかしこのゲーム、攻撃命中率がやたらに低い。ちゃんと計算したわけではないが10%程度の命中率しかない気がする。敵の1ユニットを6方向から取り囲み、さらに4方向から遠距離攻撃をかけるということをしても一発も当たらない、というケースすら結構多かったのだ。「わざ」魔法を成功させると命中率が20%上昇することになっているのだが、それでも半分以上は外れということもあった。この命中率の低さは敵も同様なのでこちらも助かることがある「お互いさま」ではあるのだが、かなりイライラさせられる上にプレイ時間が長くなる。

 イライラさせられるといえば、敵軍が負けるのも承知でドンドン侵攻してくる、というのもある。戦闘では自分側のマップの端(味方なら下方、敵なら上方)の位置で「撤退」を選択して隣エリアに逃げることができるのだが、ヴェルダース軍ときたらたった2、3部隊で攻め込んできて、戦闘開始直後に何もしないまま即撤退、というケースがかなりあった。先述のように戦闘エリアになると自軍の移動ができなくなるため、こんなことされるとホントに嫌がらせとしか思えなくなる(笑)。
 「撤退」コマンドは自軍にとっても便利なのだが、注意点もある。1エリアには3部隊までしか置けないルールになっているため、撤退して逃げようとした隣エリアに3部隊ぎっしりつまっていると、その部隊は撤退することもできなくなり、そのまま「消滅」してしまうのだ。マニュアルでも注意が書かれているが、主人公ランバートのユニットがこの状況に陥ると即ゲームオーバーなので、ランバートのいるエリアの隣は常に「空き」を用意しておく必要がある。

 戦闘でHPがゼロになるとそのユニットは消滅する。ランバートのユニットが消滅したら、即ゲームオーバーだ。戦闘中なんとか生き残れば各ユニットのHPは次ターンまでに全快する。ただし戦略マップではその部隊が現在何ユニット残っているのか見られないのが困ったところ(戦場に出してみてビックリ、ということもある)。また戦略マップでは各部隊の表示マスが非常に小さいため、パッと見ではそれが何なのか配置した当人も分からなくなってしまうのが困りもの。元のパソコン版がどうだったのか分からないのだが、とかく自軍の情報が把握しにくいゲームだなと思ったものだ。

 部隊の補給は占領地に比例するので、占領地を増やすほど補給はしやすくなる。それでも1度に3部隊までだし、補給はあくまで首都でしかできないため、前線まで送りだすのに手間がかかる。また、部隊数には上限もあって後半では「補給はできません」と言われることが多くなる。
 ゲーム中盤になると技術革新が行われて敵味方ともに新たに補給される部隊が上位の兵器にバージョンアップする。それ以前の部隊は用済みになってしまうわけだが、この処理がまた意外と面倒なのだ。わざと敵に全滅させたりなんて非人道的なことをやらざるをえない場面もあった。
 
 
◆ビジュアルシーンも頑張ったストーリー

 さて本作は戦略・戦術シミュレーションであると同時に、ストーリーを進めて行くRPG要素がつけ加わっている。これをちゃんと進めて行かないとゲームクリアは不可能なのだ。
 主人公ランバートは各エリアで「情報収集」というコマンドを実行できる。これを選択すると、そのエリアのマップ(戦闘時と同じもの)に入り、マップ内のあちこちを移動して情報集めが出来るのだ。RPGでおなじみの、町や村で他人の家にズカズカあがりこんで話を聞く、アレである(笑)。町マップの建物のヘックスに入るとランバートが「ガイアクリスタルについてなにかしりませんか?」と毎度同じ質問をする。これに対してほとんどの住人は「あなたはぐんじんですね。ごくろうさまです」「ぎゃーーーあんたはだれだ!」「いそがしいんだ、ほかのひとにきいてくれ」といった調子で実にそっけない。このひらがなだらけのメッセージがゆっくりと表示されるので、これを繰り返し見せられるとまたイライラ。しかしどこで重要な情報が入るか分からず、基本的に全ての建物に入ってみる必要がある。場合によっては「○○の町の南にいる」といったおおよその目的位置を教えてもらえることもあるが、それ以外にも情報や出会いがある(しかもそれを見ないと先へ進めない)ため、結局全部の建物を調べるハメになるのだ。

 さらに各エリアのマップをうろついていると建物以外の場所で「ガイアクリスタル」を拾える。どうも各エリアで個数が決まっていて、ランダムに拾える仕掛けになっているらしく、マップ内の半分も歩けばそのエリアで拾えるクリスタルは全部拾えるようだ。ちょっと面倒くさいのだが、これもやらねば先へ進めない。クリスタルを集めることで自身の魔法レベルが最大5段階まで上昇し、使える魔法の種類が増えていく(最後には死んだユニットの「転生」や敵攻撃の「反射」まで可能になる)ので、面倒でもやらねばならない。このへんもRPGっぽさの導入なのだろうが、ゴミ拾いみたいでなんともセコい。これが「ラングリッサー」では戦闘による経験値稼ぎによる成長に変わっていくわけだ。

 各都市には一人か二人、重要な情報を教えてくれるキャラクターがいる。その人を訪ね当てると顔グラフィックが表示され、ひらがなだらけで読みにくい重要情報を教えてくれる。そして「次は○○に会いなさい。彼は△△の東にいる」といった情報を教えられて、次はそちらを目指す、という展開。当然シナリオ上その順番は決まっているため、ちゃんと人に会ってフラグを立てないまま先の町に入ってしまうと、「△△にゆけ…」という天の声(笑)がランバートの脳内に響いて教えてくれる。その通りに進めればいいのだが、さっきも書いたように部隊配置や戦闘状況のために思うように移動ができず、苦しめられることにもなりがち。まぁその辺がこのゲームの面白さと言えば言えるが。
 
 一応クリアした僕だが、正直なところあのひらがなだらけの難しい情報はいちいち覚えてられず…話が半分もわかっていない(まぁそれでもクリアはできるわけだ)。要するにランバートも含めて数人の人物がガイア大陸の過去の歴史時代からタイムスリップしてきた存在であり、「エルスリード」以来のラスボス、ボーゼルが今回もまた真のラスボスとして登場してくる、というストーリーになっている。
 目的地となるヴェルダースの首都ヴェルデラードには、ボーゼルが率いる「魔装兵」が待機している。ストーリーを進めないうちにここへ進撃することも可能なのだが、この魔装兵ときたらどんな部隊も一撃粉砕、こちらの攻撃はまったく効かないという無敵ユニットなのだ。これに勝てるのは伝説の「闘神兵」しかない。ということでストーリーを進めて来たランバートは終盤でようやく全ての真相を知り、山の頂上に隠された「闘神兵」を復活させる。ここでHuCARDながら大いに頑張ったビジュアルシーン演出は必見!

ラスボス戦 「闘神兵」を復活させれば、ヴェルデラード攻略が可能となる(全エリア征服の必要はない)。ランバートがヴェルデラードへ突入すると、敵ボーゼルも登場するビジュアルシーンが表示され一気にクライマックスへ(右図)
 戦えるのは実質ランバートの「闘神兵」だけで、4体の「魔装兵」を相手にすることになる。これでようやく敵にダメージを与えられるのだが、命中率の低さは相変わらずで、運が悪いと敵4体にタコ殴りにされてこちらが死んでしまう。1対4じゃ勝てないよ〜と思うほどカタい敵なのだが、なんのことはない、1体でも倒せばボーゼルを倒したことになってエンディングになるのだった。
 このエンディングも、今から見ればチャチなものだが、HuCARDということを考えるとかなり頑張ったものだと思う。闘神兵が消えてゆき、夕陽に照らされ立ちつくすランバート。そしてスタッフロールが出てゲームクリアだ。

 難易度は「ガイアの紋章」よりは下がったと思う。戦略モードやストーリー、自軍の成長といった要素を加えたのは面白いが、まだ過渡期でこなれていない感が強い。メサイヤの「エルスリード」三部作はこれで完結したが、間もなく(PCエンジン版「ガイフレーム」のすぐ翌月)メサイヤはPCエンジンオリジナルの戦術SLG「飛装騎兵カイザード」(’90)を発売した。これは「エルスリード」シリーズとは無関係の作品ながら、内容的には「ガイフレーム」の発展形と言え、よりキャラクターとストーリーを重視したSLGとなり、かなり評価が高い。そしてその先に、その方向をもっと推し進めた「ラングリッサー」が出てくるわけ。こうして「ガイアの紋章」から順番にプレイしていくと、その発展の歴史が実感できて楽しめるはずだ。

(追記)本作は2007年9月11日から任天堂「Wii」向けの「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.3
3.1
3.1
3.5
31
3.1
19.13
第527位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACOX



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