機装ルーガ  
ジャンル:戦術シミュレーションRPG
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:工画堂スタジオ
発売:1993年12月3日
価格:8800円
商品番号:KSCD3004


商品外見◆工画堂が贈るPCエンジンオリジナルSLG!

 「工画堂スタジオ」は 今でもパソコンをベースにゲームソフトを作っている老舗ソフトハウス。つい最近になって知ったのだが、その創業は驚いたことに大正時代にまでさかのぼり、 もともとはデザイン会社だったそうで。1980年代からゲームソフト部門を作って硬派なシミュレーションゲームを中心に人気を集め、90年代以降は女の子 向けも含めた可愛い系のゲームも多く発売し、多彩なラインナップで現在に至っている。
 この「工画堂」、PCエンジンの後期から末期にかけて多くのSLGソフトをリリースしている。デビュー作はパソコンRPGの移植「魔晶伝紀ラ・ヴァルー」(’91)で、さらに人気の宇宙戦略SLGの移植「スーパーシュバルツシルト」(’91)、翌年にはその続編「スーパーシュバルツシルト2」(’92)を発売。そしてその2作に続くSLG第三弾としてリリースされたのが「機装ルーガ」(’93)だ。前作と同じく戦略・戦術SLGだが、こちらはRPGチックなファンタジー世界観の作品となっていて、移植ではなくPCエンジンオリジナルとして開発された。

 太古の昔、「ヴァスツール文明」は「魔導科学」を発達させ、天空に巨大な都市を浮かばせて世界を支配した。しかしあまりにも魔導科学に頼り過ぎたこの文 明は、やがて発達し過ぎた魔導科学そのものによって自壊してしまう。それから長い年月がたち、かつての文明の名残は各地に残る遺跡に封印されていた。その 遺跡を守るのが「ガーディアン」と呼ばれる人々で、主人公ヴァイスはその「ガーディアン」のひとつ「クメス族」の族長の息子である。そんな彼の前に、「ハ イエルン帝国」の兵士たちに追われる謎の美少女エリナが姿を現す。ハイエルン帝国は古代の魔導科学の復活をもくろみ、その鍵を握るエリナを追っていたのだ ―

 こんなオープニングが、工画堂お得意の美麗ビジュアルと共に語られてゲームが始まる。設定自体はいずれも「どこかで聞いたような」ものばかりで、終盤に 登場する、かつて文明を滅ぼした「機獣神」が復活するくだりなんぞは「ナウシカ」の巨神兵のはなしそのまんまである。まぁゲームに出てくる世界観というの は、えてしてみんな「どっかで聞いたような」ものが大半なのだが、そのほうがプレイヤーもとっつきやすいということはあるだろう。

 そんな世界観とストーリーを展開しつつ、ゲーム自体は戦場マップを交互にチマチマと駒を動かして陣取り合戦を繰り広げる将棋チックな戦術シミュレーショ ンとなっている。これだって「ファイヤーエンブレム」だの「ラングリッサー」だのといったゲームでおなじみで、特に際立った個性があるというわけでもな い。


◆絶対に人が死なない安心(?)の戦争ゲーム

 このゲーム最大の個性は、戦術SLGでありながら「まったく人が死なない」点にある。もちろんストーリー上登場人物の死が描かれるところもあるのだが、戦闘において敵味方ともに誰も死なない。どういうことかといえば、このゲームでは戦闘でダメージを受けてHPがゼロになっても戦死ではなくあくまで「深手を負って撤退」で、そのシナリオのスタート地点にHP1状態で戻されるだけなのだ。そこで治療を受ければまた戦線復帰可能で、ヘンな言い方だが安心して何度でも「死ねる」(笑)。自殺覚悟の特攻作戦だって余裕で実行できるのだ。
ゲーム画面  ただしそれは敵側も同じで、いくら敵ユニットのHPをゼロにしてもそれが消滅するわけではなく、やはりスタート地点の拠点で治療・復活してまた戦場に戻っ てくる。敵ユニットの数を減らして状況を有利にしよう、という戦術SLGの基本戦略がほとんど使えないわけ。だから下手にプレイしているとお互いに延々と 同じことを繰り返す「千日手状態」になりかねない。実際、プレイヤーが操作しないCPU担当の軍勢同士の戦闘ではこの「千日手状態」がしばしば見られる。

 基本戦術は他のゲームとおんなじで、敵のユニットを多数の味方で同時攻撃すること。このゲームの戦闘は「ネオ・タクティカル・バトル」と 名付けられていて、隣接する敵ユニットに攻撃をかけると、正面から向かい合う敵味方ユニットの周囲2×3=計6マスの戦闘画面に切り替わる。 この6マスの中に入るユニットは全て戦闘参加となるから、当然可能な限り味方が多くその中に入っていた方が有利。なので、戦闘前にあらかじめそのエリアに 味方を配置しておき、それから攻撃にかかるのが常道。敵側もほぼ同じ戦略でしかけてくる。
 戦闘はRPGの戦闘に似ていて、最大で敵味方6ユニットが参加。近距離攻撃しかできない剣、遠距離攻撃しかできない弓、両方可能な槍の区別があり、戦闘に入る前にユニット配置を考慮して持つ武器を選んでおく必要もある(どのキャラも武器を二つ持てるが、装備は片方しかできない。戦闘中にも切り替え可能だが1回損をする)。キャラごとに得意とする武器は決まっており、また敵の側面や背面から攻めると敵に与えるダメージが大きい仕掛けなので、移動時にはユニットの向きにも気を使う必要がある。
 魔法系の技は「特技」と名づけられていて、多人数への同時攻撃や回復系などお約束の技はほとんど登場するが、1キャラにつき一つずつしか持っておらず、しかもよくあるMP消費ではなく「1刻」(敵味方が行動する1ターン)に1度しか使うことができない。
 戦闘は3ターンまでと短く、敵ユニット一人を倒すのために何度も戦闘を繰り返すはめになりやすい。おまけに先述のようにHPがゼロになっても死ぬわけで はなくあくまで撤退。しばらくすれば戦線に復帰してしまう。プレイヤーはこうした戦闘を、なるべく自ユニットの損害を最小限にして敵の撃退を繰り返しつ つ、ジリジリと前進していく戦略をとることになる。自軍の拠点に戻れば回復は出来るけど、いちいち戻っていてはいつまでたっても先には進めない。

 そんな感じで前進し、敵の拠点への攻撃をかける。ここでは攻城戦の画面に切り替わり、城側は城壁の上に弓兵や投石機が配置されていて、こちらに攻撃をか けて来る。攻城側は城門めがけて攻撃をかけ、城門のHPをゼロにすれば城を攻め落とし、占領できる。城壁にいる敵への攻撃もかけられるがひたすら城門への 攻撃を優先すべき。うまくやれば結構あっさり落城するもので、いったん攻め落としてしまえばその拠点はこちらのもの。さっさと入城して味方を治療、城の修 復を行って、次の敵の拠点の攻略を狙う。これを繰り返してそのシナリオの敵の本拠地を攻め落とせば面クリアだ。

 慣れない最初のうちは戸惑う戦闘システムだが、分かって来るとまず負けることはなく、かなり楽勝。特に主人公ヴァイスがタイトルにもある「機装ルーガ」 を装着してると異様に防備が硬いので、ピンチに陥ることはほとんどない。しかも各シナリオはほぼ一本線の攻略方法しかなく、途中で新手の敵が現れるとか、 味方が出現するとかいったイベントは起こるのだけど、特に情勢に影響を及ぼさない。
 要するに、分かって来るとかなり単調なゲームなのだ。とにかく地道に戦闘を繰り返し、敵の拠点を攻め落とし、の繰り返し。ルールを特に読まなくてもなん となく攻略法がわかる親切設計でもあり、SLGは難しいと敬遠する向きにはとっつきやすい。でもやっぱり歯ごたえがない退屈なゲームという印象を抱かざる を得なかった(一応システムコマンドで難度調整ができるようになっていたけど、どれほど違うんだろ)。後半のシナリオのクリアには時間だけは結構かかり、途中でセーブができるのはありがたかったけれど…。


◆ビジュアルのデキはいいんだけど

 この手のシミュレーションRPGは、経験値を稼いでキャラを育てるのが楽しみの一つでもあるのだが、なぜか本作はその要素も完全にカットした。いくら敵 と戦っても経験値は増えず、シナリオごとにキャラの基本能力は最初から設定されている。それぞれのシナリオは基本能力そのままではややキツい戦いを強いら れる程度のバランスになっているが、装備する武器・防具をより強力なものにしていくことでシナリオ内でいくらか能力をアップできるようになっている。
 ここがこのゲームのオリジナリティとなっているのだが、プレイ中に鍛冶屋に武器・防具をあずけて「鍛え直し」を してもらうことでその強化がはかれるのだ。ただし無条件で鍛え直せるわけではなく、材料として「鉱石」が必要。鉱石はゲーム中にイベントで手に入り、各シ ナリオで必要な程度にはちゃんと手に入るようになっている。この鍛え直しをするためには対象となる武具を装備からいったん外す必要があり、完成まで1〜3 ターンほど待たされるので少々面倒くさいのだが、やっぱりこれをやらないとクリアは難しいようである。

 クリア済みのシナリオについては、ゲーム起動時に選択してそのシナリオだけを遊べるような設計にもなっている。経験値によるキャラ育成要素を省いたの は、もしかするとそのためだろうか。しかし各シナリオとも特に攻略の面白みがあるわけでもなく、わざわざそのシナリオだけ遊ぼうという人がどれほどいたの か疑問。
ビジュアルシーン  ただし、そのシナリオ選択方式だと面間ビジュアルをいきなり見られるというメリットはある。この方面も強い工画堂、当時としてはかなりハイレベルで見ごた えのあるドラマチックで割と長いビジュアルシーンがシナリオの間、あるいはシナリオ中に挿入されている。設定自体はありがちなんだけど、後半明らかになる 悲劇的な背景、絵の迫力(ただしパッケージイラストと全然違う)と声優陣の熱演で結構引きこまれるのだ。作り手もこのストーリーを見せることに力を注いだと思われ、声優ブームの流れにも乗ろうと、三木真一郎(この手のゲームの主役には珍しく割とゴツい体格で言葉も乱暴なキャラ)、井上喜久子、大塚明夫、森川智之、糸博、椎名へきる(ブレイク寸前だったかな?)、高山みなみ、となかなかの顔ぞろえで盛り上げている。
 この力の入ったビジュアルシーンを見てもらうことが最優先で、ゲームの難度は下げたのかなぁ…とも思っちゃうのだが。シナリオが全部で七章しかないというのもボリューム不足で、物足りなさばかりが後に残った。

 それでもこの「機装ルーガ」、そこそこの評価と売上だったようで、それほど間をおかずに続編「機装ルーガII」(’95)が製作された。そして上記のような前作が持っていた弱点を大いに反省したのか、ムチャクチャ難度の高い、練りに練り込まれたまったく別物のゲームに進化してしまったのだが、それについてはそちらの項目で。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.916
3.900
3.366
3.316
3.766
3.533
21.797
第239位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

★電撃PCエンジン(発売前テスト版による100点満点での採点)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
80
ウォルフ中村
75
パトリオット佐藤
75
メタラー佐々木
80

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
ローリング内沢

鈴木ドイツ

野田稔

TACOX



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