ガルクライトTDF2
ジャンル:戦術シミュレーション
媒体:CD-ROM
発売元:パック・オン・ビデオ
発売:1991年1月25日
価格:7800円
商品番号:PVCD-0002
◆「怪獣映画」+「ロボットアニメ」な戦術シミュレーション
西暦2033年、突如外宇宙より襲来した宇宙怪獣たちにより人類は滅亡の危機に瀕した。地球防衛軍(Terrestrial Defense Force)はどうにかこの宇宙怪獣たちを撃退したが、地球のような有機性惑星を栄養源とする宇宙怪獣たちが再襲来が懸念された。そこで「TDF」は再編成され、同時に秘密の最終兵器「ガルクライト」が建造されていた――
とまぁ、こんな設定が説明書の最初に書いてある。この手の話はCD-ROMゲームならOPビジュアルで説明するのが定番なのだが、いちいち作るのが面倒だったらしく、ゲームを起動すると何の説明もないままプレイヤーはいきなり来襲した怪獣たちとの戦闘に入ってしまうハメになる。
上記の設定を読めば分かるように、このゲームには「前作」がある(だいたいタイトルにも「2」と入っている)。データウエストがMSX向けに1984年というえらい昔に発売した「怪獣大戦争T.D.F.決死の原子炉防衛作戦」というゲーム(今や使用不能のタイトルだな)がそれだ。「怪獣大戦争」というタイトル、原発がからむ点など、東宝の怪獣特撮を意識したことは疑いない。そういえばこの発売年に公開された復活版「ゴジラ」に原発を襲うシーンがあったっけ。
ゲーム内容自体は「大戦略」などを意識したありふれた戦術SLGだったが、怪獣を使った所に目新しさがあったのか、同社のヒット作となってPC−8800など他機種にも移植された。そしてPCエンジンにも…ということなのだが、さすがにそのまま移植では古いとみたのか、「2」とタイトルを打って新規続編として開発された。僕もそういう事情を知るまではなんで「2」がついているのか不思議に思っていたものだ。
ただしPCエンジン版の発売元はパック・イン・ビデオ。「TDF2」の開発はデータウエストが進めたが、自社参入はまだだったためにこういうことになったらしい。だがこの直後にデータウエストは「ライザンバーII」(’91)をひっさげてPCエンジンに参入している(そういえばこれも「2」だな)。
さて「2」の謎は判明したが、単に「TDF2」ではなく「ガルクライト」と前についているのは何なのか。やはり家庭用ゲーム機、それもCD-ROMで出すからにはもっとキャッチーなものをつけないと、思ったのだろう。「ガルクライト」とはこのゲームで「TDF」側メカ中最強の巨大ロボットの名前である。これが追加されたおかげでこのゲームは怪獣映画のみならずロボットアニメチックな要素も加わることになった。
パッケージと同じ役割の説明書表のイラストもその「ガルクライト」を前面に押し出しており、実際ゲーム中でも最強(HPがほぼ満タンの上に攻撃力も非常にデカい)でプレイヤーにとっては頼りになる存在、問答無用の主人公メカとなっている。「ガルクライト」は最初から出てくるメカではなく、「ガルソニック」「ガルクラック」「ガルウェイブ」の三つのメカユニットが合体してできあがるメカで、このあたりにも昔懐かしの合体巨大ロボットアニメのノリを感じる。作り手もここが見せどころと思ったようで、エンディング以外でゲーム中唯一のビジュアルシーンがこの三機合体のガルクライト登場シーンだ。ただしアニメみたいなカッコいいものを期待するとガックリする出来だが(左図の目がギラッと光る止め絵だけはいいんだけどね)。それとガルクライトのデザインが表紙イラストとえらく違うような。
ただしそういう最強メカだけにそう簡単には使えず、シナリオによって制限がある。序盤シナリオではそもそも登場しないし、使えるシナリオになってからも合体可能ターンが指定されている。どうしてそう決まっているのか一切説明がないが、シナリオが進むにつれ合体可能ターンは遅くなる、つまりそれまで我慢と苦戦を強いられるようになっている。
合体以前の「ガルソニック」「ガルクラック」「ガルウェイブ」は単体でも使用可能だが、これらのうち一機でも破壊されてしまうと主役メカ「ガルクライト」が出動できない、ってわけで即ゲームオーバーである。だからこの三機については後生大事に使用しなければならない。
◆合体して連続攻撃!
このゲーム、まず大きな特徴は「敵が怪獣である」という点。いずれもどっかで見たような怪獣ユニットばかりが登場し、CD-ROMを生かして攻撃時に鳴き声を聞かせてくれるのだが、これがまた怪獣映画そのまんま(PCエンジンでは「ゴジラ爆闘烈伝」が思い起こされる。まさか映画から録音したんじゃあるまいな)。また怪獣であるだけに建物や市街地もお構いなしに破壊しながら通過してゆき、通った後をさら地にしてしまう。さすがにプレイヤー側はそんなことは許されないのだが、怪獣たちが暴れたおかげで広くなったスペースを有効利用するという作戦が使えたりもする(笑)。
プレイヤーの「TDF」側は「ガルクライト」に合体する三機メカのほか、航空ユニット、戦車ユニットなど移動能力や耐久力の異なるさまざまなメカユニットを持っている。それぞれに使用武器が決まっていて、「ミサイル系」と「ビーム系」の二つに分類され、その両方を持つユニットも多い。「ミサイル系」は命中率は高いがダメージが少なめ、「ビーム系」はダメージは大きいが命中率が低め、とそれぞれ一長一短。ただプレイしていての印象だと基本的にミサイル攻撃一本で大丈夫という気もする。
双方の攻撃力は五分五分と言っていいが、ユニット数が怪獣側の方が若干多い。このゲームでは隣接する敵に攻撃をかけると攻撃された側も反撃する仕掛けになっているため、普通に戦っているとつぶし合いで全滅の恐れもある。それ以前に「ガル〜」シリーズのどれか一機をやられてゲームオーバーになってしまうだろうけど。
この味方メカユニットについては説明書をよく読んでおかないといけない、このゲーム独特のルールがある。実際僕もろくに読まずにプレイし始めてシナリオ2でいきなり行き詰まった。独特のルールとは、これらTDFメカユニットは全て同じヘックスに二機入ることができ、攻撃時にその二機で「同時攻撃」をかけられる、というものだ。これも一種の合体だと思えばいい。
同じヘックスに二機のメカが重なって入り、どちらかが「上」になる(画面上でも重なって表示される)。このとき「上」のメカが隣接する怪獣に攻撃をかけると、「上メカ攻撃」→「敵怪獣反撃」→「下メカ攻撃」という順番で攻撃が行われ、こちらが一回多く攻撃できるのだ。しかも敵怪獣の反撃は上メカだけにしかダメージを与えないので、耐久力の乏しいメカを下に回して守る、という作戦も使える。このルールを理解すると、基本的に全てのメカを「合体」させて動かすことになるはず。そうでないと絶対に勝てない。
またこのゲームでは、メカ系SLGには珍しく「自然回復」のシステムがある(生物である怪獣については分からんではないが、メカには修理班が常にくっついてるのか?)。前のターンでくらったダメージは次のターンの自分の番の時にはある程度自然回復しているのだ。だから大きなダメージを受けた味方ユニットは後方に下げて逃げ回らせたり、味方の「下」に入ったりして耐久力の回復を待てばいい。回復の程度はそのユニットの完全耐久力の一定のパーセンテージと決まっているようで、ガルクライトはかなり早く回復してくれる。
それ以外の部分では基本的に戦術SLGで定番の戦法、「多数の味方ユニットで敵の一機を集中攻撃」をやればいい。このゲームの敵、怪獣たちはやっぱり所詮は怪獣のようで、あまり頭のめぐりがよくないらしく(実際、動く前にイラつくほど「長考」している)、こちらに向かって一気に攻撃してくるということはなく、本能に任せてウロウロしている。こちらから積極的に攻撃するとヤブヘビになることが多いので、相手のうち一匹がノコノコと突出するのを待って一気に3〜4機で取り囲み、タコ殴りにする、というのが基本作戦だ。
◆ガガガガガ…ガルクライト!
シナリオの数は全部で12と少なめで、慎重に行動していれば難度は戦術SLGとしては低めな方だと思う。ターン数制限もないから状況がよくなるまで怪獣が暴れるに任せればよく(市街地の場合、住民はとっくに逃げてると考えよう)、「ガル〜」シリーズ以外の味方ユニットが何機やられようと次のシナリオに影響は全くないので、よほど弾をはずしまくるとか不運に見舞われない限り、なんとかなるはず。
一部シナリオでどうしても行き詰まることもあるので、その場合はそのシナリオの最初からやり直せる「リスタート」のコマンドがある。ただ1シナリオでかなり時間がかかるので、本当はリスタートよりも任意の時点で途中セーブができるようにしてほしかったところ。
敵ユニットが多いのでかなり時間がかかるシナリオ12をクリアすると、最終決戦の特別ステージに突入。何があったのか全く説明のないまま、いきなり地球を見下ろす宇宙空間が舞台となり、怪獣軍団のボス「ディザムバラン」との勝負になる。ここでは自軍ユニットは「ガル」シリーズの3機だけで、合体してガルクライトになり、一騎打ち勝負をすることになる。「ディザムバラン」はさすがラスボス、ガルクライトとほぼ同格の能力であるため、勝負を決めるのはハッキリ言って「運」。相手が攻撃を連続ではずしてくれてこっちの攻撃がしっかり入る、ということがあれば勝てる、というものだ。
この戦いに勝利すればゲームクリアとなり、夕焼けの中をガルクライトがこっちへ飛んでくる短いビジュアルシーンに音楽とスタッフロールが流れるだけの物寂しいエンディングを見ることになる。負けると大変、シナリオ12の最初からやり直しという恐ろしい設定になっている。
このゲーム、パソコンゲームの作り手だったスタッフが家庭用ゲーム機に慣れていなかったんじゃなかろうか、と思えるところが多い。とくに戦場マップの1ヘックスがやたらに小さく、そこに入る敵味方のユニットも小さくて非常に見づらく見わけもつきにくい。道路上ならまだしも市街地上空にいる戦闘機ユニットなんてプレイヤーが存在を忘れてしまうほど溶け込んでしまっている(ステルス機じゃあるまいし)。ユニットそのものを大きくして、影をつけるといった見た目の工夫をした方が良かったはず。
売りである1ヘックスに二機が重なって入れるシステムも、注意していないとどこに何がいるのかよく分からない。敵味方の戦力と耐久力の状況を一覧できるコマンドはあるが、個々のユニットについて「これは何だっけ?いまどうなってる?」といった情報が即座に見られないのも不便。衛星兵器「グングニル」から地上攻撃を命じるコマンドが最初から表示されているが、これはゲーム終盤にならないと使えないし、おまけに使用可能なシナリオでも役に立つことがほとんどない(攻撃範囲の「結界」内に敵が入って来ないといけない)ので、ハッキリ言って邪魔なだけ。
ヘックスが小さい割にマップがやや広いのでカーソルをいちいち移動させるのも一苦労。敵味方のターンが交代する際、カーソルが敵の方にいったままでいちいちこっちに戻さなくてはいけないのも今からすると不親切。また各種「地形効果」が「○○%」と画面内に示されるのだが、それが戦闘にどれほど影響を与えているのかプレイしていてもよく分からない。あと、弾が命中して爆発演出があっても耐久力が全く減らない時があるのだが、あれは「外した」ということなんだろうか?
CD-ROMゲームの場合、ビジュアルシーンをくっつけて恰好をととのえただけ、というものも多々あって、つければいいってもんじゃないのだが、このゲームについてはその世界観から言ってもオープニングや面間にビジュアルシーンによるストーリーをくっつけるべきだった。とにかく各シナリオで何の説明もなく戦闘に放りこまれ、淡々と先へと進まされるのでクリアしても達成感がない。作る技術とヒマがなかったのかもしれないが、ガルクライトの合体アニメだけ毎回見せられるというのも空しい。
良い点を挙げればCD音声で収録されているBGMがある。特に名曲とまでは言わないが、プレイしていて心地は良かった。どうせなら怪獣映画風味、伊福部節を思わせる曲にしてほしかった気もするけど(これも「ゴジラ爆闘烈伝」では実行してるんだよな)。
ところでBGMの中で、「ガガガガガガガガガ…ガルクライト」とつぶやくように言う男性の肉声(歌ではない)が入るものがあって、妙に頭に残ってしまうのだが、あれ、わざわざ歌手を雇ったとも思えないので、もしかしてスタッフの一人ではあるまいか…
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.530
| 3.530
| 3.122
| 3.244
| 3489
| 3.530
| 20.449
第402位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
岩崎啓真
| 5
|
ウォルフ中村
| 5
|
TOMOYO
| 6
|
ミロはじめ
| 5
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
東府屋ファミ坊
| 5
|
水野店長
| 5
|
森下万里子
| 6
|
TACO・X
| 4
|
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