ヴァージン・ドリーム   
ジャンル:育成シミュレーション
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:徳間書店インターメディア
発売:1996年5月31日
価格:8800円
商品番号:TICD-6004


商品外見◆PCエンジン最末期の美少女育成ゲーム

 このゲームは1996年というPCエンジン史ではまさに最末期と呼んでいい時期に発売されている。この時期ではPCエンジンの市場もほとんど消滅状態といった感じで、NEC−HEとしても後継機のPC−FXに主力が移っていた(もっとも大苦戦の市場だったが)段階である。正直なところ当時の筆者も「まだPCエンジンのゲームが出てるんだ〜」と思ってしまっていたものである。

 発売元は徳間書店インターメディア。最終盤になってからPCエンジン市場に参入したメーカーであるが、最後まで生き残ったPCエンジン専門誌「PCエンジンファン」誌の発行元でもあり、PCエンジン、PC-FXに関してはけっこうつきあいのよさを見せてくれたところでもある。
 同社のPCエンジンソフトは「秘密の花園」(’93)「初恋物語」(’94)「電脳天使デジタルアンジュ」(’94)とそれまでに三作出されているが、いずれも同社がパソコンで発売した非アダルト美少女ゲームの移植作である。この「ヴァージン・ドリーム」もご多分に漏れずパソコン美少女ゲームからの移植されたものだ。

 キャラクターデザインは独特の美少女キャラ描写で知られる弓月光氏。アイドル養成ゲームということもあって主人公はじめ登場人物はほとんど美少女ばかりである。ただし弓月氏の原画を生かせたと思えるのは通常画面の立ちポーズと一枚絵ぐらいで、あとは弓月氏の絵とはかなり印象が異なるSDキャラばかりで弓月氏ファンにはどうか?と思う使い方でもある。
 PCエンジンSCDということで、お約束だがすべてのキャラクターに声優による声がつけられた。主人公は当時まさに人気絶頂といえた三石琴乃。他のキャラにもまぁ「豪華声優陣」と呼んでよさそうな配役がなされている。パッケージの裏に声優配役がずらりと並んでいるあたり、当時の声優ブームとそれに便乗しようとするゲーム販売者側の思惑などがうかがえるところだ。


◆育成資金は自分で稼ぐ!?

 このゲームでプレイヤーは芸能人を目指す女のこのマネージャーとなり、その子のスケジュールを管理して育成していくことになる。この手の育成ゲームはパソコンにおける「プリンセスメーカー」「卒業」のヒット後(いずれもPCエンジンSCDに移植されている)それこそ雨後の竹の子のように世に出ており、特に芸能人ものでは「誕生」というヒット作もあった。これまたPCエンジンにすでに移植・発売されており、「ヴァージン・ドリーム」にはもはや企画的にも「二番煎じ」の印象をまぬがれないところがあった。ついでに言えば非公認ソフトながら「AV誕生」なんて育成ゲームもあったりするのだが…(^^;)。

育成画面 「ヴァージン・ドリーム」はシステム面でもさして目新しいところはない。ちょっと変わってるのが最初に何を目指すのか(女優、アイドル、モデルなど)一応決めておくところと、同じ寮に住んで芸能人を目指すほかのライバルたちとの交流があるというところだろうか。実は一回プレイしただけなのでよく分からないところもあるのだが、どうやら七人もいるライバルの女の子たちとの交流がイベント発生やパラメーターに一定の影響を与えているような気もする。
 あとオリジナリティといえそうなのは主人公の女の子にいろいろな服を着せる「着せ替えシステム」だろう。もちろん単に着せ替えて楽しむだけではなく(笑)それによってパラメーター動向に変化が生じたりもする。衣服はかなりのバリエーションが用意されていて、お店で購入したりイベントで手に入ったりする。

 ゲームは基本的に一週間を二つに分け平日三日ずつのスケジュールを決めて進行させてゆく。スケジュールで選べるのはレッスンとバイトの二種類があり、それぞれ何らかのパラメーターを増減させる。レッスンは演技・発声・ダンスなど芸能人ならおなじみといえるものが一通りそろっているが、それぞれ「松・竹・梅」の三段階がありお値段に差がある。もちろん高い値段のものほど効果があるが、ちょっと続けただけですっからかんになってしまうほど高額なものだ。安いレッスンはそれなりの効果しか期待できないし、そもそも失敗率もかなり高い。
 レッスンばかりしていてはあっという間に金がなくなる。このアイドル養成会社は何を考えているのか育成資金はいっさい出さず、芸能人の卵本人にバイトで資金を稼がせるという、よく考えるとかなりアコギな商売をしている。そんなアホなと思いつつ、ゲームとしてそうなってるから仕方がない。マネージャーであるプレイヤーはかよわい女の子に工事現場や交通整理や家庭教師など、さまざまなバイトをやらせて金を稼がせねばならない。バイトでも成功するとパラメーターに変化が生じるので一種のレッスンだと思うこともできるんだけど。

 とにかく資金に関してはかなりシビアなこのゲーム。慢性的な金欠状態に陥りがちで、なんだか年がら年中バイトさせていたような印象もある(笑)。そんなプレイヤーにはゲーム中盤からある誘惑が襲い掛かってくる。キャバレーのホステスとかヌードグラビアとか、いわゆる「お色気系」の非常に見入りのいいバイトが出現するのである。これらは一回のバイトで相当な収入が見込めるためついつい手を出しがちだが、当然ながら女の子の「危うさ」パラメーターをてきめんに上昇させ品位が下がる結果を招く。まぁこの「危うさ」を上げていくことでそっち系のエンディングを迎えることもできるようだが、まっとうなプレイとしては深入りするのは避けたいところだ。
 似たようなものとして競馬ギャンブルで資金を増やすという手もあるんだけど、これはそれこそバクチである上にやはり品位を下げるんだよね。


◆攻略は非常に難しい…

 休日は外出して町を歩き、服やアクセサリー、アイテムなどショッピングをしたり、エステや美容院、ジムで体を磨いたりといろいろに使うことができる。もちろん自室で休むこともできるし寮の女の子たちの部屋におしかけて交流することもできる。
 プレイヤーの分身であるところのマネージャーはこの子と常に同棲しているのか?とツッコミをいれたくなってしまうところなのだが、とにかく自室では完全に密着生活をしている。服を自由自在に着せ替えたり、プレゼントをあげたり対話をすることで好感度を上げることもできる(見てないけどマネージャーと結婚してしまうエンディングがあるものと思われる)。好感度が上がっていくとシャワーシーンの絵の露出度がだんだんあがっていく(三石琴乃のモノローグつき)のもちょっとうれしかったりして(笑)。
 育成もののお約束で女の子の機嫌や体調がときどき変化していく。当然だが冬場に水着や下着姿をさせているとあっさり体調を崩すので注意。衣服とパラメーターの関係はかなりしつこくやらないと完全把握は難しいと思う。

 ゲーム時間は一年間。7月と11月の二度「予選」が行われ、ライバルたちと評価を競い合うのがゲーム上のアクセントとなっている。審査の一ヶ月前に審査内容が公表されるので演技や品位、歌唱力など審査対象のパラメーターをそれまでに必死にあげていくことになる。審査の模様はコミカルなSDキャラの芝居で行われプレイヤーは介入できずただ見ているしかないが、結構細かい芝居をしてくれるので面白い。
 しかしこの審査での評価に一喜一憂していても一年の最後に行われる最終選考に通過できるかどうかはまるっきり分からない。そもそもライバルたちのパラメーターがまったく不明であるので対策のしようがない(審査で順位だけは明示されるのだが、日常では完全に不明である)。とことん自分の各種パラメーターをあげていくしかないわけだけど、報われるとは限らない…としか思えない。

 僕自身は一回しかプレイしてないが見事に外れエンディングだった。それでも最終審査で二位につけていたのだが…結果はエキストラ俳優になってしまい、女の子から怒られてしまうことになった。弟が一時しつこく何度か攻略していたが、パラメーターや審査結果とエンディングの因果関係が不鮮明だと思えたとのこと。ネットでプレイ感想を当たってみても、やはりエンディング攻略はかなり難しい(それもよく分からん難しさである)との評価が多い。

 最末期のソフトであり市場があるうちにとやや急いで作っていたんじゃなかろうかと思えるところもある。なお、この時期の「PCエンジンファン」誌はCD−ROM付録で発売されており、この「ヴァージン・ドリーム」の体験版が1996年8月号付録CD-ROMに収録されている。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.214
3.142
2.857
3.214
3.142
2.928
18.500
第580位

★ファミ通(発売前テスト版による総合10段階評価)
レビュアー
総合評価
浜口通信

水ピン

渡辺美紀

羽田隆之




迷い込んだ方はこちらから