宇宙戦艦ヤマト
ジャンル:戦術シミュレーション
媒体:SUPER CD-ROM
発売元:ヒューマン
発売:1992年12月22日
価格:7800円
商品番号:HMCD 2004
◆さらば地球よ、旅立つ船は…
ストレート極まるタイトル。ロゴもそのまま、サブタイトルも何もなくズバリ「宇宙戦艦ヤマト」。パッケージに見えるマニュアル表紙にはまさにアニメに出てくるそのままのヤマトの雄姿が。悪く言えば工夫のない、あまりにもオーソドックスなパッケージを見て、ただのサントラCDではないかと思っちゃう人も多そうだ。
PCエンジンでこのCD-ROMを起動すると、そのストレートぶりはなおさら明らかとなる。いきなり始まる怒涛のオープニングビジュアル。ひび割れた大地からドドドド…と空へ飛び立つヤマト。そしてあのゾクゾクする前フリから始まるおなじみの主題歌が流れるなか、宇宙を飛翔するヤマトの雄姿、重厚な艦橋の模様が次々と映ってゆく。そこにアニメではないゲームの製作スタッフの名前が「監督」「演出」「美術監督」などとアニメ映画風に次々とかぶさり、最後には遠ざかるヤマトをバックに「制作 ヒューマン」と表示されるのが何ともいえずカッコいい。明らかに作り手が楽しんでますよね、これ(笑)。
ほとんどTVアニメそのままのオープニングは今見ても圧倒される。もちろんそこはCGドット絵アニメ、32ビットCD-ROM機以降可能となった取り込みアニメの上映に比べれば絵の荒さ、動きの少なさが気になるだろうが、これが出来合いのアニメをとりこんだものではない、わざわざドットを打って描かれた絵をプログラムにより動かしたものであるということを考慮すれば、まさに「驚嘆」の一語。今見るとかえって感動を覚えてしまう出来だ。
主題歌入りオープニングビジュアルが終わるとこれまたアニメでもおなじみの「無限に広がる大宇宙…」ではじまるのナレーション(このゲームでは永井一郎が担当)で語られるプレストーリーのビジュアルが始まる。これはTV版の第一回から第二回、ヤマトが発進する直前までをダイジェストでまとめたもので、これまたその出来の良さにはアニメそのものよりも感動してしまう(笑)。あの透明感あるスキャットが流れる中、地球に向けて遊星爆弾が投下されていくシーン、真っ赤な夕陽に照らされ干からびた大地に姿を現す戦艦大和の残骸などファンには感涙モノの名画面がそのままTV画面に映し出されていく。
プレストーリーのビジュアルは発進直前のヤマトが主砲をガミラス戦艦に放つところまで。そのあとようやくタイトル画面が出るのだが、タイトルロゴが表示される直前の一瞬にスターシャの顔が半透明状態で表示されるという心憎いばかりの演出がある。
「スタート」を選ぶと「第1話 ヤマト発進!」のタイトルが。基本的にTV版を意識して作っており、話数は異なるが各章のスタイルがこの調子なのもファンには嬉しいところだろう。今となってはやたらにあるガンダムゲームなど、この手の演出は珍しくはないが、当時においてここまで徹底していたゲームは絶対珍しかったはず。というかそもそもPCエンジンのCD−ROM2だからこそ可能になった「TVアニメ同様の演出」なのだ。
第1話のタイトル表示に続いて、冥王星のガミラス基地から超大型ミサイルがヤマトめがけて発射され、ヤマトの波動エンジンがついに起動されるまでのビジュアルシーンが入る。聞く限り音声は新規録音ではなく実際のアニメのものをそのまま流用していると思われ(新録りは永井一郎のナレーションだけではなかろうか)、もともと動きが少なく止め絵の多かった原作アニメのおかげで(?)アニメそのままの音声とカット割で展開されるビジュアルシーンはまさにTVアニメそのもの。ファンならば今でも感涙にむせべること請け合いだ。
◆誰かがこれをやらねばならぬ…
けっこう長いビジュアルシーンが終わると、ようやくゲーム画面に。ゲーム画面は沖田艦長の視点から見た艦橋の様子になっていて、森雪と真田がゲームの状況、クリア条件などを説明してくれる。起動したヤマトはその位置からまだ動けず、迫り来る超大型ミサイルの接近を待ち受けて、真田が出す合図に合わせてこれを砲撃、破壊することが第1話のクリア条件。分かってしまえばまず失敗するはずの無い簡単なクリア条件なんだけど、最初のうちは操作方法が良く分からずかなり焦る。なんせこのゲーム、状況が刻一刻と変化していくリアルタイム進行なんだから。
ヤマト本体からの砲撃は全て艦橋中央にいる古代が担当している。プレイヤーは古代にカーソルを合わせ、まずヤマト各部のどの砲を放つかを選択する。各砲はそれぞれ射程や方向、パワーが異なり、なおかつ発射回数も限られていて「弾切れ」になると充填を待たねばならないなど、なかなかリアルな設計となっている。しかし砲の選択にそれほど悩まないで済むのがこのゲームデザインの絶妙なところで、砲を選ぶとその射程範囲がレーダー画面に表示され、どの敵が狙えるか一目瞭然となっているのだ。砲を選んだら戦場マップに切り替わり、標的を選択。すると砲が放たれて敵を撃つ、という手順になる。
第1話ではシナリオ上、ちゃんと狙って撃てば絶対に命中するようになっているが、第2話以降ではランダムで砲撃をはずすこともあるので結構怖い。もっともそれは敵さんも同じなのでそう気にすることはない。
超大型ミサイルを撃破し、炎の中から宇宙へと飛び立つヤマト。「人類滅亡まであと363日」というお約束もキッチリと映して、第1話は終了する。一つシナリオをクリアするとそこで自動的にセーブデータが作られ、再起動時に次の章からプレイ出来るようになる。
各話のオープニングとエンディングにはいずれも長時間のビジュアルシーンがついていて「ヤマト」の雰囲気を盛り上げてくれるが、いちいち見たくないという人はRUNボタン一発でスキップできるようになっている。
続く第2話は待ってましたのワープ航法!原作にもある月から火星へのワープをそのとおりやることになるのだが、ゲーム部分は敵の攻撃を受けながら一分以内にワープ実行エリアまで移動するのがクリア条件。もちろんその間にワープのための波動エネルギーを充填しておく必要があり(徳川機関長が担当)、このためにヤマト本体からの砲撃が出来ないというハンデがある。敵の攻撃に対しては戦闘機・コスモタイガー隊を出動させて対処することもできるが、ヤマト本体の耐久力がかなりのものなので(実際マニュアルでもヤマトの耐久力を信じろ、と書いてる)、このシナリオに関しては攻撃を受けっぱなしにしていても大丈夫。損傷箇所は太田に指示を出して修理を命じておけば一定時間で修復してくれる。
この第2話のシナリオはプレイヤーにヤマトの「移動方法」を覚えてもらおうという作者の狙いがよく伝わってくる。ヤマトの操縦はもちろん島大介が担当しており、カーソルで島を選択するとヤマト操縦用のコンソールが表示され、方向、スピードを設定できる。このコンソールの操作感が実にいい。ちゃんとパッド操作に応じて「ガシャッ、ガシャッ」と音を立ててコンソールが動き、コンソールをしまうと今操作したとおりにヤマトがグググ〜ッと動き、艦橋から見える光景がちゃんと変化するのだ。これ、今見てもさりげなく凄いことをやっていると思うんですけど…「本当にヤマトを動かしている!」という実感に浸れる素晴らしい演出だ。
この艦橋の窓に映る外の風景はヤマトの動作を表現するだけではない。接近してヤマトの周囲に群がってくる敵機もちゃんと映り、戦場の緊迫度を視覚的にも分からせてくれる。目標物や天体などに接近するとこれもちゃんと窓の外に映るのも2Dゲームとしては異例の凝った演出だったのではないだろうか。
第2話のシナリオもそう苦労はしないはず。目標地点に時間内につけばヤマトが初めてワープ航法を実行するビジュアルシーンに突入。これがまた素晴らしい出来で…(^^;)。CGならではの波形歪みを利用した、ワープ航法中のグニャグニャ感はアニメ版よりいいんじゃないかという描写で、森雪が色っぽく気絶して倒れている原作の1カットもしっかり挿入するなど芸が細かい(笑)。
つづく第3話では木星に到達、ここで初めて本格的な戦闘を体験することになる。クリア条件はいたって簡単なのだが、これも「移動」と「砲撃」がミックスされた戦闘操作をプレイヤーに覚えてもらおうという練習ステージの性格が強い。敵艦隊を全滅させると浮遊大陸を「天下御免の波動砲」で破壊するシナリオになる。もっともここではプレイヤー自身の手で波動砲を撃つことはなく、あくまで浮遊大陸に接近するだけ(例によって波動エネルギー充填のため砲撃は不能)で、波動砲発射はビジュアルシーンで描かれる事になる。「我々は許されないことをしたのではないか?」という真田さんの名セリフもバッチリ。
第4話は前・後編に分かれて冥王星での戦い。前編は通常の艦隊戦闘だが、そのあとのビジュアルシーンでヤマトが反射衛星砲に撃たれて海中へ沈んでしまう。後編では傷つき動けないヤマトから反射衛星砲破壊のための攻撃隊が送り込まれ、その間ヤマト自身は身動きも攻撃も出来ない状態で敵部隊の攻撃に耐える事になる。
後にプレイステーションで発売された似たコンセプトの「ヤマト」ゲームではこういうシナリオで白兵戦ゲームが導入されていたが、PCエンジン版ではあくまでヤマト艦橋における操作に徹しており、このシナリオで出来ることは太田に命じて破損箇所を修復しヤマトを持ちこたえさせることだけ。これも分かってみると楽勝のシナリオなんだけど、修復できる箇所は常に一箇所だけであり、見た目には結構きわどい破損率まで行ってしまうのでハラハラドキドキ。このシナリオも戦闘の重要要素である「修復」「補給」の練習という性格が強く感じられる。
続く第5話は冥王星のシュルツ指令がついに捨て身の直接攻撃をかけてくる。ヤマトは冥王星の戦いの修復が終わっておらず、アステロイドを艦の周囲にまとわりつかせて防御する。TVでもあったこの展開を、ゲームではヤマトはいっさい動くことが出来ない上に武器も全く使えない、ただアステロイドを着脱することで身を守りつつ武器を修理・復旧させて敵を攻撃していくという実に忍耐を要求されるシナリオに仕上げている。これも難度はとくに高くはないのだが、思うように動けない不自由さがプレイヤーをゲームに没入させる要因となっている。
繰り返し書いているが、ここまでの前半シナリオはいずれも「練習ステージ」という要素が強い。ヤマトの操作方法に一通り慣れてもらった上で先へ進んでもらおうというデザイナーの心遣いを強く感じるシナリオ設定だ。それでいてしっかり原作の名場面を生かした内容となっているんだから…いやホント、よく作ってありますね。
◆期待の人が、俺たちならば…
冥王星の戦いが終わるとヤマトは太陽系の外へ出て、ガミラスからも名将ドメルが登場、ヤマトの戦いもいよいよ本格的になってくる。
戦闘もこれまでより忙しくなる。島に命じてヤマトを操縦して場所や向きを変え(各砲の射程が異なるので方向は重大な要素となっている)、古代に命じてヤマトの艦全体のあちこちにある砲で攻撃させ、敵の攻撃を受けたら太田に命じて修復作業を急がせる。気分によっては南部に命じてコスモタイガー隊を発進させてもいいが、実のところあんまり役に立たないような気もする。技術班長・真田はゲーム中とくに任務は無いのだが、シナリオを解く上でのアドバイスをくれたりするので一応チェックはしておくこと。通信班の相原はといえば、コスモタイガー隊の戦闘状況を知らせてくれる程度しか出番は無い。
面白いのが森雪で、戦闘状況の説明役に徹しているのかと思ったら彼女にカーソルを合わせてコンソールを呼び出すと、現在の戦場に出てきている敵メカの情報を画像入りで説明してくれたりするのだ。もちろんゲームを遊ぶ上で役に立つ情報があるわけではないのだが、ちょっとした「ヤマト」メカデータベースになっており、「ヤマト」ファンにはかなり嬉しいはず。さらにアナライザーに至ってはゲームの設定変更を担当しており、BGMの変更や攻撃画像表示の有無などを設定できる。このBGM、もちろんアニメ版そのままの曲ばかりのうえ全てにファン泣かせの曲名がちゃんとついていて鑑賞モードとして楽しめる(CD音源でなかったのが残念だが)。
だがこうしたおまけ部分で遊んでる余裕はあまりない。なんせリアルタイム戦闘であるから状況は刻一刻と変化し、ちょっと無駄に時間をつぶしてると、泣きを見ることにもなりかねない。特に大変なのが敵艦からの砲撃やミサイルの直撃で、こちらが何か指示を出そうとアタフタしているうちに敵の攻撃が次々と挿入されてボコボコにされることも多い。もちろんアニメ版同様、ヤマトはやたら頑丈なので(笑)、そう簡単に撃沈されたりはしないのだが…とにかく敵の攻撃を実際に「痛い」と感じられるのも演出のうまいところだ。敵味方の砲撃がはずれた時の「くそっ!」「ほっ!」のバランスもいいアンバイだし、敵に砲撃が命中する場合でも「当たり所」のようなものがあるらしく、一発二発で撃沈できたり何発やってもなかなか撃破できなかったりと一筋縄ではいかないところも戦場のリアリティをかもし出している。
第6話後半ではドメルの罠にはまって人工太陽とガミラス艦隊の挟み撃ちになるという大変な展開に。このシナリオでは迫り来る人工太陽から可能な限り逃げ、その間に波動エネルギーを充填して波動砲を撃つことがクリア条件となる。ここでついついやっちゃうのが攻撃してくる敵艦やミサイルに対して砲撃を行ってしまうこと。これについては説明はされないが良く考えれば当然の話で、ヤマトから砲撃を行えば波動エネルギーを消費してしまうため波動砲を撃つためのエネルギー充填がいつまでたっても終わらないことになるのだ。つまりこのシナリオではとにかく敵の攻撃を黙って受け続け、ひたすら人工太陽から逃げ回るしかない。これがまた結構きわどいタイミングになっていてハラハラすること請け合い。なんとか人工太陽につかまらないうちにエネルギー充填が終わり、艦首を人工太陽に向けると(もちろん艦橋の窓外にちゃんと映る)、「エネルギー充填120%!対ショック、対閃光防御!」の掛け声が入り波動砲がドドドーーン、と発射され危機を脱することに。
第7話はいよいよ「七色星団の決戦」。ワープ光線により次々と送り出されてくる敵艦隊と大合戦することになるが、小型戦闘機が大半なのでヤマトの主砲・ミサイルではかわされる率がかなり高い。そこでいよいよコスモタイガー隊の出番となる。戦闘機同士の戦いはプレイヤーからは目標を設定することしか出来ずあとは相原の報告する戦況を聞くしかないのだが、基本は三つある戦闘機部隊で一つの目標を「タコ殴り」にすることみたい。標的を全滅させるとさっさと帰還してきてしまうので、大急ぎで目標を変更してやらねばならない。
どうにかこうにか敵部隊を全滅させると、アニメと同じく波動砲封じの巨大ミサイルをヤマトに打ち込まれてしまう展開に。後のプレイステーション版ではこの巨大ミサイルを逆射出させるくだりを白兵戦方式で処理したりしていたが(これが超難解で…)、このPCエンジン版では逆射出部分は真田さんにお任せ、真田さんから「島、艦首を敵に向けろ!」の合図があったときに艦橋の窓外に敵艦隊が映るような位置に動いていればいい、という割と簡単なものになっている。しかし真田さんから合図があるのは時間切れ4秒前であるため(アニメでもドメルが勝利を確信し「ヤマトよ、よくやった、ほめてやるぞ」と言っちゃったぐらいで)、タイミングは結構シビアで、しかも敵艦隊も移動しているから「敵に艦首を向ける」というのもなかなかうまくいかない。また判定が微妙なようで、艦首をしっかり敵に向け、前方窓外にしっかり敵艦隊をとらえたつもりでもダメという場合も多い。まぁ何度かアタックすればいつかはクリアできるが。条件をクリアすると、ドメル自爆のビジュアルシーンに突入。
第8話は「ガミラス本土決戦」。ガミラス星の地下部分、濃硫酸の海での戦いになる。濃硫酸の海の上で次々と爆雷を見舞われ、あちこちにある砲台を破壊していくことになるが、これがなかなかうまくいかない。アタフタしていると一定時間後に自動的に話が先に進み、ヤマトを濃硫酸の海に突っ込ませ、火山脈を探す展開になる。ここで初めてアナライザーがゲームに参加する(笑)。
外部が見えない状態のままアナライザーの方向指示に従って海の中を走り回るのだが、あちこちに障害物がありそれはよけていかねばならない。もちろんその間にヤマト本体はドンドン溶けてゆく。太田に命じて武器部分は放置してヤマト本体の修復に没頭させつつ海底火山を波動砲で撃てる位置まで移動することがクリア条件となっている。原作同様にハラハラさせられるシナリオではあるのだが、言われたとおりやっていればそんなに難しいものではない。
◆なにもかもが懐かしい…
クリアするとガミラス星破壊の長い長いビジュアルシーンに。デスラーが和平を薦める副総統を撃っちゃうとことか、古代と雪が「なのに、俺たちは戦ってしまった!」と涙する有名シーンもきちんと描かれる。そしてヤマトは無事にイスカンダルに到着し、コスモクリーナーを受け取って地球への帰還を急ぐことに。イスカンダル以後のビジュアルシーンはかなり駆け足だ。
このあとTVアニメ版に従って、実は生きていたデスラーがヤマトを追いかけて攻撃をかけてくることに。雪が「古代くんが死んじゃう!」とコスモクリーナーを起動させ真田が「雪!雪!」と叫ぶ場面もあるんだけど、なぜかそのあとのゲーム部分に入ると何事もなかったかのように雪がオペレーターとして状況説明してるのが変(笑)。放射能が消えていく様子に「なにが起こったのだ!?」と驚いているはずのデスラーが笑顔のままだし(古代と顔合わせしてるシーンの絵を使い回しているため)、また真田さんが「こんなこともあろうかと、ヤマトの攻撃力を全てパワーアップしておいた!」などとイキナリなことをしてくれてるし(笑)。ここまで手が込んでいたのが最終面でなんとなく手抜き感を感じなくも無かった。
白兵戦要素はまったくないこのゲームではこの最終面でもやっぱりフツーの艦隊戦をするだけ。真田さんのおっしゃるとおり、各主砲は多少パワーアップされてるのでガンガン敵艦を撃沈できる。デスラー艦だけは途中でワープして戦線離脱してしまうのでその他の艦隊を楽勝で全滅させられるはず。するとビジュアルシーンに入り、デスラーがデスラー砲を発射、「こんなこともあろうかと」真田さんが準備していた反射装置によりデスラー艦が撃破される。
そのあとはただただエンディングを眺めればいい。地球に帰還するヤマト、「何もかもがみな懐かしい…」と涙する沖田艦長の名シーン(佐渡先生、ここだけしっかり登場)。地球はもとの青さを取り戻し、しっかり「真っ赤なスカーフ」も熱唱され、まさに大団円。そのあと勇壮なヤマトテーマの流れる中、キャスト・スタッフロールを眺めて感動に浸ろう。
さてこのゲームであるが、発売されたのは1992年年末。当サイトの年代順リストを見ていただければ分かるが、この92年年末商戦のPCエンジン業界は傑作・大作・怪作(笑)目白押しで、PCエンジンSCD市場に限って言えばまさしく「全盛期」の様相がある。この年の春に「天外II」が発売されSCD普及度が一気に上がり、またCD−ROMソフトそのものの開発環境も充実してきた時期だったのだろう。特にSCDの最大の恩恵はフル画面を使用したビジュアルシーンの強化が可能となったことで、この「宇宙戦艦ヤマト」などはその恩恵を受けた企画の最たるものではないかと思える。このゲーム、ゲーム部分の作りこみがしっかりしていることは事実だが、最大の「売り」がやはりアニメに迫る出来の長時間のビジュアルシーン収録にあったことは否定できないだろう。
PCエンジンCD−ROM登場以来、さまざまなアニメタイトルが現れてきたが、ここまで徹底してしまったソフトは存在しなかった。プレイヤーはビジュアルシーン見たさにゲームを進め、ビジュアルシーンに入ったらコントローラーはその辺に置いて長時間鑑賞し、その作品世界にどっぷりと浸ることが可能となったほとんど最初のソフトだったのでは…。当時はそれだけで衝撃的だったが、今見るとビジュアルシーン部分とゲーム部分のバランスに偏りがあるという印象も強い。
文中でその出来のよさを絶賛状態で書いてる僕ですら、プレイし終えるとゲーム部分の「ヌルさ」がかなり気になり、物足りなさが残った。戦術シミュレーションならばもうちょっと難しくしても良かったのではないか…と思うのだが、恐らく作り手も重々分かった上でこの難易度にしたのだろう。とにかくヤマトを操作し、各キャラクターに命令を下し、ビジュアルシーンを見てアニメ世界に浸ってくれ、という狙いの商品であろうし、それはそれで成功している。オープニングから作り手自身が「ヤマト」の熱烈ファンであり、ファン向けを強く意識して楽しんで作ったであろうことは強く感じるし、共感するところは多い。
なんと2004年現在でも新作ゲーム化が続いている「宇宙戦艦ヤマト」だが、このPCエンジン版発売当時でも「大昔のアニメ」という認知度だったと思う。当時のゲーム評でも「PCエンジンユーザーとヤマトファンがどれほど重なるのか?」という疑問の声があったりしたのだが、もともとアニメファンと重なるところが多かったし年齢層も比較的高かったPCエンジンCD−ROMユーザーにはそれほど問題ではなかったのかも。売り上げについては知らないが、このゲームの評価は当時からおおむね高い。
それと、このあとプレイステーションなどで発売された「ヤマト」ゲームはいずれも流麗なアニメ動画をそのまま挿入しているが、最初のTVシリーズそのままの絵ではなく、より松本零士調にデザインされた新規アニメとなっていることが、逆にPCエンジン版の「オリジナルに忠実」という価値を高めているという側面もある。これは「ヤマト」自体の著作権がプロデューサーの西崎義展、デザインと総監督を担当した松本零士の両氏の間で裁判で争われたという事情が背景にあるのだが、PCエンジン版発売はそれ以前のことなので著作権表示は「マルC・西崎」となっている。
そう考えれば、多少絵が荒くても元祖のTVシリーズの「本格的なゲーム化」という点で、「ヤマト」ファンには今なお強くお薦めできる作品だと思う。とにかく「何もかもがみな懐かしい…」ということで(笑)。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
4.15
| 4.08
| 3.50
| 3.46
| 3.77
| 3.85
| 22.81
第139位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 8
|
ウォルフ中村
| 7
|
東千里
| 7
|
びいず羽岡
| 9
|
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
浜村通信
| 6
|
ジョルジュ中治
| 7
|
渡辺美紀
| 7
|
TACOX
| 7
|
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