アーティストツール

ジャンル:その他
媒体:HuCARD(2M)
発売元:NECホームエレクトロニクス
発売:1989年9月29日
価格:5800円
商品番号:PI-AS1

◆「コア構想」の構想倒れ

PCエンジンファイナルコレクションに載った画面 「アーティストツール」。話にはよく聞く伝説的商品だが、僕自身は入手はおろか今まで一度もお目にかかったことは無い。「電撃PCエンジン」誌付録「ファイナルソフトコレクション」で小さいながらも画面写真が載っているのを拝んだことがあるだけだ。このソフトはゲームではなく、いわゆる「お絵描きソフト」なのである。
 ファミコンが大隆盛を誇って以来、家庭用ゲーム機をゲーム以外のことに使えないかという商品企画は幾度となく現れては消えてきた。ゲーム機を学習用に使うだの株取引に使うだのワープロとして使用するだのといった企画だが、そのいずれもがほとんど失敗に終わっている。お絵描きソフトもファミコン、スーパーファミコンなどで出ていた記憶があるが、あまり当たったという話も聞かない。せいぜいDVDマシンになっちゃったプレステ2とか格安インターネットマシンになっちゃったドリームキャストだのという割と最近になってからはいくつか「成功例」(?)とも思えるケースはあるけど。

 PCエンジン史を語るとき避けて通れないのが「コア構想」という言葉だ。PCエンジンというゲーム機を手軽な家庭用コンピューターと位置付け、これを「核(コア)」としてそれに様々な周辺機器を接続することで幅広い利用ができるようにしようという構想。「DUO」以前のPCエンジン(シャトル・GTは除く)には後部に大きな拡張バスが設けられているが、これはそうした周辺機器に接続して使用されることを想定した設計なのだ。ハード自体がかなり小さめに設計されているのも周辺機器との接続を考えてのことなのだろう。
 「コア構想」ではパソコン通信とのリンク、パソコンのインターフェースとしての利用といったものまで構想されていた。そのほとんどが実際に商品化されることはなかったのだが、わずかながら実際に商品化されてしまったものがCD-ROMシステム、そしてこの「アーティストツール」を初めとするお絵描き用のソフト・ハードだった。前者はその後「周辺機器」どころかPCエンジンそのものの主流をなしていくことになるのだが、後者の「お絵描き」のほうは完璧にハズしてしまい、以後事実上コア構想は「構想倒れ」として忘れ去られていくことになる。

 この「アーティストツール」、僕自身は所有はしていないので雑誌記事やネット上の情報などをもとにどんなソフトだったのか想像して書くほかは無いのだが、「簡単な操作でカラフルな絵をTV画面に描く事が出来る」ソフトだったそうである。パッドによる描画も可能だったが同時別売の「イラストブースター」なる専用タブレットを使用すればペン感覚で絵を描く事が出来たらしい。
 操作画面写真を見ると分かるようにIIボタンを押すとこのようなメニュー画面が表示され、色の選択(色数はPCエンジンの能力を生かして幅はかなり広い。この画面に見えるもの以外にも細かい選択が可能)、直線・フリーハンドの描画および消しゴム機能、円・楕円の描画機能、そして全消去機能を使用することが出来る。見たところ線の太さ変更や塗りつぶし機能はついておらず、タブレットを使ったところで使い勝手はかなり悪い気がする。また無音では寂しかろうと考えたか、BGMとサウンドを設定できるようにもなっていた。
 
 そしてこれまた同時別売の「プリントブースター」をPCエンジン後部に接続させれば描いた絵をプリントアウトすることも出来た。「フォトリーダー」という画像取り込み機器も存在しており、まさにPCエンジンでのお絵描き体勢は万全である。そしてその合計のお値段は45400円(!)という全然お手軽じゃないものであった。しかも当時のこととて仕方無いのかもしれないが、描いた絵は保存することが出来ず、プリントアウトするしか残す方法が無かった。それじゃあ直接手で描いたほうが絶対いいって。たぶん子供向けを意識した商品だったのだろうと思うけど、こういう誰を対象にしたんだか不明の思いつきで出しちゃったようなソフトやハードってNEC系は多いような気がするな〜。ま、そこが面白かったりするんだけどさ(笑)。



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