ウルトラボックス2号
ジャンル:その他
媒体:CD-ROM
発売元:ビクター音楽産業
発売日:1990年9月28日
価格:4800円
商品番号:JCCD0602


◆ちょっとコンパクトになった?CD−ROMマガジン第2号

外見 1990年6月に「創刊号」が発売された世界初のCD−ROMマガジン「ウルトラボックス」は、季刊ペースを守ってその年の9月に「第2号」がちゃんと発売された。創刊号でおもいっきり試行錯誤が見られたこの「CD−ROMマガジン」も、基本的には前号の気分を踏襲しつつ創刊号に対するユーザーの反応を見た上で早くも変化の兆しを見せている。

 まずわかりやすいところでコーナー数が減った。「創刊号」では全13コーナーも設けられていたが、今回は9コーナー。もちろん内容的に薄くなったということはなく、むしろ濃い目の様相すらあるが。

 前号から完全に踏襲されているのが「実用デート講座」「仮面ビクター」「星に願いを」「あなたもきよたくん」「PCエンジンソフト図鑑」そして読者投稿の「じゃんじゃんボックス」。要するに大半が前号の続きである(「雑誌」である以上当然だが)。間が3ヶ月しかなかったのだから創刊号と第2号に関しては企画はほとんど最初から決まっていてほとんど平行して製作されていたと思われる。

 「実用デート講座」は「横浜編」。これは創刊号マニュアルでも事実上予告されていた。今回はタイプの異なる3人の女の子が登場し、まずプレイヤーの悪友三人と一緒に3対3の「合コン」をして会話で気に入ってもらい、続いて意中の子に電話をかけてデートに誘い、それから横浜のデートスポットを回っていく、という展開になる。会話選択で進めて行くのはおんなじだが前号のデートシミュレーションよりはゲームとして完成度が高いと思うし(変なイヤミもなくなってるし)、情報量もより濃密・大量になっている。「実用」的かどうかはともかく実写系デートゲームとしてはそれなりに遊べるだろう。

 ラッシャー木村が出てくる謎の星占い「星に願いを」、裏技コマンドを知らないと意味が無い不親切といえば不親切なサイキック・コーナー(笑)「あなたもきよたくん」は前号とほとんど変化は無い。「PCエンジンソフト図鑑」はバージョンアップにより収録本数が増え、くわえて新作ソフト紹介もこのコーナー内で扱うことになり、「らんま1/2」「三国志」(ナグザット開発中のもの)「イースIII」の宣伝が入っている。

 ミニゲームコーナーの一つは前号に続く「仮面ビクター2」。仮面ビクターはなぜか宅配便のアルバイトをしており、「ウルトラボックス」のマスター(笑)を狙う秘密結社「ヒョッカー」の妨害を避けながらお届けするという、ちょっと内輪ネタの設定。ゲーム自体は「F1サーカス」に代表される見下ろし型レースゲームの変形で、アクセルとブレーキ、方向キーでバイクを巧みに操作し、時間内にコースを走破するもの。
 道路の途中に置かれているハートマークを三つ集めると「仮面ビクター」に変身、バイクの最高速度が上がるところがポイント。「ヒョッカー」の戦闘員にぶつかるとハートは消えてゆき、変身が解けると速度は落ちる仕掛けだ。前作と違って「ヒョッカー」の戦闘員は道路の端でじっとしているだけで攻撃はしてこないのだが、バイクの操作がなかなか難しく、これが意外に避けられない。しかもコースから外れて草地に入ってしまうと極端にスピードが落ち、コースに戻るのにかなり時間を食ってしまう。コースによってはショートカットの抜け道があったりはするが、基本的に何度かトライして道のパターンを覚えてかかったほうがよさそう。前作の「仮面ビクター」も単純ながらハマるゲームだったが、この「2」はよりしっかりとした本格ゲームとして長く遊べるはずだ。
 もう一つのミニゲームは一見古典的な「だるまおとし」。しかしこれは対戦形式で、最後に相手に打つ駒がなくなるようにした方が勝ちという頭脳ゲームだ。


◆相変わらずのマニア企画と斬新な連載企画

 この号オリジナルの特集企画の一つが「ミッションスクール図鑑」だ。これは何かといえば、早い話が「名門女子高制服図鑑」。「元祖制服ウォッチャー」の森伸之氏監修という企画で、首都圏の名門宗教系女子高12校の春夏秋冬の制服が画像(さすがに実写ではなくイラストのみ)と肉声の解説入りで拝めるというマニア垂涎(?)のマニアックコーナーだ。制服マニアの世界というのはこのころからあったのだなぁ…と思うばかりだが、出てくるのが宗教系の「ミッションスクール」ばかり(ちゃんとどの宗派であるのかデータも表示される)であるだけに、学校側としては正直穏やかではない内容だと思う。創刊号でも感じたことだが、こういうノリはちょいと引きますなぁ…。実際その後の「ウルトラボックス」を見る限りこの手の企画はあんまりウケたとは思えないのだが。

 もう一つの新規企画は「斬新」として大きく評価されていいと思う。この2号から始まった「連載アニメーション・ゲーム」である「クスト」がそれだ。「連載アニメ」「連載ゲーム」なんてまさに「CD−ROMマガジン」という媒体でなければ不可能な企画で、これまたやはり世界初と言っていいはず。これは第5号まで連載され、6号で「完全版総集編」が出るという「ウルトラボックス」の目玉企画となっていく。
 冒頭、写真画像が次々と表示されUFOの謎が語られてゆく。だが本編が始まってみると、純然たるアニメ絵。原画はアニメスタジオにでも外注したのか、キャラデザインや作画の出来もよく、フルサイズビジュアルも多用してなかなかに見せる。見る限り最初からパソコン上で描いたCGではなく、完成しているカラー原画を取り込んだもののような印象を受ける(だから遠目にはとくに輪郭線が綺麗に感じられる)
 惜しむらくは初代CD−ROMシステムの限界か、一つ一つのカットが短く、しかもしょっちゅう読み込みに行ってしまうのでテンポが非常に悪い。今となってはかなりイライラするチマチマとした展開だが、当時としてはこれはこれで衝撃的だったかも。なんせ「連載アニメ」なんてみんな初体験だったんだから。

クスト第一回の1シーン ストーリーは一見「インディ・ジョーンズ」を意識したかと思えるもので、時代は「西暦1901年」、考古学者の父娘が主人公。謎の遺跡を発掘しているとそこに軍部の圧力がかかる。父娘が彼らの発掘現場に潜入しようとしたところ地震が起こって二人は地下の遺跡へ。ここでちょっとした3Dダンジョン探索ゲームになるあたりは「アニメ鑑賞だけじゃマズイだろう」という作り手の意思を感じたが、実のところアニメに徹したほうが良かった気もする。
 この第1回は最後に多くの謎を残して以下次号となる。鑑賞時間は30分弱といったところだったが、テンポの悪さもあって本物のアニメにしたら10分かそこらで終わるのではないかという程度の内容だ。ヒロインのいささかボーイッシュな女の子が夜自室で裸になり体を拭いているシーンなんかは、やっぱり当時のPCエンジン界に少なからず漂っていた「ちょっとH」な要素を再確認させられる。

 関連してちょっと余談を。このCD−ROM媒体による「連載アニメ」という企画は斬新であることは間違いなかったが、PCエンジンにおいてはこの「クスト」が最初で最後のものとなった。だがその後PCエンジンの後継機「PC-FX」ではその最大の売りであったアニメーション表示能力を生かしたCD−ROMマガジン「アニメフリークFX」シリーズ(1995〜1998)において「連載アニメ」を本格的に実現することになる。「プライベート・アイ・ドル」「虹の少女隊プリズムナイツ」がそれで、それぞれ全3回の約45分。特に後者は「セルフシンキングアニメ」という「CD−ROMマガジン連載」ならではのオリジナリティに満ちており、こうした企画は今あらためて再評価していいんじゃないかと個人的には思っている。
 こうした企画の元祖である「クスト」を最近になって鑑賞して、開発元こそ異なるがPCエンジンからFXに至る「CD−ROMマシン」の実験企画の流れに思いを馳せてしまったものだ。


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.14
3.02
3.25
3.18
3.07
3.45
19.11
第534位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACO・X



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