ウルトラボックス4号
ジャンル:その他
媒体:CD-ROM
発売元:ビクター音楽産業
発売日:1991年5月24日
価格:4800円
商品番号:JCCD1604
◆ウルトラボックス後期シリーズの開始
1990年6月から「刊行」され、90年年内に季刊ペースで3号まで出たCD−ROMマガジン「ウルトラボックス」。この3号で「第一期」と区切りを置いた気配があり、続く4号は季刊ペースから言えば二号分遅れた翌91年の5月末に発売されている。「充電期間」を置いた上で外見的にも内容的にも前3号から一新し(CDケースの「背」の表記も4号から変わる)、「第二期」シリーズ開始という位置づけが出来る。
パッケージ前面に見えるマニュアル表紙に大きく出ている三人娘は「3号」から登場した「UBガールズ」。依然アイドル路線に執念を燃やしている様子がうかがえる。
当然彼女たちを主役にしたコーナー「CLUB UB」も設けられており、前号に続いて実写系アドベンチャー「ロマンスをさがして」も収録されている。今度はなんと時代劇で仕立ての「恋とけんかは江戸の華 栗太郎侍」というもので、UBガールズは回船問屋・琵具多亜屋(びくたあ屋…(笑))の三姉妹という設定で登場、東野成子をメインとするシナリオになっている。プレイヤーは隠れヒーロー「桃屋敷栗太郎」となって悪と戦い、成子ちゃん演じる「お成(しげ)」ちゃんとの恋を成就させる…といった内容。まぁそれなりに工夫した気配はある。
UBガールズの話にいきなり入ったので後回しになってしまったが、この4号からパッケージ裏の各コーナー紹介や起動時のメニュー画面のデザインも一新された。前号までに見られた独特のシュールさは失われ、より一般的向けの雰囲気になってきている。
それでも「PCエンジンソフト図鑑」(新作紹介は「コブラ2」と「エルディス」)「あなたもきよたくん」や読者投稿コーナーなど創刊号から続くコーナーは依然健在。ラッシャー木村の星占いコーナーは消滅してしまったが、ラッシャーさん自身は投稿コーナーでしぶとく登場している。しかしそもそもなんでこの人をCD−ROMマガジンに呼ぶ事になったんだろ。
また連載アニメゲーム「クスト」もいよいよ佳境の第3話に突入している。前回に比べるとアニメシーンをひたすら鑑賞させられる部分が多くなり、コマンド選択で話を進める箇所もあるにはあるがほとんど無意味化した。鑑賞時間はかなり長くなっており(40分ぐらいあったかな)、ストーリーも思わぬ方向へ膨らんでくるので内容的にはそう物足りなさは無い。ただここまで長いと途中でセーブする機能をつけてほしかった気はする。
第一回、第二回とUFOが絡んでる話らしくはあるが「西暦1901年」という年代設定(服装なども)、それにしては時代が合わない「世界大戦」があったりと設定に不思議を感じていたのだが、この第三回でようやく話が見えてくる。これ、実は地球とは別の惑星のお話なんだよね。なかなか考えたもんじゃないか、と思いつつ第三回を見終えたが、次回最終回まで約4ヶ月待たねばならなかった当時のユーザーはイライラしたかも。
毎号おなじみのミニゲームコーナーも健在だが、残念ながら3号まで続いた「仮面ビクター」シリーズは消滅。その代わり「信長の野郎」「どきどきなわとびランド」の二つのミニゲームが収録されている。
「信長の野郎」はまずそのネーミングにニヤリとするほかないが、ゲームを開始するとまさに光栄の「信長」を思わせるヘックスが組み合わされた戦場画面が映る。各ヘックスに置かれているユニットも騎馬隊やら歩兵やら鉄砲隊やら城郭やらで、見た目にはどうみても戦術シミュレーションゲーム。ところが実はこれ、「シミュレーションもどきゲーム」と題されているようにシミュレーションではなくただのパズルゲーム。ユニットを動かして飛び越えたユニットを消してゆく、という創刊号にあった「UB64」と良く似た思考型ゲームだ。
「どきどきなわとびランド」は以後シリーズ化する「スポーツHシリーズ」の第1弾。女の子をタイミングよくジャンプさせ「なわとび」させながら、カラスが落としてくる障害物をよけたりアイテムをとったりするゲーム。ステージをクリアすると女の子の露出度がだんだん高くなっていくという「脱衣もの」だったりするところがポイントで(笑)、ついつい熱中してしまう。単純そうで難しくてハマってしまう、という創刊号以来のミニゲームの伝統はしっかり守られている。
◆なんと本格RPGがまるまる一本…!
創刊号から眺めてくると、このシリーズも当初の若者向け雑誌的バラエティーから次第にゲームソフト的な方向へとシフトして来ているのが分かる。今は亡きコンパイルから出ていた「ディスクステーション」のノリに近づいているような…。結局のところCD−ROM2のゲーム以外の方面への活用が事実上不発で、このシリーズもゲーム部分を強化していくしかなかったってことなんだろう。
この4号でビックリなのはオリジナル新作の本格RPGがまるまる一本収録されてしまっていることだ。その名は「フォネ(FONE)」という。オープニングナレーションは英語風の謎の言語(「王立宇宙軍」にそういうのがあったがそんな感じ)で展開され、なかなかにかっこいい。
平和な王国に武闘集団「赤い馬の民」の魔の手が伸びる。その手先であるアレヂは忠臣になりすまして国王に接近、これを殺害して妃も誘拐してしまう。王子(プレイヤー)とその友人二人も殺されてしまうが仙人イマミヤの手により蘇生され、三人はアレヂから母親を奪回すべく旅に出る。王国に平和を取り戻すには伝説の結晶「フォネ」を手に入れねばならないが…
おお、なんとなくよくある話だけど本格的な設定のRPGである。なんか悪役の名前をどっかで聞いたような(笑)…と思ってよくマニュアルを見れば、これが「実在のF1界を題材に採ったパロディRPG」であることが明記されている。そう、良く見りゃタイトルの「フォネ」だって「F-ONE」のローマ字読みである(笑)。「ウルトラボックス」ってこの手のパロディ精神が満載だな。
しかし「パロディRPG」と自ら名乗りつつ、「信長の野郎」のような見かけだけのナンチャッテなものではなく、なかなか本格派な出来である。あからさまにファミコン版「ドラクエ」をパクったゲームデザインながら、戦闘システムやストーリーなどしっかりしており、じっくり楽しめる作りになっているのはさすが。敵との遭遇率が激しく高いのが気になるが、全滅しても宿屋に戻されて蘇生されるので難度はけっして高くは無い。武器が「スパナ」とか「つなぎ」だったり、家がガレージになっていたり、ザコ敵が「シェルくん」だったりなどF1関係のギャグ設定は多いが、ストーリーじたいは決してギャグにはならず大真面目なのがちょっと不思議。
さすがに時間がかかるので「ウルトラボックス」シリーズでは初めてバックアップシステム対応でデータをセーブする事ができるようになっている。とにかくCD−ROMマガジンの冗談企画にしては大作で、お得感の高いゲームだ。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.523
| 3.327
| 3.682
| 3.411
| 3.607
| 3.757
| 21.308
第292位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 総合評価
|
東府屋ファミ坊
| 6
|
水野店長
| 5
|
森下万里子
| 6
|
TACOX
| 5
|
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