ウルトラボックス5号
ジャンル:その他
媒体:CD-ROM
発売元:ビクター音楽産業
発売日:1991年9月27日
価格:4800円
商品番号:JCCD1605


◆CD−ROMマガジン、息切れ気味に第5号

外見 3号から約半年の間を置いて1991年5月末に4号が発売され、続くこの5号がその4ヵ月後の9月末の発売。「季刊」ということで始まった「ウルトラボックス」シリーズもここに来て少々息切れの空気を感じざるを得ない。もちろん内容がオリジナルゲームを多く含むものに変わってきたことも一因だろうが、実のところ成功しているとは言いがたい売り上げ状況になって来て、ビクターとしてもあまり力が入らなくなっていたんじゃなかろうか、とも思える。

 マニュアル表紙は前号に続いて「UBガールズ」の三人。このCD−ROMマガジンでデビューした「CD−ROMアイドル」だった彼女たちもこの号で見納めとなってしまう。「みつばち学園」の井上麻美嬢もそうだが、結局この手の企画は不発だったな。
 この5号でも「UBガールズ」専門の「CLUB UB」コーナーがあり彼女たちが出演するADV「ロマンスをさがして」の第3話も収録されている。今回の主役となるのは順番待ちとなっていた高野美世ちゃん。彼女が思い出を語る形式で進むアドベンチャーゲームとなっており(かなり棒読み、かつ精気が無いのが気になる…)、登場人物の声に古谷徹や鶴ひろみなど意外に豪華な声優をあてている。脚本は中村一夫、背景イラストや一部キャラクターはこの時期ゲーム雑誌によく登場する存在となってきていた水玉蛍之丞さんが担当している。
 第3話のテーマは「夏の恋」で、表紙にもある彼女たちの水着姿が拝めるのが最大の売りとなっている(色数のせいで映りがあんまりよくないし発売時期はもうズレちゃってたが…)。「冬の恋」だった第1話から続く形になっていて、プレイヤーは「ロマンスをさがして」第1話(ウルトラボックス3号)で主役の千夏の彼氏になった当の本人という設定。千夏の誘いで友人二人(男)と一緒に女の子三人組の南国バカンスに合流、みんなでダイビングのライセンスをとろうと講習を受ける事になるのだが、友人の一人が千夏に告白、さらに美世がプレイヤーに告白するというまさにドロドロの展開になってしまう(笑)。ゲームは例によってセリフ選択を正しく進め、美世のハートマークを集めていくという形式で、節目節目でパスワードが表示され、そこからやり直しが出来るという仕組みになっている。

 連載アニメゲーム「クスト」はこの号で感動の最終回となる。だんだん一回分の話が長くなる傾向があったが、この最終回ではついに上映時間は1時間超にも達する。一部にアドベンチャーゲーム風のコマンド選択進行があるにはあるが、かえって邪魔なぐらいの代物で(しかも読み込みを繰り返す)これならアニメに徹したほうが良かったかと思う。
 前回で大きな展開を見せたストーリーはこの最終回でしっかりと盛り上がり、大団円を迎える。見終えてみれば結構面白かったと感じたし水準はそれなりに高い作品だったと思うのだが、やっぱり読み込み時間でしばしば待たされるのがしんどい。後知恵ながらSCDなりHu-videoなりを待ってからやるべき企画だったかもしれない。といってその後こうした企画はPCエンジンではとうとう出てこなかったが…。
 なお、若干ネタばれに触れることを書いておくと、未来の物語であるにも関わらず核心部分に現実の米ソ対立が絡んでいたりするのが今となっては興味深い。そう、このソフトが発売されたのはソ連で保守派による軍事クーデタが発生、即失敗した直後で、この年の暮れにソビエト連邦は解体されてしまうことになるのだ。同じ年末に公開された「ゴジラVSキングギドラ」も未来の話のはずなのに「ソビエト」に言及があるのだが、それと思い合わせてゲーム以外の部分での「時代の急変」を感じてしまったところだ。
 「UB」の2号から5号まで、4回にわたって連載され無事完結した「クスト」。当初からこの話数は決まっていたのかもしれないけど、「UBガールズ」のことも合わせて本作の最終回はUBシリーズの「しめくくり」をユーザーに予感させたことだろう。続く6号では再編集された「総集編」が収録されることになる。

 「PCエンジンソフト図鑑」もバージョンアップを重ねてVOL..5。今回は「裏ワザ特集」を組んだ、とあるのだが情報量が多少増えたという以外これといった特色は無い。新作ソフト紹介もついにこの号では消滅している。

 「UBインフォメーション」コーナーでは相変わらずファンクラブ「UBクラブ」への勧誘が行われている上、なんと「君の音楽をCDに!」と自作楽曲の投稿を呼びかける「UB SOUND AUDITION」なんてものまでブチ上げられている。ビクターで審査の上優秀な作品は「UB」に載せてデビューしてもらいます、ということだったらしいのだが、これも企画倒れだったんだろうなぁ。


◆毎度毎度のパロディゲームは…

 「ウルトラボックス」の名物が毎回収録されるミニゲーム。それもパロディネタに強みがあるのだが、この号でもそれは健在。

 まずは「アニメ業界RPG」と題された、実際にはアドベンチャーの「となりのトロロ」(笑)。恐らく3号の「ドラヤキクエスト」の好評を受けての企画だろう、デザイン的にもほぼ同じで、今度はアニメ業界の裏事情を暴露していく内容となっている。
 田舎の山奥から東京に出てきた青年・帝塚山治夢(てづかやま・おさむ)がアニメ監督目指して業界に飛び込み、悪戦苦闘する物語。「ドラヤキクエスト」でもチラッと出てくるが、ゲーム業界とアニメ業界は人材的にかぶるところがあるようで、その辺から得たと思われる裏事情ネタが多い。特に動画マンの貧窮問答が凄まじい(笑)。もっともゲーム業界ネタほど身にしみるような面白さはなかったけど。
 要所要所で出てくる選択肢を選んで話を進めていくわけだが、最終目的のアニメ監督よりもその他の人生のマルチエンディングが豊富でそれをあたっていくのも面白い。

 他にも「インタラクティブコミックス」と題されたオリジナルギャグマンガも収録されている。「ウルトラボックスはCD−ROMマガジン。マガジンにはマンガがつきもの!」と5号まで来て何を今さらなことがマニュアルに書かれているが、企画そのものは面白い。
 作品を描いた漫画家は二人で、一人は「原色女子高生桃色図鑑」で知られる後藤ユタカ。変なペンダントをこすったら現れた神様(?)が様々なタイプの女性(小学生から人妻まで)と出会わせてくれるというもの。各キャラごとに選択肢が一箇所出てきて進行が決まる仕掛けなんだけど、「女子大生」のオチには笑った。ゲームじゃないから認められたのか、と思えるきわどいネタのオチなのだが。
 もう一人はゲームパロディマンガを描いていた衛藤ヒロユキ。「G(ゲー)線上のアリア」というタイトルで、ゲーム売り場で合計8種類あるゲームのジャンルを選ぶと、それぞれのゲームの「傾向と対策」を解説してくれる。これが今なお「あー、あるある!」と通じてしまう爆笑もの。「給食タイガー」「イーズ(伊豆)」など各ジャンルの代表的タイトルのパロディ画面も必見。

「ダサイヤス」ボス戦 そしてシューティングゲーム「DASAIYAS(ダサイヤス)」(笑)。元ネタは言うまでもなくあの魚介類ボスが連打される名作シューティングで、ここでは板前の「ヤス」が魚介類相手に奮闘するという爆笑STGになってしまった。オープニングからステージ分岐システム、さらにはステージラスボスが登場する前の「WARNNING!HUGE BATTLE SHIP...」の表示までしっかりとパロっている。各ステージのボスが「カブトガニ」(武将の兜をかぶった巨大カニ)とか「ヤリイカ」(槍を持った巨大イカ)とか「クルマエビ」(乗用車に乗った巨大エビ!)といった調子で大いに笑える。
 「ヤス」の通常攻撃は包丁を飛ばすことで、時々手に入る「ネギ」を集めてホーミング攻撃をかけることもできる。かなり甘めのダメージ制のためほぼ難なくクリアできてしまうと思う。ザコ敵の動きやスクロールはかなり爽快でミニゲームとしては初めてBGMにCD音源を使っているため、気軽に気分良く遊べる秀作だ。

 前号から始まったミニゲーム「スポーツHシリーズ」第2弾は「どきどきハードルランド」。横スクロールしていく画面の中を走る女の子を操作し、次々と現れるハードルを規定数(数十個は越えなくてはならない)飛び越えていく。上空から数字が書かれた赤と青の風船が降りてくるが、赤を取ってしまうとその数字ぶん残りハードル数が増え、青を取るとその数字ぶん残りハードル数が減るという仕掛け。要するに赤をとらず青を取ればいいんだけど、これがなかなかうまくいかないのだ。ステージをクリアすると手前に描かれたポーズをとる体操服の女の子がだんだん脱いでいくという趣向で、前作同様盛り上がること請け合い(笑)。


◎各誌評価

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
すべりこみ評価


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

浜村通信

渡辺美紀

TACOX



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