がんばれ!ゴルフボーイズ  
ジャンル:スポーツ
媒体:HuCARD(2M)
発売元:メサイヤ(NCS)
発売:1989年3月28日
価格:5300円
商品番号:NCS89003


◆多人数プレイ志向のゴルフゲーム
 
商品外見 発売された1989年(平成元年)といえばPCエンジン史ではまだまだ初期といえる。ようやく安定軌道に乗って来た、という感じのころで、参入メーカーも増え、HuCARDで多彩なジャンルのゲームが続々と出るようになった。TVゲームの定番ジャンルのひとつであるスポーツものも多くなり、とくにゴルフゲームがこの年だけで合計6本も発売される事態になった。なんでこんなに集中したのか分からないが、家の中でこそ遊べるスポーツゲームの定番が「ゴルフ」だからなのかも。

 PCエンジンで最初のゴルフゲームは「ウイニングショット」(’89/3/3)だが、この「がんばれ!ゴルフボーイズ」(’89/3/28)も同じ月のうちに発売されていて、タッチの差で二番手となったもの。このあと5月にも「パワーゴルフ」「ナグザットオープン」が発売されていて、開発時期がほぼ同じであるこの4本のHuCARDゴルフゲームを並べて遊ぶと、それぞれが「ゴルフ」にどうアプローチしようとしていたか、違いが見えて来て面白い。

 「がんばれ!ゴルフボーイズ」の発売元はメサイヤ(パッケージ横を見ると同社ソフトの「Vol.3」とある)「ガイアの紋章」(’88)で参入以来、PCエンジンでコンスタントにソフトを出し続けたブランドだが、とくにHuCARD時代のソフト供給のハイペースぶりは目を見張るものがあった。このソフトの直前に「モトローダー」(’89)という、PCエンジンならではの5人同時プレイ可能のレーシングゲームを出していて、それに続く「ゴルフボーイズ」も「4人同時プレイもOK」とパッケージで謳い、多人数プレイを大きな売りにしていた。
 多人数プレイをした場合、コース上のボールは赤や青などそれぞれ色がつき、見分けがつくようになっている。しかし単にそれだけのこと。説明書を見るとマルチタップ使用が必須であるかのように解説されているが、実際にはマルチタップがなくてもパッド一つを交代で使うことで多人数プレイは可能。だいたいゴルフってもともと一人ずつ順番に打つゲームなんだからマルチタップで同時プレイする必要がないはずなのだ。他人のショットを妨害できるとかいうなら話は別だが(笑)。
 まぁ一人でプレイするよりは3〜4人でワイワイ言いながらやる方が面白いという気はする。最初から多人数を想定してるからなのか、他のゴルフゲームによくある「実在ゴルファーに似た能力に個性のあるキャラ」を選ぶというような仕組みは採用されていない。


◆リアル志向だが見づらいグリーン周辺

 このゲームには「トーナメント」「ストローク」「マッチ」の三つのモードがある。
 「トーナメント」がこのゲームの一応のメインで、プロゴルファーとしてトーナメント大会に参加、上位に入って「NCSトーナメント」→「ジャパントーナメント」「ワールドトーナメント」の三つの大会を勝ち抜き、最後のトーナメントで優勝して世界チャンピオンになるのが目的。「ストローク」は1〜4人のプレイヤーが1コース回って点数を競うもの。「マッチ」はもちろん人間同士の2人対戦プレイだ(対CPU戦はなし)

 どのモードに入ってもまず名前と「会員番号」の登録をさせられる。なんで会員番号なんてものがあるかというと、この当時のPCエンジンはセーブデータ機能が一切ないため長期プレイにはパスワードによるデータの引き継ぎが必要で、会員番号が実はそのパスワードだったからだ。だから確実に長丁場になるトーナメントモードしか実質必要ないはずなのだが、なぜかストロークでもマッチプレイでも会員番号入力を求められる(別に空欄でもプレイはできる)。1コースまわると「次からはこの会員番号をお使い下さい」とパスワードが表示され、次回それを入力すると続きからできるという仕掛けで、トーナメントでは挑戦中の大会から始められ、ストロークとマッチでは前回プレイした時の名前だけが再利用できる。それにしてもこの時期のPCエンジンソフトのパスワードは長い…(泣)。

ショット画面 用意されているコースは3つ、全54ホール。当時のHuCARDゴルフゲームとしては珍しい多さだ。トーナメントモードを選ぶと最初のNCSトーナメントは「エメラルドカントリークラブ」、次のジャパントーナメントが「クリスタルカントリークラブ」で行われる。この二つのコースはストローク、マッチでは最初から選択できる。残り一つはマニュアルでも名前が伏せられていて、ワールドトーナメントで使われるものと思われる。いずれも実在する名コースをモデルにしたというのだが、どこのことやら僕には分からない(汗)。
 実在コースがモデルというだけに、「エメラルド」「クリスタル」いずれもTVゲームのゴルフコースとしては比較的オーソドックスで、特に際立つ特徴のないコースが多い。池にしてもバンカーにしてもゲームとしてみればそう意地悪な配置はしていない。ただ一部樹木が邪魔なところに立っているコースがある。プレイしてみた印象ではやはり「エメラルド」より「クリスタル」の方が上級者向けだろうか。

 ほぼ同時に発売された「ウイニングショット」と比べると、こちらのコース表示はかなり小さめ(あっちがデカすぎとも言えるけど)。ショートホールだと全体像が最初から一画面で見えるぐらい。それでも画面左側ウィンドウに全体像の縮小図のほか天気や風向き、ホール情報まで表示されているためかなり狭苦しい印象もある。特徴としてはフェアウェイ・ラフにもグリーン上と同様に三角形で「転がる方向」が表示されていて、これでコースの傾斜が表現されていることが挙げられる。この辺もリアル志向と言っていいだろう。

 問題なのはグリーン周辺だ。グリーン上にボールが乗るとグリーンの拡大図に切り替わるのは当然として、グリーンのすぐそば、グリーンの縁に乗りかかりそうなぐらいの位置につけても拡大図は表示されない。このためあと10m、20mとかいった距離でも全体像が見えちゃうぐらいの小さい表示画面でプレイしなければならず、感覚がつかみにくい。このため下手にグリーンそばに落としてしまうとそこから大苦戦になりやすい。
 それでいてグリーンが二つあるようなコースではホールのないグリーンにオンしてもそっちの拡大図が無意味に出てしまい、これではどちらへ打てばいいのかすら分からなくなってしまう。そのグリーンを出てホールのあるすぐ隣のグリーンとの間にボールが来るとまた全体像に戻ってしまうのも困りもの。後述するようにショットもクセがあるため、グリーン周辺の表示はどうにかしてほしかったところだ。


◆キャディさんが可愛いぞ(笑)

 このゲームのショットは「スイング式」。ボールを打つ方向とボールそのものの打つ位置を決めてから、スイングに入る。ボールを打つプレイヤーの周囲に円形のゲージが表示されていて、まず力の入れ具合をゲージ上のポイントの移動で調整、そこを出発点にして円形ゲージを緑色の点が動いていくのを見て(図中のプレイヤーがそれに合わせてスイング)、それがゲージ下部に赤く塗られたショット位置に来たタイミングでボタンを押してショットを放つ。タイミングがあえばナイスショットになるが、緑の点が赤い部分からはずれるとミスショットになる。
 この方式、「ナグザットオープン」でほぼ同じシステムを採用していたので僕にはなじみがあり、上下や左右のゲージを動かすタイプよりスイングの実感があって好きだったのだが、「ナグザットオープン」のタイミングで覚えてしまったせいか、この「ゴルフボーイズ」のスイングは速度が速すぎてタイミングが合わせにくい印象を受けた。これはこれで慣れれば…と思ったのだけど、力の入れ方にもよるらしくやたら速いと思って急いでボタンを押したら速すぎだったということも多かった。スイングはショットを打たなければ難度でも繰り返せるので、何回かスイングを見てタイミングを覚えてから打てばいいのだろうが…

 それとグリーンに近くなり、サンドウェッジを使うようになると、どうにもこれが使いづらい。これも他のゲームで覚えてしまったからかもしれないが、タイミングが合わせにくく合わせてもショットがやたら高く上がるだけで思うように飛んでくれない。おまけにタイミングが遅れると全然前へ進まないどころかあらぬ方向に飛び、下手すると後ろにさがってしまう珍事も起こる。加えてグリーンに乗らないうちは拡大図が出ないため(一応グリーン上のチェックはいつでもできるが)ホールにアプローチしていくのがとても難しい。グリーンのすぐそばに来たらパターで打った方がよほどアプローチしやすいという気もした。

 グリーン上のパターのショットだけは方式が異なり、タイミングを合わせる必要はなく、力の入れ具合を調整するだけ。グリーン上の芝目についてはだいたい他のゴルフゲームと同じで、ホールのすぐそばに来れば割と甘めに入ってくれる。ただ芝がきついのか妙にボールが転がらない場面もあって、グリーン上で延々苦戦を続けることも多い。ま、実際のゴルフでもグリーン上がプロの技術の見せどころだし、リアルさを追及する上では当然そういうことになったのだろうが…。
 パーやバーディーでカップインするとパチパチパチ…とギャラリーの拍手の音が出るようになっている。パーを4打以上超えてしまうと「がんばれ!」と励ましの言葉が表示されるが、これがゲームのタイトルの由来らしい(?)。
 
 ところでこのゲームは足のポジションや両足のスタンス(オープンスタンス、クローズスタンス)、さらにはグリップの握り方まで調整することができる。ここまでこだわってるのは珍しく、このゲームのデザイナーのリアル志向がうかがえるところで、マニュアルにもこれらのことについて「ミニ辞典」で詳しく解説している。別にわざわざ調整しなくてもプレイはできるのでこだわる人のみのオプション的な調整だが、どれほどプレイに変化があるのか疑問でもある。

キャディーさん このゲームでひとつ親切な点を挙げれば、「アドバイス」というコマンドがある。これを選択すると画面左に可愛いキャディさんの顔が表示され、「あと○○ヤードですから、3Wがいいですよ。でも風向きを考慮して」とかアドバイスをしてくれるのだ。このゲームではホールまでの距離を知るにはキャディさんに聞くしかないのでチェックせざるをえないのだが、「これを使ったら」と提案してくれるのは助かった。あくまで距離の数字から自動的にクラブを提案してくれるだけで、風向きやラフや木については「注意して」と言ってくれるだけなのだが、クラブ選択の参考にはなる。
 このキャディーさん、何度も何度もアドバイスを聞いていると、ときどき「ここは一発パターでふっとばしましょうか!」とか「はぁ〜つかれたわ」とアドバイスにもならない言葉を吐き、さらには「このBGMはウシさんです。モ〜モ〜」とか、「メサイヤは日本コンピュータシステムのブランドです」などスタッフ内輪ネタのイタズラセリフを言ってくれる(笑)。なかには「何を見つめてるんですか!」と怒ったり、「えっ、電話番号ですか?うーん、どうしようかな〜」なんて艶っぽいやりとりも混じっている(右図)。

 ゲームクリアのエンディングは「トーナメントモード」で世界チャンピオンにならないと見られない。そうやりこんだわけではないのだが、トーナメントモードでは最初の大会でもぶっちぎりでビリ状態の僕にはとてもとても…実は名前と会員番号の入力で「さいごみたい」といった言葉を打ちこむといきなりエンディングがみられる裏技があったりするが、正直そうでもしないと見られないような…


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.225
2.929
2.971
3.112
3.140
3.211
18.588
第575位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★

★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

小野泉

ドーピン和樹



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