ウイニングショット
ジャンル:スポーツ
媒体:HuCARD(4M)
発売元:データイースト
発売:1989年3月3日
価格:5200円
商品番号:DE64001
◆PCエンジン初のゴルフゲーム
本作「ウイニングショット」はPCエンジン初のゴルフゲーム。ゴルフというスポーツは基本的に子供には縁が無いはずだがコンピューターゲームとは相性があうらしく、ファミコン草創期から野球ゲームとともに出現していて、今日では大人もターゲットにした人気ジャンルとして定着している。多人数で争うスポーツでありながら一人ずつ打って進めていくこと、なおかつ動きがあまりないこと、しかもなかなか戦略的な思考が必要であることなどがコンピュータと相性がよくなった原因なのだろうが、もう一つ言えばゴルフというのは広大なゴルフ場、高価なゴルフクラブなどで本来手軽に楽しめないスポーツであることもTVゲーム化が促進された一因だろう。
PCエンジンにおいてもゴルフゲームはそこそこの数が発売されていて、この「ウィニングショット」発売の直後には「がんばれ!ゴルフボーイズ」「パワーゴルフ」「ナグザットオープン」が発売されており、この1989年はなぜか合計6本ものゴルフゲームが発売された「当たり年」となっている。その後ゴルフゲーム新作はあまり発売されなくなるが、SCD一色の末期にも「パワーゴルフ2ゴルファー」(’94)、「GO!GO!バーディーチャンス」(’96)といった、それぞれに特色あるゲームが発売されていた。
さて「ウイニングショット」だが、PCエンジン初物ということもあってかごくごくオーソドックスな作りのゴルフゲームとなっている。画面は一貫して見下ろし型で、上下に動くゲージに合わせてタイミングよく打つタイプ。ゲームのモードは三種類あって、一人から多人数で18ホールの成績を競う「ストロークプレイ」、対人もしくは対CPUで一対一の対決ができる「マッチプレイ」、そして4日間のプレイで賞金王を目指す「トーナメント」が遊べる。なお、時間がかかるトーナメントモードはパスワードで記録・継続を行う。この当時はまだセーブ用のシステムがなかったため同時期のソフトにはよくあることなのだが、このパスワードが異様に長いというのも共通点で、このゲームでもかなりしんどい思いをさせられる(泣)。
プレイ開始にあたって用意されている六人のプロゴルフ選手の中から一人を選び、それに任意の名前をつけて自分用のキャラにすることになる。用意されている六人は「おあき」だの「おさき」だのどっかで聞いたようなプロ選手のもじり名前ばかりで、それぞれもともとのパラメーターに個性がある。そのまま使用してもいいが、各パラメーターの数字を増減させて割り振り、オリジナルのキャラクターにしてしまうことも可能だ。もちろん多人数対戦にも対応している。
◆とにかくデカくて綺麗なフィールド
このゲームを始めると、やはり印象的なのがゲームの舞台となるゴルフコースの表現の美しさだ。PCエンジン初、ということもあってファミコンなどとの差別化を印象付けるべく各種のユニットを大きめに作り、細かい描き込みをこころがけたフシがある。もちろんこれは一長一短というもので、縮尺の大きめな地図同様に一画面内に収まる範囲がどうしても小さくなってしまう。コースの全体像は画面隅に表示され、ショットを打つ前に方向キー操作でコース全体を眺めて確認することは可能だが、これとて一画面内の範囲が狭いために手間がかかることは否めない。
しかしやはり画面表示が大きくて綺麗というのはプレイしていて心地がよいというのも確かで、ショットを放つとボールを追って画面がスムーズにスクロールし、美しいコースを一気に駆け抜けていく描写はかなり爽快だ。
ゴルフプレイのシステムじたいは直感的で分かりやすく、かなりプレイしやすい。ショットに当たってはまずクラブを選び、さらにボールの打つ位置、ショットの方向などを選ばねばならないが、ショット位置からホールまでの距離が表示されだいたいそれに合うクラブが自動的に選択されるし、打つ方向もホールの方向へ自動的に向いているから、面倒な向きにはそのまんまプレイするのもありだ。もちろんあくまでホールまでの距離で大雑把に選んでいるものだし、フェアウェイ・ラフ・バンカーの区別もないから、場面により自分で考える必要があるけど。ゴルフゲームの常と言うもので、ショットにあたっては風の強さ、方向もよく考慮しなければならないし。
グラブとボールの打つ位置、打つ方向を決めたら画面内で上下するメーターの動きを見てタイミングよくIIボタンを押してショットを放つ。メーターが一番上に来た瞬間にピタッと止めるとなぜか「ニコチャンマーク」が表示され目一杯遠くへボールを飛ばすことが出来る。もちろんゴルフは遠くへ飛ばすばかりが能ではないから場面場面で力加減を考えてタイミングよくボタンを押す必要もある。ま、この辺は他のゴルフゲームとほぼ一緒。
あくまで僕自身がプレイしている他のゴルフゲームと比較しての印象だが、風の影響は表示されている数字ほどは大きくないような気がする。またグリーン上の「芝目」を読む(ボール付近の芝目がウィンドウ内に色分けされた矢印で表示される)のはかなり難しいと感じる一方で割とアバウトにアッサリ入ってしまうところもある。
このゲームの描画面での特徴をあげるなら、マップが大きめになっているためか、ボールが妙に上へ大きく飛び上がるように見える場面が多い。またそれと関連することだが木や崖など「障害物」が見た目より高さがあるらしく、「え?それがぶつかっちゃうの?」と思う場面が少なくない。特に木についてはずいぶん悩まされる。
◆比較的オーソドックスなコース設計
TVゲームのゴルフものは実在のコースをモデルにしている場合も少なくないが(PCエンジンでは「ジャック・二クラウス」の2作と「パワーゴルフ2」が実在コースをモデルにしている)、ゲームだからいっそ、と現実にはありえない無茶なコースを設計していることが多い。ひところかなり遊んだ「ナグザットオープン」のコースなんかは一部にもの凄い難コースがあったものだ(ゲーム自体はかなりの良作だが)。
で、本作「ウィニングショット」はといえば、全体的にはかなりオーソドックスな設計になっていると思う。全18ホールのうちほとんどはごくごく普通の、見た目にも攻略しやすそうなコースが多い。むろん中には厄介なものもあって、池や湖の中に島があってそれを蛙飛び状に伝っていかねばならないようなものがいくつかある。そんな中の一つには広大な水の中に天橋立みたいに一本まっすぐに伸びる「島」があるというかなり奇抜なものもあった。あと、危険を冒すか安全策でいくかと悩ませるホールもいくつかある。
いろいろあるホールで僕がもっとも危険視したのが第15番ホール。これは一見特に危険もなさそうなショートホールなのだが、中央横一線に屹立する「崖」が存在する。先ほども書いたようにこのゲームは「高さ」の表現にいささか難があり、どのくらいでこの崖が越えられるのか、良く分からないのだ。このためうっかりまずい場所に打ち込むと繰り返し崖にボールを激突させてしまい、「崖越え」のために何度も何度もショットを放たねばならないハメになってしまう。
それでも総合すると難易度は低いほう、と思える。COMのプレイヤーの攻略ぶりを見て研究することも出来るし、慣れてくれば誰でもかなりのスコアでコースを回れるようになるはず。作り手にそのつもりがあったかどうかは不明だが、PCエンジン初のゴルフゲームは「画面の美しさ」と「遊びやすさ」を全面に押し出した、手軽に遊べるHuカードらしい良作といえるだろう。
(追記)本作は2009年2月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。
◎各誌評価
★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
| 音楽
| お買い得
| 操作性
| 熱中度
| オリジナリティ
| 総合
|
3.583
| 3.270
| 3.333
| 3.777
| 3.618
| 3.208
| 20.789
第368位
|
★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
| 採点
|
岩崎啓真
| 6
|
ウォルフ中村
| 5
|
小野泉
| 7
|
ドーピン和樹
| 6
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