1941 カウンターアタック   
ジャンル:シューティング
媒体:SUPER GRAFX専用HuCARD(8M)
発売元:ハドソン
発売:1991年8月22日
価格:4500円
商品番号:HC91048


SG専用のためパッケージは二重◆「早すぎた名機」?スパグラ最後の一本

 本作「1941」はもともとカプコンがゲームセンターでリリースした第二次大戦もの縦シューティング「19〜」シリーズの一本。同じシリーズに属する「1943改」(’91)もこれと同時期にPCエンジンに移植されているし、他のシリーズ作もファミコンはじめ多くの家庭用ゲーム機に移植されている。
 しかしこの「1941」はなぜかPCエンジンの、それもその中の超ドマイナー機種「スーパーグラフィックス」のみにしか移植されていない。カプコンの旧作を集めたPSの「ジェネレーションズ」の「撃墜王の時代」にもなぜか本作は収録されていないそうで。そのせいもあってか、現在本作の中古価格は元の値段を大きく上回り、中古ゲーム屋のプレミアコーナーに飾られていることが多い(今のところ定価の倍程度?)。写真を見てお分かりのように、「スパグラ」専用ソフトは一般HuCARDとは違ってケースを収納する紙製箱があり、カード自体もスパグラ本体に手前に向けて差し込むために通常のカードとは逆の印刷が表面に施されている。
 
 さらにこの「1941」は問題の機種「スーパーグラフィックス」専用ソフトの最後の一本という付加価値もある。もっとも「スパグラ」専用ソフトは全部で五本しか出ていないという悲惨なありさまなので「最後の一本」といってももう一つピンとこないところがある。一応「スパグラ」のキラーソフトの一本として移植が決まったのではないか、と思われるのだが…。
 詳しい話は「スパグラ」の項目に譲るが(書くのは遠い先の話になりそうだが)、「スーパーグラフィックス」とはPCエンジンの上位互換機である。最近の例で言うなら「プレステ」に対する「プレステ2」である。いや実際、「スパグラ」は情報が出た当初「PCエンジン2」という名前で雑誌に載ったのだ。
 画像処理能力を2倍に強化し、それでいて従来のPCエンジンソフトも遊べる…という、今にして思えば時代を先取りしたマシンではあったのだが、価格が高かったこと、キラーソフトが今ひとつだったこと、PCエンジン世界がCD-ROM中心に移行していったこと、そしてみょうちくりんなデザインが災いしたこと(笑)…などで完全に失敗に終わってしまった不幸なマシンだ。のちにPCエンジンの後継機PC-FXにPCエンジンとの互換性を持たせなかったのは、「スパグラ」の失敗の経験がトラウマになっていたのではないかな…などと思うこともある。

 ともあれ「1941」である。「スパグラ」のキラーソフトとしての移植発表からかなり時間がかかり、その間に「スパグラ」自体の失敗が明白になっていき、一時発売自体危ぶまれたがなんとか出た、しかしそれが「最後の一本」だった、と簡単にまとめればそういう経緯の作品である。期待して「スパグラ」を買った濃いPCエンジンユーザーにとっては本作のようやくの発売は感涙ものだったのではないかなぁ、と思う。そして五本しかない「スパグラ」専用ソフト中、やはり最高の評価を得ていると言ってよさそうだ。


◆緻密な絵と高難度、これぞ「スパグラ」ソフト!?

 「1941」とタイトルにあるように、一応設定は第二次大戦期っぽいのだが、もちろん史実なんか完全に無視した仮想SF戦記的な世界がこのシリーズには共通して見られる。しかし詳しいストーリー説明は無く、パッケージに「新生帝国」とやらいう、どうやらナチス第三帝国をイメージしたと思われる謎の帝国が各種の秘密兵器を開発して世界征服を企んでいる…ととれる宣伝文句が書いてある。
 登場する戦闘機、戦艦などもおおむね第二次大戦期をイメージしたレトロなデザインとなっている。なんてったって「ビスマルク」って戦艦まで登場しますからね。ステージも、中には露骨にSFチックな未来的基地内を進むものもあるが、多くの面が当時のヨーロッパ戦線っぽい都市や海上を舞台としている。

空中要塞 こうしたステージや登場兵器のグラフィックはさすがスパグラ、と思わせるかなり緻密なものだ。一面ボスの巨大空中要塞なんかは登場しただけで「おお〜スパグラだな〜!」と感激してしまうようなデキである。スプライト機能が倍に強化されているだけあってワラワラと出てくるザコもスプライト欠けや処理落ちしないし巨大ボス表示だって豪快に決めてくれている。3面で見せる多重・高速スクロールもバッチリの迫力。
 僕自身は原作をプレイしたことは無いが、相当に忠実なアーケードの再現になっているのではないだろうか。当時他機種で移植がまったくされなかったというあたり、かなり家庭用移植の困難なソフトだったのかもしれない。

 ゲーセン縦シューティングの移植でいつもネックになるのが「縦長画面」の問題だ。TVはどうしても横長画面であり、業務用マシンの縦長画面を再現することが難しい。その後一部に「TVを横倒しにして縦に映す」という荒業をやったソフトもあるが、たいていは縦長画面を横長画面内に収めるようアレンジ・調整して移植している。PCエンジンでそれをやって成功しているのが「究極タイガー」(’89)だとよく言われる。
 もう一つの方法が横長のTV画面内に縦長に映す、つまり左右に何も表示しない黒枠をおいて縦長のゲーム画面全体を映すというものだ。これは確かにゲーセン同様の縦長画面をTV画面内に再現できるが、表示が小さくなってしまうという欠点もある(映画ソフトなんかでも似たような問題がありますな)。で、本作「1941」はこの方法を採用して小さい画面ながらもゲームセンターと同様の縦長画面を実現しているのだ。このあたりもやはりゲーセンでやりこんだマニア向け商品だったということだろう(「1943改」は基本は横長画面アレンジ、オプションで上下に引き伸ばした縦長モードにもできる仕様)。小さくなったためにより絵が緻密に見えるとも言えるが、迫力不足も感じるところではある。
 なお、本作は原作同様にパッド2つをつないだ2人同時プレイが可能で、うまくコンビネーションをとれば相当強力に先へ進むことが出来るらしい(実行したこと無し)。その場合若干敵弾が多くなるなど厳しくなるようだが。

 本作はいわゆるバイタリティ制を採用していて、初期状態で一機あたり四回までは敵弾にあたっても墜落しない。もっともやってみると分かるが四回というのはかなりシビアだ(後のステージに進むと五段階、六段階と増えたりもする)。しかもコンティニューは3回までで難易度設定はなし。同シリーズの「1943改」がもっと余裕があるライフゲージ制、しかも難易度設定ありなのと比べると、かなり腕自慢向けに作られた印象が強い。実際「スパグラ」じたいがやたら難度の高いソフトばかりをそろえ、濃厚なゲーセン野郎向けを意識して作られたマシンであり(一部で有名な話だが、操縦桿を模したパワーコンソールの発売まで構想されていた)、「1941」がここに移植されたのもそういう流れの上からではなかったかと思える。


◆ハイレベルなテクニックを要求する頭脳型シューティング!

 本作は四回までぶつかってもOKのバイタリティ制だが、それゆえに画面全体に容赦なく敵機が群がり弾が飛び交う。それでいて自機のパワーアップがあまりできないというのも特徴で、撃ち出す弾が多くなるバルカン砲、貫通力のあるレーザー、両脇の壁などに沿って敵を攻撃するミサイル、そして自機を援護してくれる(防御壁にもなる)オプション機の四種類しかパワーアップアイテムは無い。これらのパワーアップアイテムはオレンジ色の敵機編隊を全滅させると出現するが、短いサイクルでレーザー、ミサイルと変化するため、よーく状況を見定めて欲しいアイテムをとらねばならない。このあたりもかなり戦略が要求されるところ。
 また決まったところで出てくるオレンジ編隊を全滅させると「矢七」と呼ばれるこのシリーズお約束の風車が出現(あの神戸の「酒鬼薔薇」の手紙にこのマークが書いてあったとかでひところワイドショーをにぎわしていたっけ)、これを取るとダメージが全回復するのでとりこぼしのないようにしたい。

戦艦ビスマルク 強力な特殊攻撃としては「メガクラッシュ」という自機を宙返りさせて画面全体の敵にダメージを与えられるものがあるが、これはダメージポイントを一回分消費するのでまさに「ここぞ」というところでしか使えない。これとは別にIIボタンをタメ撃ちすると出る「徹甲弾」も強力で、使いようによってはメガクラッシュ並みの効果があるときも。
 またこれは「1941」で登場した攻撃方法なのだが、横の壁など障害物にわざとぶつかって(障害物にぶつかってもダメージにはならない)同時に攻撃ボタンを押すと「スピニングアタック」といって自機が一回転して360度方向に弾を放つことが出来る。周囲を敵に囲まれたときには確かに有効な攻撃法なんだけど、なかなかコツがいって難しいし、しかも単に360度方向に撃てるってだけで弾の威力はそのままなので有効活用するのはかなりの慣れが必要だろう。

 これらのテクニックを駆使して全6面をクリアするのがゲームの目的。1面ごともそれほど長くなく、全体としては小ぶりな作りだ。その代わりグラフィックの密度の濃さは相当のもの。背景やボス・ザコ敵の動きなど、見せる演出にはかなり気を使っていると思える。
 各面をクリアするごとに撃墜数と撃墜率が表示され、それに応じて「少尉」「大尉」「中尉」といった階級に「昇級」できるのも本作の特徴。成績が95%以上だと「二階級特進」なんてのもある(逆に成績が悪いと出世は「保留」されてしまう)。単純に肩書きだけでなく、こうした階級によりバイタリティが増えたりもするのでいい励ましになるのは確かだ。

 なんだかんだで玄人向けと思えるこのソフトだが、ゲームセンターそのままとも思える美しい絵作り、頭脳的プレイを要求するほどよいバランスなど、数あるPCエンジンのシューティングゲームの中では明らかに良作と言える。ただこれをプレイするためには「スパグラ」を持ってなければいけない、というのが辛いところだ。



◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.031
3.187
2.698
3.625
3.531
3.093
19.435
第504位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

東千里

ミロはじめ


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

浜村通信

渡辺美紀

TACOX



迷い込んだ方はこちらから