本作「1943改」はカプコンがアーケードでリリースした第二次大戦風シューティング「19〜」シリーズの第三作目。「1942」「1943」に続いて2作目のマイナーチェンジ版として開発されている。そしてその次がPCエンジンではスーパーグラフィックス専用として発売された「1941・カウンターアタック」(’91)だった。「1942」「1943」「1943改」はのちにプレイステーションで「カプコンジェネレーションズ・撃墜王の時代」というCD-ROMソフトにまとめて収録され、はっきり言ってこちらの方が「原作」には忠実な移植がなされていると思われる。
PCエンジン版はさすがに当時のマシン性能では完全移植は無理だったか(シリーズの「1941」はスーパーグラフィックスで完全移植を成し遂げたが) 、原作の10ステージから7ステージに減らして移植し、なぜかボスメカもいくつか変更がなされている。また原作のサブタイトルに「ミッドウェイ海戦」とついているように本来このゲームの敵は日本海軍で、各ステージのボスの多くが「加賀」「大和」など実在の日本海軍の軍艦なのだが、それは日本人向けゲームとしては気が引けると考えたのか、各戦艦の名前は「キョシュウ」「チョウコウ」「ガンリョウ」「リョフ」「トウタク」といった名前に変更されている。分かる方は分かると思うが、これ全て「三国志」に登場する武将の名前である。原作で「亜也虎」として登場していた戦闘機ボスも「アヤコ」とカタカナになっていたが、これもなぜかは不明である。
もともとは縦長画面の縦シューティングの本作だが、家庭用ゲーム機に移植するにあたってTVサイズの横長画面にアレンジされている。ゲーセンで慣れた人向けなのか、オプションで「Vモード」を選択すると、画面が縦長に変化するなんて細かい仕掛けが用意されてもいる(左右に何も表示されない部分ができる)。ただし見たところ単に画面全体を上下に引き伸ばしている(あるいは左右から押しつぶしている)だけに見えるんだけど…。
実のところ原作の「1943改」もそれほど人気のあった作品ではないらしい。それをさらにスケールダウンして移植するんだからあんまり面白そうな移植ゲームとは思えないところだが、本作はいささか風変わりに意欲的な移植をしている。原作から3ステージ削った分、原作に無いオリジナルステージを4ステージもくっつけてしまったのだ。7面で原作のラスボス・大和にあたる「トウタク」を倒すと、自機にパワーアップアイテムを装着するビジュアルシーンが入り、そこからは自機・敵機ともにほとんどSFチックにパワーアップした状態のオリジナルステージに突入するのだ。で、幸か不幸かこのオリジナル面の方が圧倒的に面白いのである(笑)。アーケードで遊んだ移植作品を家庭で楽しむというより、ナグザット謹製のオリジナルSFシューティングを楽しむのが主眼なんじゃないかな、という妙な商品だ。
◆画面中敵機だらけ!
「1943改」はライフゲージ制を採用していて、ちょっとやそっと敵弾や敵機にぶつかっても墜落することが無い親切設計。まただからこそ敵機もまさに画面中全体にあふれんばかりに大量に群がってくる。プレイしているうちに敵弾や敵機も気にせずただただ撃ちまくり、飛び回るようになってしまいがちで、なんというか、夏虫の大群の中に突っこんでいくような感覚のゲームだ。
面白いことにこのライフゲージ、敵弾などに当たらなくても勝手にジワジワと減っていくつくりになっている。これを回復するには敵のオレンジ編隊を全滅させると出現する「P(パウ)」ユニットを取るしかない。あと、たまに「矢七」というこのシリーズおなじみのアイテム(これについての余談は「1941」の方に書いたのでカット)をとるとライフゲージが全回復するので取りこぼしは絶対にしたくないところ。
この「P」だが、これを撃つと撃った回数ごとに「3ウェイ」(3方向射撃)「スーパーシェル」(貫通性の高い弾)「レーザー」(さらに貫通性が高い。二段階変化あり)「ショットガン」(5方向に強力な輪?を放つ)「サイドファイター」(いわゆるオプション機)といったさまざまな強化アイテムに変化していく。何も考えず連射していると望みのアイテムにありつけないので注意が必要。また各アイテムは使用時間に制限があり(基本は30秒、複数アイテムをとると最高79秒)、「今はライフゲージを回復すべきか、それともボス戦に向けてアイテムを強化していくべきか…」とあれこれ戦略を練りつつ進めていくあたりが、このゲームの醍醐味といえるだろう。
ただ前半に関しては、通常の場面ではほぼ「3ウェイ」で進めれば事足りるという場面も多く、他のアイテムがうっかり取るとまずい厄介者みたいに扱われてしまうところもある。基本的にはボス戦の直前に「レーザー+サイドファイター」の組み合わせにしちゃうのが最強、と思える。まぁそうそううまくいかないことが多いんだけど。
特殊な攻撃法として、Iボタンを押すと稲妻やら大津波やらが起こって画面内の敵全体にダメージを与えられる、というものがある。これ、かなり便利でピンチの時にはずいぶん役立つのだが、ライフゲージを大きく消費するので注意が必要。
それとIボタンとIIボタンを同時に押すと、自機が「宙返り」をして、その間だけ敵の攻撃が一切無効になる、というこのシリーズ独特のシステムがある。もちろんこれとても無闇には使えず、一面中2回しか使用できないので使いどころを見極める必要がある。
なお、慣れてくるとめったになくなってくるのだが、各面ごとに撃墜率がカウントされており、70%を下回ると「作戦失敗・再度出撃セヨ!」と言われてもう一回やり直しになってしまう。ただこのパーセンテージってどう計算しているのか良く分からないところがあり、撃ちもらしがあったはずなのに「100%」なんて表示が出たりもする。
◆華麗なるオリジナルステージ!
「キョシュウ」→「アヤコ」→「ガンリョウ」→「チョウコウ」→「アヤコII」→「リョフ」→「トウタク」と一応原作から「移植」された7面をクリアすると、本命お楽しみ(笑)のオリジナルステージに突入だ。原作にはかろうじて残っていた「第二次大戦もの」というカラーはこの後半戦ではほとんど忘れ去られ、純然たるSFシューティングに変貌してしまうのだ。
まずは「水上要塞」。のっけから登場する巨大母機から出撃するオープニングが美しい。自機の弾も綺麗にパワーアップしているが、敵機も当然ながらパワーアップしており、難易度に関しては相変わらず。それにしてもこの面の敵機の多さ、攻撃バリエーションの豊富さには戦いつつも感心せざるを得ない。
水上要塞を破壊すると、次は「アヤコ改」。まぁこれは割と楽勝。このステージは背景が夜景で、なかなかに美しい戦場の眺めとなっている。
そして続いては、本作中オリジナリティと迫力では最高のステージと思える「戦闘列車」だ。眼下に三本の線路を見下ろしつつ、切通し(?)の多重スクロールで表現される猛スピードで抜けていくステージで、さすがはPCエンジン!と言いたくなるようなかなりの迫力の描画は必見だ。ステージだけでも結構凄いのに、そこに上から下からSLに牽かれた「戦闘列車」が走り込んでくる場面はもう最高!このステージはもうシューティングというより眺めて楽しみたい気分である(笑)。
このステージは上から下へ高速にスクロールしていく作りになっているので、お好みのパワーアップアイテムをとるのはかなり難しい。でも列車だけに攻撃はそうきつくないのでレーザー弾のかわし方さえ分かればそう苦労はせずクリアできると思う。
このステージを突破すると真のラスボス、「トウタク改」のステージだ。このステージは三段階構造になっており、これまで以上に盛大に敵機が登場し敵弾をぶちまけまくる。その代わり「P」がかなり出現しやすくなっており、最後の祭りとばかりに盛大なステージとなってくれること請け合いだ。もっとも僕はまだEASYモードでもクリアできていないのだが(涙)。
重大なことを最後に書いてしまうが、本作は「1941」同様、2人同時プレイが可能。若干難易度が上がるが、二人の方が先に進みやすいかもしれない。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.386 | 3.431 | 3.181 | 3.318 | 3.386 | 3.340 | 20.042 第444位 |
★★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 8 |
ウォルフ中村 | 8 |
TOMOYO | 8 |
ミロはじめ | 8 |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 6 |
水野店長 | 6 |
森下万里子 | 8 |
TACOX | 5 |