この「エアロブラスターズ」はオリジナル作ではなく、もともとソフトハウス「KANEKO」(金子製作所)がアーケード業務用に開発したシューティングゲーム「エアバスター」を家庭用に移植したものだ。別機種に移植されると内容がほとんど同じでもタイトルが変えられるということはままあり、PCエンジン世界でもCD-ROM第一号だった「ファイティングストリート」(’88)が実は「ストリートファイター」だとか、「ロストワールド」が「フォゴットンワールド」(’92)のタイトルで出たとか、主にアーケードからの移植作にこのパターンが目立つ。恐らく販売元が異なるため商標登録上の問題が生じるのが原因だと思うのだが、この「エアバスター」はメガドライブに移植された際にも同じく「エアロブラスターズ」に名前を変えられている。
なお、このPCエンジン版はハドソンからの発売となっているが、恐らく開発はオリジナルを製作したKANEKOが担当しているものと思われる。KANEKOはハドソンのキャラバン用シューティングも手がけているからだ。
本作は見かけは典型的な横スクロールのシューティングゲーム。近未来、ある日突然「M.L.M(Mega Lord Masters)」なる機械化集団が世界を征服、有機生命体の抹殺を図り始めたため、主人公達は「ブラスターシステム」を搭載した戦闘機を駆ってこれと戦う…というバックストーリーもよくある話。いま「主人公達」と複数形で書いたが、本作はブラスターシステムの開発者の息子と娘が主人公ということになっており、戦闘機も2機用意されて2人同時プレイが可能となっていて、2機の連携で敵を粉砕する必殺技があったりする。この2人同時プレイはオリジナルにはなく、移植にあたって追加された要素だ。だからこのバックストーリーもあくまで「エアロブラスターズ」だけの設定なのではないかと。
◆音楽とシンクロする高速スクロールに酔え!
プレイを開始すると、まず目を見張るのがステージのグラフィックの美しさ。青い空、青い海、そして白い雲。やがて現れる高層ビル群、そしてそれが敵ボスの攻撃で一瞬のうちに廃墟と化す…これが高速の多重スクロールで表現されているのでプレイしていて実に爽快。オリジナルのアーケード版に比べると背景ビルが小さめなど変更点もあるが、そう気にはならないだろう。BGMもHuCARDとしてはかなりいいリズムとテンポで一気にゲーム世界にのめりこめる。
ザコ敵は序盤からワラワラと出てくる。いずれもメカニックなキャラばかりでけっこう大き目のものもあり、それらがそれぞれに個性的な攻撃をかけてくるので最初から気が抜けない。うかうかしていると敵弾を画面中にまき散らされて逃げ場を失うことにもなりかねない。基本的には「撃たれる前に撃て」なのだが、それでも追いつかない場合はIボタンを押し続けて画面上の「ブラスターメーター」を一杯にして(機体も白く光る)「ブラスターフラッシュ」を放ち、画面中の敵弾及びザコ敵を一掃することもできる。ただし、この「フラッシュ」を放とうとIボタンを押し続けている間、通常の攻撃は一切出来ない無防備状態になってしまうし、一度「フラッシュ」を放つとエネルギー充填はしばらくできない仕組みなので、使うタイミングは考えどころ。
ところでこのPCエンジン版は通常攻撃はIIボタン、フラッシュのための「タメ」はIボタンに振り分けられているのだが、オリジナル版はボタン一つを連打すると通常攻撃、タメ押しするとフラッシュ攻撃になっていたそうだ。PCエンジン版ではIIボタンを押しっぱなしにして通常攻撃を続けられるというメリットからこう変更したのだろうが、フラッシュを出しにくくなったことも否めない。
なお、PCエンジンオリジナル要素の2機同時プレイではタイミングを合わせてブラスターを発動すると「スーパーブラスターフラッシュ」「ブラスターズサンダーアタック」といった超必殺技が出せる。
時々飛んでくる「ガンデッチー」なるカプセルを破壊するとパッと各種オプションアイテムが飛び出す。だいたい一度に6個ぐらい飛び出してくるので、うまく自機を操って目標のアイテムをとらなければならない。これが一見簡単そうで結構難しいのだ。オプションアイテムのバリエーションはかなり多く、場面により完全な「外れ」も混じっているため、どの場面でどのアイテムをとるかパターンを決めておく必要があるだろう。そう外れがないのは上下につくオプション攻撃機(防御にも使える)の「サイドアタッカー」だが、360度に攻撃ができる「6WAY」「ヘル・ポッド」もステージによっては絶対必要だし、二種類のホーミングミサイルも場面によってはかなり使える。また「P」と書かれたオプションはパワーアップアイテムで9段階までの攻撃力アップが可能となっている。
2面はみどころが満載のステージだ。「機械化洞窟」という設定で、全編にわたってトンネル状態。なかでも途中に二度あるジグザグのチューブ内をくぐりぬける高速スクロール部分が圧巻だ。音楽のリズムと完全にシンクロしてスクロールがドンドン加速していくところは、プレイする立場としては難所なのだが、ついつい操作を忘れてその目の回るようなスクロールの見事さに酔ってしまうこと請け合い。
この部分に入る直前に「バンパー」という防御オプションが手に入るようになっていて、これを装備していれば壁に多少こすっても自機が破壊されることもなくかなり楽になるのだが、それでも「衝突をある程度緩和する」というものなのでまともに正面から激突したりしたらアウト。このほどよい緊張感がまた嬉しいのだ。
なお、この高速スクロール部分はアーケードのオリジナル版にも存在したのだが、そこでは直後に進むことになるチューブの形状を点滅表示でプレイヤーに警告してくれる仕掛けになっていた。これはメガドライブ版にも忠実に移植されていたのだが、技術的な理由からかPCエンジン版では完全にカットされており、チューブの形状については何度もやって体で覚えなければならなくなっている。
◆オリジナルの雰囲気を生かしたアレンジ移植
やってみた限りメガドライブ版のほうがオリジナルに忠実な移植をこころがけているようで、PCエンジン版は一部ステージの形状や敵の出現パターンなど変更点が多いように思える。難度も全体的に下げられており、忠実な移植ではなく雰囲気を残しつつ家庭用ゲーム機流にアレンジした移植を心がけたようだ。それでも各面の中ボス、巨大ボスはほぼ忠実に移植されてて、やっぱりムチャクチャ難しいけどね。
2面のボス戦は背景が激しくスクロールする中で展開されるので、これまた酔う(笑)。これもオリジナルの雰囲気をうまく再現した名シーンで、当時のPCエンジンHuCARDのゲームとしては「よくできたなぁ」と思ってしまうほどインパクトが強い。
3面はちょっと軽いノリのBGMのなか青い空と白い雲の中を進みつつ大気圏外へ出て行くステージで、これもだんだんと上空へ上がって行くことが実感できる背景の処理が素晴らしい。宇宙空間に出ると登場するヘビ(?)みたいな中ボスも、この手のキャラにありがちな処理落ちも全く見せずにウネウネと動き回ってプレイヤーを苦しめる。
4面からは一気に難易度が上がっていく。ゴミがプカプカ浮かぶ宇宙空間を突き進み、ちょっとやそっとの攻撃では破壊できないザコキャラも増えてくるし、上から爆弾を落としてくるやつやら下からミサイルを放ってくるやつやらがワラワラ出てきて、一秒たりとも気が抜けない。しかも自機に微妙に「慣性」がついてきてバックするのが難しくなってくるからなおさら大変。
PCエンジン版は原則プレイ一回につき3機まで用意され(点数により残機が増えることも)、5回までのコンティニューが認められている。それでも途中でやられてしまうとパワー復活が難しいゲームなので、一度コケると次々と自機を失うハメになりやすい。このため僕なんかはいまだに4面後半ぐらいまでしか進めていない(泣)。まぁ裏技で難易度調整や残機増加などもできるらしいのだが。
このあと5面、6面とステージが続くが、マニュアルによると5面は斜め下へのスクロール、6面はなんと上下にスクロールが揺れるんだとか。とことんスクロールにこだわったジェットコースター的シューティング。そのスピード感のせいかゲームオーバーになってもそれほど悔しい思いもしないので(笑)、鬱屈した時に気分転換にやるにはちょうどいい一本かも。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.736 | 3.776 | 3.527 | 3.751 | 3.950 | 3.363 | 22.103 第213位 |
★★★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 9 |
ウォルフ中村 | 8 |
小池泉 | 9 |
ミロはじめ | 8 |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 7 |
水野店長 | 8 |
森下万里子 | 8 |
TACO・X | 7 |