セガといえば言うまでもなくゲームセンターから家庭用ゲーム機まで幅広くソフトをリリースしたゲーム業界の雄だが、PCエンジンにとっては、ライバル機「メガドライブ」を擁してシェア争いを繰り広げる強力なライバルメーカーでもあった。そんなわけで当然ながらセガがPCエンジンでゲームを発売するわけはない…と思えるのであるが、セガのゲーセン業務用ソフトはファミコン、スーパーファミコンと同様にPCエンジンでも意外なほど多く発売されている。そしてそのほとんどはPCエンジンのメインソフトメーカーの一つ、というよりもNECのソフト部門担当子会社であるNECアベニュー(現NECインターチャネル)から発売されている。
ざっと振り返っただけでも「アウトラン」「スペースハリアー」「ファンタジーゾーン」といった、一時代を画した名作ばかり。そしてそのいずれもがPCエンジンの初期に発売されており、「ゲームセンターのゲームが家庭で楽しめる」というPCエンジンの初期の売りをそのまま体現してハード売り上げにも貢献していたようだ。この「アフターバーナーII」もそうしたセガのゲーセン移植ソフトの一本だ。当然ながらこれらのセガソフト群はメガドライブでも発売されており、何かと比較されることも多い。
本作「アフターバーナーII」は「アウトラン」と同じく、もともとゲームセンターの筐体ゲームの代表作。レースゲームである「アウトラン」に対して、こちらは戦闘機に乗り込むスカイアクションシューティングで、その後のポリゴン描画による3Dゲームに比べればチャチなものではあるのだが、当時としては最先端とも思える目もくらむばかりの3D表現を売りにしていた。中でも最大の売りは空中で自機を一回転させられる「ロールシーザス」が可能なことと、タイトルにもある「アフターバーナー」で自機のスピードを一気に加速できるということだった。なお、PCエンジンにおける良く似たゲームとしてはスーパーグラフィックス専用ソフトの「バトルエース」(’89)があるが(ローリング、ホーミング弾など確かに良く似てる)、あちらがコックピット視点だったのに対し、こちらは自機を後ろから見る視点になっていた。
◆PCエンジン史上最高の3Dゲームか?
とまぁそういうゲームであるから、当時の家庭用ゲーム機の性能でこれを完全移植するというのはかなり無理な話ではあったようだ。PCエンジン版に触れてみた限りでは、「けっこう頑張ってるってところなんじゃないかな」という印象。アーケード版を知る人からはあれこれと迫力不足を言われることだろうが(「アウトラン」についても同じ意見を聞くな)、当時の家庭用ゲーム機における3Dゲームとして考えれば、これはかなり遊べるレベルのゲームになっていると思う。いや、ひょっとするとPCエンジン全ソフト中でも3Dアクション表現としては最高峰ではないかと思えるのだが。似たようなゲームとしてはやはりセガ作品からNECアベニューにより移植・発売された「サンダーブレード」があったが、これの3D表現は正直かなりキビしい。
このゲームは画面中央を自機が飛び、主に前方、時には後方から群がるように飛んでくる敵機を撃墜あるいはかわしつつ、全19あるステージを突破していく。自機の攻撃方法は通常弾とホーミング弾の二種があり、通常弾は基本的に押しっぱなしの撃ちっぱなしで、勝負の決め手はホーミング弾をいかに効果的に使うかにある。ホーミング弾は敵機を照準にとらえてロックオンし発射すると自動的に敵機を追尾して撃墜してくれるという便利なものだが(ホーミング弾が飛んでいって命中するさまはややぎこちない3D表現ながら爽快!)、弾数に制限があるので無駄弾に気をつけねばならない。ステージの合間合間に味方の補給機が現れたり基地に着陸したりしてホーミング弾を補充できるが、むやみに撃っているとあっという間になくなって慌ててしまうことも。それにしても補給機は空中で何やら管を連結させて銃弾を補給してくれるのだが、給油ならともかくあれでどうやって銃弾を送り込んでくるのか、ちょいと謎である(笑)
シューティングというやつは基本的に「撃たれる前に撃て」というところがあるのだが、敵機が多いタイプはそうもいかない。このゲームでは相手のほうからも盛んにホーミング弾が飛んでくるので、同じ場所でボケーッと飛んでいるとあっさりと撃墜されてしまう。とにかくしきりに自機を前後左右に振り回しているのが基本。ロールシーザスも回避には効果的だが、その間操作不能状態ということでもあるので無闇には使えない。また恐ろしいのが後方から飛んでくるミサイルや、自機にまとわりついてくる敵機との激突で、これに対しては「アフターバーナー」(RUNボタン)で急加速して逃げるしかない。しかしこれとても無闇にスピードアップすると前方から来る敵に激突しちゃうので、やはり用心が必要だ。
なんだかんだと困難だらけのこのゲーム、僕も慣れるまでかなりの時間がかかったが、慣れてくればそこそこ先へ進むことが出来るようになる。敵機から飛んでくるミサイルの動きを見切ってかわせるようになってきた時は恐ろしくなったほど(笑)。それでも何がなんだかわからないうちに敵弾に当たってしまうことも多く、運の要素がかなり大きいようにも思う。
とにかく目もくらむほどのスピード感、酔いを覚えてしまうほどの傾斜感と浮遊感、ワラワラと画面内に飛び交う敵機や敵弾、綺麗に3Dラインを描いて飛んでいくホーミング弾など、やりこめばやりこむほどその描画の迫力に今でも酔えるはず。ポリゴンではないスプライト描画による表現であるだけにかえって感動すら覚える(笑)。
ボーナスステージも用意されていて、崖の間を縫うように飛んで地面の車や施設を破壊していくことができるが、これはこれで3D表現の見せ場。ただし、それだけにこちらの方がより無理が出ているようにも感じるけど。
◆何気に凄い?おまけモード
このソフトを立ち上げるとゲームスタートのほかに「サービスモード」なる表示が出ている。こちらを選ぶと、まず操作のカスタマイズが出来るようになっているのがわかる。3Dシューティングにおいては個人の好みもあろうが、僕は基本的にリバースモード、つまりパッドの下方向を押すと機首が上を向く、という操作モードを選ぶ。そのほうが飛行機操作の実感とマッチしていると思うのだが、まぁ人によるところだろう。なんにせよ、こういうモードがちゃんと選べるようになっているところは実に親切。
なお、このゲームに関してはゲーセン仕様のジョイスティックを使用した方がより操作性が上がるかと思える。僕は所有しているNEC純正ジョイスティック「ターボスティック」でプレイしてみたら実際かなり効果的だったのだ。他のPCエンジン専用ジョイスティックのうち電波新聞社発売の「XE-1PRO HE」はレバーを8方向入力に切り替えることができ、かなり業務用筐体の感覚に近い微妙な操作を可能にしている。ただし8方向にするとリバースモードが使用不可になるのが残念。
また、入手困難ながら電波新聞社から発売されていた数機種対応の高性能アナログジョイパッド「XE−1AP」は専用アダプタ「X-HE3」でPCエンジンに接続することができ、この「アフターバーナーII」など数本のソフトに対応していて(ソフト側が対応している、と言うべきか)微妙な操作感覚が得られるとか。
このサービスモード、お約束の難易度調整もあるが(三段階あるんだけど違いはあまり実感できない)良く見てみると「3Dルーム」なる謎のコーナーがある。ここを選択してみると、その名のとおり、さまざまな3Dアートを鑑賞して楽しむモードに突入するのだ。ゲーム本編とは何の関係も無いのだが、これ、意外にインパクトが大きかった。ゲーム起動後のタイトル画面でも同様のものがちょこっと見られるのだが、アーケード版にもついてたのか?このモードは。
このモードでは真っ暗な空間の中に色のついたボールがたくさん浮かび、それらが組み合わさってさまざまなパターンの立体を構成し、回転している。プレイヤーはパッドでこの立体を操作することができ、色を変えたりパターンを変えたり、クローズアップしたりと様々に操作して鑑賞することが出来る。いやまぁ、単に「それだけ」なんだけど、実際操作してみると「PCエンジンでもこれだけ3D表現が出来るのか!」と何気に感動してしまう。スプライト欠けが盛大に出たりはするものの、グリグリとスムーズに動く立体物のインパクトはかなりのものだ。
本作がこの時点での3D表現の最高峰。このあとPCエンジン、特にNECアベニューはひたすら二次元世界、アニメ系さらに言えば美少女系路線をひた走り、後継機PC−FXにおいても同様の方向をとって、セガ・SCEが3Dゲームを売りにしたのと一線を画し…というより完全に乗り遅れ、衰退の一途をたどっていった。このゲームやってるとそんなその後の展開にも思いを馳せてしまったりもするのだ。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.55 | 3.83 | 3.38 | 3.62 | 3.99 | 3.40 | 21.77 第241位 |
★★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 8 |
ウォルフ中村 | 8 |
小池泉 | 10 |
ミロはじめ | 7 |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 6 |
水野店長 | 7 |
森下万里子 | 8 |
TACO・X | 7 |