愛・超兄貴     
ジャンル:シューティング
媒体:SUPER  CD-ROM
発売元:メサイヤ(NCS)
発売日:1995年2月24日
価格:8900円
商品番号:NSCD5018


◆超有名異色ソフトの予想外の続編

 「超兄貴」といえば1992年にPCエンジンで発売されて好評を博し(ではないかもしれんが少なくとも話題にはなった)、その後「メサイヤ」の看板マスコットキャラ(?)まで生み出すことになってしまった有名異色ソフトである。いまでこそ変な世界観を売りにしたソフトは少なくないが、どうもたどっていくとその元祖的存在が「超兄貴」だったように思う。この「愛・超兄貴」はそのソフトの続編にあたり、当初のタイトルは「超兄貴2」と発表されていた。

 前作「超兄貴」は敵も味方も筋肉ムキムキのボディビルダーだらけ、その異様かつ強烈なBGM、それでいて妙にひきつけられるSFテイストな世界観が楽しい、とにかく世界観を楽しめるゲームだった。プレイヤーキャラは男女の神様「イダテン」「ベンテン」で、サポートしてくれるオプションとして二人の筋肉兄貴「アドン」と「サムソン」がつくという形になっていた。この続編ではこの「アドン」「サムソン」がオプションから主役に昇格している。前作ではプレイヤーの指示で自爆特攻攻撃をかけさせられたり酷使されていただけに、この昇格は前作プレイ者には涙ぐましいところではある。

 前作以上に気合いの入ったオープニングデモが語るところによると、イダテンとベンテンの活躍により前作の敵ボス「ボ帝ビル」は倒され、2年間の間人々は平和を謳歌していた。しかしビルダー星系に再び不穏な動きを察知して調査に赴いたイダテンがそのまま行方不明となってしまう。ベンテンはアドンとサムソンの二人をイダテン救出のためにビルダー星系へと差し向けた…とまぁこんな設定になっている。設定上、二人同時プレイも可能となっていて1コントローラーがアドン、2コントローラーがサムソンを操作することになるが、アドンとサムソンの違いは全然分かりません(笑)。

 前作はいわゆる「タメ撃ちシューティング」で、2ボタンを押しっぱなしにして小攻撃、それを離すと巨大なビーム攻撃が放てるという仕掛けになっていた。操作の単純さが嬉しい構造だったのだが、この続編では攻撃方法そのものがまるっきり変化していてプレイヤーを驚かせた。なんと格闘ゲームを思わせるコマンド入力攻撃になっていたのである!例えば右方向の敵にダメージを与えるには「右タメ→左+2」(この技は「男魂」という)、近距離の敵に大ダメージを与えるには「下・右下・左+2」(この技は「倒錯兄弟」)といった調子。「左・右・下+2」で画面全体の敵に小ダメージを与える便利な技があるが、これなどは「男性地震」というふざけまくった名前がついている。これらの攻撃は「ポージング」と呼ばれており、アドン・サムソンが「ふんっ!」とボディビルのポーズを決めるとなぜか敵がダメージを受けるというとんでもない攻撃方法である。攻撃を続けているとエネルギーがたまり(二人の頭が光ってくる)、ここで「倒錯兄弟」コマンドを入れると「メンズビーム」という頭から画面三分の一ぐらいを占めてしまう巨大波動砲大攻撃をかけることも可能だ。

 …しかしねぇ、考えたもんだとは思うけど、これってもうシューティングじゃないよなぁ(^^;)。とにかくせわしなくコマンド入力を出しまくる、かなり過酷なゲームである。格闘ゲームなどで正確にコマンドを入れられる人はいいけど、僕などはかなり入力ミスをしてしまう。実は1ボタンを押すと「汗汗乱舞」という無敵状態になって先へ進めてしまうのだが、敵を倒した点数により先へ進める仕掛けになっているのでこれもあまり乱用できない。

◆コンティニュー等という軟弱な救済措置はありません!

最初にぶつかるボス …と、マニュアルにもあるとおり、このゲームはコンティニュー無し、ゲームオーバー、ハイそれまでよ、というルールになっている。これがまたかなり変わったシステムになっていて、ゲームオーバーの条件は残機数がなくなるとかではなく「時間切れ」なのだ。画面上方に砂時計がズラッと並んでおり、「時の番人」が一定時間ごとにこの砂時計をひっくり返して消していく(この番人、ヒマなときはスクワットなんかやっていて結構笑える)。自機(?)がダメージを三回受けて一機死んでしまってもこの砂時計が一つ消されていく。この砂時計が全部なくなったときがゲームオーバー(お約束の「もう、ダメだ!」)。じゃあどうやってクリアするのかと言うと各面の点数に応じて面クリア時に砂時計が補充されるというシステムになっており、やはり多くの敵を倒して高得点をあげるのが必至ということになる。1ボタンの無敵状態だけでは先へ進めなくなってしまうのはこのためだ。

 考えたもんだとは思いつつ、敵にやられたんじゃなくて「時間切れ」でいきなり画面が暗くなり「もうダメだ!」などと言われて最初からやり直しとなってしまうとかなりゲンナリしてしまうもの。敵味方ともにキャラが大きめだから、敵弾をかわしきれないことが多いのでなおさら苦痛を感じるところも。決して指先操作系が得意とはいえず、このゲームもいまだクリアしていない僕が言うのも何だが、時間制限はかなり厳しいような気がする。

 アドンとサムソンに主役を譲ったベンテンは今回はお助けキャラ。ゲーム中に時折「イッツ・ショーターイム!」と奇声を上げながら突然登場し、「時」(砂時計が増える!)や「愛」「力」といったお助けアイテムを置いていってくれる。時間切れ寸前のときに「時」アイテムを置いていってくれたときなどはまさに「救いの女神」なのだが、彼女が現れてアイテムをつかんだそのときに時間切れゲームオーバーなんて泣くに泣けないケースもよくあった。

 ステージは4つ。それぞれ3コーナーに分かれていて、一部を除いて各コーナーごとにそれぞれに珍妙なボスが登場する。ボスたちは前作に比べるとかなり甘めの攻めをしてくるものが多く、たいてい楽勝で突破できる。だが、途中のザコ敵に結構鬱陶しい攻撃をしてくるものが多く、うかうかしてると瞬く間に三回ダメージを受けて砂時計を消費してしまう。特に大変なのがラスト近くで、まるでボスオンパレード状態のため(1ボタン無敵状態で無視する作戦がとれない)、あっという間にゲームオーバーに追い込まれがち。このあと「ボ帝コンシャス」というバブル期お立ち台ボディコンギャルを思わせる巨大ボスが登場するが、僕は現時点でここでいつも時間切れとなってしまっている(涙)。


◆圧倒される美しい画面と音楽を堪能せよ!

 発売当時の雑誌記事によると「2」ではなく「愛」と来たことについて、「耳元にフッと息を吹きかけるように言う『愛』です」などという製作スタッフのコメントが出ていた記憶がある。前作もそうだが、ひたすらその悪ノリぶりをプレイヤーに訴える、意図的に「変」さ加減を狙いまくったゲームである。前作はそれでインパクトが確かに強烈にあったのだが、この「愛」だと作る方も遊ぶ方も慣らされちゃってたせいか、インパクトはイマイチだったと思う。それと不評が多かったのがボリューム。前作に比べて面数などボリューム不足の観は否めない(発売前の雑誌記事だともう少し面数が多かったはずなのでカットされちゃったものか?ボスオンパレードステージもそのせいかな…?)
 
 と、苦言をちょっと呈しておいた上で本作への「愛」を語ろう(爆)。
 PCエンジン末期の発売である本作は画面の美しさにおいては明らかに前作を凌ぐ(いや、前作も相当なものなのだが)。1面は前作の1面をなぞる形になっているので前作と比較してその美しさを堪能できる。この点ではキャラが大きくなったことの効果があるな。多重スクロールの背景もお見事と言うほかない見栄えで、特に2面の森林を抜けていく場面などは絶品だ。
 ボスの中でも最初に出会う月の上に乗っかった「アダム」(ミケランジェロ「天地創造」からのパロディ)や3面中盤の「ビーナス」(ボッティチェリ「ビーナスの誕生」のシルエットだが実は筋肉男。上から大量の「ナス」を降らせる!)などはさりげなく知性をかいまみせるギャグボスとして大いに受けたものだ。これらの登場場面の美しさはまさに芸術品といってもいいくらい。芸術的といえば荘厳かつ異様なスキャットの入るBGMもこれらボスたちにピッタリ。そういえばこのゲームのパッケージは音楽CDみたいに裏に収録曲目録を表示していたりする。

 先述のようにノリはむしろアクションゲームに近いため、本格シューティングゲームを期待した人は拍子抜けするかもしれない(もっとも「超兄貴」という時点で「本格」とは思わないかも知れんが)。だが、なんだかんだ言いつつ僕などは結構楽しんでやっているソフトだ。作り手の凝りまくった「愛」は確かに感じるからね。
 なお、本作がPCエンジンの歴史とともにあったと言っても過言ではない「メサイヤ」(日本コンピュータシステム)ブランドのPCエンジン最終作。このあとFXで「デアラングリッサー」を出すなど、結構NEC-HEに付き合いのいいところを見せたものだ。

(追記)本作は2007年12月に任天堂「Wii」向け「バーチャルコンソール」の一作として配信されている。

◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
4.071
3.821
3.151
2.919
3.473
4.142
21.577
第261位

★電撃PCエンジン(発売前のテスト版による100点満点評価)
レビュアー
総合評価
岩崎啓真
45
ウォルフ中村
40
ウキキ松崎
50
城イドム
45

城イドム評価(各項目5段階評価)
グラフィック
サウンド
操作快適度
ゲームバランス
オリジナリティ
コストパフォーマンス







★ファミ通(発売前テスト版による総合10段階評価)
レビュアー
総合評価
サワディ・ノダ

ローリング内沢

イザベラ永野

TACOX



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