オルディネス  
ジャンル:シューティング
媒体:UPER GRAFX専用HuCARD(8M)
発売元:ハドソン
発売:1991年2月22日
価格:9800円
商品番号:HC91044


 外見◆スパグラ専用!オリジナル硬派STG

 「オルディネス」は、ハドソンが作ったシューティングにしては知名度はまるでない。そもそもプレイした人が絶対的に少ない。PCエンジンの上位互換機として作られた「スーパーグラフィックス」(以下、スパグラ)専用のソフトであり、しかもアーケードからの移植ではない全くのオリジナルタイトルだからだ。
 スパグラは1989年年末に発売され、PCエンジンの描画能力を二倍に増強した上に従来のソフトもプレイ可能という、なかなか時代を先取りしたマシンではあったのだが、価格の高さとキラーソフトの不足とで早々に失敗が確定し、結局専用ソフトは5本しか出なかった不運なマシンである。そのたった5本の専用ソフトはおおむね半年に1本というゆっくりしたペースで発売されており、この「オルディネス」が4本目、すなわち最後から2番目のソフトとなった。

 スパグラのような新ハード立ち上げの際には知名度の高いアーケード移植作を持ってくるのがセオリーなのだが、第1弾ソフトはスパグラの能力を見せる意図が強いオリジナル3Dシューティング「バトルエース」(’89)だった。その後「大魔界村」(’90)「1941」(’91)といったアーケードの人気作の投入も決まったのだがいずれも開発が遅れた上にハードを買わせるほどのインパクトはなかった(「ストライダー飛竜」のタイトルが上がったこともあるが)。あと一本の「魔動王グランゾート」(’90)はTVアニメとのタイアップ商品だが実に地味な出来だった。
 まったくのオリジナルタイトルである「オルディネス」がどのような経緯で開発されたのかは分からないのだが、やはりタイトル不足の解消を意図した「品数ぞろえ」の側面が強い気がする。またPCエンジンそのものがシューティングゲームに強いマシンでありスパグラもその方向を強く意識していたから(伝説の「パワーコンソール」の開発もあったし)、スパグラならではのシューティングを作れ!というハドソンの意向があったんじゃないかと。

 この「オルディネス」、見た目にはいたってオーソドックスな横スクロールシューティングで(「グラディウス」シリーズと雰囲気はよく似ている)、同じくスパグラ専用オリジナルタイトルである「バトルエース」に比べるとインパクトはあまりない。だがそこはスパグラ専用として開発されただけにレギュラーのPCエンジンマシンでは実現不可能と思える独自機能や思い切った演出がそこかしこにあり、一部に濃い目のファンが存在する(?)知る人ぞ知るゲームでもあるのだ。ただやたらに難しいのでマニアックなシューティング猛者たちがきりきり舞いして熱を上げたという面もあるようで。


◆なんだか可愛い自動制御オプション

 西暦2020年、宇宙から襲来した侵略者の前に地球人類は滅亡の危機に陥っていた。国際連盟はNASAコスモスセンターに依頼を要請して最新鋭戦闘機「オルテガ」を開発させ反撃を試みたがこれもあえなく全滅。戦いで恋人を失ったヒロコ=A=FOXはNASAに封印されていた未完成戦闘機「オルディネス」を発見、これに乗って恋人の敵をうつべく出撃していった…

 というようなプレストーリーが説明書に書かれている。主人公の女戦士ヒロコはパッケージや説明書にわざわざモデルさんを使った写真で登場している。「オルディネス」はミニチュアでわざわざ作って写真を合成させているが、これは「バトルエース」でも同様のことが行われている。スパグラのソフトはマシン同様の高級感を出すつもりだったのか、CDケースをさらに箱入りという過剰包装になっていた上に、説明書が妙に凝っているのだ。
 ストーリー自体はあまりにもよくあるお話で主人公が女性という以外は特にオリジナリティは無い。ところで「依頼を要請」って表現は原文のまま使ったのだが、日本語として変でしょ(笑)。

 さてゲームの方だが、1面を開始してみると見た目には拍子抜けするほどオーソドックスな横スクロールシューティングなので「どのへんがスパグラ専用?」と思ってしまう人も多そうだ。スパグラソフトでよくある妙に濃い色使いが目に付く程度で、あとは襲い掛かる敵を撃って倒し、すると出現するパワーアップアイテムをとって攻撃のバリエーションを広げ…と操作系も含めてとくにこれといった特色が見当たらない。
1面ボス しかし「シャトル」と呼ばれるオプションをつけてみると、このゲームのオリジナリティが浮かび上がる。最大4つまでつけることが可能なこの「シャトル」、最初はよくあるオプションのように自機にはりついて援護攻撃をしてくれるのだが、Iボタンを押すと「オート」モード(自動制御)になり、勝手に画面内を浮遊して敵を次々と攻撃しはじめるのだ。慣れないうちは戸惑うが、分かってくるとこれがなかなか面白い。自動制御となった「シャトル」は画面内に敵を発見するとただちにそっちへ駆けつけて攻撃を行い(ビーム砲を撃つとき一瞬タメがあるのが妙に可愛い)、前に後ろにクルクルと実によく動き回る。その独特の浮遊感もこのゲームの見ものの1つで、うまく使えば自機の攻撃が及ばない範囲の敵(とくに後方)にも攻撃をかけることが可能だ。
 さらにIボタンを長く押すと「シャトル・ローリング」という状態になり、自機の周囲をぐるぐると高速回転して防御壁の役割を果たしてくれる。「シャトル」4つをフル装備してローリングを行えば、ほぼ完璧なバリアとなる便利ものだ。「シャトル」は敵弾に当たるなどしても無敵状態なのでホントに心強い味方である。

 最初はオーソドックスと思っていた1面だが、後半になるとスパグラらしさを発揮し始める。地面がズズズズ…と揺れていると思ったら、地下から巨大ボスが次第に姿を現してくるのだ。はじめこのボスへの攻撃はできず、なんだろうと思いつつ雑魚敵の相手をしていると、やがてこのボスが昔の特撮ロボットものを思わせる変形をしてグググッと立ち上がり、画面半分はあろうかという巨大ロボットになって、ようやくボス戦になるのだ。
 どのボスもだいたい分かりやすいところにダメージポイントがあり、そこを延々と攻撃し続ければクリアできる。ただ「シャトル」はオートだろうとマニュアルだろうとボス戦では戦力になってくれない。オートで自動制御にしておくと「敵がいる!」とは思うらしくボスに向かって果敢に攻撃してくれるのだが、いかんせん肝心のダメージポイントが分からずやみくもに撃ってるだけなのだ。ま、その懸命な姿がなんともいじらしく可愛くなってしまうのであるが(笑)。


◆伝説的激ムズシューティング

 1面をクリアして2面へすすむと、グッとスパグラらしさが増す。実によく描きこまれた重厚感たっぷりの迷路ステージで、敵の種類も一気に多彩となる。それぞれに独特の攻撃方法で迫ってくるので一瞬たりとも油断がならない。とくに撃破すると爆発してこちらも巻き込んでしまうザコは要注意。困ったことにこれを倒さないと出ないアイテムが多い。
2面 迷路ステージで気をつけなくちゃいけないのが自動制御の「シャトル」が敵を追いかけてるうちに他の道に迷い込んではぐれてしまう場合があることだ。一回画面外にシャトルが消えてからIボタンを押せば戻ってくるのだけど。狭い通路を通るときなど、後方からの攻撃にはシャトルの援護が絶対に欠かせない。
 もう一つ気をつけなきゃいけないのが、このステージでは後方から巨大な壁(?というか一つの要塞にも見える)が迫ってきてこちらを押しつぶそうとする演出があること。これがなかなか大迫力でスパグラならではの名場面。道を間違えずに前方へ逃げ込めばいいのだが、その前方にも敵がいるわけでなかなかスリリングだ。

 このころになると自機もパワーアップしてくるのだけど、このゲームのパワーアップはかなり特殊。通常のビーム攻撃が2方向に攻められるようになるのは分かるのだけど、屈折ビームとか床と天井にバウンドしていくビームとか変なのが出てくるのだ。どうも使いづらい…と思っているとボス戦になるとそれが有効だと分かるようにはなっているけど。
 2面のボスあたりから難しさが一気に増してくる。パターンを覚えればいいのだけど、攻略法発見まではかなりの根性がいると思う。このゲーム、コンティニューは無限のうえやられた部分から再開できる(正確には1ステージが3〜4ぐらいに分けられていて、ある部分でやられるとその部分の最初から開始になる)ので、根性さえあればなんとかなるのでは。だけど後半に関してはセーブ機能をつけてほしかったと切実に思う(もっともスパグラ単体ではバックアップはできないんだけど)

 3面もなかなかの見どころ。目が痛くなるほどの多重スクロールで奥行きが表現されており、画面奥から目玉状の敵が次々と手前へ迫ってくるという結構怖い演出がある。そのあとの面は敵母星の内部に入っていくため見た目にはあまり面白くないのだが。
 僕は必死にプレイしてどうにか6面まで入ったことがあるが、説明書によると全7ステージ。このゲームに触れた人の文章を雑誌やネットでいくつか読んだが、かなりの猛者でも「難しすぎる!」との声が多い。スパグラ自体がマニア向け、上級者向けを意識したマシンだったせいもあるのか、「一般人お断り」なソフトになってしまったんじゃなかろうか。

(追記)2011年2月からPS向け「ゲームアーカイブス」の一本として本作が配信されている。実に20年ぶりの復活であった。 


◎各誌評価

★PCエンジンFAN(ゲーム通信簿の読者投稿平均点。各項目は5点満点で総合30点満点)
キャラクター
音楽
お買い得
操作性
熱中度
オリジナリティ
総合
3.333
3.466
2.933
3.366
3.466
3.000
19.566
第492位

★小学館ハイパーカタログ(★★★★★で満点)
★★★★

(勝)PCエンジン(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
採点
岩崎啓真

ウォルフ中村

TOMOYO

ミロはじめ


★ファミコン通信クロスレビュー(発売前テスト版による10点満点での採点)
レビュアー
総合評価
東府屋ファミ坊

水野店長

森下万里子

TACOX



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