PCエンジンはもともとシューティングゲーム全盛期に設計された高速処理マシンと言うこともあって、その初期よりシューティングゲームの名作を数多くリリースしている。特に盟主ソフトメーカーであるハドソンはファミコン時代から毎年自社主催の「全国キャラバン」なるイベントを展開、そこで自社制作のシューティングゲームによるスコアアタック競技会を催しており、その大会公認ゲームの多くをPCエンジンから発売していた。一方でやはりPCエンジン初期からの主力メーカーの一つであったナグザットもこの時期似たようなイベント「サマーカーニバル」を展開し、自社制作STGによる競技会を開催していて、91年(第一回)のサマーカーニバル用ソフトが名作として名高い「精霊戦士スプリガン」、翌92年が本作「アルザディック」、翌93年が「ネクスザールスペシャル」とPCエンジンソフトが続いている。
この「アルザディック」、まず目に付くのがその価格の安さ。全PCエンジンソフト中最安値なのは間違いないだろう。それは無理もないところもあって、このゲーム、基本的に競技大会で使われたそのままの内容で、スコアアタックとタイムアタックが出来るだけ、要するに1ゲームがあっという間に終わってしまうソフトなのだ。ふつうのSTGにあるクリアしていくべき「面」も全く存在せず、ただひたすら出てくる敵や障害物を撃っていっていつの間にか唐突に終わるという、そういう形式になっている。ホント、大容量のCD−ROMに収録するにはもったいないぐらいの小粒ソフトなのだ。CDに収録するにあたっても、ありがちなビジュアルシーン追加なども全く行わず、ただ音楽がCD仕様という程度。潔いまでにおまけ要素を排除した商品となっており、これなら確かに3000円弱というところが相場ではあるだろう。
◆まさに競技用仕様!
このゲーム、起動するとシンプルかつ渋いオープニング(?)のあとに「アタックモード」「ストーリーモード」そしてゲームにおける制限時間などを変更する「オプション」を選択する画面になる。「アタックモード」を選択すると「ビギナー」「スコア」「タイム」の三つのアタックモードが選べるようになっており、「スコア」は制限時間内(デフォルトでは2分間)に難点取れるかを競うもの、「タイム」は100万点とれるまでの時間を競うものとなっている。「ビギナー」ってのはその名のとおり初心者向けで、ランダムパネルなどにより得点にプレイヤーの技術外の要素が付け加えられているモードだ。
ゲームとしては実のところこれといって特殊な点はない。スタート前に四つある特殊攻撃の中から一つを選び、「ここぞ」というところでそれを使用して大量得点を狙う。また自機の射撃方向はステージ中で出てくる「A」「B」「C」「D」と書かれたアイテムをとって変更し、同じ文字アイテムを二度連続でとることで2段階にパワーアップするという仕掛けになっている。たった2段階しかないのは時間が短いからだろうが、例えば「A」の2段階目になっているときに「A」のアイテムをとるとそれだけで1000点が入ってくるという作りにもなっているので、基本的には1ゲーム中は一つの攻撃スタイルに統一して同じ文字ばかりとるということになりそう。僕がやってみた限りではやはり2段階目で四方に弾が撃てる「A」が一番つぶしが利くと思える。
「スコアアタック」モードはまさに典型的な競技大会用ゲームで、たったの2分間、ひたすら敵やアイテムをドカドカ撃ちまくって点数を稼いでいく。この2分間かなり高速にスクロールするステージの上でわらわらと出てくる敵を撃ちまくり、最後にボスが登場して(登場演出はちょっと凝っている)これを撃破すると、だいたいそこらでタイムアップ、という展開。面クリア方式ではないためこのボスを倒した後もちょっとゲームが続くから、早くボスを倒すに越したことはないようだ。
敵はいずれも大したこと無いのばかりなので、点数を稼ぐにはボーナスアイテムを的確に撃っていく方が重要という気もする。敵に激突、あるいは敵の弾が当たることもあるが、その場合はこちらが一段階パワーダウンさせられるだけなので、あまり気にせず画面内を動き回って点数を稼ぎまくった方がいいだろう。もちろんぶつからないに越したことはないんだけど。
とにかくあっという間に終わってしまうので、一人でやっていてもつまらないと思う。何人か友達を集めて得点競争するのがこのゲームの楽しみ方だろう。特に難しい技術も必要なく撃ちまくれる作りになっているので誰でも遊べるお手軽感もあるし、やりこむにつれどこで得点差が出てくるのかプレイヤー間で研究する楽しみもある。
「タイムアタックモード」は「100万点とるまでにかかる時間」を競うもので(参考までに僕がやった限りで「スコアアタック」の2分間では40万点台)、基本的に「スコアアタック」とステージや敵出現パターンは同じだが、時間がより長いので「スコア」では披露できなかった敵攻撃のバリエーションが見られる。ただし、こちらのモードではうかうかしていると敵に撃ち落とされたり敵機と激突したりで自機を三機まで失うとゲームオーバーにされてしまうし、規定の五分間以内に100万点とるのは僕のやってみた限りでは至難の業だ。時間を競う以前にいまだに記録が作れてないありさまで(汗)。
◆なんでつけたの?「ストーリーモード」
さて、本作には「ストーリーモード」というのがついている。ふつう、この手のゲームでストーリーモードといえばビジュアルシーンでもつけてお話を語るところなのであるが、ここでのストーリーモードはゲーム開始前に字幕のみで状況を簡単に説明してくれるだけ。二つのシナリオが用意されそれぞれ状況は異なるのだが、ハッキリ言ってとってつけたような、あるいは適当に思いつきで作ったようなシチュエーションで、ゲーム内容とはほとんど無関係と言っていい。
だいたいゲーム自体も「ビギナー」「スコア」の両アタックモードそのまま、ちゃんと2分で唐突に終わってしまう作りになっている。2分間が無事終わると(まぁふつうここまでに全機失うことはなかろう)、唐突に「COMPLETE」と表示され、また字幕のみで目標が達成されたことを告げられる。要するに字幕説明がついているだけで、アタックモードと何の違いもないのである。
恐らくだが、競技用ソフトをそのまま市販品で出すのもためらわれたので一応おまけ要素として…とこの「ストーリーモード」を急遽くっつけたんじゃないかと。そもそもこのモード、説明書にも何の記載もないのだ。ついでに言えば説明書にはRUNボタンを押すとポーズがかかると書いてあるのだが、実際にはそんな機能はない。どうも市販品としてはやっつけ仕事をしてる感は否めない。
しかし、このゲームの画面の美しさは特筆していいと思う。PCエンジンのシューティングソフトはこのジャンルが円熟期に達していた時期のせいもあってか画面に非常に見栄えがあるものが多いが、この「アルザディック」はその中でもかなり綺麗なほうだと思う。ゲーム開始直後の高速スクロール、背景の多重スクロール、描きこまれた背景のメカ描写、ザコキャラの細かい動きなど、見ていて結構楽しめる。ただボス以外はちっちゃいのばかりだし、時間が短いこともあってあまり工夫をしてないとも思えるが。
キャラクター | 音楽 | お買い得 | 操作性 | 熱中度 | オリジナリティ | 総合 |
3.363 | 3.863 | 4.454 | 4.136 | 3.681 | 3.090 | 22.590 第156位 |
★★★ |
レビュアー | 採点 |
岩崎啓真 | 8 |
ウォルフ中村 | 8 |
東千里 | 6 |
びいず羽岡 | 7 |
レビュアー | 総合評価 |
東府屋ファミ坊 | 7 |
アルツ鈴木 | 6 |
イザベラ永野 | 7 |
ローリング内沢 | 6 |